アメリカに資産を移せば、日本に知られずにすみますか?
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2025/04/16 11:09
男性
30代
アメリカはCRS(共通報告基準)に参加していないと聞きました。そのため、もし資産をアメリカの銀行に移しても、日本の税務当局に情報が渡らず、申告しなくても発覚しないのではないかと考えてしまいます。実際に、そういった「安全な場所」としてアメリカを選ぶ人がいるとも聞きます。ですが、こうした行動は本当に合法なのでしょうか?日本の法律やアメリカとの関係性も含めて、教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
アメリカがCRS(共通報告基準)に参加していないというのは事実です。CRSは、各国が非居住者の金融口座情報を自動的に交換する国際的な制度で、日本を含む100以上の国と地域が参加していますが、アメリカはこれに加盟しておらず、自国にある外国人の口座情報を他国へ一律に提供する仕組みを持っていません。そのため、「アメリカに資産を移せば日本の税務当局に知られにくい」と考える人が一定数いるのも現実です。
しかし、これは合法的な対策ではなく、極めてリスクの高い発想です。日本の税法では、居住者が海外に保有する金融資産から得た利息・配当・売却益などの所得は、国内外を問わず課税対象とされており、原則として確定申告による申告が義務付けられています。たとえその情報が日本側に自動的に届かない場合であっても、申告を怠れば脱税とみなされる可能性があります。
加えて、日本とアメリカの間には「日米租税条約」があり、税務調査や租税回避の疑いがある場合には、両国の税務当局間で情報交換が行われる仕組みが整備されています。つまり、アメリカに資産を移しても、必要に応じてその情報が日本へ伝わる可能性は十分にあるということです。現に、過去にはこうした租税条約に基づく情報提供により、国外資産の存在が発覚し、追徴課税を受けた事例も存在します。
たとえ一時的に日本側に情報が伝わらなかったとしても、それが将来にわたって保証されるわけではありません。国際的な税務監視体制は年々強化されており、「海外に置けば安全」という考え方は通用しなくなりつつあります。こうした背景を踏まえると、故意に申告を回避することは、将来的に重大なリスクを伴う行為であることを理解すべきです。
もちろん、節税や資産の分散を目的として海外の金融機関を利用すること自体は違法ではありません。問題となるのは、そこから得た収益を正しく申告しないことです。資産を守るつもりで行った行動が、かえって税務リスクや信用問題を招く結果になりかねません。
資産保全を考えるのであれば、税務上も透明性が高く、適切な制度の中で対応することが、長期的に見て最も安全かつ持続的な選択肢です。制度を正しく理解したうえで、必要に応じて税理士などの専門家に相談し、正当な手段での資産管理を心がけましょう。
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CRS(共通報告基準)
CRSとは、「共通報告基準(Common Reporting Standard)」の略で、各国の税務当局同士が金融口座に関する情報を自動的に交換するための国際的な制度です。これは主に、海外口座を利用した税逃れや資産隠しを防ぐことを目的として、OECD(経済協力開発機構)が提案し、多くの国が参加しています。 たとえば、日本に住んでいる人が海外の銀行に口座を持っている場合、その情報は現地の金融機関から日本の国税庁に自動的に報告される仕組みになっています。これにより、海外に資産を移してもその存在が把握されやすくなり、適正な納税を促すことができます。投資初心者にとっては直接の影響は少ないかもしれませんが、グローバルな資産運用やオフショア投資を考える際には知っておくべき重要なルールのひとつです。
配当
企業が株主に利益を分配することをいい、株主が保有する株数に比例して分配される。 通常は決算時に分配されるが、特別大きな利益がある年や会社の記念の年には、特別配当、記念配当といったように通常の配当に上乗せ、または区別して分配されることがある。 配当は必ず行われるものではなく、赤字のときや企業の方針によって行われないこともある。
キャピタルゲイン(売却益)
キャピタルゲイン(売却益)とは、保有していた資産を売却することで得られる利益のことを指します。株式や不動産、債券、金などの貴金属を購入時の価格より高い価格で売却した場合、その差額がキャピタルゲインです(対義語:インカムゲイン)。 例えば、1,000円で購入した株を1,500円で売却すれば、500円がキャピタルゲインです。ただし、売却時には税制や手数料を考慮する必要があり、特に金融資産では 譲渡益課税 が適用されることが多くあります。 キャピタルゲインは、大きなリターンを得られる可能性がある一方で、購入時より価格が下がると 元本割れのリスク も伴います。そのため、資産運用では 売却益の確保 と 税負担の最適化 が重要な戦略の一つです。
確定申告
確定申告とは、1月1日から12月31日までの所得を計算して翌年の2月16日から3月15日に申告し、納税する手続き。多くの会社では年末調整を経理部がしてくれるが、確定申告をすると年末調整では受けられない控除を受けることができる場合もある。確定申告をする必要がある人が確定申告をしないと加算税や延滞税が発生する。
租税条約
租税条約とは、国と国との間で取り決められる「税金に関する国際的な協定」です。たとえば、日本に住む人が外国の株式などに投資したとき、利益に対して日本とその国の両方で税金を取られてしまう可能性があります。これを「二重課税」と言います。 租税条約があると、この二重課税を防ぐ仕組みが整えられていたり、源泉徴収税率(配当や利子にかかる税率)が軽減されたりします。こうした仕組みにより、国際的な投資がしやすくなるため、資産運用においてとても重要な存在です。