専門用語解説
ISM非製造業景況指数
ISM非製造業景況指数とは、米国のサービス業を中心とした業種における景気の動向を示す経済指標であり、全米供給管理協会(Institute for Supply Management, ISM)が毎月発表しています。この指数は、企業の購買担当者に対する調査をもとに算出され、50を基準として、50を上回れば前月と比べて活動が拡大、50を下回れば縮小していると解釈されます。特に米国のGDPの約8割を占める非製造業の動向を把握できることから、市場関係者にとって注目度の高い指標となっています。
構成要素は、事業活動、新規受注、雇用、供給者納期、在庫の5項目で、これらの拡大・縮小の度合いを指数化して総合指数が算出されます。中でも事業活動と新規受注の比重が高く、短期的な経済変化の先行指標とされる傾向があります。指数は毎月第3営業日頃(米国東部時間午前10時)に公表され、その数値が想定外であった場合、為替・金利・株式市場に大きく影響を与えることもあります。
もともとこの指標は「ISM非製造業景況指数(ISM Non‑Manufacturing PMI)」と呼ばれていましたが、2020年に「Services ISM Report On Business(略称:ISM Services PMI)」へと名称が変更されました。これは、より直感的にサービス業に焦点を当てていることを伝えるためのもので、指標の中身そのものに大きな変更はありません。なお、非製造業といっても、サービス業だけでなく、建設業や鉱業などの一部も対象に含まれています。
一方で、この指数には限界もあります。例えば、調査は「前月比での方向性(良くなったか悪くなったか)」を尋ねる形式であるため、絶対的な水準や成長率を直接示すものではありません。また、調査対象者の主観が数値に反映されるため、景況感や心理によって変動しやすい側面もあります。
このように、ISM非製造業景況指数は、米国のサービス業を中心とする経済活動の動きをタイムリーに把握できる重要指標ですが、読み解く際にはその構成や限界を理解することが大切です。