グラントー・トラスト型
専門用語解説
グラントー・トラスト型
グラントー・トラスト型とは、投資信託の一種ですが、一般的なETFやミューチュアルファンドとは異なり、保有資産をそのまま信託に預けるだけの非常にシンプルな仕組みです。たとえば、ビットコインや金などの「現物」をそのまま保有し、それに対する持分を投資家が証券として保有する形になります。
この構造の最大の特徴は、信託自体が利益を再投資したり、運用判断を下したりしない点です。信託が行うのは、資産を保有し、投資家の指示に応じて出し入れすることだけです。そのため、信託内での売買やレバレッジ、貸付といった活動は一切行われません。資産の保管と証券化に特化した構造であり、運用機能はありません。
税務上は「パススルー課税」が適用されます。つまり、信託が得た収益はそのまま投資家個人の所得として扱われ、信託自体には課税されません。この点が法人として課税される一般のファンドとは大きく異なります。たとえば米国では、投資家に「Grantor Trust Tax Statement」という書類が送付され、それをもとに各自で確定申告を行う必要があります。
この構造は特に、ビットコインや金など、価格連動性の高い現物資産を扱うETFで用いられます。現物をそのまま保有するため、理論上の価格とのズレ(乖離)がほとんどなく、透明性も高くなります。たとえば、IBIT(iShares Bitcoin Trust)はこの形式を採用しており、保有するビットコインの量とETFの発行済み口数が常に一致するように設計されています。
一方で、再投資や配当の受け取り、運用効率の追求といった柔軟な運用ができないことはデメリットといえます。また、投資家自身が申告処理を行う必要があるため、一定の税務知識や実務対応も求められます。
まとめると、グラントー・トラスト型は「現物をそのまま保有したい」「価格との連動性を重視したい」投資家にとって理にかなった構造ですが、再投資や高機能な運用を求める場合には適していないといえるでしょう。特に現物型ビットコインETFのような商品でそのメリットが最大限に発揮されます。