経済指標は投資にどう活用する?GDPやCPIなど主要指標一覧やカレンダー活用法を徹底解説

経済指標は投資にどう活用する?GDPやCPIなど主要指標一覧やカレンダー活用法を徹底解説
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公開:
2025.03.31
更新:
2025.12.30
経済ニュースでGDPやCPI、政策金利といった言葉を目にしても、「結局どれが重要で、投資判断にどう使えばいいのか分からない」と感じる人は少なくありません。指標の意味や位置づけを曖昧なまま追いかけると、短期の値動きに振り回されやすくなります。
この記事では、主要な経済指標を景気・物価・雇用・金融・需要の切り口と、先行・一致・遅行の観点から整理し、株・債券・為替への影響まで体系的に解説します。ニュースを自分の判断軸で読み解くための土台を整えます。
サクッとわかる!簡単要約
この記事を読むことで、GDP・CPI・失業率・政策金利・PMIといった主要な経済指標を、先行・一致・遅行の位置づけと景気・物価・雇用・金融・需要の軸で整理して理解できます。
どの指標が株・債券・為替にどう影響し、ニュースや指標カレンダーをどう読めばよいかが分かるため、短期の値動きに振り回されず、中長期の投資判断を自分の基準で行えるようになります。
目次
国内総生産(GDP):成長率で景気拡大・後退を定義する基本統計
CPI(消費者物価指数):総合・コア指数でインフレ動向を測る経済の体温計
失業率・雇用統計:完全失業率で労働市場の健全性を測る遅行シグナル
中央銀行の政策金利:FOMCや日銀会合が方向性を決める金融政策のコア指標
PMI(購買担当者景気指数):50を分岐点に景況感を映す先行指標
ISM景況指数:製造業・非製造業それぞれの動向を示す米国の先行指標
小売売上高:GDPの7割を占める米国個人消費の勢いと内需の強さ
日銀短観(企業短期経済観測調査):業況判断DIで企業の景況感と設備投資意欲を読む
消費者信頼感指数(消費者マインド):家計のマインドから個人消費の先行きを占う
鉱工業生産指数:製造業の生産・出荷・在庫から景気の体温を測る
景気動向指数:先行・一致・遅行指数で景気サイクルの局面を判定する
ステップ2:経済カレンダーで「発表日時」と「市場予想」を確認する
投資判断に必要な主要経済指標の概要
投資をするうえで、経済指標の理解は欠かせません。GDPやCPI、失業率、政策金利などの指標は、市場の動きを予測し、適切な投資判断を行うための重要な手がかりとなります。
それぞれの指標が示す意味や市場への影響を知ることで、投資のリスクを抑え、より戦略的な資産運用が可能になります。ここでは、主要な経済指標の特徴や公表タイミング、投資判断への活用方法について詳しく解説します。
景気・物価・雇用・金融・需要の5つの観点
経済指標は、測定する対象によって大きく5つのカテゴリーに分類できます。まず、経済全体の成長や景況感を示す「景気」指標には、GDPやPMIなどが含まれます。次に、インフレの動向を測る「物価」指標としてCPIやPPIがあり、労働市場の健全性を示す「雇用」指標には失業率や雇用統計が該当します。
加えて、中央銀行の政策スタンスを示す「金融」指標としての政策金利、個人消費や外需の強弱を表す「需要」指標としての小売売上高や貿易収支も重要です。これら多様な指標をそれぞれのカテゴリーに分類して把握することで、経済のどの側面に変化が生じているのかを体系的かつ冷静に分析できるようになります。
先行指数・一致指数・遅行指数の違い
経済指標は、実際の景気変動に対してどのタイミングで動くかによっても3つに分類されます。景気に先んじて動き将来を予兆する「先行指数」、現在の景気状況をリアルタイムで反映する「一致指数」、そして事後的に景気の転換を確認するための「遅行指数」です。これらを組み合わせて見ることで、現状分析と将来予測の精度を高めることができます。
主要経済指標の公表頻度と市場への影響
投資家が特に注目すべき主要な経済指標について、公表主体や頻度、一般的な市場反応を一覧で整理しました。各指標が発表されるタイミングや、結果が予測より良かった場合、あるいは悪かった場合に株価や債券価格がどう動く傾向にあるのかを把握しておくことは、リスク管理や投資チャンスを捉えるうえで非常に有効です。
| 指標 | 公表主体 | 公表頻度 | 市場への影響 |
|---|---|---|---|
| GDP(国内総生産) | 内閣府(日本)・BEA(米国) | 四半期 | 景気拡大なら株価上昇、景気後退なら株価下落 |
| CPI(消費者物価指数) | 総務省統計局(日本)・BLS(米国) | 毎月 | インフレ率が高ければ利上げ圧力で株・債券に影響 |
| 失業率 | 総務省統計局(日本)・BLS(米国) | 毎月 | 低下は景気拡大を示し株価上昇、上昇は景気減速の兆候 |
| 政策金利 | 日本銀行・FRB(米国) | 年8回程度 | 利上げで株価下落・債券価格下落、利下げで逆の動き |
| PMI(購買担当者景気指数) | Jibun銀行(日本)・ISM(米国) | 毎月 | 50以上で景気拡大期待、50以下で景気減速懸念 |
| 小売売上高 | 経済産業省(日本)・商務省(米国) | 毎月 | 消費拡大で株価上昇、消費減速で株価下落 |
主要経済指標の特徴と投資判断への活用
投資判断の精度を高めるためには、各経済指標が持つ意味と、それが市場に与えるインパクトのメカニズムを深く理解することが重要です。
ここでは、景気の基礎体力を示すGDPや物価動向を表すCPI、金融政策の決定打となる雇用統計など、特に重要度の高い指標に焦点を当てます。それぞれの定義や公表タイミング、そして結果が株式・債券・為替市場にどのような連動性をもたらすのかを具体的に解説します。
国内総生産(GDP):成長率で景気拡大・後退を定義する基本統計
GDP(Gross Domestic Product:国内総生産)は、一定期間内に国内で新たに生み出されたモノやサービスの付加価値の合計を示す指標です。簡単に言えば、その国の経済規模や「稼ぐ力」を表す最も基本的なデータといえます。
一般的に注目されるのは実額よりもGDP成長率です。前期比や前年比がプラスであれば景気が拡大していることを意味し、マイナスであれば経済活動が縮小し、景気が後退していることを示します。
公表時期:日米の四半期速報・改定値・確報値
GDPは通常、四半期(3カ月)ごとに集計・公表されます。日本では内閣府経済社会総合研究所が担当し、四半期ごとの数値を発表します。
