非居住者になった後も日本の証券口座は維持できますか?
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2025/04/15 13:47
男性
40代
私は現在、海外赴任を控えており、日本で保有しているNISA口座や特定口座の扱いが気になっています。非居住者になると証券口座が使えなくなるという話も聞きますが、口座の維持は可能なのでしょうか?特に、すでに保有している資産がどうなるのか、売却や管理に支障が出ないか不安があります。証券会社によって対応が違うと聞くので、その点も含めて教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
日本の居住者から非居住者になると、証券口座の取り扱いにいくつか重要な制限が発生します。まず、多くの証券会社では、非居住者に対する新規の取引サービス提供を行っておらず、特定口座が利用できなくなるため、保有資産は原則として一般口座へ移されます。この結果、譲渡益などに対する税の自動計算や源泉徴収といった特定口座ならではのメリットがなくなり、確定申告の手間が増える可能性があります。
NISA口座については、非居住者となった後に新たな投資は原則としてできなくなりますが、出国前に「非課税口座継続適用届出書」を提出することで、最長5年間は保有中のNISA資産に対する非課税措置を維持することが可能です。ただし、この取り扱いについても証券会社によって対応が異なるため、事前の確認は欠かせません。
さらに、非居住者が引き続き口座を管理・売却するためには、証券会社によっては「常任代理人」の届出を求められる場合があります。この代理人は日本国内に居住する必要があり、納税管理や通知の受領を代行します。こうした手続きを怠ると、売却や資金移動が制限されるリスクがあるため、海外赴任前に必要な書類をそろえ、スムーズに管理できる体制を整えておくことが大切です。
帰国後には、再度日本の居住者としての資格を得ることで、NISA口座や特定口座を再開することが可能になります。赴任の前後で制度の恩恵に空白が生じないよう、出発前の準備と復帰後の手続きに十分な注意を払いましょう。
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証券口座
証券口座とは、株式や投資信託、債券、ETF(上場投資信託)などの金融商品を売買・保有するために証券会社に開設する口座のことを指します。証券口座には、株式の取引を行う「一般口座」や「特定口座」、税制優遇を受けられる「NISA口座」などがあり、投資目的に応じて選択できます。 証券口座を通じて、投資家は国内外の金融市場にアクセスし、資産運用を行うことが可能になります。特定口座(源泉徴収あり)を選択すると、証券会社が税金の計算と納税を代行してくれるため、確定申告の手間を省くことができます。一方、NISA口座では一定額までの投資利益が非課税となるメリットがあります。 なお、iDeCo(個人型確定拠出年金)口座も投資信託などを運用できる点では共通していますが、年金専用の制度であり、60歳まで引き出せないなどの制約があるため、一般的な証券口座とは区別されます。投資を始める際には、自身の投資目的や税制面を考慮し、適切な口座を選ぶことが重要です。
特定口座
上場株式等の譲渡益に対する所得税、住民税の納税を簡易な納税申告手続きで完了することができる制度。 特定口座には源泉徴収ありと源泉徴収なしの2種類あり、源泉徴収ありを選択した場合には、金融機関が所得税・住民税を源泉徴収し、代行して納付するため原則確定申告が不要となる。
譲渡益
譲渡益とは、株式や不動産などの資産を売却した際に得られる利益のことを指します。具体的には、売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いた金額が譲渡益となります。個人が株式を売却して利益を得た場合、通常は譲渡所得として申告分離課税(税率20.315%)の対象になります。不動産の場合、所有期間が5年以下の短期譲渡は税率39.63%、5年超の長期譲渡は20.315%の税率が適用されます。 また、投資信託の売却益も譲渡所得に分類されますが、分配金の一部は配当所得として課税される場合があります。税制上の優遇措置として、NISA(少額投資非課税制度)や居住用不動産の3000万円特別控除などがあり、適用条件を理解することが重要です。 資産運用においては、売却のタイミングや税制の影響を考慮し、適切な税対策を行うことが求められます。
NISA
NISAとは、「少額投資非課税制度(Nippon Individual Saving Account)」の略称で、日本に住む個人が一定額までの投資について、配当金や売却益などにかかる税金が非課税になる制度です。通常、株式や投資信託などで得られる利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座を使えばその税金がかからず、効率的に資産形成を行うことができます。2024年からは新しいNISA制度が始まり、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つを併用できる仕組みとなり、非課税期間も無期限化されました。年間の投資枠や口座の開設先は決められており、原則として1人1口座しか持てません。NISAは投資初心者にも利用しやすい制度として広く普及しており、長期的な資産形成を支援する国の税制優遇措置のひとつです。
非課税口座継続適用届出書
非課税口座継続適用届出書とは、NISA(少額投資非課税制度)などの非課税口座を翌年以降も引き続き利用したい場合に、金融機関を変更せずに同じ口座で継続する意思を税務署に示すための書類です。通常、NISA口座は1年ごとに非課税投資枠が設定されますが、その非課税枠を翌年も同じ金融機関で使いたい場合、この届出書を提出することで、改めて口座開設の手続きをせずに済む仕組みとなっています。この書類は、金融機関を通じて税務署に提出され、多くの場合は自動的に処理されますが、転居や氏名変更などがあった場合には届出が必要になることがあります。NISAを継続的に活用するうえでの基本的な手続きのひとつであり、制度をスムーズに利用するために重要な役割を果たします。