金貯蓄のデメリットがあれば教えて下さい
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2025/07/31 08:17
男性
40代
資産の一部を金で持つと安全だと聞き、金貯蓄を検討しています。安全資産として信頼感がありますが、落とし穴がないか不安です。金貯蓄のデメリットや投資にあたっての注意点があれば教えて下さい。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
金貯蓄のような金の積立は「インフレに強い安全資産」というイメージがありますが、預貯金や債券とは性質が大きく異なるため、いくつかの注意点があります。
まず、最も大きなデメリットは価格の変動リスクです。金は元本が保証されていない商品であり、相場は米ドルの金利や国際的な投機マネーの影響を強く受けます。実際、リーマン・ショック後に高騰した一方で、その後数年間で40%近く値下がりした時期もありました。貯蓄感覚で積み立てると、評価損が出たときに想定外の損失を抱える可能性があります。
また、金は利息や配当といったインカム収益を生みません。株式のように配当を受け取ったり、債券のように利息を得ることができないため、資産を複利で増やす効果がありません。長期的に資産を増やすという目的においては、金は「守る資産」ではあっても「増やす資産」としての力は限定的です。インフレヘッジになると言われますが、実質金利が上がる局面では金価格がむしろ下がる傾向があり、常にインフレに強いとは限らない点も誤解されやすい部分です。
コストの面でも注意が必要です。金の積立サービスでは、購入時のスプレッド(売買差益)や管理料がかかるのが一般的です。さらに、現物を引き出す場合には別途で保管料や輸送費が発生します。少額での積立を高頻度で行うと、こうしたコストが積み重なり、同じ金投資でもETFや純金信託と比べて不利になる場合があります。
為替リスクも見逃せません。金は国際市場でドル建てで取引されるため、円高が進行するとドル建ての金価格が維持されていても、日本円換算では下落することがあります。逆に円安になると円換算の金価格は上昇しますが、為替の方向を正確に読むことは難しく、結果的に金と為替の両方でリスクを抱える可能性があります。
税制上の扱いにも注意が必要です。金の売却益は原則として譲渡所得に分類され、保有期間が5年以内だと短期譲渡所得として総合課税の対象になります。これにより、所得が高い人ほど税率が上がり、最大で45%以上の課税となるケースもあります。また、現時点ではNISAで金を直接積み立てることはできないため、他の金融商品と比べて税制優遇を受けにくい点もマイナス要素です。
さらに、流動性や業者選びにも注意が必要です。信頼できる大手業者を使えば問題は少ないですが、マイナーな業者ではスプレッドが大きかったり、最悪の場合には経営破綻などで資産を引き出せなくなるリスクもゼロではありません。業者を選ぶ際には、信託保全の有無や、現物引き出しの条件などを事前に確認することが大切です。
他の資産との違いを考えると、預貯金や短期国債は元本が守られており、安心感がありますが、金利は低くインフレに弱い面があります。株式やREITは成長性と配当が期待できますが、相場下落時には大きく値を下げることもあります。金はこうした資産と価格の動きが連動しにくいため、分散投資の一環として取り入れることでポートフォリオ全体のリスクを抑える効果が期待できます。
そのため、金を資産に組み込む場合は、生活防衛資金や株・債券をある程度確保した上で、資産の5~10%程度を上限にリスクヘッジ目的で持つのが一般的な考え方です。積立を検討する際には、購入単価の平準化や手数料の水準をよく比較し、ETFや金価格連動型ファンドなど他の手段も視野に入れることで、より合理的な選択ができるでしょう。
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価格変動リスク
価格変動リスクとは、株式や債券などの金融商品の価格が、経済状況や金利動向、企業業績などの影響で上下する可能性のことです。株式は企業業績の悪化や市場不安で急落するリスクがあります。 一方、債券の場合、発行時の固定利率と市場金利との差が変動するため、市場金利が上昇すると既発債の魅力が薄れ、途中売却時に購入時より低い価格で取引されるリスクが生じます。ただし、満期まで保有すれば額面通りに償還されるため、長期保有によってこのリスクを回避できます。
インカムゲイン(インカム)