米国では商務省経済分析局(BEA)が担当し、同じ四半期のデータについて「速報値」「改定値」「確報値」と3回に分けて発表するのが特徴です。特に最初に発表される速報値は速報性が高く、市場の注目度が最も高いため、発表直後には株価や為替が大きく動く傾向があります。
投資への影響:株高・金利上昇(債券安)のメカニズム
GDPは経済全体の健康診断書であるため、株式・債券市場の双方に大きな影響を与えます。成長率が高く景気拡大局面にある場合、企業の売上や利益の増加が期待できるため、基本的には株価上昇の要因となります。
一方で、経済が加熱しすぎるとインフレ懸念が生じます。これに対して中央銀行が利上げ(金融引き締め)を行うとの観測が強まると、債券市場では利回りが上昇し、価格は下落しやすくなります。
逆にGDP成長率がマイナスとなり景気後退が意識されると、企業業績の悪化懸念から株価は下落しやすくなります。しかし、中央銀行による景気刺激策(利下げなど)への期待が高まるため、債券は買われ、利回り低下・価格上昇となる傾向があります。このように、GDPの結果は株式と債券の資産配分を見直す重要なシグナルとなります。
CPI(消費者物価指数):総合・コア指数でインフレ動向を測る経済の体温計
CPI(Consumer Price Index)は、消費者が購入する商品やサービスの価格水準がどう変動したかを示す指標です。景気が良くなれば需要が増えて物価が上がり、悪くなれば下がる傾向があるため、「経済の体温計」とも呼ばれます。
この指標はインフレ率(物価上昇率)を測る最も代表的な尺度であり、中央銀行が金融政策を決定する際に極めて重視します。全体を示す総合指数のほか、天候要因で変動しやすい生鮮食品などを除いた「コア指数」もトレンド把握のために注目されます。
公表時期:毎月発表されるインフレ率の動向
CPIは毎月公表されます。日本では総務省統計局が毎月下旬に、米国では労働省労働統計局(BLS)が毎月中旬頃に前月分のデータを発表します。
地域別に見ると、日本では全国の数値に先駆けて東京都区部の速報値が発表されることがあり、これが全国トレンドの先行指標として注目される場合もあります。
投資への影響:金利引き上げ観測と株・債券の関係
CPIはインフレ動向を直接示すため、特に債券市場や金利政策との連動性が高い指標です。インフレ率が中央銀行の目標(日米ともに概ね2%程度)を大きく上回ると、物価を落ち着かせるために利上げが行われる可能性が高まります。
利上げ観測は債券にとってマイナス材料となり、価格の下落(利回りの上昇)を招きます。また、金利上昇は企業の借入コスト増加や住宅ローン金利の上昇による消費減退につながるため、株式市場にとっても重荷となるケースが一般的です。
反対にインフレ率が低迷しデフレ懸念がある場合は、金融緩和への期待から債券価格は上昇しやすくなります。ただし、過度なデフレは企業収益の悪化を意味するため、株価にとってはネガティブ要因となり得ます。適度なインフレ環境こそが、株式と債券の双方にとって最も安定したパフォーマンスを期待できる状態といえます。
政策金利と国債金利の関係性については以下Q&Aでも説明しています。
失業率・雇用統計:完全失業率で労働市場の健全性を測る遅行シグナル
失業率は、労働力人口(働く意思と能力を持つ人々)の中で、職に就いていない人の割合を示す指標です。景気の波に対して少し遅れて反応する「遅行指標」の性質を持ちますが、経済の基礎である労働市場の健全性を測るバロメーターとして不可欠なデータです。
景気拡大期には企業の採用意欲が高まり失業率は低下し、後退期にはリストラや採用抑制により上昇します。この数値の変化は、国民の所得環境や消費意欲に直結します。
米国雇用統計については以下記事で詳しく解説しています。
公表時期:米雇用統計(第一金曜日)の重要性
多くの国で毎月発表されます。日本では総務省統計局が毎月末に前月の数値を公表します。
世界中の投資家が最も注目するのが、米国労働省労働統計局(BLS)が発表する「米雇用統計」です。通常、毎月第1金曜日に発表され、失業率だけでなく「非農業部門雇用者数」や「平均時給」も同時に公表されます。これらは速報性が高く、市場へのインパクトが極めて大きいため、発表直後は相場が乱高下することも珍しくありません。
投資への影響:賃金上昇・インフレ懸念と市場反応
失業率の水準は、金融政策と市場心理を大きく左右します。失業率が歴史的な低水準まで下がると、労働力が不足し、企業は人を集めるために賃金を上げざるを得なくなります。賃金上昇は消費を活発にしますが、同時にインフレ圧力も高めます。
これを受けて中央銀行が利上げを急ぐとの観測が広がると、債券利回りは上昇し、株価は調整局面入りする可能性があります。米国FRBは「物価の安定」と「雇用の最大化」を二大責務としているため、雇用統計の結果は利上げや利下げの判断に直結します。
逆に失業率が上昇傾向にある場合、景気減速のシグナルとして株価にはネガティブですが、金融緩和期待から債券価格は上昇しやすくなります。投資家は単に失業率の良し悪しだけでなく、それが金融政策にどう影響するかという「次の展開」を予測して動きます。
中央銀行の政策金利:FOMCや日銀会合が方向性を決める金融政策のコア指標
政策金利とは、中央銀行が景気や物価をコントロールするために操作する基準となる金利です。特に影響力が大きいのが、米国のFRB(連邦準備制度理事会)が開くFOMC(連邦公開市場委員会)と、日本銀行が開く金融政策決定会合です。
ここで決定される金利水準(米国の場合はFF金利の誘導目標)は、銀行の貸出金利や住宅ローン金利、預金金利など、経済全体の金利のベースとなります。
政策金利については以下Q&Aでも説明しています。
公表時期:年8回程度の会合スケジュールと声明文
日米ともに、年8回程度の定例会合を開催して金融政策を決定します。米国のFOMCは通常6週間ごとに開かれ、会合の終了直後に声明文が公表され、続いてFRB議長の記者会見が行われます。
市場参加者は、金利の変更(利上げ・利下げ・据え置き)の結果だけでなく、声明文や議長発言に含まれる微妙なニュアンスの変化から、将来の政策変更のヒントを読み取ろうとします。
投資への影響:利上げ・利下げがもたらす資産価格変動
政策金利の変更は、投資環境を一変させる力を持っています。利上げが行われると、企業や個人の資金調達コストが上がり経済活動が抑制されるため、株価にとっては逆風となります。また、債券市場では利回りの魅力が増した新発債に資金が流れるため、既発債の価格は下落します。
対照的に利下げは、資金調達を容易にし景気を刺激するため、株価上昇の呼び水となりやすく、債券価格も上昇(利回り低下)する傾向があります。このように債券と金利はシーソーの関係にあります。投資においては、実際の決定内容と、事前の市場予想(コンセンサス)とのギャップがサプライズとなり、価格変動を生むことが多い点に注意が必要です。
