株価が暴落するとNISAはどうするべき?投資家がやってはいけないことと判断軸を整理

株価が暴落するとNISAはどうするべき?投資家がやってはいけないことと判断軸を整理
難易度:
執筆者:
公開:
2026.01.29
更新:
2026.01.29
株価が急落すると、NISA口座の評価額が一気に下がり「いま売るべきか」「積立を止めるべきか」と迷いがちです。焦って行動すると、狼狽売りや短期売買への転換で損失を確定させ、長期運用の前提を崩すリスクもあります。この記事では、暴落の基本(定義・主因)を押さえたうえで、NISAでやってはいけない行動と、資金計画・リスク許容度・投資期間の軸で継続/見直しを判断する手順まで具体的に解説します。
サクッとわかる!簡単要約
この記事を読むと、暴落が起きる背景と「暴落=即売却」という誤解を整理し、評価額下落時に判断を誤りやすい行動パターンを把握できます。そのうえで、生活防衛資金と支出予定、投資目的までの期間、保有商品のリスクを点検し、積立の継続・減額・一部売却などを自分の条件に合わせて選べるようになります。結果として、不安に反応するのではなく手順に沿って冷静に判断できます。
暴落は「必ず」起こる
株式市場の歴史を振り返れば、暴落は決して例外的な出来事ではありません。1987年のブラックマンデーでは世界同時株安が発生し、2000年代初頭にはITバブルが崩壊しました。
2008年のリーマンショックで日経平均株価は約50%下落し、2020年のコロナショックでは数週間で30%以上も急落しています。
こうした暴落は10年に1度、あるいはもっと頻繁に発生しており、投資を続ける限り必ず遭遇することになります。重要なのは、暴落を避けようとするのではなく、「暴落は必ず起こるもの」として受け入れる覚悟です。
市場から完全に逃れることは不可能であり、タイミングを完璧に予測することはできません。むしろ、暴落を投資の一部として織り込み、長期的な視点で資産形成に取り組む姿勢が求められます。NISA投資においても、この現実を直視したうえで冷静な判断を下すことが重要です。
暴落時はNISAの「売買」より「計画」を点検する
株価が大きく下がると「今すぐ売るべきか」「積立を止めた方がよいのか」と焦る気持ちが生まれます。しかし、暴落局面でもっとも大切なのは、慌てて売買を判断することではありません。
自分の投資計画を再点検し、当初の目的や資金の性質に照らして「継続」「縮小」「売却」を冷静に判断する作業が先決です。
判断の順番は3つだけ
暴落は一時的な現象であり、過去のデータを見ても長期的には市場は回復してきました。
金融庁の資料によると、国内外の株式・債券に積立分散投資した場合、保有期間5年では損失が出るケースがありました。しかし、保有期間20年では投資収益率が年率2〜8%の範囲に収まり、元本割れのリスクを抑えられる傾向が示されています(将来を保証するものではありません)。
大切なのは目先の価格変動ではなく、投資を始めた理由や使う時期を思い出し、それに合った行動を選ぶことです。
1. 生活防衛資金は確保できているか
生活防衛資金とは、病気や失業など予期せぬ事態に備えて確保しておくお金です。一般的には生活費6か月以上が目安とされています。
投資に回した資金が生活防衛資金を削ってしまっている場合、暴落時に家計が苦しくなり、不本意な売却を余儀なくされるかもしれません。その結果、回復局面を逃してしまうため、生活防衛資金は別途確実に用意する必要があります。
必要な生活防衛資金は、働き方や家族構成によって異なります。詳しくは、こちらの記事を参考にしてみてください。
2. 投資期間はどれくらいあるか
資金を実際に使う時期が5年以内なのか、10年以上先なのかで対応が変わります。住宅購入や教育費など近い将来に使う予定の資金を投資している場合、回復を待つ時間的余裕がないかもしれません。
一方、老後資金など10年以上先に使う予定の資金であれば、暴落後の回復を待つ選択肢が現実的です。
3. 保有している商品のリスクは適切か
個別株や特定地域に集中した投資信託など、値動きが大きい商品に偏っている場合、暴落時の下落幅も大きくなります。分散が効いた商品と比べて、リスクの高い商品構成になっていないか確認が必要です。
