専門用語解説
SPAC(スパック)
SPAC(スパック)とは「特別買収目的会社(Special Purpose Acquisition Company)」のことで、自らは事業を持たず、未上場企業の買収を目的として設立される上場企業です。まずはスポンサーと呼ばれる発起人が投資家から資金を集め、証券取引所にSPACとして上場します。その後、通常2年以内をめどに買収対象となる未上場企業を見つけ、合併という形でその企業を間接的に株式市場へ上場させます。このプロセスは「デ・スパック(de-SPAC)」と呼ばれます。
SPACを通じた上場は、通常のIPO(新規株式公開)に比べて手続きが簡素でスピーディーなため、特に2020年〜2021年頃には米国を中心に急速に普及しました。非上場企業にとっては、市況や審査に左右されにくい上場手段として魅力があり、スポンサーにとっても成功時には高いリターンを得られる仕組みになっています。
投資家の立場から見ると、SPACはまず「現時点では何も買っていない空箱」に投資する形になります。実際の買収先が決まるまでは、集めた資金の大半は信託口座に預けられて保全されており、買収案が提示された際には、株主総会で可否を判断し、希望すれば自分の持ち株を換金(償還)して現金で引き出すことも可能です。
一方で、リスクも少なくありません。買収が成立して上場が実現しても、買収先企業の実態や将来性が不透明なことがあり、情報開示も通常のIPOに比べて簡略化されているケースが多く見られます。また、スポンサーは発起人として無償または極めて安価に取得した株式を持っているため、合併後に既存投資家の持ち株が大きく希薄化する「スポンサー報酬(プロモート)」の仕組みにも注意が必要です。
SPACは、将来有望な未上場企業に早期にアクセスできる魅力的な手段である一方で、買収先が未定のまま投資するという特性上、不確実性や価格変動リスクも高くなります。仕組みをよく理解したうえで、自分がどの段階のSPACに投資しているのか、買収提案がどのような内容かを慎重に見極めることが大切です。