PMI(購買担当者景気指数):50を分岐点に景況感を映す先行指標
PMI(Purchasing Managers’ Index)は、企業の購買担当者に「新規受注」「生産」「雇用」などの状況をアンケート調査し、指数化したものです。現場の担当者の肌感覚が反映されるため、景況感を敏感かつ迅速に示す指標として知られています。
数値は0から100の間で変動し、50が景気拡大と後退の分岐点となります。50を上回れば景気拡大、下回れば減速を示しており、トレンドの方向性を判断するのに役立ちます。
公表時期:月初に発表される速報性の高さ
PMIの最大の特徴は速報性の高さです。多くの国で翌月の初旬(1日〜数日以内)には前月の結果が公表されます。GDPなどの公的統計が発表されるまでには1ヶ月以上のタイムラグがあるため、PMIは景気の動向をいち早く掴むための先行指標として重宝されます。
調査主体は国によって異なり、米国ではISM(供給管理協会)やS&Pグローバル、日本ではauじぶん銀行などが公表しています。
投資への影響:製造業の好不調と関連株の動き
PMIは市場予想との乖離が株価材料になりやすい指標です。特に製造業PMIが50を超えて上昇基調にあれば、製造業の業績拡大が期待され、景気敏感株を中心に買いが入ります。
逆に50を割り込んで低下が続くと、景気後退リスクが意識され、株式市場全体の下押し圧力となります。債券市場においては、PMIの悪化は将来の利下げ期待につながり、金利低下(債券価格上昇)の要因となります。単月の数値のブレに一喜一憂せず、数ヶ月のトレンドとして上向きか下向きかを見極めることが重要です。
ISM景況指数:製造業・非製造業それぞれの動向を示す米国の先行指標
ISM景況指数は、全米供給管理協会(ISM)が発表する米国のPMIであり、世界中の投資家が最も注目する景気先行指標の一つです。「製造業景況感指数」と「非製造業(サービス業)景況感指数」の2種類があり、どちらも50が景気の分岐点となります。
製造業指数は生産活動の先行指標として、非製造業指数は米国経済の約7割を占めるサービス産業の動向を示す指標として、それぞれ重要視されています。
公表時期:毎月第1営業日・第3営業日のインパクト
ISM製造業指数は毎月第1営業日、非製造業指数は第3営業日頃に発表されます。雇用統計よりも先に発表されることが多く、その月の米国経済の方向性を占う最初の重要イベントとなります。
民間調査ではありますが歴史と信頼性があり、公的統計並み、あるいはそれ以上に市場を動かす力を持っています。
投資への影響:米国株・ドル円相場への感応度
ISM指数の結果は、米国株やドル円相場に即座に反映されます。予想を上回る強い数値が出れば、米国経済の強さが再確認され、株高・ドル高(円安)に振れやすくなります。同時に金利上昇圧力ともなるため、債券価格には下落要因です。
一方で、予想を大きく下回る数値、特に50割れが定着するような場合は景気後退懸念が台頭し、リスク回避の株安・円高が進む可能性があります。製造業とサービス業の両方を確認することで、米国経済がバランス良く成長しているか、あるいは片方だけが牽引しているのかといった質の分析も可能になります。
小売売上高:GDPの7割を占める米国個人消費の勢いと内需の強さ
小売売上高は、百貨店、スーパー、コンビニ、オンラインストアなどでの売上合計額を集計した指標です。消費者が「実際にどれだけお金を使ったか」を直接的に示すため、内需の強さを測る上で欠かせません。
特に米国ではGDPの約7割を個人消費が占めているため、小売売上高の動向はそのまま米国景気の行方を左右する重要データとなります。
公表時期:クリスマス商戦など季節要因の重要性
米国では商務省センサス局が毎月中旬に、日本では経済産業省が毎月下旬に前月のデータを公表します。
小売売上は季節ごとのイベントに強く影響を受けます。特に米国の年末商戦(クリスマス商戦)の時期などは年間の売上の大きな割合を占めるため、市場の注目度が格段に上がります。この時期の数字が良ければ、翌年の景気に対しても明るい見通しが持たれます。
投資への影響:消費関連株と景気サイクルの判断
小売売上高が堅調に推移している場合、小売・流通・サービス関連企業の業績向上期待から株価は上昇しやすくなります。消費の拡大は経済の好循環を意味するため、市場全体にとってもプラス材料です。
債券市場の視点では、消費が強すぎるとインフレ圧力となり、利上げ警戒感から売られる(利回り上昇)要因になります。逆に消費が冷え込んでいる場合は、景気減速による金融緩和期待から債券が買われる傾向があります。月ごとの変動が激しいため、単月ではなく移動平均などでトレンドを確認するのが賢明です。
その他注目すべき重要経済指標
主要な指標以外にも、特定のセクターや心理面を測る重要なデータがあります。ここでは、日本企業の景況感を掴むうえで欠かせない日銀短観や、消費の先行指標となる消費者信頼感指数、生産活動の強弱や景気サイクルの局面を示す統計など、投資家が併せてチェックしておきたい代表的な指標を解説します。
日銀短観(企業短期経済観測調査):業況判断DIで企業の景況感と設備投資意欲を読む
日本銀行が全国の企業を対象に行うアンケート調査です。資本金2,000万円以上の企業約1万社に対し、業績の実績や予測、設備投資計画などを調査します。
特に重要視されるのが「業況判断DI」です。これは景気が「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を引いて算出される指数で、企業のセンチメント(心理)を敏感に映し出します。
公表時期:年4回(3・6・9・12月)発表される速報性の高い指標
年4回(3月・6月・9月・12月)公表されます。調査期間終了から公表までのタイムラグが約1ヶ月と短く、速報性が高いのが特徴です。
投資への影響:DI改善は株高・金利上昇要因、設備投資計画の上方修正も好感
結果は株式市場に強い影響を与えます。業況判断DIがプラス圏で上昇傾向にあれば、景気拡大期待から株価にとってプラス材料となります。逆にマイナス幅が拡大すれば、景気悪化懸念から売り材料となります。
債券市場においても有力な景気指標として扱われます。強い結果が出れば利回り上昇(価格下落)要因となり、弱い結果であれば利回り低下(価格上昇)につながりやすくなります。また、企業の「設備投資計画」の上方修正などは、将来の景気腰折れリスクが低いと判断され、好感される傾向があります。
消費者信頼感指数(消費者マインド):家計のマインドから個人消費の先行きを占う
