信託に資産を移すとCRSの報告対象にならないというのは本当でしょうか?
信託に資産を移すとCRSの報告対象にならないというのは本当でしょうか?
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2025/04/16 11:12
男性
30代
相続や資産保全の観点から、信託スキームを検討しています。知人から「信託に移せば自分の資産じゃなくなるから、申告対象にならない」と言われたのですが、本当にそうなのでしょうか?信託に入れた資産がCRSの報告対象にならないケースや、逆に注意が必要なポイントがあれば教えてください。
回答
佐々木 辰
38歳
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
信託に資産を移すことで申告義務がなくなる、という考え方は誤解です。たしかに、信託財産の名義は受託者に移るため、表面的には「他人の資産」に見えるかもしれませんが、税務や国際的な情報開示の制度においては、形式よりも実質が重視されます。
CRS(共通報告基準)では、各国の金融機関が、信託の「実質的支配者」に関する情報を税務当局へ報告することが義務付けられています。ここで言う実質的支配者とは、たとえば以下のような立場の人物を指します。
- 信託の受益者として、収益の分配を受ける人
- 信託の委託者として、信託財産に関する実質的なコントロールを持つ人(例:解約権、運用指図権を保有)
このように、信託スキームを利用しても、受益者や委託者として関与していれば、国外にある信託財産であっても日本の国税庁に情報が自動的に共有される可能性があります。つまり、資産の名義を信託に移しても、自身が実質的に利益を受けていたり管理していたりする場合には、申告義務は免れません。
さらに、信託の種類や設計によっては、税務上の取り扱いが大きく異なる点にも注意が必要です。たとえば、特定の条件下では、信託財産やその運用益が委託者本人の所得として課税対象になることもあります。名義変更だけで実態が伴わない場合や、意図的に責任を回避しようとする構造であれば、税務当局から脱税行為とみなされるリスクすらあります。
信託は、適切に設計すれば、相続対策や資産保全の有効な手段となりますが、制度を誤解したまま利用すると、かえって税務リスクや追徴課税を招く恐れがあります。とくに海外信託や複雑なスキームを用いる場合は、CRSや日米租税条約など国際的な情報交換制度との整合性にも配慮が必要です。
信託を活用する際は、信託と税務の双方に精通した専門家に相談し、制度の枠内で適切に設計・運用することが不可欠です。透明性を確保しつつ、長期的に持続可能なスキームを構築することが、結果として最も安心かつ効果的な方法と言えるでしょう。
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信託
信託とは、お金や不動産などの財産を信頼できる相手(受託者)に託し、特定の目的に沿って管理・運用してもらう仕組みです。財産を託す人を「委託者」、管理する人を「受託者」、利益を受け取る人を「受益者」といいます。 たとえば、親が子どもの教育資金を信託したり、高齢の親の認知症対策として資産管理を家族に委ねたりするケースがあります。このような個人間で活用される信託は「家族信託」と呼ばれ、相続対策や資産承継の手段として近年注目されています。 一方、資産運用の世界では「商事信託」として、信託銀行や運用会社が多数の投資家から集めた資金をまとめて運用する「投資信託」が一般的です。さらに、海外では、受益者への分配内容を受託者が裁量で決められる「ディスクリショナリートラスト(裁量信託)」という形態もあります。 信託は目的や状況に応じて柔軟に設計できる制度であり、大切な資産を計画的に管理・承継するための有力な選択肢となります。
委託者
委託者とは、信託契約において、自分の資産を信託として他者に託す人のことをいいます。たとえば、財産を管理・運用してもらいたいという目的で、自分の持つ不動産や金融資産を信託会社や信頼できる個人に預ける場合、その資産の元の所有者が「委託者」となります。委託者は信託の目的や条件、受益者(利益を受ける人)を指定する権利を持ち、信託の始まりとなる重要な存在です。資産承継や相続対策、事業継続の手段として信託を利用する際に、委託者の意向が信託の設計に大きく反映されます。そのため、信託を検討する際には、委託者としての役割と責任をよく理解しておくことが大切です。
受益者(受取人)
資産運用における受益者(受取人)とは、保険、信託、年金、投資信託、相続などの金融資産から利益を受け取る権利を持つ人を指します。各金融商品や制度において、受益者の役割や権利は異なりますが、共通して資産の管理や運用を経て利益を受ける立場にあります。 生命保険では、契約者が指定した受取人が、被保険者の死亡時に保険金を受け取ります。受取人には第一受取人と第二受取人があり、状況に応じて保険金の支払いが行われます。年金においては、企業年金や個人年金の給付を受け取る人が該当し、遺族年金のように家族が受給者となるケースもあります。 信託では、委託者が資産を信託し、受託者が管理・運用した収益を受益者が受け取ります。信託の形態によって、個人向けや法人向けの受益者が存在し、特定の目的に応じた資産運用が可能となります。投資信託では、ファンドに出資した投資家が受益者となり、分配金や運用益を得ます。特にETFなどの上場投資信託では、受益者が市場で自由に取引できる点が特徴です。 相続においては、遺言や法定相続によって故人の資産を受け取る人が受益者とされます。特定の受益者を指定することで、資産の分配を意図的に調整することが可能になります。また、公共の福祉制度においても、社会保障や奨学金の支給対象者が受益者に該当します。 受益者の適切な指定は、資産の円滑な継承や税務対策において重要であり、状況の変化に応じた定期的な見直しが推奨されます。特に、家族構成の変化や法改正の影響を考慮し、適切な受益者設定を行うことが、資産運用を成功させる鍵となります。
受託者
受託者とは、信託契約に基づいて、委託者から託された財産を管理・運用する人や法人のことを指します。信託の目的や契約内容に従い、受益者の利益を最優先に考えて資産を扱う責任があり、この責任は「受託者責任」と呼ばれます。受託者には、高い倫理観と専門的な知識が求められるのが特徴です。 たとえば、親が子どもの将来の教育資金として自分の資産を信託した場合、受託者はその資産を信託の目的に沿って安全かつ効果的に管理・運用する義務を負います。自分の資産とは明確に分けて管理する「分別管理義務」もあり、不適切な流用は許されません。 信託において受託者は、実際に財産を動かす実務の中心的な役割を担うため、信頼関係が非常に重要です。誰を受託者に選ぶかは、信託設計の成否を左右する大きなポイントであり、専門家や信託会社の活用も選択肢となります。
CRS(共通報告基準)
CRSとは、「共通報告基準(Common Reporting Standard)」の略で、各国の税務当局同士が金融口座に関する情報を自動的に交換するための国際的な制度です。これは主に、海外口座を利用した税逃れや資産隠しを防ぐことを目的として、OECD(経済協力開発機構)が提案し、多くの国が参加しています。 たとえば、日本に住んでいる人が海外の銀行に口座を持っている場合、その情報は現地の金融機関から日本の国税庁に自動的に報告される仕組みになっています。これにより、海外に資産を移してもその存在が把握されやすくなり、適正な納税を促すことができます。投資初心者にとっては直接の影響は少ないかもしれませんが、グローバルな資産運用やオフショア投資を考える際には知っておくべき重要なルールのひとつです。
追徴課税
追徴課税とは、納税者が申告漏れや誤りによって本来納めるべき税額よりも少なく納税していた場合、税務署が追加で課す税金のことです。過少申告加算税、無申告加算税、重加算税など、状況に応じた種類があります。
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