債券にも含み損があるんですか?
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2024/06/04 00:18
男性
60代
農林中央金庫が債券の含み損で赤字が膨らんでいるというニュースを見ました。調べてみると、地銀やアメリカの銀行も、債券の含み損の影響を大きく受けているということです。<br>債券投資を行うにあたって、株と違って額面価格が変化しないので含み損とは無縁と思っていたのですが、債券にも含み損があるのでしょうか?また、債券の含み損の影響は個人でも気にする必要がありますか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
債券でも市場価格が取得価格を下回れば「含み損(評価損)」が生じます。要因は大きく2つです。
①金利上昇―市場金利が上がると高利回りの新発債が有利になり、既発債の価格が下落
②発行体の信用力低下―業績悪化や格付け引き下げでデフォルトリスクが意識され、投資家がより高い利回りを求めるため価格が下落
銀行など機関投資家は四半期・年度決算で保有債券を時価評価し含み損を損失計上するため「赤字が拡大」と報じられますが、個人投資家は決算義務がなく満期保有すれば額面とクーポンを受け取れるため途中の評価損は確定しません。ただし途中売却やリバランスでは同じ価格変動リスクを負うので、金利動向と発行体の信用力を日頃から確かめ、償還まで持ち切るかどうかをあらかじめ計画しておくことが肝要です。
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含み損益
含み損益とは、保有している資産をまだ売却していない段階で発生している、見かけ上の利益や損失のことを指します。たとえば、購入時よりも価格が上がっている株を持っていれば「含み益」、逆に価格が下がっていれば「含み損」となります。 これはあくまで現在の評価額と購入額の差であり、実際に売却して現金化しない限り、確定した損益とはなりません。そのため、「含み」とは「まだ確定していない」という意味を含んでいます。 投資判断をする際には、この含み損益をもとに、売却のタイミングや資産配分の見直しを検討することがあります。また、税金は原則として実際に売却して利益が確定した時点で課税されるため、含み益があるだけでは課税対象にはなりません。資産運用において、現在の状況を把握する重要な指標のひとつです。
信用リスク(クレジットリスク)
信用リスクとは、貸し付けた資金や投資した債券について、契約どおりに元本や利息の支払いを受けられなくなる可能性を指します。具体的には、(1)企業の倒産や国家の債務不履行(いわゆるデフォルト)、(2)利払いや元本返済の遅延、(3)返済条件の不利な変更(債務再編=デット・リストラクチャリング)などが該当します。これらはいずれも投資元本の毀損や収益の減少につながるため、信用リスクの管理は債券投資の基礎として非常に重要です。 この信用リスクを定量的に評価する手段のひとつが、格付会社による信用格付けです。格付は通常、AAA(最上位)からD(デフォルト)までの等級で示され、投資家にとってのリスク水準をわかりやすく表します。たとえば、BBB格付けの5年債であれば、過去の統計に基づく累積デフォルト率はおおよそ1.5%前後とされています(S&Pグローバルのデータより)。ただし、格付はあくまで過去の情報に基づいた「静的な指標」であり、市場環境の急変に即応しにくい側面があります。 そのため、市場ではよりリアルタイムなリスク指標として、同年限の国債利回りとの差であるクレジットスプレッドが重視されます。これは「市場に織り込まれた信用リスク」として機能し、スプレッドが拡大している局面では、投資家がより高いリスクプレミアムを求めていることを意味します。さらに、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保険料率は、債務不履行リスクに加え、流動性やマクロ経済環境を反映した即時性の高い指標として、機関投資家の間で広く活用されています。 こうしたリスクに備えるうえでの基本は、ポートフォリオ全体の分散です。業種や地域、格付けの異なる債券を組み合わせることで、特定の発行体の信用悪化がポートフォリオ全体に与える影響を抑えることができます。なかでも、ハイイールド債や新興国債は高利回りで魅力的に見える一方で、信用力が低いため、景気後退時などには価格が大きく下落するリスクを抱えています。リスクを抑えたい局面では、投資適格債へのシフトやデュレーションの短縮、さらにCDSなどを活用した部分的なヘッジといった対策が有効です。 投資判断においては、「高い利回りは信用リスクの対価である」という原則を常に意識する必要があります。期待されるリターンが、想定される損失(デフォルト確率×損失率)や価格変動リスクに見合っているかどうか。こうした視点で冷静に比較検討を行うことが、長期的に安定した債券運用につながる第一歩となります。