消費者が現在の景気や雇用、将来の収入などをどう感じているかを指数化したものです。GDPの多くを占める個人消費の動向を占う先行指標として機能します。
代表的なものに、米国の民間調査機関コンファレンス・ボードが発表する指数や、日本の内閣府が発表する「消費者態度指数」があります。数値が改善していれば消費意欲が高まっていることを示し、悪化していれば消費の手控えを示唆します。
公表時期:毎月公表され、特に米国版は月後半の重要イベントとなる
毎月公表されます。特に米国の消費者信頼感指数は、毎月最終火曜日に発表されるため、月後半の重要な指標として注目されます。
投資への影響:マインド改善は小売株にプラス、悪化は景気減速懸念で債券高へ
数値の改善は、耐久財(自動車や家電など)やサービスへの支出増加を予感させるため、小売・サービス関連株にとって買い材料となります。
債券市場への影響は間接的ですが、マインドの悪化が続けば景気減速(リセッション)への警戒感が高まり、安全資産である債券が買われる(利回り低下)要因となる可能性があります。
鉱工業生産指数:製造業の生産・出荷・在庫から景気の体温を測る
経済産業省が作成する指標で、鉱業や製造業など「ものづくり産業」の生産量がどう変化したかを示します。鉄鋼、機械、電子部品など幅広い分野をカバーしており、景気の変動に敏感に反応するため「景気の体温計」の一つとも呼ばれます。
生産だけでなく、出荷や在庫の動きも同時に公表されるため、製品が売れているのか、在庫が積み上がっているのかといった需給バランスを確認するのにも役立ちます。
公表時期:毎月下旬に速報値が発表されGDPより早く動向を確認可能
毎月公表されます。速報値は翌月下旬に発表されるため、GDPなどの四半期統計よりも早く製造業の動向を確認できます。
投資への影響:製造業銘柄との連動性が高く、在庫積み上がりは減産の兆候として警戒
製造業は経済波及効果が大きいため、この指数の上昇は日本経済全体の好調さと受け止められ、株式市場の追い風となります。特に製造業銘柄の株価と連動性が高いです。
一方で、予想外の大幅低下は景気減速のシグナルとして警戒され、株価の下落要因となります。在庫指数が上昇し続けている場合も、将来の生産調整(減産)を予感させるためネガティブに捉えられます。
景気動向指数:先行・一致・遅行指数で景気サイクルの局面を判定する
内閣府が複数の経済指標を統合して算出する総合的な景気指標です。生産、雇用、消費など景気に敏感な約30の指標を採用し、景気の現状把握や将来予測に用いられます。
特徴的なのは、景気に対して先行して動く「先行指数」、一致して動く「一致指数」、遅れて動く「遅行指数」の3つに分類されている点です。これらを組み合わせることで、景気の「山(ピーク)」や「谷(ボトム)」を判定します。
公表時期:毎月公表・翌々月上旬発表
毎月公表されます。通常、翌々月の上旬に速報値が発表されます。
投資への影響:株価や求人を含む先行指数のトレンド転換が売買サインとなる
投資家が最も注目するのは、株価や新規求人数などで構成される「先行指数」です。先行指数の上昇が続けば景気拡大期待が高まり、低下が続けば数ヶ月先の景気後退が懸念されます。
一致指数は現在の景気レベルを確認するために使われますが、相場は常に未来を織り込みに行くため、投資判断においては先行指数のトレンド転換が重要な売買のサインとなることが多いです。
貿易収支:輸出入のバランスから外需の強さと為替圧力を読む
財務省がまとめる貿易統計の一つで、一国の輸出額から輸入額を差し引いた金額です。輸出が輸入を上回れば「貿易黒字」、輸入が輸出を上回れば「貿易赤字」となります。
日本の製品が海外でどれだけ売れているかという外需の強さを示すとともに、国際収支の動向を把握する基礎データとなります。
公表時期:毎月中旬から下旬にかけて発表
毎月公表されます。通常、翌月の中旬から下旬にかけて発表されます。
投資への影響:黒字は円高・赤字は円安要因となりやすいが予想との乖離が鍵
為替レートへの影響が特に大きい指標です。一般的に貿易黒字は、輸出企業が外貨を円に交換する需要を生むため、円高要因とされます。逆に貿易赤字は、輸入代金の支払いで円を売って外貨を買う動きにつながるため、円安要因とみなされます。
株式市場にとっては、輸出関連企業の業績見通しに直結します。ただし、為替への反応は金利差など他の要因も複合的に絡むため、単純な黒字・赤字の結果だけでなく、市場予想との乖離幅に注目する必要があります。
投資における経済指標の実践的な活用テクニック
経済指標は、ただ数値を追うだけでは投資成果につながりません。発表スケジュールを把握し、市場予想との乖離を分析し、時には短期的なノイズを排除するといった「読み解く技術」が必要です。ここでは、プロの投資家も実践している、指標を実際の売買や資産配分に活かすための具体的なテクニックを解説します。
スケジュールの把握と市場予想の確認
投資において「いつ」「何が」発表されるかを知ることは、リスク管理の第一歩です。また、市場価格はすでに公表されている情報を織り込んでいるため、実際に発表された数値そのものよりも、事前の市場予想(コンセンサス)と比べてどうだったかという「サプライズ」の有無が、株価や為替の変動を決定づけます。
アメリカの主要経済指標の発表スケジュールは以下Q&Aでも説明しています。
経済カレンダーで重要イベントをチェックする
多くの証券会社やニュースサイトが提供する経済カレンダーを利用して、重要な指標の発表日時を事前に把握しましょう。
特に雇用統計やFOMC(連邦公開市場委員会)のような重要イベントの前後では、相場が乱高下するリスクが高まります。予期せぬ損失を防ぐためにも、発表直前はポジションを調整したり、持ち高を減らしたりするなどのリスク管理が求められます。
コンセンサス(市場予想)と結果のギャップ(サプライズ)
市場は絶対的な数値の良し悪しよりも、事前の市場予想(コンセンサス)との乖離に反応します。予想より良い結果ならポジティブサプライズとして買われ、悪ければネガティブサプライズとして売られるのが基本です。
たとえ数値自体が悪くても、予想ほど悪くなければ「悪材料出尽くし」として株価が上がることもあります。ニュースを見る際は、結果と予想をセットで確認する習慣をつけましょう。
データの読み解き方と注意点
経済指標の数値は、天候や季節要因、集計方法の変更などにより単月で大きく振れることがあります。瞬間的な数値に踊らされないためには、長期的なトレンド(基調)を確認する視点が不可欠です。また、一つの指標だけでなく、雇用、物価、金利といった複数の要素を関連付けて、経済全体を立体的に捉える分析力が求められます。