この3つの軸を順番に点検することで、感情的な判断を避け、自分の状況に合った行動を選べるようになります。
暴落局面で「やること」「やらないこと」の早見表
冷静な判断を妨げる主な要因は、「欲望」と「恐怖」です。投資をしている最中に暴落に巻き込まれたとき、基本的には「慌てて売却する」のは避けるべきです。
暴落時の行動を整理するため、以下の表で「やること」と「やらないこと」を確認しましょう。
| 状況 | やること | やらないこと |
|---|---|---|
| 生活防衛資金が不足 | ・生活費の確保を最優先 ・必要な分だけ段階的に売却を検討 | ・全額を一度に売却 ・借金をして投資を継続 |
| 投資期間が10年以上ある | ・積立投資を継続 ・保有商品の見直し(分散が効いているか確認) | ・慌てて売却 ・積立を停止 |
| 投資期間が5年以内 | ・リスク資産の比率を段階的に下げる ・債券など安定資産への移行を検討 | ・すべてを株式のまま保有 ・大幅な買い増し |
| 集中投資をしている | ・分散投資への組み替えを検討 ・段階的にリバランス | ・一気に全銘柄を売却 ・さらに集中投資を強める |
| 余裕資金がある | ・ドルコスト平均法で積立継続 ・スポット購入を慎重に検討 | ・一括で大量に買い増し ・レバレッジ商品への投資 |
暴落しているときはあなたの資産がどんどん減っていく状態であるため、「恐怖」が正しい行動や意思決定を妨げてしまうのも無理はありません。しかし、恐怖に負けて運用している資産を売却してしまうと、ほぼ必ず投資で失敗します。
暴落は一時的な現象であり、長期投資の視点を持てば、むしろ平均取得価格を下げるチャンスとも捉えられます。まずは自分の投資計画を確認し、冷静に次の一手を判断しましょう。
そもそも「暴落」とは何か:定義・起き方・回復までの時間を整理
株価が大きく下がったとき、ニュースでは「暴落」「下落」「調整」など、さまざまな表現が使われます。これらの言葉の違いを正しく理解しておくと、今起きている状況の深刻度を冷静に判断できるようになります。
暴落は経済的な要因に加えて、投資家のパニックによって加速されるという特徴があります。売りが売りを呼ぶ展開となり、冷静な判断が難しくなる局面です。
暴落・下落・調整の違い
株価が下がる現象にはいくつかの種類があり、それぞれ意味合いが異なります。誤解を避けるため、まず言葉を整理しておきましょう。
下落
株価が下がることを広く指す一般的な表現です。下落幅や期間に関係なく使える言葉で、前日より株価が安くなった状態を示します。
調整
株価が過熱したり割高になったりした際に、適正な水準に戻る過程を指します。一般的には直近1年間の高値から10%程度下落した状態を調整局面と呼びます。
調整は市場サイクルで起きる自然な動きであり、必ずしもネガティブな現象ではありません。むしろ、過度に上昇した株価が健全な水準に戻る過程ともいえます。
暴落
株価が急激かつ大幅に下落することを指します。「数年に1回あるかないかの厳しい下落」というイメージで、一般的には1日の株価下落率が10%を超える場合を指します。
日経平均株価の1日の下落率でみると、2024年8月5日は12.4%下落し、歴代下落率の2位を記録しました(1位は1987年10月20日の14.9%)。暴落時には好業績の銘柄も含めて大幅な下落に見舞われ、全面安となる傾向があります。
暴落が起きる主因:金融政策・景気・信用不安・地政学・需給
暴落が起きる原因は複雑ですが、主に5つの要因に分類できます。これらを理解しておくと、ニュースを見たときに「なぜ下がっているのか」を冷静に分析できるようになります。
1. 金融政策の転換
中央銀行による金利の引き上げや引き下げは、株価に大きな影響を与えます。金融引き締め(金利上昇)は企業の資金調達コストを上げ、業績悪化の懸念から株価が下落しやすくなります。
2024年8月の暴落では、日銀の利上げと米国の景気後退懸念が重なり、大きな下落につながりました。
2. 景気の悪化
失業率の上昇や企業業績の下方修正など、景気が減退すると株価は下落します。特に雇用統計などの経済指標が市場予想を大きく下回ると、投資家心理が冷え込み、売りが加速しやすくなります。
