株式の相続における注意点について教えてください
回答受付中
0
2025/04/14 14:15
男性
50代
父が自社株や上場株を所有しているのですが、将来的に相続するにあたって、どのような点に気をつけるべきでしょうか?名義変更や評価額、税務面など、注意すべき点があれば教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
株式の相続には、評価額の算定、名義変更の手続き、税務面での対応という3つの重要な視点があります。とくに自社株(非上場株式)が含まれる場合は、相続税への影響が大きくなる可能性があるため、早めの準備が不可欠です。
まず、株式の評価方法についてです。上場株式は相続発日時点の終値や一定期間の平均値などを基に評価され、比較的ルールが明確です。一方で、自社株は会社の資産内容や収益状況に応じて評価されるため、業績や財務内容によって大きく変動します。評価額が高額になると相続税も増えるため、事前に専門家と試算しておくことが重要です。
次に名義変更についてです。上場株式の相続には、証券会社での手続きが必要で、戸籍謄本や遺産分割協議書、相続人全員の署名などが求められます。自社株の場合は、会社の定款や株主名簿を確認したうえで、取締役会などの承認を得る必要があることもあり、より複雑な対応を要します。
また、相続税の申告期限は相続開始から10か月以内と限られており、その間に株式の評価、遺産分割、納税資金の確保などを済ませなければなりません。特に自社株のように現金化が難しい資産については、延納や物納の可能性を含めた資金計画が必要です。中小企業の承継にあたっては、一定の要件を満たすことで相続税の納税が猶予される「事業承継税制」の活用も検討できます。
さらに注意すべき点として、家族間での事前共有があります。株式の相続は経営権にも関わるため、相続人間で方針が食い違うとトラブルの原因になります。早い段階で家族と承継の方針を話し合い、可能であれば遺言書や事業承継計画を準備しておくことが、スムーズな相続に繋がります。
株式の相続は専門的かつ複雑な分野であり、自社株が絡む場合は特に慎重な対応が求められます。税理士や弁護士、事業承継に詳しい専門家に早めに相談することで、不要な納税負担やトラブルを避け、安心して次世代へ資産を引き継ぐことができます。相続は準備の有無で大きく結果が変わるものです。気になる点があれば、ぜひ早めに行動を起こしましょう。
関連質問
関連する専門用語
純資産
純資産は、企業や個人の財務状況を示す指標で、総資産から総負債を差し引いた額です。この数値は、その企業や個人が実際に保有する純資産額を示しており、経済的な安定性や信用度を評価するために使用されます。 企業の場合、純資産は貸借対照表において「純資産の部」として記載され、主に株主資本や留保利益などで構成されます。純資産の増加は、企業の利益蓄積や資本増強を示し、財務基盤の強化につながる要因となります。また、新たな株式発行や資産の評価替えによっても純資産は増加することがあります。 個人の場合、純資産は所有する不動産、車、銀行口座の残高、投資資産などの総資産から、住宅ローン、クレジットカードの残高、その他の借入金などの負債を差し引いて計算されます。純資産がプラスであれば財政的に健全であると考えられますが、マイナスであってもライフステージや資産形成の過程で一時的に生じることがあります。 純資産は、企業や個人が将来的に直面するかもしれない経済的なリスクに対する備えとなり、長期的な財務戦略や資産運用を計画する上で重要な指標となります。
事業承継税制
事業承継税制とは、中小企業の経営者が後継者に自社株式などの事業用資産を引き継ぐ際にかかる相続税や贈与税の負担を、大幅に軽減するための特例制度です。通常、自社株式の相続や贈与には高額な課税が伴いますが、本制度を活用すれば、一定の条件下でこれらの税金の納税が猶予され、最終的に免除される可能性もあります。 この制度の目的は、経営者の高齢化が進む中で、後継者への円滑な事業承継を支援し、中小企業の継続的な成長や地域経済の安定を確保することにあります。特に、長年にわたり地域や雇用を支えてきた企業にとっては、承継時の税負担が事業継続の大きな壁となるケースもあり、本制度はその打開策として注目されています。 制度の適用には、事業承継計画の策定や、都道府県への認定申請など、事前の準備と継続的な要件の遵守が求められます。適用条件も多岐にわたるため、税理士や行政書士などの専門家の支援を受けながら、計画的に取り組むことが重要です。 資産運用の一環として事業を所有している方や、将来的に経営権を譲渡する予定がある方にとって、本制度は事業と資産の両面を守るための有力な選択肢といえるでしょう。
非上場株式(未公開株式/非公開株式)
非上場株式(未公開株式/非公開株式)とは、証券取引所に上場していない企業の株式を指します。 上場株式とは異なり、公の市場で自由に売買できず、流動性が低いのが特徴です。特に買い手を見つけるのが難しく、売却までに時間を要することが多いです。主にベンチャー企業や中小企業が発行しており、取得方法としてはベンチャーキャピタル(VC)、エンジェル投資家、投資ファンド、従業員持株会などを通じた投資が一般的です。 また、売却や譲渡には会社の承認が必要な場合が多く、定款や契約によって譲渡制限が設けられていることもあります。そのため、希望するタイミングで売却できるとは限りません。 投資家にとっては、企業の成長による大きなリターンを期待できる一方で、換金の難しさや情報の透明性の低さといったリスクもあります。未公開企業は決算情報や事業計画の開示義務がない場合もあり、投資判断が難しくなる可能性があるため、十分な調査が必要です。 さらに、非上場株式は相続や贈与の際の評価が難しいという課題もあります。相続税や贈与税の計算では、国税庁の「財産評価基本通達」に基づき、類似業種比準方式や純資産価額方式などの方法で評価されます。しかし、これらの方式による評価額は事業の業績や市場環境によって変動しやすく、納税額が予想以上に高くなることがあります。 また、非上場株式は市場での換金が難しいため、相続税の納税資金を準備するのが困難な場合があります。このようなリスクを避けるために、事前に事業承継対策や株式の分散を検討することが重要です。
納税資金
納税資金とは、相続や贈与が発生したときに必要となる税金を支払うために、あらかじめ準備しておくお金のことを指します。特に相続の場合、土地や建物といった現金化しにくい資産を多く持っていると、相続税を払うための現金が手元に不足することがあります。こうした事態に備えて、生命保険や預貯金などで納税資金を計画的に用意しておくことが大切です。生命保険を活用することで、被相続人が亡くなったときに保険金が速やかに支払われ、納税資金として使えるようになるため、資産をスムーズに引き継ぐための有効な手段とされています。
定款
定款とは、会社設立時に作成される会社の基本的なルールを定めた文書です。目的、商号、本店所在地、資本金、機関設計などが記載され、法務局への登記前に公証役場で認証を受ける必要があります。
遺言書
遺言書とは、自分が亡くなったあとに財産をどのように分けてほしいかをあらかじめ書き残しておく文書のことです。生前に自分の意思を明確に示す手段であり、誰にどの財産を渡すか、あるいは誰には渡さないかなどを記載することができます。遺言書があることで、相続人同士のトラブルを防いだり、法定相続とは異なる分け方を実現したりすることが可能になります。法的に有効な遺言書にするためには、決められた形式に沿って作成する必要があります。代表的な形式には自筆証書遺言や公正証書遺言があります。資産運用においても、相続の計画を立てるうえで非常に重要な役割を果たします。