ファミリーオフィスを活用した節税対策にはどんな方法がある?
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2025/03/25 19:32
男性
40代
富裕層がファミリーオフィスを活用して行う節税対策には、具体的にどのような手法がありますか?信託や法人を活用した相続税対策、海外資産の税務戦略などについても知りたいです。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
ファミリーオフィスを使った節税策は、大きく次の三領域に整理できます。
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信託を用いた相続税コントロール
受益者連続型信託や目的信託に資産を組み込み、受益権を世代ごとに分割・移転することで、相続発生のたびに生じる課税額を平準化できます。分配条件や時期を事前設計できるため、遺産分割トラブルを回避しながら次世代への資産承継を計画的に行えます。
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資産管理会社による所得・資本の分散
不動産や上場株式を合同会社や株式会社などの資産管理法人に移管し、法人税率の活用、損益通算、役員報酬・退職金の経費計上によって所得税と相続税を最適化します。自社株を保有する場合は事業承継税制と組み合わせることで株式評価額を抑えつつ、後継者への承継を円滑に進められます。
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クロスボーダー・タックスプランニング
シンガポールやスイスの信託・ファンド、英国のファミリーリミテッドパートナーシップ(FLP)などを組み合わせ、租税条約とタックスヘイブン対策税制(CFC ルール)に適合した保有スキームを構築します。ファミリーオフィスは現地専門家と連携しながら、CRS(共通報告基準)や BEPS2.0 による情報開示義務も網羅的にチェックし、透明性と節税効果のバランスを図ります。
最適な手法は資産規模・ポートフォリオ構成・居住地・家族構成・承継計画によって変わります。近年は法規制と情報開示が一段と厳格化しているため、節税メリットだけでなくコンプライアンスと世代間の資産防衛を総合的に勘案し、税理士・弁護士・信託専門家と個別に検討してください。
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関連する専門用語
ファミリーオフィス
ファミリーオフィスとは、富裕層の家族や一族が保有する資産を管理・運用するための専門組織のことを指します。単一の家族を対象とする「シングルファミリーオフィス」と、複数の富裕層が共同で資産管理を行う「マルチファミリーオフィス」に分かれます。資産運用だけでなく、相続対策、税務管理、慈善活動(フィランソロピー)など、長期的な財産保全を目的とした総合的なサービスを提供する点が特徴です。特に、莫大な資産を持つ家族にとって、世代を超えた資産承継の戦略を策定する重要な役割を担います。
信託
信託とは、お金や不動産などの財産を信頼できる相手(受託者)に託し、特定の目的に沿って管理・運用してもらう仕組みです。財産を託す人を「委託者」、管理する人を「受託者」、利益を受け取る人を「受益者」といいます。 たとえば、親が子どもの教育資金を信託したり、高齢の親の認知症対策として資産管理を家族に委ねたりするケースがあります。このような個人間で活用される信託は「家族信託」と呼ばれ、相続対策や資産承継の手段として近年注目されています。 一方、資産運用の世界では「商事信託」として、信託銀行や運用会社が多数の投資家から集めた資金をまとめて運用する「投資信託」が一般的です。さらに、海外では、受益者への分配内容を受託者が裁量で決められる「ディスクリショナリートラスト(裁量信託)」という形態もあります。 信託は目的や状況に応じて柔軟に設計できる制度であり、大切な資産を計画的に管理・承継するための有力な選択肢となります。
タックスプランニング(節税/税務対策)
タックスプランニングとは、税法に則った合法的な方法で税負担を最適化し、資産管理や事業運営を効率化する戦略のことを指します。適切に活用することで、キャッシュフローを改善し、資産形成を有利に進めることが可能になります。また、法令を遵守しながら税務リスクを軽減することも重要な目的の一つです。 個人向けのタックスプランニングには、所得税や相続税の最適化があります。例えば、ふるさと納税や住宅ローン控除などの所得控除を活用すれば税負担を抑えることができます。また、NISAやiDeCoを利用することで投資の税負担を軽減することも可能です。相続税対策としては、暦年贈与の非課税枠を活用した生前贈与や、生命保険を活用した相続税の軽減策が挙げられます。 法人向けには、法人税の最適化や国際税務戦略があります。法人税対策としては、役員報酬の適切な設定や研究開発税制の活用が有効です。資産管理会社を設立し、所得を法人と個人で分散させることで税率を調整する方法もあります。国際税務では、海外法人の設立や外国税額控除の活用が考えられますが、各国の税制を遵守することが不可欠です。 タックスプランニングを行う際には、租税回避や脱税とならないよう注意が必要です。税法は頻繁に改正されるため、最新の法律を把握し、適切な対策を講じることが求められます。税理士や公認会計士と連携することで、リスクを抑えながら最大限のメリットを得ることができるため、専門家の助言を活用することが重要です。
租税条約
租税条約とは、国と国との間で取り決められる「税金に関する国際的な協定」です。たとえば、日本に住む人が外国の株式などに投資したとき、利益に対して日本とその国の両方で税金を取られてしまう可能性があります。これを「二重課税」と言います。 租税条約があると、この二重課税を防ぐ仕組みが整えられていたり、源泉徴収税率(配当や利子にかかる税率)が軽減されたりします。こうした仕組みにより、国際的な投資がしやすくなるため、資産運用においてとても重要な存在です。