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高利回り債のリスクの見極め方を知りたい

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2025/04/15 15:40

債券投資
債券投資

男性

30代

question

高利回りの債券は目を引きますが、資金を投じる前に「これはリスクが高いから利回りが高いのか、それとも割安なのか」をどう見極めればいいのでしょうか?リスク要因の見分け方を教えてください。


回答

佐々木 辰

株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長

高利回りの債券は一見すると魅力的に映りますが、その利回りには必ず理由があります。基本的に、高利回りは高リスクの裏返しと考えるのが原則です。「割安で好条件」と見える債券であっても、リスクプレミアムとして利回りが上乗せされているケースがほとんどです。

以下の観点から、リスク要因を多面的にチェックすることが重要です。

まず、発行体の信用力(格付け)を確認しましょう。格付けが「BB」以下の投資不適格級に分類されている債券は、デフォルト(債務不履行)に陥るリスクが高く、元本の回収が難しくなる可能性があります。

次に、債券の返済順位も要チェックです。劣後債のように返済順位が低い場合、企業が経営危機に陥った際には、元本や利息の支払いが後回しになる可能性が高くなります。

また、契約条項(コベナンツ)の内容も重要です。たとえば、元本削減条項(ベイルイン)、利払いスキップ条項、株式転換条項などがある場合、通常の債券とは異なるリスクが含まれており、想定外の損失につながる恐れがあります。

発行体の財務状況や業績動向も必ず確認しましょう。収益性の低下、自己資本の不足、高水準の負債などは、将来的な支払い能力に不安があるサインです。財務諸表や決算資料を通じて、客観的な財務健全性を見極める必要があります。

さらに、発行市場や通貨リスクも見逃せません。新興国の債券は、為替変動リスクや政治・経済の不安定さといったカントリーリスクを含んでおり、利回りの高さに見合わないリスクを抱えることがあります。

最後に、市場の利回り水準との比較も有効です。類似の発行体や同格付けの債券と比べて、極端に利回りが高い場合は、相場がその債券を「危険」と評価しているサインかもしれません。割安ではなく、リスクが価格に反映されている可能性が高いと考えるべきです。

これらの観点を総合的に見て、「なぜ高利回りなのか?」という問いに自分なりの答えを持つことが、適切な投資判断の第一歩です。表面的な利回りの高さに惹かれるのではなく、その背景にあるリスク構造を理解したうえで判断することが求められます。

判断が難しい場合や少しでも不安がある場合は、資産運用の専門家や証券会社の担当者に相談し、第三者の視点を取り入れることも検討してください。リターンを得るためには、リスクを正しく見極める目が何よりも大切です。

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リスクプレミアム

リスクプレミアムとは、投資でリスクを取ることによって得られ「追加の見返り」を指します。たとえば、元本が保証されている預金のような安全資産に比べて、株式や社債など値動きのあるリスク資産では、投資家はそのリスクを引き受ける代わりに、より高いリターンを期待します。この「安全資産との差分」が、まさにリスクプレミアムです。 言い換えれば、「リスクを取るからには、それに見合うリターンが欲しい」という投資家の心理を数値化したものとも言えます。経済環境や市場の不安感が高まると、投資家はより大きなリターンを要求するようになり、リスクプレミアムは上昇します。逆に、安定した相場ではその水準が低くなる傾向があります。 リスクプレミアムは、株式や債券の価格・利回りの形成に影響を与えるだけでなく、資産配分やポートフォリオ戦略の設計においても欠かせない考え方です。リスクとリターンのバランスを見極めるための重要な指標として、常に意識しておきたい概念です。

劣後債

劣後債とは、企業や金融機関が資金調達のために発行する債券の一種で、通常の社債(シニア債)よりも弁済順位が低い(劣後する)債券のことです。発行体が破綻した場合、一般の債券や他の債権者への支払いが優先され、劣後債の保有者への弁済はその後に行われるため、元本や利息の支払いリスクが相対的に高くなります。 このリスクの高さを補うため、劣後債は通常の社債よりも利回りが高めに設定されており、リスクプレミアムが反映されたハイリスク・ハイリターンの投資対象として位置づけられます。劣後債には、シニア劣後債とジュニア劣後債があり、ジュニア劣後債の方がさらに弁済順位が低いため、リスクが高くなる傾向にあります。 特に、金融機関が発行する劣後債の一部(例:AT1債やTier 2債)は、国際的な銀行規制であるバーゼル規制に基づき、一定の条件を満たせば自己資本として算入できるため、自己資本比率を向上させる手段として利用されています。ただし、AT1債(追加的Tier 1債)は発行体の財務状況によって利息の支払いが停止される可能性もあるため、リスクが高くなります。 投資家にとっては、高い利回りの魅力がある一方で、発行体の信用リスクや市場環境を十分に考慮した慎重な判断が求められる金融商品です。また、流動性が低く、満期前に売却が難しい場合がある点にも注意が必要です。

契約条項(コベナンツ)

