専門用語解説
みなし譲渡所得税
みなし譲渡所得税とは、実際には財産を売却していなくても、税務上「売却した」とみなされ、その含み益に課税される所得税のことです。将来その資産から得られる利益に課税できなくなる恐れがある場合に適用され、課税の空白を防ぐ役割を持っています。
代表的なケースとしては、国外転出時課税(いわゆる出国税)が挙げられます。日本居住者が多額の株式や有価証券を保有したまま海外に移住する際、売却していなくてもその時点で時価で譲渡したとみなされ、含み益に対して所得税が課されます。
また、相続の限定承認を選んだ場合にも、被相続人が死亡時に保有していた資産をすべて時価で譲渡したとみなす規定があり、不動産や株式などに含み益があれば譲渡所得税が発生します。結果として、相続人が受け取る財産はさらに目減りする可能性があります。
このほか、負担付贈与や離婚時の財産分与で不動産を移転する場合、現物で代償分割を行う場合、さらには個人から法人への低額譲渡や現物出資なども、時価で譲渡したとみなされ課税が行われる典型的な事例です。最近では暗号資産を用いた決済や暗号資産同士の交換も、みなし譲渡として所得計上が必要になります。
資産運用や相続対策を考える際には、このような「実際に売却していないのに課税される局面」があることを理解し、海外移住や不動産の処分、相続方法の選択などを検討する際には専門家に相談して事前にシミュレーションしておくことが重要です。