3. 信用不安(金融システムの問題)
2008年のリーマンショックは、サブプライムローンの破綻による金融機関の信用不安が世界的な株価暴落を引き起こした典型例です。
金融システムの問題は連鎖的に広がりやすく、一つの金融機関の破綻が他の金融機関や実体経済にも波及する恐れがあります。
4. 地政学リスク
戦争やテロ、国際紛争などの地政学リスクは、市場に不透明感をもたらします。昨今では、ロシアとウクライナの紛争や中東での紛争などが代表例です。
投資家が極度に嫌うのは「不透明感」であり、リスク要因が増えると積極的な投資を控えざるを得なくなります。
5. 需給の急変と投資家心理
大口投資家による大量売却や、信用取引での強制決済が連鎖的に発生すると、需給バランスが崩れて暴落につながります。また、下落を見た投資家が恐怖心から売りに走る「狼狽売り」も、暴落を加速させる要因です。
暴落が起きた後はいつ回復するのか
暴落が起きると「いつ回復するのか」が気になります。しかし、回復時期を正確に予測することは専門家でも困難です。
それよりも重要なのは、暴落の種類によって回復期間が異なることを理解し、長期化する前提で備えることです。
回復期間は暴落の原因によって異なる
過去の事例を見ると、回復期間にはばらつきがあります。2020年のコロナショックでは約5か月で回復しましたが、2008年のリーマンショックでは回復に約4年を要しました。
一時的なショックによる暴落は比較的早く回復する傾向がありますが、金融システムの根本的な問題が原因の場合は、回復に長い時間がかかる可能性があります。
長期的には市場は回復・成長してきた
暴落は一時的な現象であり、長期的には株価は経済成長に合わせて上昇してきました。過去5年の日経平均株価を見ると、2024年8月の下落での底値は約1年前の高値と同じ水準でした。
短期的には不安視されることが多くても、長期的に見れば回復しており、むしろ買いの好機であったことがわかります。
見るべきポイントは「予測」ではなく「分類」
暴落時に大切なのは、回復時期を予測することではありません。今起きている暴落が「一時的なパニックか」「構造的な問題か」を分類し、自分の投資期間と照らし合わせて対応を判断することです。
投資期間が10年以上あれば、過去のデータからも回復を待つ選択肢が現実的です。一方、近い将来に資金を使う予定がある場合は、回復を待つ時間的余裕がないかもしれません。暴落の原因を理解し、冷静に状況を分析することで、感情的な判断を避けやすくなります。
暴落時に投資家がやってはいけないこと
暴落が起きると、不安や恐怖から冷静な判断ができなくなりがちです。しかし、感情的な行動は長期的な資産形成を台無しにする可能性があります。
暴落時に絶対に避けるべき4つのNG行動と、その代替策を具体的に解説します。
NG1:狼狽売り(損失確定)
暴落時にもっとも避けたい行動が「狼狽売り」です。狼狽売りとは、株価が急落する様子を見て恐怖心から慌てて保有資産を売却してしまう行為を指します。
狼狽売りと損切りの最大の違いは「計画性の有無」です。損切りは事前に決めたルールに基づいて機械的に行う行為である一方、狼狽売りには計画性がなく、感情的な判断によるものです。
売却しなければ「含み損」の状態であり、実際に損失が出ているわけではありません。しかし、売却すると損失が確定してしまいます。その後の回復局面も逃してしまうため、メリットは何もありません。
NG2:積立停止
暴落時に積立投資を停止してしまうことも、大きな機会損失につながります。NISAのつみたて投資枠を利用している場合、定期的に一定金額を投資することで価格が低いときには多く購入できます。
積立投資の強みは「ドルコスト平均法」にあります。これは、定期的に一定額を投資することで、価格が高いときは少なく、安いときは多く購入し、平均取得価格を下げる効果が期待できる手法です。
暴落時に積み立てをストップしてしまうと、安く購入できるチャンスを逃してしまいます。その結果、回復局面で資産を増やす機会を逃してしまうのです。
ドルコスト平均法の仕組みを詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
