専門用語解説
処分信託方式(ブラインド・トラスト)
処分信託方式(ブラインド・トラスト)とは、株式や不動産などの資産を信頼できる第三者に信託し、その後の運用や管理に関して元の所有者(委託者)が一切関与せず、情報も受け取らない仕組みです。主に政治家や上場企業の経営者といった、職務上の判断が私的な財産に影響を及ぼすおそれのある立場の人々が、利益相反を回避するために活用します。
この信託では、独立した受託者が資産の売却や再投資を自由に行い、委託者には資産内容や運用状況の詳細が通知されません。これにより、委託者が意図せずとも自らの資産価値を高めるような判断を下してしまうリスクを抑えることができます。
ただし、処分信託方式(ブラインド・トラスト)は必ずしも完全に「資産状況からの遮断」を実現するわけではありません。信託の設立時点では委託者が保有していた資産を把握しており、たとえば特定業種への政策決定がそれら資産に影響を与える場合、形式的な遮断が十分でないと批判されることもあります。
米国では、政府高官や議員候補者などが利用する「Qualified Blind Trust(QBT)」という制度が存在し、政府倫理局(OGE)の認可を受けることで資産公開義務を軽減できます。QBTでは、受託者の独立性や資産売却の要件、秘密保持の厳格なルールが制度化されています。
一方、日本では法制度として処分信託方式(ブラインド・トラスト)が明文化されているわけではなく、利用実績も少ないのが現状です。導入には信託契約の設計や受託者との厳格な取り決めが求められ、設立・維持に高額なコストも発生します。また、税務上は信託資産の利益が最終的に委託者に帰属するため、課税対象となります。
このように、処分信託方式(ブラインド・トラスト)は「透明性と中立性を確保する制度」として高い意義を持ちますが、実効性を担保するためには法的枠組み、受託者の独立性、そして情報遮断の徹底が不可欠です。利用を検討する場合は、制度的背景と費用対効果を慎重に見極める必要があります。