契約条項(コベナンツ)とは、企業が債券などを発行する際に、投資家との間であらかじめ取り決められる約束事のことを指します。これは、発行体である企業の信用力を補強し、債券保有者の利益を保護するために設けられる重要な仕組みです。 内容としては、「一定以上の自己資本比率を維持する」「他の債務よりも本債務の返済順位を下げない」「特定の資産を勝手に売却しない」など、企業の財務状況や行動に一定の制限を設けるものが一般的です。こうした条項があることで、企業の財務状況が悪化した際にも投資家の立場が守られやすくなります。 契約条項は、大きく分けて次の2種類に分類されます。 #### 財務コベナンツ 企業の財務状態に関する定量的な基準を定めたものです。たとえば「自己資本比率を○%以上維持する」「債務償還年数を○年以内に抑える」「EBITDAに対する利払い比率を下回らない」といった数値的条件が代表例です。これにより、一定水準以上の健全な財務運営を投資家に約束します。 #### 非財務コベナンツ 企業の行動や経営判断に関する定性的な制限です。たとえば「特定の資産を第三者に譲渡しない」「他の借入に対して優先的な担保を提供しない」「合併や事業再編の際には事前承認を要する」といった項目が含まれます。経営の方向性や資本構造の変化によるリスクを抑える目的があります。 これらのコベナンツに違反した場合、契約上の制裁措置が発動されることがあります。代表的なのが「加速条項(アクセラレーション・クローズ)」で、これは契約違反が発生した時点で、本来の満期を待たずに元本の返済を即時に求めることができる条項です。債権者が早期に資金を回収する手段として機能します。 一方で、違反時に直ちにデフォルトとならず、一定期間内に是正すれば免責される「グレース期間(猶予期間)」が設定されているケースもあります。 契約条項の有無や内容は債券ごとに異なり、同じ発行体であっても条件に差がある場合があります。債券投資を行う際には、利回りや格付けだけでなく、こうした契約条件を確認することで、想定外のリスクを回避し、より安定的な投資判断につなげることが可能です。

元本削減条項

元本削減条項とは、特定の条件が発生した場合に、債券の元本が一部または全部カット(減額)される可能性があると契約上あらかじめ定められている条項のことです。主に、金融機関が発行するハイブリッド債や劣後債など、リスクの高い債券に組み込まれることが多い特徴があります。 この条項が発動される代表的なケースとしては、発行体の財務健全性が著しく悪化したときや、自己資本比率が一定の水準を下回ったときなどが挙げられます。たとえば、銀行などが経営危機に陥った際、返済負担を軽減し、倒産を回避するために投資家の元本を削減して資本に振り替えるという形で行使されることがあります。 発行体にとっては経営安定化の手段となりますが、投資家にとっては元本を失うという重大なリスクであり、利回りの高さの裏に潜む“見えにくいコスト”とも言えます。 とくにAT1債(Additional Tier 1債)のように、元本削減条項とコール条項が組み合わされた複雑な商品では、契約内容を読み解く力が求められます。こうした債券への投資を検討する際は、発行体の財務状況や条項の発動条件を十分に確認し、リスクを正しく理解したうえで判断することが不可欠です。

利払いスキップ条項

利払いスキップ条項とは、発行体である企業や金融機関が、あらかじめ定められた条件のもとで、利息の支払いを一時的に見送ることができるとする契約上の取り決めです。主にハイブリッド債や劣後債といった、高リスク・高利回り型の債券に組み込まれており、発行体の財務状況が悪化した際などに、支払い負担を抑えて資金繰りを維持する手段として活用されます。 スキップされた利息が後日まとめて支払われる場合(累積型)もあれば、支払いが最終的に行われない(非累積型)ケースもあります。とくにAT1債などでは、利払いのスキップが完全に発行体の裁量に委ねられていることもあり、投資家にとっては将来の利息収入が確約されないという収益面での不確実性を伴います。 また、この条項が行使された場合、債券の価格は大きく下落することが多く、市場での流動性や換金性にも影響を及ぼす可能性があります。そのため、利回りの高さに惹かれて投資を検討する場合でも、利払いスキップ条項の有無やその詳細な条件(たとえば、スキップの発動条件や累積可否)は必ず確認しておく必要があります。 債券の安定収益性を重視する投資家にとっては、スキップ条項があるかないかが投資判断の分かれ目となることもあります。商品設計に含まれる各種条項とあわせて、債券の本質的なリスク構造を理解する一助となる条項です。

株式転換条項

株式転換条項とは、債券や優先株といった証券を、あらかじめ定められた条件に基づいて発行企業の普通株式へ転換できる仕組みのことを指します。この条項が組み込まれた金融商品は、たとえば転換社債(CB)や、金融機関が発行する一部のハイブリッド債・劣後債などに見られます。 この仕組みにより、発行体は返済義務のある負債を、自己資本に切り替えることが可能となり、財務体質の強化や資本規制への対応といった観点から、柔軟な資金調達手段として重宝されます。特に信用リスクや資本比率が重視される金融業界では、自己資本の見なし要件を満たす手段として活用されています。 一方で投資家にとっては、株式への転換によって企業の成長を取り込む機会が得られるというメリットがあります。株価が転換価格を上回る場合には、債券としての安定性に加え、株式のキャピタルゲインを享受できる可能性もあります。しかしながら、株価が転換価格を下回る場面では、元本毀損や期待利回りの低下といったリスクが表面化します。 また、一部の商品には、企業側が特定の条件を満たした場合に強制的に株式へ転換される「強制転換条項(CoCo条項)」が設けられていることもあり、これにより投資家の意図にかかわらず債券性が失われるケースも想定されます。 株式転換条項は、単なるオプションではなく、発行体と投資家の利害を調整する重要な設計要素です。こうした複雑な商品を選ぶ際には、転換条件の詳細や市場環境、企業の資本政策などを総合的に見極める目が求められます。

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