海外駐在が決定しました。資産運用における注意点があれば教えて下さい
解決済み
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2024/11/29 20:45
女性
30代
海外駐在が決まりました。5年以上だとNISAは維持できないと聞きました。NISA以外の証券口座など、海外駐在に行くにあたってどのような取り扱いになるのでしょうか?注意点があれば教えて下さい。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
証券取引に関しては、海外居住者(非居住者)となることで、大きな制限を受けることになります。多くの証券会社では、非居住者になると新規の投資や取引が制限され、既存の有価証券の保有と売却のみが可能となります。さらに注意が必要なのは、証券会社によって対応が異なり、日本株のみの保有に制限されたり、場合によっては売却すら制限されるケースがあることです。
NISA口座については、海外赴任の期間が重要な判断基準となります。5年以内の海外赴任であれば、NISA口座を保持し続けることは可能です。ただし、海外赴任期間中は新規の買い付けができないという制限があります。また、金融機関によって継続保有の可否が異なるため、出国前に必ず取引している証券会社に確認する必要があります。
また、保険に関しても同様の制限があります。非居住者となった後は、新規での保険加入ができなくなります。ただし、既存の保険契約については、海外居住中も継続可能な商品が多くあります。この点については、海外移住が決まった時点で、加入している保険会社に確認の手続きを行うことが重要です。
これらの制限に対する対応策として、証券取引については「常任代理人」を立てることで、非居住者用総合取引口座として継続保有が可能となります。常任代理人には親族への依頼や専門家への委託が可能です。ただし、特定口座は一般口座となり、確定申告が必要になる場合があることにも注意が必要です。
出国時と帰国時には、必ず所定の手続きを行う必要があります。これらの手続きを怠ると、口座が強制解約される可能性があるため、特に注意が必要です。
これらの制限や手続きは複雑で、一度間違えると取り返しがつかない場合もあります。そのため、海外赴任が決まった時点で、以下の手順で準備を進めることをお勧めします。
- まず、取引している全ての金融機関に海外赴任について連絡し、必要な手続きと制限事項を確認します。
- NISA口座を保有している場合は、継続保有の可否と制限事項を確認します。
- 保険会社に連絡し、契約継続の可否と必要な手続きを確認します。
- 必要に応じて常任代理人の選定を行い、手続きを進めます。
- 確定申告が必要となる可能性も考慮し、税務面での対応も検討します。
このように慎重に準備を進めることで、海外赴任中も日本国内の金融資産を適切に管理することが可能となります。不明な点がある場合は、必ず事前に各金融機関や税理士等の専門家に相談することをお勧めします。
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非居住者
非居住者とは、所得税法第2条第1項第5号に基づき、「国内に住所を有さず、かつ1年以上引き続いて居所を有しない個人」を指します。一般には、海外に生活の拠点を移して1年以上継続して滞在している方、特に海外赴任や永住を前提とした移住者などが該当します。 非居住者になると、日本の税制や金融制度上の取扱いが大きく変わります。税務上、日本は非居住者に対して「国内源泉所得」のみ課税権を持ちます。たとえば、日本国内勤務に対応する給与や賞与は国内源泉所得とされ、15.315%の税率で源泉徴収されます。非居住者は住民税や累進課税の対象外であるため、金額にかかわらずこの定率で課税が完結し、原則として確定申告も不要です。 この仕組みを活用すれば、高額報酬を受け取る場合でも、居住者の最大55%課税に比べて大幅に税負担を抑えられる可能性があります。ただし、非居住者として認められるには、住民票の除票だけでなく、生活拠点・勤務実態・業務の指示系統などから総合的に実態が判断されます。租税回避とみなされないよう、恒久的施設(PE)課税や居住国側での課税リスクにも留意が必要です。 一方、海外勤務に対応する給与・賞与は国外源泉所得とされ、日本では非課税です。報酬の支払元や雇用契約の内容によっては判断が分かれるため、租税条約の有無や適用範囲の確認も重要です。 退職金については、従業員の場合は国内勤務に対応する部分が、役員の場合は全額が国内源泉所得とみなされ、20.42%で源泉徴収されます。なお、退職所得の選択課税制度を使えば、居住者と同様に退職所得控除や1/2課税が適用され、還付を受けられることがあります。 金融面では、非居住者になることで日本の銀行口座や証券口座に制限がかかることがあります。多くの銀行では非居住者の口座維持に制限があり、住民票を除票後に届け出を行っていないと口座凍結のリスクもあります。証券口座の特定口座も廃止され、一般口座への移管が必要になります。 NISA口座も非居住者になると原則利用できなくなります。ただし、会社都合による海外赴任で「非課税口座継続適用届出書」を提出すれば、最長5年間は非課税枠を維持可能です。この場合でも、新規買付や積立は停止され、自己都合による移住では口座の廃止が必要です。 また、日本と非居住者の居住国との間に租税条約がある場合、課税が軽減または免除されるケースもあります。たとえば、台湾との間では、国外勤務に対応する退職手当の一部が日本で非課税となる取り扱いがあります。 このように、非居住者となることで税制・金融制度の適用が大きく変わります。とくに高額所得者や国際的な勤務を行う方にとっては、非居住者ステータスの活用が節税につながる一方で、税務リスクや手続き上の注意点も少なくありません。実態に基づいた制度設計と事前の準備が不可欠です。
NISA
NISAとは、「少額投資非課税制度(Nippon Individual Saving Account)」の略称で、日本に住む個人が一定額までの投資について、配当金や売却益などにかかる税金が非課税になる制度です。通常、株式や投資信託などで得られる利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座を使えばその税金がかからず、効率的に資産形成を行うことができます。2024年からは新しいNISA制度が始まり、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つを併用できる仕組みとなり、非課税期間も無期限化されました。年間の投資枠や口座の開設先は決められており、原則として1人1口座しか持てません。NISAは投資初心者にも利用しやすい制度として広く普及しており、長期的な資産形成を支援する国の税制優遇措置のひとつです。