専門用語解説
VWAP(出来高加重平均株価/Volume-Weighted Average Price)
VWAP(出来高加重平均株価)は、一定期間に成立した取引価格を出来高で重み付けし、価格×出来高の総和を総出来高で割って算出する平均値です。出来高の多い価格ほど強く反映されるため、その期間に市場で実際に売買された水準を端的に示します。ただしこれは市場全体の平均取引単価に近い指標であって、投資家ごとの平均購入価格(自分が払った加重平均単価)とは異なります。
実務では、企業が自社株買いを行う際に当日のVWAP付近で執行できたかを社内ガイドラインで確認したり、機関投資家同士のブロックトレードで「前場VWAPマイナス〇%」と値決めしたりする場面で参照されます。公募増資や売出しでは直近数日間のVWAP対比でディスカウント率が設定され、ETFの創設・解約やインデックス組み替えの巨額発注でもVWAP近辺を基準に発注することで指数追随誤差を抑えます。IPO直後の株価安定操作、デリバティブや仕組債の決済価格、運用会社が注文執行コストを評価する取引コスト分析(TCA)、さらには規制当局が市場操作を監視する際など、VWAPは「公正水準」として幅広く活用されています。TOB(株式公開買付け)の買付価格を決める際にも、過去1~3か月のVWAP、終値平均、同業比較などと並べてプレミアム水準を検討するための参考値となります。
個人投資家にとっては、買値が当日のVWAPより低ければ市場平均より有利に購入できた可能性が高く、売値がVWAPより高ければ平均より好条件で売却できたと判断しやすい指標です。大口取引や資金調達イベントで需給が偏る局面でも、VWAPを確認しておくことで価格形成の偏りや執行コストを客観的に把握できます。