債券の価格は買った後も変わると聞きましたが、どのような理由で変動するのでしょうか?
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2025/02/13 15:43
男性
60代
債券は満期まで持てば額面金額が戻ってくると聞きましたが、それでも価格が変動するのはなぜですか? また、市場で売買されていない債券は、どうやって価格が決まるのでしょうか? 金利や景気が関係していると聞いたのですが、具体的にどういう仕組みなのか分かりやすく教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
債券の値段は「将来受け取るクーポン(利息)と満期償還額」を、同期間・同格付けの債券利回りで現在価値に引き直して決まります。したがって ①市場金利の変化が最大のドライバーです。金融政策やインフレ期待で金利が上昇すると割引率が高くなり、現在価値=価格は下落します。金利が低下すれば逆に価格は上昇します。次に ②信用力の変化。発行体の信用リスクが高まると追加利回り(信用スプレッド)が拡大し、割引率が上がるため価格は下がります。さらに ③残存期間(デュレーション)。満期までの期間が長いほど金利・信用スプレッドの変化に敏感になり、価格変動幅も大きくなります。流通していない債券は、同様の残存期間・格付けを持つ公開債の利回りカーブに信用スプレッドと流動性プレミアムを上乗せし、キャッシュフローを現在価値計算して理論価格を算出します。満期まで保有すれば額面が返ってくるものの、途中売却ではこれら要因で評価額が日々動くため、価格変動リスクを理解しておくことが欠かせません。
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関連する専門用語
市場金利
債券市場や銀行間取引で決定される金利のこと。市場金利が上昇すると、既発債の価格は下落し、逆に市場金利が低下すると債券価格は上昇する。物価連動債の価格にも影響を与える要因となる。
償還
償還とは、債券の満期到来時に発行体が投資家に対して元本を返済することを指します。例えば、10年満期の債券であれば、10年後に元本が返金されます。債券の発行元が満期までの間に利息を支払い、償還時に元本を返済することで投資家は利息収益と元本の返金を得ます。ただし、償還には発行体の信用力が影響し、デフォルトリスクが存在する場合があります。
信用リスク(クレジットリスク)
信用リスクとは、貸し付けた資金や投資した債券について、契約どおりに元本や利息の支払いを受けられなくなる可能性を指します。具体的には、(1)企業の倒産や国家の債務不履行(いわゆるデフォルト)、(2)利払いや元本返済の遅延、(3)返済条件の不利な変更(債務再編=デット・リストラクチャリング)などが該当します。これらはいずれも投資元本の毀損や収益の減少につながるため、信用リスクの管理は債券投資の基礎として非常に重要です。 この信用リスクを定量的に評価する手段のひとつが、格付会社による信用格付けです。格付は通常、AAA(最上位)からD(デフォルト)までの等級で示され、投資家にとってのリスク水準をわかりやすく表します。たとえば、BBB格付けの5年債であれば、過去の統計に基づく累積デフォルト率はおおよそ1.5%前後とされています(S&Pグローバルのデータより)。ただし、格付はあくまで過去の情報に基づいた「静的な指標」であり、市場環境の急変に即応しにくい側面があります。 そのため、市場ではよりリアルタイムなリスク指標として、同年限の国債利回りとの差であるクレジットスプレッドが重視されます。これは「市場に織り込まれた信用リスク」として機能し、スプレッドが拡大している局面では、投資家がより高いリスクプレミアムを求めていることを意味します。さらに、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保険料率は、債務不履行リスクに加え、流動性やマクロ経済環境を反映した即時性の高い指標として、機関投資家の間で広く活用されています。 こうしたリスクに備えるうえでの基本は、ポートフォリオ全体の分散です。業種や地域、格付けの異なる債券を組み合わせることで、特定の発行体の信用悪化がポートフォリオ全体に与える影響を抑えることができます。なかでも、ハイイールド債や新興国債は高利回りで魅力的に見える一方で、信用力が低いため、景気後退時などには価格が大きく下落するリスクを抱えています。リスクを抑えたい局面では、投資適格債へのシフトやデュレーションの短縮、さらにCDSなどを活用した部分的なヘッジといった対策が有効です。 投資判断においては、「高い利回りは信用リスクの対価である」という原則を常に意識する必要があります。期待されるリターンが、想定される損失(デフォルト確率×損失率)や価格変動リスクに見合っているかどうか。こうした視点で冷静に比較検討を行うことが、長期的に安定した債券運用につながる第一歩となります。