NG3:下落局面での乗り換え衝動
暴落時には「今の銘柄がダメなら、別の商品に乗り換えよう」という衝動に駆られることがあります。しかし、これは新たなリスクを取り直す行為になりやすく、注意が必要です。
よくある乗り換えパターン
- 話題の商品への乗り換え:SNSやニュースで「この商品なら下がらない」「今はこれが買い時」といった情報を見て、保有商品を売却して新しい商品に乗り換えてしまうケース
- レバレッジ商品への移行:「早く損失を取り戻したい」という焦りから、レバレッジを効かせた商品や個別株など、よりリスクの高い商品に手を出してしまうケース
- 短期売買への転換:長期投資のつもりで始めたのに、暴落をきっかけに「タイミングを見て売買する」短期投資に切り替えてしまうケース
乗り換えにより、損失を確定させてしまうだけでなく。新しい商品について十分に理解しないまま購入してしまう恐れがあります。また、NISAの場合は一度売却した枠は翌年まで再利用できないため、非課税投資の機会を失ってしまう点も見逃せません。
NG4:「一括で取り返す」買い増し
暴落時に「安くなったから大量に買い増そう」と考えるのも、一見合理的に見えて危険な行動です。暴落がどこまで続くかは誰にも予測できません。一括で買い増した直後にさらに下がれば、損失が拡大します。
また、手持ちの余裕資金をすべて投資に回してしまうと、本当に必要なときに現金が使えなくなります。投資額が大きくなるほど、価格変動による精神的な負担も大きくなるでしょう。
保有している株や投資信託などの価格が下落したときに、同じ銘柄をあえて買い増しして平均取得単価(平均コスト)を下げる投資手法を「ナンピン買い」と言います。仕組みについては、こちらのQ&Aを参考にしてみてください。
暴落時に慌てないための実務手順
暴落が起きてから慌てて考えるのではなく、平時のうちに「暴落時の行動手順」を決めておくことが重要です。
このセクションでは、暴落時に冷静に判断するための5つのステップを解説します。これらの手順を事前に理解し、実際に自分の状況を確認しておくことで、いざという時にパニックにならずに済みます。
Step1:生活防衛資金と近い支出予定を確認する
暴落時に最初にすべきことは、「本当に今売る必要があるのか」を客観的に判断することです。そのためには、現在の資金状況を正確に把握する必要があります。
生活防衛資金が確保できていて、近い将来に大きな支出予定がない場合は、暴落時でも慌てて売却する必要はありません。一方、生活防衛資金が不足している場合や、来年の学費など近い将来に使う予定の資金を投資に回していた場合は、段階的な売却を検討する正当な理由になります。
Step2:投資期間で継続/縮小/一部売却を決める
生活防衛資金を確認したら、次は「投資期間」の観点から今後の方針を決めます。10年以上の投資期間があるなら、基本的には継続が最善の選択です。
NISAのつみたて投資枠を利用している場合、定期的に一定金額を投資することで価格が低いときには多く購入できます。将来的に資産を増やす機会を逃さないためにも、株価の下落局面こそ積立を継続しましょう。
一方で、3年以内に使う予定の資金を株式に投資していた場合、回復を待つ時間的余裕がありません。この場合は、3〜6回に分けて売却するなど、段階的な売却を検討しましょう。
Step3:保有商品の棚卸し(分散・地域・通貨・コスト)
継続の方針が決まったら、保有商品の内容を詳しく確認します。これは、「何が暴落しているのか」を理解するためです。
投資商品は値動きがあるものなので、各資産の値動きによって最初に決めた資産配分から徐々に変化していきます。必要に応じて保有商品の棚卸しを行い、最適なバランスに戻すことが選択肢の一つになります。
Step4:積立設定の扱い(継続/減額/増額の条件)
積立投資を行っている場合、設定をどうするかを決めます。基本的には、複利効果を活かすためにも、運用を継続しましょう。
やむを得ず売却する場合でも、まずは積み立て金額を減額するか、それでも厳しい場合は一時停止、という段階的な対応が賢明です。
Step5:次の暴落に備えてルールを決める
