外貨建て債券って、相続する際にどんな点に注意が必要ですか?
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2025/04/09 10:15
男性
40代
父の相続を見据えて外貨建ての資産を検討しているのですが、いざ相続する場面になったとき、外貨建て債券はどんな扱いになるのか気になっています。評価方法や手続きの煩雑さ、相続人側で困るような点があれば事前に知っておきたいです。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
外貨建て債券を相続する際には、以下のような点に注意が必要です。
まず、相続税評価については原則として、相続発生日の市場価格を外貨ベースで評価し、それを相続発生日の国税庁が定めるTTM(仲値)の為替レートで円換算します。評価に必要な市場価格が容易に入手できない債券(例えば非上場債券や流動性の低い新興国の債券など)は、評価額の算出に手間がかかる場合があります。
また、相続人側が外貨建て債券を受け取る際には、外貨で受け渡しが行われるため、相続人自身が外貨口座を開設する必要があります。特に海外発行の債券の場合は、証券の名義変更や相続手続きのために海外から取り寄せる書類が外国語で書かれており、日本語訳や公証手続き(アポスティーユ)が必要になるケースがあり、手続きが複雑化します。
さらに、相続後に債券を売却する場合、譲渡益課税の基準となる取得価格が「相続時点の評価額」になるため、取得した際より円安が進んだ場合などには、想定以上の譲渡益が生じ、課税対象となる可能性もあります。
また、相続財産の分割の際にも、為替変動により評価額が大きく変動する可能性があるため、相続人間で公平な分割が難しくなるリスクがあります。
これらの理由から、外貨建て債券を相続財産に組み入れる際には、事前に債券の詳細な情報(種類、発行市場、保管方法、評価方法)を整理し、相続人にもしっかり理解してもらう必要があります。日本国内で発行された、日本の制度に準拠した債券は相続手続きが比較的スムーズに進むこともありますので、資産を選ぶ際にはこうした観点を踏まえるとよいでしょう。
なお、外貨建て債券を含む資産を検討する際は、税理士や資産運用の専門家に事前に相談し、円滑な相続手続きのための準備をしておくことを強くお勧めいたします。
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TTM(仲値)とは、「Telegraphic Transfer Middle Rate」の略で、日本の銀行などが外国為替取引を行う際の基準となる為替レートのことです。買うときのレート(TTS)と売るときのレート(TTB)の中間に位置するレートで、主にその日の午前10時頃に各金融機関が決定します。 実際に外貨を売買する際にはこの仲値に手数料が上乗せされたTTSやTTBが使われますが、ニュースや金融情報で「1ドル=○○円」と表示されるのは、一般的にこのTTMを指しています。投資や海外送金、外貨口座の運用などで為替の動きを知るうえで、基準となる重要な指標です。
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外貨口座とは、日本円ではなく、米ドルやユーロ、豪ドルなどの外国通貨でお金を預けたり引き出したりできる銀行口座のことです。通常の日本円口座とは異なり、為替レートに応じて通貨の価値が変動するため、円高・円安の影響を受ける特徴があります。 外貨口座を使うことで、為替手数料を抑えて外貨での資産管理がしやすくなり、外貨建ての債券や投資信託などを購入する際にも便利です。また、海外旅行や留学、海外送金の準備としても活用されることがあります。ただし、円に戻すときには為替の動き次第で損益が出る可能性があるため、運用や活用の目的をしっかり持って使うことが大切です。
アポスティーユ(公証手続き)
アポスティーユとは、日本の公的文書を外国で正式な書類として認めてもらうための認証手続きの一つです。特に相続や資産運用に関わる手続きで、外国の金融機関や役所に日本の書類を提出する際に必要になることがあります。 この手続きは、「ハーグ条約(正式には『外国公文書の認証を不要とする条約』)」に加盟している国同士で用いられ、日本で発行された書類に対して法務局や外務省がアポスティーユを付与することで、その書類が正当であると国際的に証明されます。通常の公証に加え、アポスティーユを取得することで、外国でもスムーズに法的効力を持たせることができるため、海外資産の相続や管理において重要な役割を果たします。
譲渡益
譲渡益とは、株式や不動産などの資産を売却した際に得られる利益のことを指します。具体的には、売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いた金額が譲渡益となります。個人が株式を売却して利益を得た場合、通常は譲渡所得として申告分離課税(税率20.315%)の対象になります。不動産の場合、所有期間が5年以下の短期譲渡は税率39.63%、5年超の長期譲渡は20.315%の税率が適用されます。 また、投資信託の売却益も譲渡所得に分類されますが、分配金の一部は配当所得として課税される場合があります。税制上の優遇措置として、NISA(少額投資非課税制度)や居住用不動産の3000万円特別控除などがあり、適用条件を理解することが重要です。 資産運用においては、売却のタイミングや税制の影響を考慮し、適切な税対策を行うことが求められます。