単月のノイズを排除し「トレンド」を見る
経済指標は1回分の結果だけで判断せず、3ヶ月から半年程度の推移を見ることが重要です。天候不順やストライキといった一時的な特殊要因(ノイズ)によって、数値が大きく歪むことがあるからです。
単月のブレに一喜一憂せず、移動平均線を見るようなイメージで、景気が改善傾向にあるのか、それとも悪化の一途をたどっているのかという大きな流れを掴んでください。
雇用・物価・金利の連動性を立体的に分析する
経済は生き物であり、各指標は密接に連動しています。例えば「雇用が強く賃金が上がっている」という状況は、景気にはプラスですが、同時に「インフレ懸念による金利上昇」を引き起こし、株価にはマイナスに働く可能性があります。
このように指標ごとのサインが矛盾することもあるため、単独の指標を盲信するのではなく、経済全体のバランスを見極める総合的な視点が大切です。
市場の「織り込み済み」と過剰反応に注意する
理論通りに市場が動かないことも多々あります。好結果が出ても株価が下がる場合、それは市場がすでにその結果を予測し、価格に反映させていた(織り込み済み)可能性があります。
また、AI取引などにより発表直後に過剰反応しても、数時間後には元の水準に戻るケースも珍しくありません。瞬間的な値動きに飛びつかず、市場が何を材料視しているのかを冷静に分析する姿勢が必要です。
長期投資への応用
経済指標はデイトレードのような短期売買の材料としてだけでなく、中長期的な資産形成の羅針盤としても活用できます。景気には「回復・好況・後退・不況」というサイクルがあり、それぞれの局面に適した投資対象が存在します。経済指標を通じて現在の立ち位置を把握することで、長期的な視点に立った戦略的な資産配分が可能になります。
景気サイクル(回復・好況・後退・不況)と資産配分
経済指標が示すトレンドを基に、現在が景気サイクルのどの局面に位置するかを判断しましょう。例えば景気回復期には株式の比率を高め、後退の兆候が見えたら債券や現金の比率を増やすといった調整が有効です。
また、好況期には景気敏感株、不況期にはディフェンシブ株といったように、局面に合わせて業種(セクター)の配分を見直すことで、市場の波に上手く乗る投資が期待できます。
経済指標を使いこなすための3ステップ
経済指標を実際の投資に活かすには、やみくもにすべての数字を追うのではなく、段階的なアプローチをとることが近道です。まずは市場への影響力が大きい基本指標を押さえ、次に発表スケジュールや市場予想を確認し、最終的にご自身の投資対象への具体的な影響を判断するという3つのステップを踏むことで、初心者でも迷わずに市場分析ができるようになります。
ステップ1:まずはGDP・CPI・雇用の3大指標を押さえる
数ある経済指標の中でも、初心者がまず注目すべき基本の指標は「GDP」「CPI」「雇用」の3つです。これらは経済の骨格を成すデータであり、市場分析の土台となります。
まず「GDP(国内総生産)」は、国の経済規模と成長率を示し、景気が拡大しているか後退しているかを判断する最も基本的な指標です。次に「CPI(消費者物価指数)」は、「経済の体温計」とも呼ばれるインフレ指標です。物価変動は中央銀行の金融政策(利上げ・利下げ)に直結するため、投資家が最も警戒するデータの一つです。
そして「失業率」は、労働市場の健全性を測るバロメーターです。景気動向に敏感に反応し、低下すれば景気拡大、上昇すれば景気減速の兆候とされます。これら3つを定点観測することから始めましょう。
ステップ2:経済カレンダーで「発表日時」と「市場予想」を確認する
注目すべき指標がわかったら、次は「いつ発表されるか」を把握します。経済指標の発表日時はあらかじめ決まっているため、証券会社などが提供する「経済カレンダー」をチェックする習慣をつけましょう。
また、投資判断においては数値そのものよりも「事前の市場予想(コンセンサス)と比べてどうだったか」が重要です。予想より良ければポジティブサプライズ、悪ければネガティブサプライズとなり相場が動くため、必ず発表前に予想値を確認しておくことが大切です。
ステップ3:自分の投資対象(株・債券・為替)への影響を理解する
最後に、自分が投資している資産に合わせて指標の見方を調整します。経済指標の結果がもたらす意味合いは、アセットクラス(資産の種類)によって異なるからです。
例えば、株式投資なら景気や企業業績に直結するGDPや小売売上高の好調さは追い風になりますが、債券投資の場合は景気が良すぎて金利が上がると価格下落のリスク要因になります。為替相場であれば、各国の政策金利や貿易収支が通貨の強弱を分ける材料となります。自分のポジションにとって何がプラスで何がマイナスかを整理することで、より戦略的な投資が可能になります。
アセット別の注目ポイント
同じ経済指標の結果であっても、投資する対象が株式か、債券か、あるいは為替かによって、その受け止め方や価格への反応は大きく異なります。ここでは、それぞれのアセットクラスにおいて投資家がどの指標を重視し、どのようなロジックで売買判断を行っているのか、その違いと特徴を整理します。
株・債券・為替への指標の効き方の違い
経済指標を分析する際、市場ごとに「何に反応しやすいか」という感応度は異なります。すべての市場が同じ方向に動くとは限らず、ある指標が良い結果だった時に株は上がり、債券は下がる(金利は上がる)といった逆の動きをすることも珍しくありません。自身の投資対象に特有のメカニズムを理解し、適切な指標を選び出す視点が求められます。
株への指標の影響
株式市場では、企業の売上や利益に直結する「景気」の動向が最優先されます。したがって、GDPや小売売上高などが好調であれば、業績拡大期待から株価の追い風となります。
ただし、景気が良すぎてインフレ率(CPI)が高止まりし、金利が急上昇する局面では注意が必要です。金利コストの増加による企業収益の圧迫や、バリュエーション(割高感)の調整によって、逆に株価にとってマイナス要因となる場合もあります。
株へ影響を与える経済指標については以下Q&Aでも説明しています。
債券への指標の影響
債券市場で最も注目されるのは、インフレ動向と金融政策の行方です。そのため、CPIや、政策金利に影響を与える雇用統計の結果に敏感に反応します。
インフレ率の上昇や雇用の過熱は、将来の利上げ観測を強めるため、債券にとっては価格を下押しする(利回りが上昇する)要因となります。反対に、景気悪化を示す指標が出てインフレ圧力が弱まれば、利下げ期待が高まり、債券は買われやすくなります(利回りは低下します)。
為替への指標の影響