一度暴落を経験したら、次に備えて自分なりのルールを決めておきましょう。暴落で何を感じたか、その感情や経験こそが次へ活かすヒントとなります。
たとえば、パニックに陥った方はリスクの取りすぎです。投資額を減らす、債券を混ぜるなど、「下落しても平常心でいられる」ポートフォリオへ見直しを行いましょう。我慢できないリスクを取っても、結局は売却して損失を確定してしまいます。
一方で、「買い増ししたいのに資金がない」という方は、資金計画を考える必要があります。余裕資金がなければチャンスを逃してしまうため、暴落用の現金クッション(生活費とは別枠)を準備するとよいでしょう。
経験豊富な投資家は、暴落をチャンスと捉えます。詳しくは、こちらのQ&Aも参考にしてみてください。
ケース別:売却や積立停止が「あり得る」例外パターン
暴落時の狼狽売りは避けるべきというのが基本ですが、すべての状況で一律に「売るな」と断言することもまた危険です。投資は個人の状況によって最適解が異なるため、売却や積立の見直しが必要なケースも存在します。
ただし重要なのは、どのケースでも「段階的な対応」と「代替策の検討」を前提とすることです。一度に全額を売却したり、感情的に判断したりするのではなく、冷静に自分の状況を分析し、必要最小限の調整にとどめましょう。
例外1:近い時期に使う資金(教育費・住宅・納税等)を投資していた
1〜2年以内に使う予定の教育資金、住宅購入の頭金、確定した納税資金などを株式投資していた場合は、売却を検討すべき状況といえます。これは「投資期間が短すぎた」という設計ミスの可能性が高く、暴落で損失を抱えたまま使用時期が来ると回復を待つ余裕がありません。
対応策としては、一度に全額売却するのではなく、必要な時期から逆算して数回に分けて段階的に現金化する方法があります。また、他の流動性資産で賄えないか、支出時期を数ヶ月ずらせないかも検討しましょう。
今後の防止策として、3〜5年以内に使う確定資金は最初から債券や預金など安全資産で保有し、投資は10年以上使わない余裕資金に限定するルールを徹底することが大切です。
例外2:リスク商品に偏っていた
特定の業種や銘柄に資産が集中している、レバレッジ型商品や新興国株式など高ボラティリティ商品の比率が高い、外貨建て資産が大半で為替リスクが二重に効いているといった状況では、リバランスの検討が必要です。
暴落時は「リスクの取りすぎ」が露呈するタイミングですが、慌てて全手の資産を売却すると、損失を確定してしまいます。
この場合、数ヶ月から1年かけてバランス型や全世界株式インデックスなど分散商品へスイッチングする、売却せずに今後の積立を低リスク商品に振り向けて全体バランスを改善する方法を検討しましょう。
例外3:旧NISAの非課税期限が近い/終了した場合
つみたてNISA(旧制度)の非課税期間20年が残り1〜2年、一般NISA(旧制度)で5年の非課税期間が終了間近という方は、期限と暴落のタイミングが重なるため、判断に迷うケースです。
新NISAは無期限の非課税なので基本的に急ぐ必要はありませんが、旧制度は期限到来時に課税口座へ払い出され、その時の時価が新たな取得価格になります。
含み益がある場合は非課税の恩恵を受けられているため、そのまま期限まで保有して問題ありません。しかし、含み損がある場合は注意が必要です。課税口座へ移管すると将来の回復時に課税される可能性があり、損益通算もできません。
含み損が大きく回復の見込みが薄い場合は、いったん整理して新NISAで再スタートする選択肢もありますが、損失確定は慎重に判断する必要があります。
暴落時に「NISAを始める/再開する」のは賢明か
株価が下がった今こそ始めるべきかという疑問は投資初心者からよく聞かれますが、一概に「賢明」とも「避けるべき」とも言えません。
重要なのはタイミングではなく、条件が整っているかどうかです。まず余裕資金であることが大前提で、生活費の6ヶ月分以上の緊急予備資金は別途確保し、投資額を10年触らなくても生活に支障がないことが必要です。
次に長期で続ける覚悟があるかで、暴落時に始めてもさらに下落する可能性は常にあり、短期的には含み損が膨らむシナリオも十分あり得ます。最低でも10〜15年の保有を前提とし、途中で下がっても積立を続ける仕組みが不可欠です。
