法人名義でも損出しによる節税は可能ですか?
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2025/04/04 20:06
男性
60代
法人の余剰資金を活用して、有価証券の損出しによる節税を検討しています。法人でもこのような戦略は実行可能でしょうか?また、個人とは違った注意点があれば教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
法人でも、有価証券の含み損を確定させて課税所得を圧縮する「損出し」は、有効な節税手段として活用できます。決算期を見据えて含み損のある株式などを一時的に売却し、その損失を当期の損金に計上することで、法人税の負担軽減が可能です。
ただし、法人には個人とは異なる注意点があります。たとえば、取得原価の算定方法として「移動平均法」や「総平均法」が採用されるため、売却による損益の反映時期が会計処理によって変わる点に留意が必要です。また、損出しを目的とした短期の売却・買戻しが形式的な取引とみなされると、税務上その損失が否認されるリスクもあります。取引の実態や意図が明確に説明できるよう、帳簿や証拠書類の整備も求められます。
さらに、法人では繰越欠損金の利用、受取配当の益金不算入制度など、独自の税務制度が影響します。損出しを検討する際には、これらを踏まえて総合的に判断する必要があります。
節税効果を最大限に引き出すためには、顧問税理士や資産運用に精通した専門家と連携し、自社の状況に合った実務的かつ税務上問題のない対応を図ることが重要です。
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損出し
損出しとは、保有している投資商品をあえて損が出ているタイミングで売却し、その損失を確定させることで、税金を軽減するための手法です。投資で得た利益には税金がかかりますが、同じ年に出た損失と相殺することで、課税される利益を減らすことができます。たとえば、ある株で10万円の利益が出た場合に、別の株で5万円の損失を損出しすると、実質的に5万円の利益に対してだけ課税される仕組みになります。売却後に同じ銘柄や類似の銘柄を買い直すこともできますが、税務上のルールには注意が必要です。節税を意識した賢い投資戦略のひとつとして活用されています。
有価証券
有価証券とは、財産的価値を裏づける権利が紙や電子データそのものに具体化された証券類を指します。金融商品取引法第2条では「第一項有価証券(株式・社債など)」「第二項有価証券(投資信託受益証券など)」に分類され、さらに商法や手形法でも定義が設けられています。現在は株券不発行制度や「ほふり(証券保管振替機構)」による電子化が進み、一般の投資家が実物の証券を受け取る場面はほとんどありません。 有価証券は、大きく ①資金調達・投資対象としての証券 と ②決済・信用補完を目的とする証券 に分けられます。前者には株式、社債、国債、投資信託受益証券、ETF(Exchange Traded Fund〈上場投資信託〉)などが含まれ、保有者は配当金や利息、値上がり益を得る可能性があります。後者には約束手形や小切手が該当し、主に企業間の支払い手段として流通しますが、一般的な投資対象にはなりにくい点が前者と大きく異なります。 企業や政府は有価証券を発行して広く資金を集め、投資家は将来得られるリターンを期待して取得します。その価格は市場の需給、金利水準、発行体の信用力などで日々変動するため、価格変動リスクと引き換えに収益機会を得られることが資産運用上の魅力です。ただし、譲渡益や配当・利息には原則として20.315%の申告分離課税がかかり、上場株式や公募投信は時価評価が会計基準でも義務づけられるなど、税務・会計・金融規制の面でも厳格なルールが設定されています。 このように有価証券は、金融市場を通じて資金を循環させる中心的なインフラであり、個人投資家にとっては資産形成の主軸となる一方で、法律・税務・会計の枠組みによって権利が保護され、リスク管理が図られている点が大きな特徴です。
含み損益
含み損益とは、保有している資産をまだ売却していない段階で発生している、見かけ上の利益や損失のことを指します。たとえば、購入時よりも価格が上がっている株を持っていれば「含み益」、逆に価格が下がっていれば「含み損」となります。 これはあくまで現在の評価額と購入額の差であり、実際に売却して現金化しない限り、確定した損益とはなりません。そのため、「含み」とは「まだ確定していない」という意味を含んでいます。 投資判断をする際には、この含み損益をもとに、売却のタイミングや資産配分の見直しを検討することがあります。また、税金は原則として実際に売却して利益が確定した時点で課税されるため、含み益があるだけでは課税対象にはなりません。資産運用において、現在の状況を把握する重要な指標のひとつです。
課税所得
課税所得とは、個人や法人が一定期間内に得た収入から、法律に基づいて認められた各種控除や必要経費を差し引いた後の金額を指します。この金額に対して所得税や法人税などの税率が適用され、実際に納税すべき税額が計算されます。課税所得の計算方法は国や地域によって異なるため、具体的な控除項目や税率もそれに応じて変わります。 課税所得を計算する際には、まず総収入から非課税所得を除外します。その後、必要経費や特定の控除(例えば、標準控除、医療費控除、教育費控除など)を適用して課税対象となる所得を求めます。これにより、公正かつ実情に即した税額を算出し、納税者が収入に見合った税金を支払うことが可能となります。 課税所得の正確な把握と計算は、個人や企業の税務管理において非常に重要です。税法の変更に応じて控除額や計算方法が更新されることが多いため、適切な税務知識を持つこと、または専門の税理士などの助けを借りることが望ましいです。これにより、適切な税金の納付を確実に行い、法的な問題を避けることができます。
移動平均法
移動平均法とは、過去の一定期間の価格データの平均値を算出し、それを線でつないでいくことで、価格の流れやトレンドを視覚的に把握するための手法です。株式や為替などのチャート分析でよく使われており、たとえば「5日移動平均線」や「25日移動平均線」といった形で表示されます。この方法を使うことで、短期的な値動きに左右されず、価格の方向性や安定感を見極める助けになります。移動平均線が上向きなら上昇トレンド、下向きなら下落トレンドといったように、投資のタイミングを判断する材料として使われることが多いです。ただし、過去のデータに基づくため、変化に対して反応が遅れるという特徴もあります。そのため、他の指標と組み合わせて使うことが一般的です。
総平均法
総平均法とは、複数回にわたって購入した同じ種類の資産の取得価格を合計し、全体の平均購入単価を求める計算方法のことです。たとえば、株式を異なる価格で何度かに分けて購入した場合、その合計金額を合計株数で割って「平均の取得単価」を出すことができます。これによって、売却時に利益や損失を正確に計算できるようになります。日本の税制では、一般的な課税口座における株式や投資信託の売買損益を計算する際に、この総平均法が採用されています。常に平均単価が使われるため、個別の購入タイミングによる価格の違いを気にせずに済みますが、短期の売買を頻繁に行う投資家にとっては、タイミングごとの影響が見えづらくなるという面もあります。