遺族年金の仕組みや対象者、非課税・相続との関係を知りたいです。
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2025/05/30 14:14
男性
60代
家計を支える人が亡くなった場合、遺族年金はどのような制度に基づいて支給されるのか、支給対象となる遺族の範囲や金額の決まり方について詳しく知りたいです。また、遺族年金は非課税と聞きますが、相続放棄をしても受け取れるのか、税金や相続の手続きとの関係も含めて注意点を教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
遺族年金は、国民年金または厚生年金に加入していた方が亡くなったとき、その収入を失った家族が生活を維持できるよう支給される公的給付です。老齢年金が「本人が65歳以降に自ら受け取る年金」であるのに対し、遺族年金は「死亡した翌月分から遺族に直接支払われる生活保障」であり、繰上げや繰下げといった受給調整制度はありません。
給付額は、「定額の遺族基礎年金」と「報酬比例の遺族厚生年金」の合算によって決まり、支給には死亡日前日時点で保険料納付済期間が原則として全期間の3分の2以上あることなどの要件を満たす必要があります。受給対象者は、配偶者および18歳年度末までの子が中心ですが、厚生年金に加入していた方が亡くなった場合は、条件を満たせば父母や祖父母も受給対象となることがあります。
なお、遺族年金は非課税所得であり、健康保険料や介護保険料の算定所得にも含まれません。相続放棄をしても受給権は消滅せず、生活保障としての性格が法律上も明確に保たれています。
ただし、注意が必要なのは「所得制限」の存在です。遺族年金のうち、特に配偶者単独で受け取るケース(たとえば子のいない妻など)では、受給開始時点で前年の総収入が850万円以上(所得655万5,000円超)あると、そもそも支給されない仕組みになっています。つまり、要件を満たしていても、収入が高ければ最初から不支給となるケースがあります。
また、受給開始後に収入が基準を超えた場合も、翌年度から支給が停止されます。この「所得超過による支給停止」は一時的なものであり、収入が再び基準を下回れば「遺族年金支給停止事由消滅届」と所得証明を提出することで支給が再開されます。ただし、自動的に復活するわけではなく、申請が必要です。
請求手続きは、死亡の翌日から5年以内に行う必要があり、戸籍謄本、死亡診断書の写し、所得証明などの必要書類をそろえて、勤務先経由または最寄りの年金事務所に提出します。
なお、公的年金だけでは生活費をまかないきれないこともあるため、民間の死亡保険などと併用して「不足分をピンポイントで補う」設計を行うと、無駄のない保障が可能になります。特に就労を継続している方や、将来的に再婚の可能性がある方は、遺族年金の停止や打ち切りも見据えた対策を検討しておくと安心です。
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遺族年金
遺族年金とは、家計の支え手である人が亡くなった際に、残された家族の生活を保障するために支給される年金のことです。公的年金制度の中に組み込まれており、国民年金から支給される「遺族基礎年金」と、厚生年金から支給される「遺族厚生年金」があります。対象となるのは、主に配偶者や子どもで、支給額や期間は家族構成や被保険者の加入状況などによって異なります。遺族年金は、残された家族が安定した生活を続けるための公的な支援制度として、生活設計においてとても重要な役割を果たします。
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遺族厚生年金
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国民年金とは、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が原則として加入しなければならない、公的な年金制度です。自営業の人や学生、専業主婦(夫)などが主に対象となり、将来の老後の生活を支える「老齢基礎年金」だけでなく、障害を負ったときの「障害基礎年金」や、死亡した際の遺族のための「遺族基礎年金」なども含まれています。毎月一定の保険料を支払うことで、将来必要となる生活の土台を作る仕組みであり、日本の年金制度の基本となる重要な制度です。
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