コール条項付き債券の特徴や注意点は?
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2025/07/07 12:39
男性
30代
債券投資を検討する中で、コール条項付き債券を勧められましたが、仕組みがよく分かりません。メリットやデメリット、投資判断のポイントを詳しく教えていただけますか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
コール条項付き債券とは、発行体(企業や金融機関など)があらかじめ決められた時点で、一定の価格(コール価格)で債券を満期前に買い戻せる権利を持つ債券のことです。発行体にとって有利なオプションが付いているため、投資家にはその対価として、通常の債券よりやや高めの利率(クーポン)が設定される傾向があります。
一見すると魅力的に見えるこの債券ですが、注意すべきリスクも存在します。代表的なのが「再投資リスク」です。たとえば、市場金利が下がった局面では、発行体が早期償還(=コール)を選ぶ可能性が高くなります。すると、高利回りを享受できる期間が短くなり、償還された資金を再び同じ水準の利回りで運用するのが難しくなるかもしれません。
また、コール価格があらかじめ定められているため、その水準を超えて債券価格が上昇しにくくなります。結果として、値上がり益(キャピタルゲイン)を狙う投資にはあまり向かない面があります。
こうした特徴を踏まえると、コール条項付き債券への投資では、以下のような視点が重要です。
まず、利回りを評価する際には、満期まで保有した場合の「YTM(イールド・トゥ・マチュリティ)」だけでなく、もっとも早く償還される可能性を想定した「YTC(イールド・トゥ・コール)」や「YTW(ワーストケースの利回り)」も必ずチェックしましょう。とくにYTWは、最も低い利回りの想定値として、比較の基準になります。
また、ポートフォリオ全体のバランスを整えるために、コール条項付き債券だけに偏らず、以下のような工夫をすることが大切です。
- コール条項のない通常債や、金利変動に応じて利子が変わる変動金利債と組み合わせることで、リスクを分散する
- 複数の発行体や異なる償還時期の債券を組み合わせて、早期償還による一時的な運用空白を避ける
- 発行体の財務状況や格付を分析し、早期償還の可能性を見極めてから投資判断を行う
さらに、現在の金利環境も重要です。たとえば金利が今後下がると予想される局面では、コールが発動される可能性が高まり、予定よりも早く償還されるリスクが上昇します。一方で、金利が上昇すれば、債券は償還されず長期保有となり、その間に価格が下落する可能性もあります。こうしたシナリオを複数想定し、どの程度の利回りが得られるのかを事前に試算する姿勢が求められます。
コール条項付き債券は「高い表面利率」に惹かれやすい商品ですが、裏では再投資リスクや価格上限といった特有のデメリットを内包しています。しっかりと仕組みを理解したうえで、自分のポートフォリオ全体の中でどのように組み込むかを考えることが、後悔しない投資につながります。迷った際には、専門家のアドバイスを受けて、リスクとリターンのバランスを整えるとよいでしょう。
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コール条項(早期償還条項)
コール条項(早期償還条項)とは、債券などの発行者が、あらかじめ定められた条件のもとで満期を迎える前に債券を償還(返済)できる権利を持つ仕組みのことです。たとえば、金利が大きく低下した際に、企業が高いクーポン(金利)の支払い負担を減らす目的で、早期に債券を買い戻すケースがあります。 投資家の立場から見ると、コール条項が行使されることで予定よりも早く元本が戻ってきてしまい、当初想定していた利息収入が得られなくなる可能性があります。特に、高利回りを期待して長期保有を前提に投資した場合には、投資計画が狂ってしまうリスクもあります。 また、コールの行使は通常、発行者にとって有利なタイミングで行われるため、投資家にとっては「上振れのチャンスが削られ、下振れリスクは残る」非対称な構造になる点も注意が必要です。 債券やハイブリッド債に投資する際は、このコール条項の有無・内容(コール可能な時期や条件など)を事前に確認することが、リスク管理と利回り予測のうえで重要なポイントとなります。
再投資リスク
再投資リスクとは、債券や定期預金などの満期時に、元本や利息を再投資しようとした際に、当初よりも低い金利環境でしか運用できないリスクを指す。特に低金利時代には、満期を迎えた資産を同等の収益率で再投資することが難しくなり、将来の収益が減少する可能性がある。長期投資ではこのリスクを考慮し、分散投資や運用期間の調整が重要となる。
表面利率
表面利率とは、債券にあらかじめ設定されている年あたりの利息の割合を指し、通常は額面金額に対して何パーセントの利息が支払われるかを示します。たとえば、額面が100万円で年に5万円の利息が支払われる債券なら、表面利率は「5%」となります。この利率は債券を発行する時点で決められ、満期まで変更されることはありません。投資家はこの利率を基に、定期的に利息を受け取ることができます。ただし、債券の市場価格が変動するため、購入価格に対する実際の利回り(YTM)とは異なる場合があります。資産運用においては、債券の収益性を考えるうえで、この表面利率を基本として他の指標とあわせて判断することが大切です。
キャピタルゲイン(売却益)
キャピタルゲイン(売却益)とは、保有していた資産を売却することで得られる利益のことを指します。株式や不動産、債券、金などの貴金属を購入時の価格より高い価格で売却した場合、その差額がキャピタルゲインです(対義語:インカムゲイン)。 例えば、1,000円で購入した株を1,500円で売却すれば、500円がキャピタルゲインです。ただし、売却時には税制や手数料を考慮する必要があり、特に金融資産では 譲渡益課税 が適用されることが多くあります。 キャピタルゲインは、大きなリターンを得られる可能性がある一方で、購入時より価格が下がると 元本割れのリスク も伴います。そのため、資産運用では 売却益の確保 と 税負担の最適化 が重要な戦略の一つです。
YTC(Yield to Call)
YTC(Yield to Call)とは、繰上償還条項付き債券が、最初のコール日(償還可能日)に発行体によって早期償還されると仮定した場合の利回りを意味する金融指標です。通常の最終利回り(Yield to Maturity, YTM)が満期まで保有することを前提とするのに対し、YTCは繰上償還される可能性を考慮した利回りであり、実際の収益性をより保守的に評価するために用いられます。 特に、市場金利が低下している局面では、発行体が高利回りで発行した債券を早期に償還して再発行し直す(借り換える)傾向が強まるため、YTCの重要性が増します。投資家にとっては、早期償還リスクと利回り低下の可能性を見極める材料となります。