外資系と国内系の格付機関で、同じ債券や企業に対する評価に差が生じるのはなぜでしょうか?
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2025/06/02 16:08
男性
60代
米系より国内格付け機関の方が、常に1〜2段階高く評価することが多いと聞きます。すでに適債基準は廃止されたのに、こうした格付け差が残るのはなぜでしょうか?評価手法だけでなく、日本固有の市場構造や歴史的な背景も関係しているのでしょうか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
1990年代まで、国内の公募債には「BBB相当以上」の格付けが必要とされており、これが「適債基準」として運用されていました。実際には、国内の格付機関ではA格以上、米系ではBBB格が発行の目安とされていたため、長年の慣行として、平均で約3段階の格付け差が定着することになりました。
2004年にこの基準は撤廃され、評価モデルの国際化も進みましたが、現在でも国内系の格付けが1段階ほど高く出るケースは少なくありません。
この違いの背景には、格付け時に重視する観点の違いがあります。国内の格付機関は、日本の債券市場の安定性や、政府・メインバンクによる支援の可能性といった「日本特有の安全要因」を重視する傾向があります。一方、米系などの海外格付機関は、国際的な水準で財務構造やガバナンスの質を評価するため、より厳格な判断となりやすいのです。
投資判断では、海外系の格付けを「最低ライン」、国内系を「上限」とする幅を持った見方を採用することで、過度な楽観や悲観に陥るリスクを避けやすくなります。特に、外債発行やクロスボーダーM&Aなど国際的な視点が求められる場面では、海外系の格付けの方が市場の評価に近いという点にも注意が必要です。
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公募債
公募債とは、多くの投資家を対象に広く募集される形式で発行される債券のことをいいます。企業や地方自治体、国などが資金調達のために発行し、証券会社などを通じて一般の投資家に販売されます。特徴としては、不特定多数に対して情報が公開されるため、透明性が高く、誰でも購入しやすいという点があります。公募債は、企業などの資金調達手段としてよく使われており、社債や地方債、国債など、さまざまな種類があります。投資初心者でも比較的安心して購入しやすい債券として、資産運用の一環として活用されることが多いです。
格付機関
格付機関とは、企業や国、債券などの信用力を評価し、「信用格付」と呼ばれる等級をつける専門の機関のことをいいます。信用格付は、投資家がその企業や国が借りたお金をきちんと返せるかどうかを判断するための重要な指標となります。たとえば、格付が高ければ「信用度が高く、返済の可能性が大きい」とみなされ、逆に格付が低ければ「リスクが高い」と判断されることになります。代表的な格付機関には、ムーディーズ、スタンダード&プアーズ(S&P)、フィッチ・レーティングスなどがあります。投資初心者にとっても、債券や企業の安全性を見極めるうえで、格付機関の評価はとても参考になります。
債券
債券(サイケン、英語表記:Bond)とは、発行者が投資家に対して将来一定の金額を支払うことを約束する金融商品です。 国や地方自治体、企業などが資金を調達する目的で発行し、投資家はこれを購入することで、定期的に利息(クーポン)を受け取ります。満期が来ると、投資した本金が返済されます。 債券はリスクが比較的低く、安定した収入を求める投資家に選ばれることが多いです。 また、市場で自由に売買が可能であるため、流動性も確保されています。債券市場は世界的にも広がりを見せており、多様な投資戦略に利用されています。
外債(外国債券)
外債とは、日本の投資家から見て、外国の政府や企業などが発行する債券のことを指します。発行される場所や通貨はさまざまで、たとえばアメリカの企業が米ドルで発行する債券や、ヨーロッパの政府がユーロで発行する債券などが含まれます。 外債は、国内の債券よりも高い利回りが期待できる場合がありますが、為替リスクや信用リスク、政治・経済の変動など、海外特有のリスクも伴います。投資する際には、その国や発行体の信用力、為替相場の動向をよく確認することが大切です。うまく活用すれば、資産運用の幅を広げ、通貨や地域の分散を図る手段として有効です。
M&A(Mergers and Acquisitions)
M&A(エムアンドエー)とは、「Mergers and Acquisitions」の略で、企業の合併(Mergers)や買収(Acquisitions)を指します。合併は2つ以上の企業が統合し1つの会社になることで、買収はある企業が別の企業の株式や資産を取得し、経営権を握ることを意味します。 M&Aは、企業が事業規模を拡大したり、新規市場に参入したりする手段として活用されます。特に成長戦略の一環として、新技術の獲得や競争力の向上を目的に行われることが多く、業界再編や経営効率の向上にも寄与します。また、M&Aは企業の合併・買収だけでなく、業務提携などの戦略的パートナーシップを含めて語られることもあります。 M&Aの手法には、友好的買収と敵対的買収があり、友好的買収では買収先企業の同意のもとで取引が進められますが、敵対的買収では買収先の同意なしに進められる場合があります。さらに、株式交換や事業譲渡、経営統合など、さまざまな形態が存在します。 特にグローバル企業や成長企業にとって、M&Aは競争力を強化する重要な経営戦略の一つです。しかし、企業文化の違いや統合後のシナジー効果の実現といった課題も伴うため、慎重な戦略策定と適切なデューデリジェンスが求められます。
投資判断
投資家が株式や債券、不動産などの資産を売買または保有するかどうかを決定するプロセスです。企業の財務状況や業績見通し、業界トレンド、マクロ経済指標など、さまざまな情報を分析し、リスクとリターンのバランスを考慮しながら判断を下します。 短期的な値動きよりも企業の長期的成長性を重視する投資スタイルもあれば、テクニカル分析による短期売買を中心とする投資家も存在します。投資家自身のリスク許容度や資金計画、投資期間などによって最適な判断は異なるため、目的と手法を明確にすることが大切です。