為替市場では、2国間の「金利差」の変化が最大の変動要因となります。そのため、各国の政策金利や、それに影響を与えるあらゆる経済指標が材料視されます。また、貿易収支などの実需にかかわる指標も重要です。
基本的には、経済指標が強く金利上昇が見込まれる国の通貨は買われ、金利低下が見込まれる国の通貨は売られる傾向があります。自国だけでなく相手国の指標と比較して、相対的な通貨の強弱を判断することがポイントです。
この記事のまとめ
経済指標は、数値の良し悪しを追うよりも、何を測る指標で、景気に対して先行・一致・遅行のどこに位置するかを整理することが投資判断の近道です。まずはGDP・CPI・雇用の3大指標を定点観測し、発表日時と市場予想を確認して、株・債券・為替への連動を自分の投資対象に当てはめてみてください。迷ったときは、直近の指標発表を1つ選び、予想と結果、その後の相場反応を記録するところから始めると判断軸が育ちます。不安が残る場合は、投資のコンシェルジュの無料相談で整理すると安心です。

MONO Investment
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
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経済指標
経済指標は、国や地域の経済の状態を評価するために使用されるデータや数値です。これには国内総生産(GDP)が含まれ、これは一定期間内に国内で生産された財とサービスの総価値を示し、経済の全体的な規模と成長を測ります。失業率も重要な指標で、労働力人口の中で仕事を求めているが就職できていない人々の割合を示し、経済の健康状態を反映します。また、インフレ率は物価の変動を示し、消費者物価指数(CPI)に基づいて算出され、物価の安定性や通貨の価値を評価するのに役立ちます。 鉱工業生産の数値は、製造業、鉱業、公益事業の出力を示しており、これらのセクターの活動の活性度を測るのに使われます。貿易収支は国の輸出と輸入の差額を表し、国際貿易のバランスの状態を示します。 これらの経済指標は、特に政府や中央銀行が金融政策や財政政策を決定する際に重要な役割を果たします。例えば、インフレ率が高い場合、金利を引き上げることが検討されるかもしれません。また、高い失業率は、政府による追加の景気刺激策の可能性を示唆します。経済指標を理解し分析することで、投資家や政策立案者はより情報に基づいた意思決定が可能になり、リスクを管理し、戦略を調整することができます。
GDP(国内総生産)
GDP(国内総生産)とは、一定期間内に国内で生産された財(モノ)やサービスの総額を金額で表した経済指標で、国の経済規模を示す最も基本的な指標のひとつです。 GDPが前年より増加していれば「経済が成長している」、逆に減少していれば「経済が縮小している」と判断されます。一般的に、GDPの増減率は経済成長率としてニュースなどで報じられます。 GDPには主に以下の2つの種類があります: - 名目GDP:その時点の価格で計算したGDP。物価変動の影響を含みます。 - 実質GDP:物価の変動を取り除いて算出したGDP。経済の実質的な成長をより正確に把握できます。 また、GDPの構成は「個人消費」「企業の投資」「政府支出」「輸出−輸入」などに分類され、それぞれの動向を分析することで、景気のどの部分が強い/弱いのかを把握することができます。 資産運用の観点では、GDPの成長が強ければ企業の売上や利益も増えやすくなり、株式市場にとっては好材料とされます。一方で、成長が急すぎるとインフレ懸念が強まり、中央銀行が利上げに動く可能性もあるため、投資家はGDPの数値だけでなく背景にも注目します。 このように、GDPは経済全体の健康状態を測る“体温計”のような役割を果たし、市場や金融政策に大きな影響を与える重要な指標です。
失業率
失業率とは、労働力人口(働く意思と能力のある15歳以上の人)のうち、仕事を探しているにもかかわらず職に就けていない人の割合を示す指標です。 一般に、失業率が低い=労働市場が堅調で経済が好調と判断され、逆に失業率が高い=企業の雇用意欲が弱く、景気が悪化している可能性があると考えられます。 失業率は、景気の遅行指標(=景気の変化のあとから動く指標)とされており、すでに進行中の景気の良し悪しを確認するために使われます。たとえば、リストラや倒産が増え始めたあとに、失業率の悪化が統計として現れることが多いです。 金融市場においても失業率は注目される指標であり、とくに米国では雇用統計とセットで市場が大きく反応します。失業率が予想より改善すれば、景気に対する安心感から株価が上昇する場合もありますが、インフレ懸念から利上げ観測につながることもあり、相場の反応は複雑です。 また、失業率の水準だけでなく、「なぜ上がったか・下がったか」の中身も重要です。たとえば、労働参加率の変動によって失業率が変わることもあり、単純な判断には注意が必要です。
政策金利
政策金利とは、中央銀行が民間の金融機関に資金を貸し出す際の基準となる金利のことで、金融政策の中核をなすツールです。 中央銀行はこの金利を操作することで、経済全体の金利水準や通貨の流れを調整し、景気や物価の安定を図ります。たとえば、景気が冷え込んでいるときには政策金利を引き下げて(利下げ)お金を借りやすくし、消費や投資を促進します。逆に、インフレが進みすぎているときには政策金利を引き上げて(利上げ)需要を抑え、物価の上昇をコントロールしようとします。 政策金利の変更は、住宅ローンや企業の融資金利、預金金利など、私たちの生活に関わる金利にも波及します。また、株式市場・債券市場・為替市場にも大きな影響を与えるため、投資家にとっては極めて重要な経済指標です。 たとえば、中央銀行が予想以上に利上げを行った場合は、株式市場が下落し、通貨が上昇する可能性があります。逆に利下げが行われれば、株高・通貨安につながることが一般的です。 各国の中央銀行(例:日本銀行、FRB、ECBなど)は、定期的に会合を開き、経済情勢や物価の動向を見ながら政策金利を調整しています。
PMI(購買担当者景気指数)