以下のように、リスクを取りすぎたり判断を誤ったりすると、資産を失いかねません。
暴落時の投資で失敗する典型パターン
- 底を当てようとして一括投資する
- さらに下落する
- 損失に耐えきれず売却する
ドルコスト平均法で毎月定額積立するほうが、タイミングを気にする必要が減り精神的にも楽です。過去に投資経験があり再開を考えている方は、前回やめた理由を振り返り、同じ失敗を繰り返さない仕組みを作ることが先決です。
特にNISA口座では、利益を得られなければメリットを活かせません。詳しくは、こちらの記事を参考にしてみてください。
暴落はチャンスでもある
長期投資は10年、20年、30年といった長いスパンで考えるものです。目の前の暴落は、この長い道のりにおいてはあくまで短期的な出来事に過ぎません。
投資において大切なのは、「過度な興奮をしない」「過度な不安を抱かない」「長期的に見れば回復する」という冷静な姿勢です。歴史を振り返れば、株価が暴落した後も積立投資を継続した人ほど、資産の回復が早まります。
その理由は、株価が下がった時に買い続けることで平均取得価格を下げることができるからです。たとえば月1万円の積立なら、株価が半分になれば同じ金額で2倍の口数が買えます。
この仕組みにより、株価が元の水準に完全に戻る前の段階で、すでに資産がプラスに転じる可能性が高まるのです。暴落は損失ではなく、「安く買える期間」と捉えることができれば、長期投資家にとっては貴重なチャンスとなります。
本当のリスク許容度は暴落時にわかる
投資を始める際に「私は多少の値動きには耐えられる」と考えていても、本当のリスク許容度は実際の市場暴落が起きて初めて明らかになります。シミュレーションや想像だけでは、株価急落時の精神的・行動的な耐久力を正確に測ることはできません。
含み損が100万円、200万円と膨らんでいく状況で冷静さを維持するのは、簡単ではありません。夜眠れなくなったり、株価が気になって仕事に集中できなくなったりするなら、それは「リスクを取りすぎている」サインです。
さらにパニック売りをしてしまったり、積立を中断してしまったりする行動に出た場合、それはあなたの真のリスク許容度を超えている証拠といえます。この気づきは決して失敗ではなく、次の投資戦略を設計するための貴重な情報です。
暴落を経験したからこそ、自分が本当に耐えられるリスクの水準がわかり、投資額の調整や資産配分の見直しといった具体的な改善策を講じることができるようになります。以下の記事も参考にしながら、あなたのリスク許容度の範囲内で投資を行いましょう。
この記事のまとめ
この記事では、株価の急落局面でまず「暴落とは何か」「なぜ起きるか」を整理し、NISA利用者が陥りやすい狼狽売り・積立停止・短期売買化といったNG行動を確認しました。あわせて、相場予測ではなく、資金計画(生活防衛資金と支出予定)・リスク許容度・投資期間の3軸で、継続/見直しを判断する実務手順を学びました。次は、現在の家計と投資目的を棚卸しし、積立設定と商品のリスクを点検して、自分ルールを決めましょう。

金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
関連する専門用語
NISA
NISAとは、「少額投資非課税制度(Nippon Individual Saving Account)」の略称で、日本に住む個人が一定額までの投資について、配当金や売却益などにかかる税金が非課税になる制度です。通常、株式や投資信託などで得られる利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座を使えばその税金がかからず、効率的に資産形成を行うことができます。2024年からは新しいNISA制度が始まり、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つを併用できる仕組みとなり、非課税期間も無期限化されました。年間の投資枠や口座の開設先は決められており、原則として1人1口座しか持てません。NISAは投資初心者にも利用しやすい制度として広く普及しており、長期的な資産形成を支援する国の税制優遇措置のひとつです。
