投資信託の分配金は利息と同じ?仕組みや元本・税金の違いを知りたいです
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2025/06/30 12:22
男性
40代
銀行に預けると利息がつきますが、投資信託の「分配金」もそれと同じようなものなのでしょうか?どちらもお金が増えるイメージがありますが、しくみや意味に違いがあるのかよくわかりません。元本が減ることはないのか、税金はどうなるのかなども気になります。初心者にもわかるように教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
投資信託の分配金は、銀行の利息のように「元本はそのままで利益だけを受け取る」仕組みとは根本的に異なります。
分配金は、ファンドが得た株式配当や債券利息、売買益などの運用収益から支払われますが、必ずしも利益だけが原資になるわけではありません。収益が不足している場合は、ファンドの元本部分(信託財産)を取り崩して分配することもあり、この部分は「特別分配金(元本払戻金)」と呼ばれます。これは非課税ですが、自分の資産を前倒しで取り崩しているに過ぎず、受け取った後はその分だけ基準価額(ファンドの値段)が下がります。つまり、手元に現金は増えても、資産全体の価値は変わりません。
一方、利益を原資とする「普通分配金」は課税対象ですが、これは純粋な運用益の分配であり、資産の増加とみなせます。ただし、分配金の有無や額だけでファンドを選ぶと、実際のパフォーマンスを見誤る恐れがあります。重要なのは、基準価額の推移と累積分配金を合算した「トータルリターン」で比較することです。
分配金は、定期的な現金収入が欲しい人には便利ですが、長期の資産形成には、分配をせずに内部で複利運用を続ける「無分配型ファンド」の方が効率的な場合も多くあります。利息と同じように「受け取れば得になる」と思い込むのは注意が必要です。
税制面では、銀行の利息は一律20.315%の源泉分離課税ですが、投資信託の分配金は区分によって異なります。特別分配金は非課税、普通分配金は利息・配当と同じく課税対象です。分配金を「再投資するのか」「生活費に回すのか」といった使い道をあらかじめ考え、自分のライフプランに合ったファンドタイプを選ぶことが、納得のいく運用につながります。
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基準価額
基準価額とは、主に投資信託の商品価格を表すもので、投資信託1口あたりの価値を示しています。毎営業日に一度計算され、投資信託が保有している株式や債券などの資産の時価総額から、運用にかかる費用を差し引いた金額を、発行済みの総口数で割って算出されます。 投資信託の購入や売却の際には、この基準価額が参考になりますので、価格の動きに注目することが大切です。ただし、基準価額は市場価格とは異なり、リアルタイムで変動するわけではないため、翌営業日の価格になることが多い点にもご注意ください。
特別分配金
特別分配金とは、投資信託が支払う分配金のうち、運用収益ではなく投資元本を取り崩して支払われる部分です。元本払い戻しに該当するため受取時に課税されませんが、その分だけ基準価額(1万口当たりの純資産価値)が同額下がるため、受け取った現金のぶんだけ資産が増えたわけではない点に注意が必要です。 特別分配金は、基準価額が取得価額を下回っているとき以外にも、次のようなケースで発生します。 1. 定額・高水準の分配を維持している場合 毎月一定額を分配するファンドが運用収益を上回る金額を支払うと、不足分が元本の取り崩しとなり特別分配金になります。 2. 大口解約や急落で分配原資が急減した場合 解約損や評価損で内部留保が減少した状態で予定額を分配すると、超過分が特別分配金に振り替わります。 3. 為替ヘッジコスト・信託報酬などのコスト負担が膨らんだ場合 想定外のコスト増により実質収益が目減りし、分配ポリシーを据え置くと元本を取り崩すことになります。 4. 配当・利息の入金時期がずれた場合 決算期直前に配当やクーポンが未入金のまま分配を行うと、その不足分が元本扱いとなり特別分配金が発生します。 分配利回りが高く見えるファンドでも、特別分配金の比率が大きいと実質リターンは伸びにくい傾向があります。投資信託を選ぶ際は、交付運用報告書で普通分配金と特別分配金の内訳を確認し、基準価額の推移と合わせたトータルリターンが安定してプラスかどうかを重視することが重要です。また、長期運用を目指す場合は、特別分配金の再投資や普通分配金比率の高い商品を検討し、複利効果を高める運用を心掛けるとよいでしょう。
普通分配金
普通分配金とは、投資信託が運用によって得た収益(利子や配当、売却益など)から投資家に分配される金額のうち、課税対象となる部分を指します。たとえば、投資信託が保有する株式の配当金や売却による利益が出た場合、それらが原資となって支払われる分配金が普通分配金です。この分配金は「所得」と見なされるため、受け取った投資家には20.315%の税率で源泉徴収が行われます。確定申告の際には、課税口座かどうかに応じて申告が必要な場合があります。普通分配金は、投資信託の運用が順調であることを示す一つのサインでもありますが、受け取るたびに課税されるため、再投資との比較で利回りに差が出ることもあります。
トータルリターン
トータルリターンとは、株式や債券、投資信託などの資産から得られる利益を、値上がり益(キャピタルゲイン)と分配金・利息・配当金などのインカムゲインを合わせて総合的に捉えた指標です。配当や利息をその都度再投資すると仮定して計算するのが一般的であり、単に価格変動だけを追う「価格リターン」と比べ、投資の実質的な運用成果をより正確に示します。このため、長期投資のパフォーマンス評価や異なる資産クラスの比較を行う際には、トータルリターンで見ることが重要です。
複利
複利とは、利息などの運用成果を元本に加え、その合計額を新たな元本として収益拡大を図る効果。利息が利息を生むメリットがあり、運用成果をその都度受け取る単利に比べ、高い収益を期待できるのが特徴。短期間では両者の差は小さいものの、期間が長くなるほどその差は大きくなる。
源泉分離課税
源泉分離課税は、所得の支払い時に所得税が源泉徴収され、その時点で納税が完了する方式です。個人が確定申告を行う必要はありません。 主な対象となる所得は以下の通りです - 利子所得: 預貯金の利子や公社債の利子など。 - 割引債の償還差益: 割引債の償還時に得られる利益。 - 金融類似商品の利益: 定期積金の給付補てん金や外貨建預貯金の為替差益など。 源泉分離課税の税率は、通常20.315%(所得税15.315%+住民税5%)です。