老齢年金と遺族年金は一緒に受け取れますか?差額支給とはなんですか?
回答受付中
0
2025/05/30 14:26
男性
60代
年金の併給には制限があると聞きましたが、具体的にどの組み合わせが全額受給できて、どれが差額調整の対象になるのかがよく分かりません。特に老齢厚生年金と遺族厚生年金の関係や、繰上げ・繰下げによる影響について詳しく知りたいです。総受給額に差が出るという点も含めて、注意すべきポイントを教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
公的年金には、「同一人物が同一種類の年金を2つ以上同時に受け取ることはできない」という併給禁止の原則があります。ただし、年金の種類が異なれば同時に受け取ることができるため、たとえば65歳以降によく見られる「老齢基礎年金」と「遺族厚生年金」の組み合わせは、いずれも全額併給が可能で、金額の調整も行われません。
一方で注意が必要なのは、「老齢厚生年金」と「遺族厚生年金」のような、同じ種類である厚生年金どうしの組み合わせです。この場合は「差額支給(併給調整)」が行われ、以下のように処理されます。
老齢厚生年金の額が遺族厚生年金を上回る場合は、老齢厚生年金のみが支給されます。 遺族厚生年金の額のほうが多い場合は、老齢厚生年金との差額分が遺族厚生年金として支給されます。
また、60歳から繰上げ受給していた老齢厚生年金がある場合でも、65歳に達した時点であらためて差額の再判定が行われ、金額が逆転していれば、その時点から遺族厚生年金が支給されます。
なお、老齢基礎年金を繰上げ受給しても遺族厚生年金に直接影響はありませんが、併給できる老齢基礎年金の金額が減るため、総受給額が小さくなる傾向があります。特に、長期間受け取ることを前提とした場合には、繰上げ・繰下げの影響が大きくなるため注意が必要です。
年金受給の最適化を図るには、ご自身と配偶者の平均標準報酬額、加入月数、繰上げ・繰下げの割合などを入力できるシミュレーターを活用し、複数パターンで総受取額を比較することが重要です。日本年金機構が提供する「ねんきんネット」の詳細試算や、年金事務所でのライフプラン相談を通じて、就労収入・税金・社会保険料を含めたキャッシュフロー全体で判断することが、実務的な最適解に近づくポイントです。
とはいえ、制度の理解や試算は複雑になりがちです。受給の選択や併給の判断に不安がある方は、「投資のコンシェルジュ」の無料相談をぜひご活用ください。中立的な専門家が、あなたの状況に合わせた受給プランやライフプラン全体の設計をお手伝いします。
関連記事
関連質問
関連する専門用語
老齢基礎年金
老齢基礎年金とは、日本の公的年金制度の一つで、老後の最低限の生活を支えることを目的とした年金です。一定の加入期間を満たした人が、原則として65歳から受給できます。 受給資格を得るためには、国民年金の保険料納付済期間、免除期間、合算対象期間(カラ期間)を合計して10年以上の加入期間が必要です。年金額は、20歳から60歳までの40年間(480月)にわたる国民年金の加入期間に応じて決まり、満額受給には480月分の保険料納付が必要です。納付期間が不足すると、その分減額されます。 また、年金額は毎年の物価や賃金水準に応じて見直しされます。繰上げ受給(60~64歳)を選択すると減額され、繰下げ受給(66~75歳)を選択すると増額される仕組みになっています。 老齢基礎年金は、自営業者、フリーランス、会社員、公務員を問わず、日本国内に住むすべての人が加入する仕組みとなっており、老後の基本的な生活を支える重要な制度の一つです。
遺族厚生年金
遺族厚生年金とは、厚生年金に加入していた人が亡くなった場合に、その遺族に支給される公的年金のことです。対象となるのは、主に配偶者(特に一定年齢以上の妻)、子ども、父母、孫、祖父母などで、生計を同じくしていたことが条件とされます。 遺族基礎年金が子どもがいる世帯を中心に支給されるのに対し、遺族厚生年金は子どもがいなくても一定の条件を満たせば支給されるため、対象範囲がやや広いのが特徴です。支給額は、亡くなった人の厚生年金の納付記録や報酬額に基づいて計算されるため、個人差があります。また、遺族基礎年金と併用して受け取れる場合もあり、特に現役世代の死亡リスクに備える重要な保障制度のひとつとされています。家計の柱を失ったときに、遺族の生活を長期にわたって支える仕組みです。
老齢厚生年金
老齢厚生年金とは、会社員や公務員などが厚生年金保険に加入していた期間に応じて、原則65歳から受け取ることができる公的年金です。この年金は、基礎年金である「老齢基礎年金」に上乗せされる形で支給され、収入に比例して金額が決まる仕組みになっています。つまり、働いていたときの給与が高く、加入期間が長いほど受け取れる年金額も多くなります。また、一定の要件を満たせば、配偶者などに加算される「加給年金」も含まれることがあります。老後の生活をより安定させるための重要な柱となる年金です。
併給
併給とは、複数の年金や給付を同時に受け取ることを指す言葉です。ただし、実際にはすべての年金を自由に重ねて受け取れるわけではなく、併給が制限されるケースが多くあります。たとえば、老齢年金と遺族年金、あるいは障害年金と遺族年金など、いくつかの年金が重なる場合には、「どちらか一方を選ぶ」「一部のみ受け取る」といった取り扱いがされます。そのため、自分にどの年金が適用され、どのような組み合わせが可能かを事前に確認することが重要です。制度を正しく理解することで、損をせずに年金を活用することができます。
ねんきんネット
ねんきんネットとは、日本年金機構が提供しているオンラインサービスで、自分の年金に関する情報をインターネット上で確認できる仕組みです。年金の加入履歴や将来の年金受取見込み額、保険料の納付状況などを、自宅のパソコンやスマートフォンからいつでも確認できます。 ログインには基礎年金番号やマイナンバーが必要で、安全性にも配慮されています。紙の通知だけではわかりにくかった年金情報を自分で管理できるようになるため、資産運用や老後の生活設計を考えるうえで非常に便利なツールです。
公的年金
公的年金には「国民年金」と「厚生年金」の2種類があり、高齢者や障害者、遺族が生活を支えるための制度です。この制度は、現役で働く人たちが納めた保険料をもとに、年金受給者に支給する「世代間扶養」の仕組みで成り立っています。 国民年金は、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する制度です。保険料を一定期間(原則10年以上)納めると、65歳から老齢基礎年金を受け取ることができます。また、障害を負った場合や生計を支える人が亡くなった場合には、障害基礎年金や遺族基礎年金を受け取ることができます。 厚生年金は、会社員や公務員が対象の制度で、国民年金に追加で加入する形になります。保険料は給与に応じて決まり、支払った分に応じて将来の年金額も増えます。そのため、厚生年金に加入している人は、国民年金だけの人よりも多くの年金を受け取ることができ、老齢厚生年金のほかに、障害厚生年金や遺族厚生年金もあります。 公的年金の目的は、老後の生活を支えるだけでなく、病気や事故で障害を負った人や、家計を支える人を亡くした遺族を支援することにもあります。財源は、加入者が納める保険料と税金の一部で成り立っており、現役世代が高齢者を支える「賦課方式」を採用しています。しかし、少子高齢化が進むことで、この仕組みを今後も維持していくことが課題となっています。公的年金は、すべての国民が支え合い、老後の安心を確保するための重要な制度です。