資産が1億円を超えた場合、どのような資産運用のポイントや留意点を意識すべきでしょうか?
資産が1億円を超えた場合、どのような資産運用のポイントや留意点を意識すべきでしょうか?
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2025/10/15 09:13
男性
30代
資産が1億円を超えると、運用の目的やリスク許容度が人によって大きく異なってくると思います。これまでのように貯蓄中心でよいのか、分散投資や相続対策を意識すべきなのか迷っています。大きな資産を持つ人が注意すべき運用上のポイントや、資産を守りながら増やすために意識すべきことを教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
資産が1億円を超えた場合、最も重要なのは「資産をどう増やすか」よりも「どう守り、目的に沿って運用するか」です。まず、何のために資産を運用するのかという目的を明確にし、将来の支出や収入の見通しを具体的に整理します。そのうえで、どの程度のリターンを期待し、どこまでの下落なら許容できるのかを数値で決めておくことが大切です。これに基づいて投資方針書を作成し、判断の軸をブレさせない仕組みを整えます。
次に、資産を使う時期に応じて分ける「資金のバケツ」を意識します。生活費の1〜2年分は現金で確保し、近い将来に使う資金は値動きの小さい債券などで運用します。そして10年以上使わない長期資金については、世界株式などの成長資産に分散投資するのが基本です。このように区分することで、市場の急変時にも冷静に対応しやすくなります。
資産配分では、国内外の株式・債券・不動産・現金を組み合わせて分散を図ります。特に為替リスクへの対応が重要で、生活費が円で必要なら外貨資産の割合を決め、ヘッジの有無も方針化します。値動きの大きい不動産や未上場株、暗号資産などは資産全体の一部に抑え、年に1回程度リバランスしてバランスを保ちます。
商品を選ぶ際は、低コストで透明性の高いインデックス投資を中心にするのが基本です。信託報酬や販売手数料を必ず確認し、複雑で仕組みがわかりにくい商品は避けましょう。提案を受ける場合は、ベンチマークや費用控除後の想定リターン、下落リスクを数値で比較して判断します。
税金の最適化も欠かせません。NISAなどの非課税枠を活用しつつ、課税口座では損益通算や繰越控除を上手に使うことがポイントです。節税を目的にした保険や不動産スキームは、実質的な手取りや出口戦略を慎重に確認する必要があります。法人化や不動産活用による節税を考える場合は、税理士や弁護士を交えて総合的に検証するのが安全です。
また、相続や贈与など将来の資産承継にも早めに備えましょう。遺言書や財産目録を整備し、保険金受取人や口座の管理を明確にしておくことで、相続時のトラブルや税負担を軽減できます。認知機能の低下に備えて、家族信託や任意後見制度を検討するのも有効です。
最後に、運用体制の管理と記録を徹底します。証券会社を分散し、取引履歴や損益を定期的にチェックしながら、年に1回は全体の見直しを行います。必要に応じてIFAやCFPなどの専門家チームと連携し、セカンドオピニオンを取り入れるとより精度の高い判断ができます。
総じて、1億円以上の資産運用では「仕組み化」と「可視化」が成功の鍵です。目的・リスク・配分・税制・相続を一貫したルールで管理すれば、資産を守りながら安定的に増やすことができます。
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関連する専門用語
アセットアロケーション(資産配分)
アセットアロケーション(Asset allocation)とは、資産配分という意味で、資金を複数のアセットクラス(資産グループ)に投資することで、投資リスクを分散しながらリターンを獲得するための資産運用方法。アセットアロケーションは戦略的アセットアロケーションと戦術的アセットアロケーションの2つを組み合わせることで行われ、前者は中長期的に投資目的・リスク許容度・投資機関に基づいて資産配分を決定し、後者は短期的に投資対象の資産特性に基づいて資産配分を決定する。
為替リスク
