みなし賃金
専門用語解説
みなし賃金
みなし賃金とは、実際に支払われた賃金ではなく、制度上の取り扱いのために賃金として扱われる金額を指します。
この用語は、雇用保険や労災保険などの制度において、給付額や保険関係を判定する場面で登場します。とくに、実際の賃金が存在しない、または把握しにくい状況でも制度を適用できるようにするために、「賃金があったものとして扱う金額」を設定する文脈で使われます。就業実態と制度運用のあいだをつなぐための調整概念として位置づけられる用語です。
誤解されやすい点として、みなし賃金が「実際に支払われる給料」や「会社が払うべき賃金の代替」と理解されることがあります。しかし、みなし賃金はあくまで制度上の計算や判定のために用いられる概念であり、労働の対価として現実に支払われる金額を意味するものではありません。給与明細に記載される賃金や、労働契約で定められた報酬とは性質が異なります。
また、「みなし」という言葉から、恣意的に決められた金額、あるいは実態とかけ離れた仮の数字と受け取られることもありますが、実際には制度の公平性や一貫性を保つための基準に基づいて設定されます。この点を理解せずに、実収入との比較だけで多い・少ないと評価してしまうと、制度の趣旨を取り違える原因になります。
みなし賃金を理解するうえで重要なのは、「お金の支払い」を説明する用語ではなく、「制度を適用するための前提条件」を示す用語だという点です。個人の収入状況を直接表す指標として使うのではなく、給付や保険関係がどのような考え方で処理されているかを読み解くための補助線として捉えることで、この用語は正しく機能します。みなし賃金は、実態と制度を接続するための調整概念として理解されるべきものです。