PMI(Purchasing Managers' Index、購買担当者指数)とは、製造業やサービス業の企業に勤務する購買担当者へのアンケート調査をもとに、景気の動向を把握するために用いられる経済指標です。 一般的に、PMIの数値が 50を上回ると経済の拡大(景気が良い方向) を、50を下回ると経済の縮小(景気が悪化傾向) を示します。 調査対象には「新規受注」「生産」「雇用」「納期」「在庫」などがあり、現場に近い購買担当者の“肌感覚”を反映するため、景気の先行指標として非常に注目されています。 PMIには主に以下の2種類があります: - 製造業PMI:工場の生産活動の活発さを測る指標。景気の先行きを占う意味で特に重視されます。 - サービス業PMI:サービス業の活動状況を表し、先進国ではGDP比で大きな割合を占めるため重要性が高まっています。 アメリカ、中国、ユーロ圏、日本などで毎月公表されており、発表直後には株式・債券・為替市場が大きく反応することもあります。たとえば、アメリカのISM製造業PMIが市場予想を下回れば、景気減速への懸念から株価が下落することがあります。 このように、PMIは景気の“スピードメーター”とも呼ばれ、投資判断において非常に重要な指標のひとつです。
小売売上高
小売売上高とは、一定期間内に消費者が店舗やオンラインで購入した商品の総額を示す経済指標です。 個人消費の動きを反映する指標であり、消費がGDP(国内総生産)に占める割合が大きい国においては、景気の動向を把握するうえで特に重要です。たとえばアメリカでは、GDPの約7割を個人消費が占めるため、「米国小売売上高」の発表は世界中の投資家から注目されています。 小売売上高の増加は、消費者の購買意欲の高さを示し、景気の拡大が続いている可能性を示唆します。一方、売上高が減少している場合は、消費の停滞や景気の減速が懸念される材料となります。 この指標の発表後には、株式市場や為替市場が反応することがあります。たとえば、小売売上高が市場予想を大きく上回った場合、景気が想定よりも強いと判断され、株価が上昇したり、中央銀行の利上げ観測が強まり通貨高につながるケースもあります。 このように、小売売上高は個人消費の健康度を測る“体温計”のような役割を果たし、資産運用における重要な判断材料となります。
消費者信頼感指数
消費者信頼感指数とは、消費者が経済状況や自分の家計についてどのように感じているかを示す指標です。消費者の心理が良好であれば、消費や投資が活発になり、経済成長に貢献します。
ISM製造業景況感指数
ISM製造業景気指数とは、アメリカの製造業の現在の景気の状態の印象を示す指標。これは米供給管理協会(Institute for Supply Management)がアメリカ国内の300社以上の製造業にアンケートを実施し、公表しているものである。アメリカはGDPランキングにおいて1位の国であり世界の経済動向を反映しやすい点と、毎月第一営業日にこの指標は発表されるのでほかの指標に比べて速報性がある点で、この指標は有用であるとされている。具体的には「生産」、「新規受注」、「在庫」、「価格」、「雇用」などの項目について、前月と比較し結果をスコアで表す。50が景気判断の分岐点となっており、50を上回ると製造業の景況が良く、50を下回ると悪化していることを示している。
ISM非製造業景況指数
ISM非製造業景況指数とは、米国のサービス業を中心とした業種における景気の動向を示す経済指標であり、全米供給管理協会(Institute for Supply Management, ISM)が毎月発表しています。この指数は、企業の購買担当者に対する調査をもとに算出され、50を基準として、50を上回れば前月と比べて活動が拡大、50を下回れば縮小していると解釈されます。特に米国のGDPの約8割を占める非製造業の動向を把握できることから、市場関係者にとって注目度の高い指標となっています。 構成要素は、事業活動、新規受注、雇用、供給者納期、在庫の5項目で、これらの拡大・縮小の度合いを指数化して総合指数が算出されます。中でも事業活動と新規受注の比重が高く、短期的な経済変化の先行指標とされる傾向があります。指数は毎月第3営業日頃(米国東部時間午前10時)に公表され、その数値が想定外であった場合、為替・金利・株式市場に大きく影響を与えることもあります。 もともとこの指標は「ISM非製造業景況指数(ISM Non‑Manufacturing PMI)」と呼ばれていましたが、2020年に「Services ISM Report On Business(略称:ISM Services PMI)」へと名称が変更されました。これは、より直感的にサービス業に焦点を当てていることを伝えるためのもので、指標の中身そのものに大きな変更はありません。なお、非製造業といっても、サービス業だけでなく、建設業や鉱業などの一部も対象に含まれています。 一方で、この指数には限界もあります。例えば、調査は「前月比での方向性(良くなったか悪くなったか)」を尋ねる形式であるため、絶対的な水準や成長率を直接示すものではありません。また、調査対象者の主観が数値に反映されるため、景況感や心理によって変動しやすい側面もあります。 このように、ISM非製造業景況指数は、米国のサービス業を中心とする経済活動の動きをタイムリーに把握できる重要指標ですが、読み解く際にはその構成や限界を理解することが大切です。
景気サイクル(景気循環)
景気サイクル(景気循環)とは、経済が「好況(成長)→後退→不況→回復」といった段階を周期的に繰り返す現象のことです。 各局面では、企業の売上や利益、消費者の支出、雇用状況などが大きく変化します。たとえば、好況期には企業の投資や雇用が活発になり、消費も増えます。一方、不況期には企業の利益が減少し、失業率が上昇するなど経済全体が縮小傾向になります。 景気の動きは、中央銀行の金融政策(利上げ・利下げ)や、政府の財政政策(公共投資や減税など)にも大きな影響を与えます。政策は通常、景気を安定させる方向で調整されます。 また、景気サイクルは資産運用においても重要な判断材料となります。たとえば、回復期〜好況期には株式市場が上昇しやすく、後退期〜不況期には債券やディフェンシブ銘柄が注目されやすくなります。投資家は景気の局面を見極めながら、ポートフォリオを調整することが求められます。 景気サイクルの長さやタイミングは一定ではなく、外部要因(戦争、金融危機、パンデミックなど)によっても左右されますが、長期的にはこの波を繰り返す傾向があります。
金融政策
金融政策とは、中央銀行が物価の安定や景気の安定を目指して、金利や通貨の供給量を調整する政策のことです。 中央銀行は、景気が過熱しすぎてインフレが進まないようにブレーキをかけたり、景気が落ち込んだときには刺激策として金融緩和を行ったりして、経済全体のバランスを保とうとします。 主な金融政策の手段には、以下のようなものがあります: - 政策金利の操作(利下げ・利上げ):短期金利を上下させて、消費や投資を刺激・抑制します。 - 公開市場操作:中央銀行が国債などを売買することで、市場の資金量を調整します。 - 預金準備率の変更:銀行が中央銀行に預ける準備金の割合を調整することで、貸し出し可能な資金量をコントロールします。 金融政策は、株式や債券、為替市場にも大きな影響を与えます。たとえば、利下げが行われれば企業の資金調達コストが下がり、株価の上昇要因となる一方で、金利低下により通貨が下落しやすくなることもあります。 このように、金融政策の動向は資産運用において非常に重要なファクターであり、中央銀行の声明や会合の結果には多くの投資家が注目しています。
