顕微授精(ICSI)
専門用語解説
顕微授精(ICSI)
顕微授精(ICSI)とは、採取した卵子の中に、精子を1個直接注入することで受精を成立させる生殖補助医療の手法を指します。
この用語は、不妊治療の中でも体外受精と並ぶ高度生殖医療の文脈で登場します。自然な受精過程では受精が成立しにくい場合に、受精というプロセスそのものを医療的に補助する方法として位置づけられており、「受精の段階」に直接介入する点が大きな特徴です。
顕微授精が問題になるのは、「受精しない=妊娠できない」という状況に直面したときです。精子の数や運動性、過去の体外受精で受精が成立しなかった経緯など、受精過程に課題があると考えられる場面で、この用語が判断の選択肢として浮上します。そのため、治療の段階が進んだ印象を持たれやすい言葉でもあります。
誤解されやすい点として、顕微授精を行えば妊娠の可能性が大きく高まる、あるいは結果が保証されるという思い込みがあります。実際には、顕微授精は「受精を成立させる方法」であり、その後の胚の発育や着床までを約束するものではありません。受精と妊娠は制度上も医学上も異なる段階であり、この違いを混同すると治療への期待値を誤って設定してしまいます。
また、顕微授精は特殊で例外的な治療と捉えられることがありますが、現在では体外受精の一手法として広く位置づけられています。この点を理解せず、「最後の手段」「特別なケース」とだけ認識すると、治療選択の全体像を見誤ることがあります。
顕微授精(ICSI)という用語を正しく捉えることは、不妊治療を単発の技術ではなく、妊娠成立までの工程の中で理解するための基準になります。この言葉は、受精という一段階に焦点を当てた医療的アプローチを示す概念として、判断の出発点となります。