公的年金の遺族年金は誰がどの条件で受け取れますか?
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2025/05/30 14:33
男性
60代
公的年金の遺族年金にはどのような種類があり、誰がどのような条件で受け取れるのでしょうか?また、国民年金と厚生年金では支給対象や金額にどのような違いがあるのか、注意すべき点も含めて教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
公的年金の遺族給付は、国民年金を土台とする「1階部分」と、厚生年金を上乗せとする「2階部分」という二層構造で設計されています。
まず1階の遺族基礎年金は、国民年金の被保険者が亡くなった場合、あるいは60歳以上65歳未満で国内に住んでいた元被保険者や、老齢基礎年金の受給資格期間(原則10年以上)を満たしていた方が亡くなった場合に支給されます。ただし、保険料納付要件として、死亡日の前々月までの納付済(免除を含む)期間が全加入期間の3分の2以上あることが必要です。例外として、直近1年間に未納がなければ支給される特例もあります。
受給できる遺族は、18歳年度末まで(障害のある場合は20歳未満)の子を養育している配偶者、またはその子本人に限られます。年金額は定額制で、2024年度は年額81万6,000円に加え、第1子・第2子に各23万4,800円、第3子以降に各7万8,300円が加算されます。
なお、注意すべき点として、65歳に達して老齢基礎年金の受給権が発生した後に、年金の受給を繰り下げていた方がその間に亡くなった場合でも、すでに受給権が発生しているとみなされます。このため、遺族基礎年金の支給対象とはなりません。そのような場合でも、故人が厚生年金に加入していた場合は、遺族厚生年金が支給される可能性があります。
2階の遺族厚生年金は、厚生年金の被保険者または受給権者が亡くなった際に支給されます。受給順位は、生計を維持されていた配偶者、子、父母、孫、祖父母の順に定められています。支給額は、被保険者が将来受け取る予定だった報酬比例部分の4分の3が基本となります。加えて、妻が40歳から65歳の間であれば中高齢寡婦加算として年額約58万円が上乗せされるほか、婚姻期間が20年以上など一定の条件を満たす場合には経過的寡婦加算が支給されることもあります。
たとえば会社員や公務員が亡くなり、①遺族に18歳年度末までの子がいること、②故人が厚生年金に加入していたこと、③保険料納付要件を満たしていること、という3つの条件をすべて満たしていれば、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受給することが可能です。一方、子のいない配偶者は遺族厚生年金のみ、自営業者など厚生年金に加入していなかった方が亡くなった場合は遺族基礎年金のみが支給されます。このように、職業や家族構成によって受給できる年金の種類は大きく異なります。
手続きの第一歩としては、亡くなった方の年金加入歴や保険料納付状況、遺族の年齢や続柄を整理したうえで、最寄りの年金事務所に相談することをおすすめします。併給要件や加算の適用可否などを確認し、必要書類を整えて請求手続きを進めましょう。状況によって支給内容や準備すべき資料が異なるため、早めに専門窓口で相談しておくと安心です。
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遺族基礎年金
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遺族厚生年金
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公的年金には「国民年金」と「厚生年金」の2種類があり、高齢者や障害者、遺族が生活を支えるための制度です。この制度は、現役で働く人たちが納めた保険料をもとに、年金受給者に支給する「世代間扶養」の仕組みで成り立っています。 国民年金は、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する制度です。保険料を一定期間(原則10年以上)納めると、65歳から老齢基礎年金を受け取ることができます。また、障害を負った場合や生計を支える人が亡くなった場合には、障害基礎年金や遺族基礎年金を受け取ることができます。 厚生年金は、会社員や公務員が対象の制度で、国民年金に追加で加入する形になります。保険料は給与に応じて決まり、支払った分に応じて将来の年金額も増えます。そのため、厚生年金に加入している人は、国民年金だけの人よりも多くの年金を受け取ることができ、老齢厚生年金のほかに、障害厚生年金や遺族厚生年金もあります。 公的年金の目的は、老後の生活を支えるだけでなく、病気や事故で障害を負った人や、家計を支える人を亡くした遺族を支援することにもあります。財源は、加入者が納める保険料と税金の一部で成り立っており、現役世代が高齢者を支える「賦課方式」を採用しています。しかし、少子高齢化が進むことで、この仕組みを今後も維持していくことが課題となっています。公的年金は、すべての国民が支え合い、老後の安心を確保するための重要な制度です。
老齢基礎年金
老齢基礎年金とは、日本の公的年金制度の一つで、老後の最低限の生活を支えることを目的とした年金です。一定の加入期間を満たした人が、原則として65歳から受給できます。 受給資格を得るためには、国民年金の保険料納付済期間、免除期間、合算対象期間(カラ期間)を合計して10年以上の加入期間が必要です。年金額は、20歳から60歳までの40年間(480月)にわたる国民年金の加入期間に応じて決まり、満額受給には480月分の保険料納付が必要です。納付期間が不足すると、その分減額されます。 また、年金額は毎年の物価や賃金水準に応じて見直しされます。繰上げ受給(60~64歳)を選択すると減額され、繰下げ受給(66~75歳)を選択すると増額される仕組みになっています。 老齢基礎年金は、自営業者、フリーランス、会社員、公務員を問わず、日本国内に住むすべての人が加入する仕組みとなっており、老後の基本的な生活を支える重要な制度の一つです。
中高齢寡婦加算
中高齢寡婦加算とは、遺族厚生年金を受け取る妻が40歳から64歳までの中高年齢層であり、子どもがいない、または子どもがすでに支給対象外となっている場合に、遺族厚生年金に上乗せして支給される加算金のことです。これは、配偶者の死後、急に収入を失った中高年の女性が、老齢年金を受け取れる年齢になるまでの生活を支える目的で設けられています。 特に子育てが終わった後の女性が対象となりやすく、再就職が難しい年齢層であることから、生活の安定を支援する制度として重要です。なお、65歳になると老齢年金の受給が始まるため、この加算は終了します。中高齢寡婦加算は、遺族年金制度の中でも特定の生活状況に配慮した制度であり、遺族厚生年金の理解を深めるうえでも欠かせない要素です。
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経過的寡婦加算とは、昭和31年4月1日以前に生まれた女性で、一定の条件を満たした遺族厚生年金の受給者に対して支給される、特例的な加算給付のことです。この制度は、年金制度の改正によって不利益が生じることを避けるための「経過措置」として設けられました。具体的には、中高齢寡婦加算の対象とならない高齢の遺族(主に妻)に対し、年金額が極端に低くならないように補う目的で支給されます。 支給額は定額で、加算されることで遺族の生活の安定を図ります。ただし、対象となるのはごく限られた年齢層の方に限られており、今後は制度として縮小・終了していく方向とされています。公的年金制度の中でも、過渡期の制度変更に配慮した、歴史的経緯のある加算措置です。 か