デフレ(デフレーション)
デフレとは、物価が継続的に下落する現象を指します。 一見すると「モノやサービスが安く買える」という点で消費者にとっては好ましく思えますが、デフレが長く続くと経済全体に深刻な悪影響を及ぼします。 物価が下がると、企業の売上や利益が減少し、人件費の削減や設備投資の抑制が起こります。その結果、賃金の引き下げや雇用の悪化につながり、消費者の購買意欲も低下します。このように、デフレは経済活動を縮小させる「負の連鎖」を引き起こすリスクがあります。 デフレはまた、金融市場や資産運用にも影響を与えます。将来の物価が下がると予想される中では、お金の価値が相対的に高まるため、人々が現金を使わずに貯め込む傾向が強まります。これは投資意欲の減退にもつながり、株式市場や不動産市場の低迷を招くことがあります。 そのため、中央銀行はデフレを回避するために、利下げや量的緩和などの金融緩和政策を通じて物価を引き上げ、経済の活性化を図ろうとします。特に日本では、1990年代以降、長期的なデフレとその克服が大きな課題となってきました。
利上げ
利上げとは、中央銀行が政策金利を引き上げることを指します。 政策金利が上がると、銀行が企業や個人にお金を貸す際の金利も高くなり、住宅ローンや企業の借り入れコストが上昇します。その結果、消費や投資が抑えられ、経済の過熱を冷ます効果が期待されます。 一般的に、物価上昇(インフレ)が加速しているときや、景気が過熱気味と判断されたときに、インフレを抑制する目的で利上げが行われます。 利上げは金融市場にも大きな影響を与えます。金利が上がることで、預金や債券の利回りが高まり、相対的に株式の魅力が薄れるため、株価が下落する要因となることがあります。また、高金利はその国の通貨の魅力を高めるため、為替市場では通貨高の要因になることが一般的です。 ただし、利上げを急激に行いすぎると、企業や個人の資金繰りが悪化し、景気後退を招くリスクもあります。そのため、中央銀行は物価と景気のバランスを見ながら、段階的かつ慎重に利上げを判断します。
利下げ
利下げとは、中央銀行が政策金利を引き下げることを指します。 政策金利が下がると、銀行が企業や個人にお金を貸す際の金利も低くなり、住宅ローンや企業向け融資などの借り入れがしやすくなります。その結果、消費や投資が活発になり、景気の回復や拡大が期待されます。 一般的に、景気が低迷しているときや、物価上昇(インフレ)の圧力が弱いときに、景気刺激策として利下げが行われます。 また、利下げは金融市場にも大きな影響を与えます。金利が下がることで企業の資金調達コストが減り、利益拡大が期待されるため、株価の上昇要因となることがあります。一方で、金利の魅力が下がることで自国通貨が売られやすくなるため、為替相場では通貨安の要因となることもあります。 ただし、利下げを長期間続けたり過剰に行ったりすると、消費や投資が加熱しすぎて需要が過剰になり、物価が急激に上昇する(インフレが加速する)リスクもあります。そのため、中央銀行は利下げを行う際に、経済全体のバランスや将来のインフレリスクを慎重に見極める必要があります。
市場予想(コンセンサス)
市場予想(コンセンサス)とは、経済指標や企業業績に関して、証券会社や調査機関のアナリストたちが発表前に予測した平均的な見通しのことです。 たとえば、米国の雇用統計やGDP成長率、企業の決算発表などについて「どのくらいの数値になるか」を専門家たちが事前に予測し、それらを平均した値が「市場予想」として示されます。 投資家はこの市場予想と実際の結果(実績値)を比較して、相場がどのように反応するかを判断します。たとえば、雇用者数が市場予想を大きく上回れば景気に対する安心感から株価が上昇しやすく、逆に予想を下回ると景気懸念から株価が下がることがあります。 このように、市場予想は資産運用における重要な判断材料の一つであり、発表前後の値動きを予測する際に広く活用されています。
インフレ率
インフレ率とは、物価がどれだけ上昇したかを示す指標です。一般的には、消費者が購入するモノやサービスの価格が一定期間でどの程度上昇したかをパーセンテージで表します。インフレ率が高いと物価が上がり、同じ金額でも購入できる商品が少なくなります。逆にインフレ率が低い、またはマイナスの場合は物価が安定または下落している状態を示します。
景気指標
景気指標とは、国や地域の経済状況を把握するための統計データです。景気の動向を把握するために、失業率、物価、消費、投資などのさまざまなデータが使われます。代表的な指標には、GDP(国内総生産)、雇用統計、消費者信頼感指数などがあります。これらの指標は、政府や企業の政策判断にも大きな影響を与えます。
債券価格
債券価格とは、債券が市場で取引される際の価格です。債券の価格は、発行時の利率(クーポン)、残存期間、信用リスク、そして市場金利の変動によって変わります。一般的に、市場金利が上昇すると債券価格は下がり、逆に市場金利が下がると債券価格は上昇します。
雇用統計
雇用統計とは、国や地域の労働市場の状況を示す経済指標であり、景気動向や金融政策に大きな影響を与える重要なデータです。 主に「就業者数」「失業率」「賃金の動き」などが含まれ、各国で毎月や四半期ごとに公表されています。たとえば、アメリカでは「非農業部門雇用者数(NFP)」が代表的な指標で、米連邦準備制度理事会(FRB)の金利判断にも影響を与えます。また、日本では総務省が「労働力調査」を発表し、失業率や就業率などが注目されます。ユーロ圏では、EU統計局(Eurostat)による失業率データが投資家の関心を集めます。 雇用統計は、各国の中央銀行が景気過熱や景気後退を判断するための材料として利用されるため、発表直後には株式・債券・為替などの金融市場が大きく動くことがあります。たとえば、雇用が予想以上に増えていれば景気の好調さが意識され、株価が上昇したり通貨が買われたりすることがあります。反対に、失業率の上昇や賃金の伸び悩みが見られると、景気への不安から市場が下落することもあります。 雇用統計の発表タイミングは国によって異なりますが、特にアメリカの雇用統計(通常は毎月第1金曜日)は世界中の投資家が注目しており、資産運用を行ううえで重要なチェックポイントとなります。