為替リスクとは、異なる通貨間での為替レートの変動により、外貨建て資産の価値が変動し、損失が生じる可能性のあるリスクを指します。 たとえば、日本円で生活している投資家が米ドル建ての株式や債券に投資した場合、最終的なリターンは円とドルの為替レートに大きく左右されます。仮に投資先の価格が変わらなくても、円高が進むと、日本円に換算した際の資産価値が目減りしてしまうことがあります。反対に、円安が進めば、為替差益によって収益が増える場合もあります。 為替リスクは、外国株式、外貨建て債券、海外不動産、グローバルファンドなど、外貨に関わるすべての資産に存在する基本的なリスクです。 対策としては、為替ヘッジ付きの商品を選ぶ、複数の通貨や地域に分散して投資する、長期的な視点で資産を保有するなどの方法があります。海外資産に投資する際は、リターンだけでなく、為替リスクの存在も十分に理解しておくことが大切です。
インデックス投資(指数投資)
インデックス投資(指数投資)とは、特定の株価指数(インデックス)と同じ動きを目指して投資する方法のことを指します。たとえば、日経平均株価やS&P500といった市場全体の動きを示す指数に連動するように、同じ銘柄を同じ比率で組み入れることで、指数全体の成績を再現しようとする投資手法です。個別の銘柄を選ぶのではなく、幅広い銘柄に分散して投資するため、リスクが抑えられやすく、長期的な資産形成に向いているとされています。運用コストも比較的低く、初心者にも始めやすいのが特徴です。近年では、ETFやインデックスファンドを通じて指数投資を行う投資家が増えており、資産運用の基本的な選択肢の一つとなっています。
損益通算
投資で発生した利益と損失を相殺することで、課税対象となる利益を減らす仕組みのことです。たとえば、株式投資で50万円の利益が出た一方、別の取引で30万円の損失が発生した場合、損益通算を行うことで、課税対象となる利益は50万円から30万円を引いた20万円になります。この仕組みにより、納める税金を減らすことが可能です。 損益通算が適用されるのは、同じ「所得区分」の中でのみです。たとえば、株式や投資信託の譲渡損益や配当金などは「株式等の譲渡所得等」に分類され、この範囲内で損益通算が可能です。ただし、不動産所得や給与所得など、異なる所得区分間では基本的に通算できません。 さらに、株式投資の損失は、損益通算後も控除しきれない場合、翌年以降最長3年間繰り越して他の利益と相殺できます。これを「繰越控除」と呼び、投資初心者にとっても節税に役立つ重要なポイントです。
家族信託
家族信託とは、ご自身の財産を信頼できる家族に託し、その管理や運用を契約で定めた目的に沿って行ってもらう仕組みです。委託者さまは公正証書で信託契約を締結し、現金や不動産、株式などを信託財産として受託者名義に移転します。これにより、たとえ将来認知症を発症されても資産が凍結されず、受益者さまへ生活費や医療費を継続して届けられる点が大きなメリットです。相続発生後は受益権そのものが相続対象となるため、遺産分割協議を簡素化できる効果も期待できます。 もっとも、家族信託には手続きと費用が伴います。不動産を組み入れる場合は信託登記が必要となり、登録免許税や司法書士報酬、公証人手数料が発生いたします。また、受託者さまは信託口座の開設、収支報告書の作成、信託財産とご自身の財産の分別管理など、煩雑な事務を担う義務があります。税務面では契約締結時に贈与税が課税されることは原則ございませんが、信託財産を売却した際の譲渡所得税や信託終了時の相続税は避けられません。そのため、成年後見制度や遺言信託と比較しながら、費用対効果や家族の負担を総合的に検討することが大切です。
任意後見
任意後見とは、自分の判断能力が低下する将来に備えて、あらかじめ信頼できる人を後見人として選び、公正証書で契約を結んでおく制度のことをいいます。これは「元気なうち」に本人の意思で準備できる後見制度であり、判断能力が実際に低下したときに、家庭裁判所の監督のもとで任意後見人が正式に活動を開始します。 任意後見人は、本人の財産管理や生活支援などを本人の希望に沿って行うことができるため、自分らしい生活を維持するための手段として注目されています。法定後見と違い、自分で「誰に、何を任せるか」を決めておける点が特徴です。高齢化や認知症のリスクが高まる中で、資産や生活の管理を将来にわたって安心して託すための、重要な準備の一つです。初心者にとっても、「自分の老後を自分で選ぶ」ための有効な制度として知っておく価値があります。