つみたて投資枠
つみたて投資枠とは、2024年から始まった新しいNISA制度の中で、少額から長期的に資産形成を行うことを目的として設けられた非課税投資の枠組みです。 この枠では、一定の条件を満たした投資信託などの商品に対して、年間最大120万円までの投資額が非課税の対象となります。毎月コツコツと積み立てるスタイルの投資に向いており、長期的な資産形成を支援することが狙いです。つみたて投資枠を活用することで、運用益や分配金にかかる税金がかからず、複利の効果を最大限に活かしながら資産を増やしていくことができます。特に投資初心者にとっては、少額から手軽に始められ、長く続けることで将来の資金づくりに役立つ有効な制度です。
成長投資枠
新NISAにおける成長投資枠とは、個別株や投資信託などの成長性の高い投資商品を購入できる非課税枠のことです。2024年に始まった新NISA制度では、年間最大240万円、累計1,200万円まで投資が可能で、売却しても枠が復活しない「一生涯の上限額」が設定されています。 成長投資枠では、主に上場株式やETF、アクティブ型の投資信託などが対象となり、比較的リスクを取りながら資産を増やしたい投資家向けの仕組みになっています。一方で、レバレッジ型や一部の毎月分配型投資信託など、一部のリスクが高い商品は対象外となるため注意が必要です。 つみたて投資枠と併用でき、両方を活用すれば年間最大360万円の投資が可能です。成長投資枠を活用することで、中長期的な資産形成を非課税で行うことができ、売却益や配当金に税金がかからないため、資産を効率的に増やす手段となります。
非課税枠
非課税枠とは、税金が課されない金額の上限を指し、様々な税制に適用される制度。 例えば相続税では基礎控除額として「3,000万円+600万円×法定相続人数」が非課税枠となる。贈与税では年間110万円までの贈与が非課税。また、NISA(少額投資非課税制度)では年間の投資上限額に対する運用益が非課税となる。 このような非課税枠は、税負担の軽減や特定の政策目的(資産形成促進など)のために設定されており、納税者にとって税金対策の重要な要素となっている。
評価額
評価額とは、資産や企業の価値を金銭的に算定した金額のことである。市場価格が存在する場合はその価格を用いるが、不動産や非上場株式などの場合は、鑑定評価や財務分析を基に算出される。税務や会計、投資判断の場面で重要な指標となり、資産売却や企業のM&Aの際にも適正な価格を判断するために用いられる。評価額は算出方法によって異なることがあり、状況に応じた適切な評価が求められる。
基準価額(NAV)
NAV(基準価額)とは、投資信託やETFなどが保有する資産の「1口あたりの価値」を示す指標です。英語ではNet Asset Valueと呼ばれ、ファンドの純資産総額から負債を差し引き、発行口数で割って算出されます。投資信託の価格の基本となるもので、投資家が保有している資産の時価を把握する際の中心的な指標です。 通常の投資信託では、この基準価額は1日に1回(多くの場合、取引終了後)に算出されます。そのため、日中の値動きは反映されず、翌営業日に公表される形になります。一方で、ETFの場合も同様のNAVが算出されていますが、これは「取引日の理論的終値」を示すもので、リアルタイム取引用にはiNAV(インディカティブNAV)が補完的に使われます。 NAVの値は、ファンドが保有する株式・債券・コモディティなどの時価評価額や、分配金・費用(信託報酬など)を反映して計算されます。そのため、市場の変動や為替の影響により日々変化します。投資家はこのNAVをもとに、「ファンド全体の価値がどの程度増減しているか」を把握することができます。 ただし、NAVはあくまで算出時点の理論価格であり、市場での売買価格(ETFの取引価格や投資信託の購入・解約価格)とは必ずしも一致しません。特にETFでは、取引時間中に市場価格がNAVから乖離することがあります。 まとめると、NAVはファンドの「公的な時価」を示す指標であり、投資信託・ETF双方の基準となる価格です。ETFの場合はこれに加え、リアルタイムの理論値であるiNAVを組み合わせることで、投資家はより正確に市場状況を把握できます。
