iDeCoは1万円だと意味がないというのは本当ですか?
回答受付中
0
2025/07/07 12:39
男性
40代
同僚から「iDeCoは掛金が月1万円程度だと手数料に食われて増えない」と言われました。老後資金づくりを始めたいものの、少額では無駄になるなら躊躇します。制度の仕組みや費用対効果を踏まえ、本当に1万円では損をするだけなのでしょうか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
月1万円の掛金でも、iDeCoには十分な活用価値があります。たしかに初期手数料2,829円と毎月の口座管理料171円(年間計4,881円)は固定でかかりますが、節税効果がそれを上回ります。
たとえば課税所得が400万円の会社員であれば、月1万円の掛金(年12万円)に対して、所得税・住民税合わせて約3万6,000円の税負担が軽減されます。手数料を差し引いても、毎年3万円超の純メリットが見込める計算です。さらに、iDeCoで得た運用益はすべて非課税で再投資され、時間とともに複利効果が効いてきます。
また、見落とされがちですが、受け取り時にも大きな税優遇があります。退職金として一時金で受け取る場合には「退職所得控除」、年金形式で受け取る場合には「公的年金等控除」が適用されます。とくに退職所得控除は、iDeCoの加入年数が長いほど控除額が増える仕組みで、20年以上の加入で1年あたり40万円の控除が受けられるため、受取時の税負担も大幅に軽減できます。
商品選定も重要です。信託報酬が年0.1%台のインデックスファンドや元本確保型商品を組み合わせれば、コストを抑えつつ、リスクを調整しながら運用できます。掛金は5,000円以上1,000円単位で自由に設定でき、年1回まで増減や停止も可能なため、家計や相場に応じて柔軟に見直すことも可能です。
「月1万円では意味がない」という声は、課税所得が低く節税効果が小さいケースや、高コストの商品を選んだ場合、あるいは短期で解約する場合には一部当てはまることもあります。ただし、10年以上の長期運用を前提とし、制度の仕組みを理解して活用すれば、少額からでも着実に老後資金を増やす手段になります。迷っているなら、まずは無理のない範囲で始めてみることが、将来の安心につながります。
関連記事
関連質問
関連する専門用語
iDeCo(イデコ/個人型確定拠出年金)
iDeCo(イデコ)とは、個人型確定拠出年金の愛称で、老後の資金を作るための私的年金制度です。20歳以上65歳未満の人が加入でき、掛け金は65歳まで拠出可能。60歳まで原則引き出せません。 加入者は毎月の掛け金を決めて積み立て、選んだ金融商品で長期運用し、60歳以降に年金または一時金として受け取ります。加入には金融機関選択、口座開設、申込書類提出などの手続きが必要です。 投資信託や定期預金、生命保険などの金融商品で運用し、税制優遇を受けられます。積立時は掛金が全額所得控除の対象となり、運用時は運用益が非課税、受取時も一定額が非課税になるなどのメリットがあります。 一方で、証券口座と異なり各種手数料がかかること、途中引き出しが原則できない、というデメリットもあります。
所得控除
所得控除とは、個人の所得にかかる税金を計算する際に、特定の支出や条件に基づいて課税対象となる所得額を減らす仕組みである。日本では、医療費控除や生命保険料控除、扶養控除などがあり、納税者の生活状況に応じて税負担を軽減する役割を果たす。これにより、所得が同じでも控除を活用することで実際の税額が変わることがある。控除額が大きいほど課税所得が減少し、納税者の手取り額が増えるため、適切な活用が重要である。
信託報酬
信託報酬とは、投資信託やETFの運用・管理にかかる費用として投資家が間接的に負担する手数料であり、運用会社・販売会社・受託銀行の三者に配分されます。 通常は年率〇%と表示され、その割合を基準価額にあたるNAV(Net Asset Value)に日割りで乗じる形で毎日控除されるため、投資家が口座から現金で支払う場面はありません。 したがって運用成績がマイナスでも信託報酬は必ず差し引かれ、長期にわたる複利効果を目減りさせる“見えないコスト”として意識されます。 販売時に一度だけ負担する販売手数料や、法定監査報酬などと異なり、信託報酬は保有期間中ずっと発生するランニングコストです。 実際には運用会社が3〜6割、販売会社が3〜5割、受託銀行が1〜2割前後を受け取る設計が一般的で、アクティブ型ファンドでは1%超、インデックス型では0.1%台まで低下するケースもあります。 同じファンドタイプなら総経費率 TER(Total Expense Ratio)や実質コストを比較し、長期保有ほど差が拡大する点に留意して商品選択を行うことが重要です。
元本割れ
元本割れとは、投資で使ったお金、つまり元本(がんぽん)よりも、最終的に戻ってきた金額が少なくなることをいいます。たとえば、100万円で投資信託を購入したのに、解約時に戻ってきたのが90万円だった場合、この差額10万円が損失であり、「元本割れした」という状態です。 特に、価格が変動する商品、たとえば株式や投資信託、債券などでは、将来の価格や分配金が保証されているわけではないため、元本割れのリスクがあります。「絶対に損をしたくない」と考える方にとっては、このリスクを正しく理解することがとても重要です。金融商品を選ぶときには、利回りだけでなく元本割れの可能性も十分に考慮しましょう。