PFIC課税(ピーエフアイシー課税)
専門用語解説
PFIC課税(ピーエフアイシー課税)
PFIC課税(ピーエフアイシー課税)とは、アメリカに長期間滞在して働く日本人が特に注意すべき、外国籍の投資ファンドに対して適用される米国独自の課税制度です。正式名称は「Passive Foreign Investment Company(受動的外国投資会社)課税」といい、米国外にある投資信託やETFが対象となります。
アメリカでは、外国法人のうち「収益の50%以上が配当や利子などの受動的所得」または「資産の50%以上が受動的収益を生む資産」で構成される会社をPFICとみなします。日本の公募投資信託やアイルランド籍・ルクセンブルク籍ETFの多くがこの条件に該当します。そのため、米国に居住しながら日本籍の投資信託を保有すると、PFIC課税の対象となる可能性が高くなります。
PFIC課税が問題となるのは、その課税方法が極めて不利で複雑なためです。通常の米国株や米国ETFのようにキャピタルゲイン課税で済むわけではなく、過去にさかのぼって利息を加算した高税率で課税されます。さらに、PFICを保有している間は毎年「IRS Form 8621(PFIC報告書)」の提出が必要です。申告が煩雑で、税務ソフトでは対応できないケースも多く、専門の税理士に依頼する必要が出てくることもあります。
このリスクを避けるには、渡米前に日本籍の投資信託や外国籍ETFを整理し、米国居住後は米国籍のETFや個別株で運用することが推奨されます。代表的な銘柄として、VTI(米国総合株式ETF)、VXUS(米国外株式ETF)、BND(米国債券ETF)などがあります。運用は米国ブローカー(Vanguard、Fidelity、Charles Schwabなど)で行い、403(b)やIRAといった税制優遇口座を優先的に活用するのが基本方針です。
帰国後に日本の居住者に戻るとPFIC課税の対象外になりますが、米国滞在中に発生した配当や売却益は米国課税の対象となります。そのため、渡航中の取引や分配金の履歴は正確に記録し、帰国後の税務処理に備えることが大切です。
PFIC課税は、アメリカで働く日本人にとって最も注意すべき税制リスクの一つです。日本の投資信託をそのまま持ち込むのではなく、出国前に資産構成を見直し、米国制度に適した形に移行しておくことが、安全で効率的な資産運用への第一歩となります。