インカムゲイン(インカム)とは、株式や債券、不動産などの資産を保有していることで定期的または継続的に得られる収益のことを指します。具体的には、株式の配当金、債券の利息、不動産の家賃収入などが代表的な例です。一方で、資産の売買差益から生まれるキャピタルゲインとは異なり、保有し続けることで一定のペースで収入を得る点が特徴です。 インカムゲインを重視する投資では、安定したキャッシュフローを得られることが大きな魅力となります。例えば、株式の配当金は企業の利益から支払われますが、企業の業績や配当方針に応じて増減があるため、定期的なチェックが必要です。債券の利息は発行体の信用力や金利情勢に大きく左右され、金利が上昇すると既存債券の価格が下落するリスクがあります。不動産投資では家賃収入がインカムゲインとなりますが、空室が続いたり修繕費がかさんだりするリスクがあるほか、売却時の価格も景気や立地に左右されるため、投資額の回収が遅れる可能性があります。 これらのリスクを考慮する一方で、インカムゲインには安定性というメリットがあります。資産を保有しているだけでも定期的に資金が手に入り、再投資や生活費に回すことで資産形成を円滑に進めやすい面があります。また、いざ急に資金が必要になった場合には、すぐに売却しなくても配当金や利息で一定の収入を得られる可能性があるため、心理的な安心感につながることもあります。 ただし、インカムゲインを得ようとするあまり、高配当や高利回りをうたう投資商品ばかりに偏ると、発行体の信用リスクや価格変動リスクが高まるケースも考えられます。特に、株式の配当は企業の業績が悪化すれば減配や無配となる恐れがあり、債券の場合でも発行体の破綻リスクや金利上昇リスクが存在します。不動産投資では物件管理の手間や費用が大きく、地方物件などでは買い手が少なく流動性リスクも高くなるため、分散投資の観点で他の資産とバランス良く組み合わせるのが望ましいでしょう。 総じて、インカムゲインは、投資から生まれる継続的な収益を得るための有力なアプローチです。特に、キャピタルゲインだけに頼らず、配当や利息、家賃収入などの定期的な収入源を得ることでリスクを分散しながら安定した資産運用を目指すことができます。ただし、投資対象の選定やリスク管理は欠かせないポイントであり、投資する資金やライフプラン、リスク許容度に応じて最適なバランスを見極める必要があります。
為替リスク
為替リスクとは、異なる通貨間での為替レートの変動により、外貨建て資産の価値が変動し、損失が生じる可能性のあるリスクを指します。 たとえば、日本円で生活している投資家が米ドル建ての株式や債券に投資した場合、最終的なリターンは円とドルの為替レートに大きく左右されます。仮に投資先の価格が変わらなくても、円高が進むと、日本円に換算した際の資産価値が目減りしてしまうことがあります。反対に、円安が進めば、為替差益によって収益が増える場合もあります。 為替リスクは、外国株式、外貨建て債券、海外不動産、グローバルファンドなど、外貨に関わるすべての資産に存在する基本的なリスクです。 対策としては、為替ヘッジ付きの商品を選ぶ、複数の通貨や地域に分散して投資する、長期的な視点で資産を保有するなどの方法があります。海外資産に投資する際は、リターンだけでなく、為替リスクの存在も十分に理解しておくことが大切です。
スプレッド(Spread)
スプレッド(Spread)とは、金融商品の売値(ビッド:Bid)と買値(アスク:Ask)の差のことをいいます。主に外国為替市場や債券市場、株式市場などで使われる用語です。 ビッド(Bid)は投資家がその商品を「売るときに受け取れる価格」、アスク(Ask)は「買うときに支払う価格」を指します。スプレッド(Spread)が広いほど、投資家にとっての取引コストが高くなるため、売買のタイミングには注意が必要です。 一般的に、流動性の低い市場や銘柄ではスプレッドが広がりやすく、反対に、取引が活発な市場ではスプレッドが狭くなる傾向があります。そのため、スプレッドの大きさは、市場の流動性や取引コストを判断する一つの指標となります。
NISA
NISAとは、「少額投資非課税制度(Nippon Individual Saving Account)」の略称で、日本に住む個人が一定額までの投資について、配当金や売却益などにかかる税金が非課税になる制度です。通常、株式や投資信託などで得られる利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座を使えばその税金がかからず、効率的に資産形成を行うことができます。2024年からは新しいNISA制度が始まり、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つを併用できる仕組みとなり、非課税期間も無期限化されました。年間の投資枠や口座の開設先は決められており、原則として1人1口座しか持てません。NISAは投資初心者にも利用しやすい制度として広く普及しており、長期的な資産形成を支援する国の税制優遇措置のひとつです。