専門用語解説
ファットテール
ファットテールとは、統計的な分布において、極端な値(大きな損失や大きな利益)が発生する確率が、正規分布などの理想的なモデルよりも高くなる現象を指します。直訳すると「太った尾」という意味で、分布のグラフを描いたときに、左右の端(尾部)が厚く伸びているように見えることからこの名前がついています。
資産運用やリスク管理の分野では、リターンが正規分布に従うと仮定することが多いですが、実際の市場では、想定外に大きな変動が起きることがあるため、正規分布では説明しきれない「ファットテール」の存在が問題となります。たとえば、リーマン・ショックやコロナショックのような市場の急変は、理論上はほとんど起こらないはずの出来事(いわゆる“何千年に一度”)ですが、現実には数年に一度の頻度で起きているのです。
ファットテールのリスクを正しく認識しないと、リスクを過小評価し、資産運用において重大な損失を被る恐れがあります。そのため、リスク管理では「まれだけど甚大な影響を与えるイベント」への備えが重要とされ、VaRやモンテカルロシミュレーションといった手法でも、ファットテールの補正や考慮が課題とされています。