専門用語解説
正規分布
正規分布とは、資産リターンの予測やリスク管理の前提となる確率分布モデルの一つです。データが平均値を中心に左右対称に分布し、山型のカーブ(いわゆる「ベルカーブ」)を描くのが特徴です。多くの自然現象や経済データに当てはまりやすく、金融工学においても「投資リターンは正規分布に近似できる」との前提で分析やモデリングが行われることがあります。
たとえば、ある資産のリターンが正規分布に従うと仮定した場合、「平均±1標準偏差」の範囲に約68%のリターンが収まると推定されます。つまり、極端な上振れ・下振れの発生確率は低く、大半のパフォーマンスは一定の範囲に集中すると考えられるのです。この性質は、VaR(バリュー・アット・リスク)やポートフォリオ分散効果の定量評価にも活用されます。
ただし、現実の市場ではリターン分布が“正規分布に従わない”ケースも多く、特に株式やオルタナティブ資産では「歪み(スキュー)」や「裾の重さ(ファットテール)」が顕著に見られます。これにより、理論値以上の大損失(テールリスク)を被ることもあり得るため、正規分布を鵜呑みにしたリスク判断には注意が必要です。
資産運用においては、正規分布をあくまで「基準モデル」として捉えつつ、市場実態に応じた補正や代替モデル(例えばコピュラ関数やロジスティック分布)も柔軟に併用していくことが求められます。