過去の申告漏れは今からでも修正できますか?
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2025/04/16 11:20
男性
30代
数年前に海外資産を保有していたものの、その一部を確定申告で申告し忘れていたことに、最近になって気づきました。今から修正申告をしても間に合うものなのでしょうか?CRSにより既に当局に情報が渡っている可能性もあり、今さら申告しても手遅れなのではと不安です。ペナルティの有無や、どのように対応すればよいのかを教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
過去に海外資産を確定申告で申告し忘れていた場合でも、今から修正申告を行うことで状況を是正することは可能です。特に重要なのは、税務署からの指摘や調査が始まる前に、自主的に申告内容を修正することです。これにより、通常よりも軽いペナルティで済む、あるいは一定の加算税が免除されるなど、誠実な対応が有利に評価される可能性が高まります。
現在では、CRS(共通報告基準)により、多くの国の金融機関が日本の国税庁へ、非居住者(つまり日本人居住者にとっての海外口座情報)を自動的に報告する体制が整っています。つまり、本人が申告していなくても、当局がすでに情報を把握している可能性が十分にあるという前提で考える必要があります。
ただし、そうした情報がまだ税務調査等に活用される前の段階で、自主的に修正申告を行えば、「過失ではなく善意の対応」として扱われやすくなるのが実務上の通例です。これが、税務署による調査や指摘の後だった場合、重加算税(最大で本税の35~40%)や延滞税が課される可能性が高まります。
修正申告にあたっては、どの年度に誤りがあったか、どの資産が申告漏れだったか、どの程度の課税が見込まれるかを明確に整理する必要があります。特に海外資産に関しては、為替換算や課税区分、外国税額控除、租税条約の適用など、専門的な判断を要する項目が多いため、経験豊富な税理士と連携して対応することが強く推奨されます。
過去に申告漏れが複数年に及ぶ場合や金額が大きい場合は、単なる「期限後申告」では済まされず、状況によっては刑事告発や過少申告加算税の対象となるリスクも否定できません。だからこそ、今すぐに誠実な対応を始めることが、リスクを最小限に抑える最も現実的で有効な手段です。
「知らなかった」「今さらでは遅いのでは」と不安に思うかもしれませんが、自らの意思で正しい対応をとる姿勢こそが、税務当局からの信頼を得るうえで何よりも重要です。手遅れになる前に、信頼できる専門家の助言を受け、適切な一歩を踏み出すことをおすすめします。
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CRS(共通報告基準)
CRSとは、「共通報告基準(Common Reporting Standard)」の略で、各国の税務当局同士が金融口座に関する情報を自動的に交換するための国際的な制度です。これは主に、海外口座を利用した税逃れや資産隠しを防ぐことを目的として、OECD(経済協力開発機構)が提案し、多くの国が参加しています。 たとえば、日本に住んでいる人が海外の銀行に口座を持っている場合、その情報は現地の金融機関から日本の国税庁に自動的に報告される仕組みになっています。これにより、海外に資産を移してもその存在が把握されやすくなり、適正な納税を促すことができます。投資初心者にとっては直接の影響は少ないかもしれませんが、グローバルな資産運用やオフショア投資を考える際には知っておくべき重要なルールのひとつです。
税務調査
税務調査とは、税務署などの税務当局が、個人や法人の申告内容が正確かどうかを確認するために行う調査です。収入や経費の記載、納税額に不備がないかを検証し、適切な課税が行われているかをチェックすることが目的です。 調査には、事前通知がある「任意調査」と、重大な脱税の疑いがある場合に裁判所の令状に基づいて行われる「強制調査(査察)」の2種類があります。一般の個人投資家や中小企業が対象となるのは、ほとんどが任意調査で、税務署職員が自宅や事務所を訪れ、帳簿や領収書などの資料を確認します。 資産運用の文脈では、株式の譲渡益、配当収入、海外口座の利子などの申告漏れや過少申告が調査の対象になることがあります。日頃から記録を整理し、適正な申告を行っていれば、過度に不安になる必要はありません。基本的な税知識を持ち、必要に応じて専門家に相談する姿勢が重要です。
重加算税
重加算税とは、納税者が意図的に所得を隠したり、虚偽の申告をしたりするなど、特に悪質な税務違反を行った場合に、通常の税金や過少申告加算税などに加えて課される、ペナルティ的な性格を持つ税金です。たとえば、売上の一部を帳簿に記載しなかったり、架空の経費を計上したりといった行為があった場合に、税務署がその事実を確認すると、重加算税が課されることがあります。課税額は本来納めるべき税額に対して原則35%(場合によってはさらに高くなることもあります)が上乗せされるため、非常に重い負担になります。税制の公平性を保つとともに、不正な申告を抑止する役割を果たしており、税務調査などの際には特に注意が必要な制度です。
外国税額控除
外国税額控除とは、日本に住んでいる個人や法人が、海外で所得を得てその国で税金を支払った場合に、同じ所得に対して日本でも課税される「二重課税」を避けるために、日本で支払う税金からその分を差し引くことができる制度のことをいいます。たとえば、外国株式の配当金を受け取った際に、外国で源泉徴収された税金がある場合、その金額を一定の計算に基づいて日本の所得税や法人税から控除することができます。この制度を利用することで、国際的な投資やビジネスを行う際の税負担を適正に調整できるようになります。ただし、控除できる金額には上限があり、正確な申告と証明書類の提出が必要です。資産運用や海外取引を行ううえで、知っておきたい重要な税務上の仕組みです。
租税条約
租税条約とは、国と国との間で取り決められる「税金に関する国際的な協定」です。たとえば、日本に住む人が外国の株式などに投資したとき、利益に対して日本とその国の両方で税金を取られてしまう可能性があります。これを「二重課税」と言います。 租税条約があると、この二重課税を防ぐ仕組みが整えられていたり、源泉徴収税率(配当や利子にかかる税率)が軽減されたりします。こうした仕組みにより、国際的な投資がしやすくなるため、資産運用においてとても重要な存在です。
過少申告加算税
過少申告加算税とは、納税者が本来支払うべき税額よりも少ない金額を申告していた場合に、その差額に対して追加で課される税金のことをいいます。たとえば、所得や売上を少なく申告したり、経費を過大に計上した結果、税額が本来よりも少なくなっていたことが税務調査などで発覚した場合に課されます。これは故意ではなくても適用されることがあり、「税金を正しく申告することの重要性」を促す制度として設けられています。通常は差額税額の10%が加算されますが、税務署の指摘を受ける前に自主的に修正申告を行った場合は、加算税が軽減または免除されることもあります。過少申告加算税は、税務上のミスや認識不足に対しても影響が出るため、正確な申告が資産運用や事業運営において重要であることを示す制度です。