
国民年金基金は入ってはいけない?国民年金や付加年金との違いを徹底解説
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公開:
2025.07.22
更新:
2025.07.22
国民年金基金は自営業者やフリーランスが年金額を増やし、掛金を全額控除できる節税メリットが魅力の制度です。しかし、予定利率が年1.5%で固定され、途中解約ができないことから、「入ってはいけない」と感じる人も少なくありません。特に2025年度税制改正で掛金上限が月6万8,000円から7万5,000円に引き上げられることが決まったこともあり、改めて制度のリスクを理解しておく必要があります。この記事では、国民年金基金の本当のメリットとデメリットを徹底比較し、あなたに適した判断基準をお伝えします。
サクッとわかる!簡単要約
この記事を読むと、国民年金基金の「入ってはいけない」と言われる理由を、予定利率1.5%固定によるインフレ耐性の弱さや途中解約不可のリスクを中心に理解できます。さらに、2025年度の税制改正で掛金上限が月7万5,000円に引き上げられるなどの最新情報を踏まえ、iDeCoや付加年金と比較しながら、自分がどの制度をどのように活用すればよいか明確になります。制度のメリットと落とし穴を正しく把握し、自分に最適な老後対策が立てられるようになるでしょう。
目次
掛金は月額最大6万8,000円:全額が所得控除になる節税の仕組み
一生涯もらえる終身年金が基本:万が一の時のための遺族一時金も
国民年金基金は「入ってはいけない」は本当?知っておくべき4つのデメリット
デメリット1. インフレに弱い:将来、年金の価値が目減りする可能性
デメリット2. 途中解約できない:一度始めると資金がロックされる
デメリット3. 低利回り:予定利率1.5%は低い?大きなリターンは期待できない
デメリット4. 早死にすると元本割れも:保証期間なしプランは掛け捨てに
デメリットだけとも限らない。国民年金基金加入時の4つのメリット
メリット2. 終身年金: 一生涯もらえ、長生きするほどお得という安心感
メリット3. 遺族一時金(非課税):家族にお金を残せるため万が一の時も安心
メリット4. 自主運用不要:将来もらえる年金額が加入時に確定する
国民年金基金・iDeCo・付加年金、あなたに合うのはどれ?3制度を徹底比較
国民年金基金とiDeCo選ぶならどっち?:安定の基金か、成長のiDeCoか
国民年金基金と付加年金選ぶならどっち?:まとまった上乗せか、少額からコツコツか
国民年金基金の始め方・やめ方:加入・変更・受給手続きの完全ガイド
国民年金基金とは?自営業者のための「上乗せ年金」
国民年金基金は、自営業者やフリーランスの方(国民年金第1号被保険者)が、老後の年金を増やせる公的な上乗せ制度です。
国民年金保険料をきちんと納付していれば、以下の条件で加入できます。
- 20歳以上60歳未満の国民年金第1号被保険者
- 60歳以上65歳未満で国民年金に任意加入中の方
一方で、会社員・公務員(第2号)やその被扶養配偶者(第3号)、国民年金保険料の免除・猶予を受けている方、農業者年金に加入している方は対象外です。
国民年金(1階)と国民年金基金(2階)の関係
国民年金基金は、日本の公的年金の「2階部分」を担います。
すべての国民が加入する「1階:老齢基礎年金(国民年金)」に、任意で上乗せできるのが「2階:国民年金基金」です。これにより、一生涯受け取れる年金を増やせます。
掛金は月額最大6万8,000円:全額が所得控除になる節税の仕組み
掛金の上限は現在、iDeCoとの合算で月額6万8,000円です。
2025年度の税制改正では、この上限を月額7万5,000円へ引き上げる方針が決まっており、施行は最短で2026年と見込まれます。
掛金は全額が社会保険料控除の対象で、配偶者分を本人が負担した場合も合算して控除できます。家計全体で節税しながら老後の年金を積み立てられる点が大きな魅力です。
iDeCoの節税効果については以下Q&Aでも解説しています。
一生涯もらえる終身年金が基本:万が一の時のための遺族一時金も
受け取れる年金は、生きている限り支給が続く「終身年金」が基本です。
また、保証期間付きのプランを選べば、万が一早くに亡くなった場合でも、ご家族に「遺族一時金」が支払われます。
ご自身の長生きへの備えと、家族への保障を両立できるのが特徴です。
国民年金基金は「入ってはいけない」は本当?知っておくべき4つのデメリット
「国民年金基金には入ってはいけない」という意見もあります。なぜそう言われるのか、主なデメリットを一つずつ見ていきましょう。
デメリット1. インフレに弱い:将来、年金の価値が目減りする可能性
国民年金基金で将来受け取る年金額は、加入した時点で決まります。 そのため、将来物価が上がっても年金額は増えません。物価上昇(インフレ)が進むと、お金の価値が下がり、実質的に受け取れる価値が目減りする可能性があります。 国民年金には物価に合わせて年金額が変わる仕組みがありますが、基金にはないため、インフレへの備えとしては弱い側面があります。
デメリット2. 途中解約できない:一度始めると資金がロックされる
国民年金基金は、一度加入すると自己都合で解約することができません。 積み立てたお金は、原則として年金の受け取りが始まるまで引き出せなくなります。急にお金が必要になっても、基金の資金は使えません。
国民年金基金は自己都合での解約が認められていませんが、掛金の払込を一時停止する制度はあります。停止期間そのものに上限はなく、停止中は未納扱いとなるため将来の年金額が減額されます。ただし未納後2年以内に追納すれば減額を回避できます(ただし、延滞金が発生)。
デメリット3. 低利回り:予定利率1.5%は低い?大きなリターンは期待できない
将来の年金額は、加入時の「予定利率」という運用利回りを元に計算されます。 現在の予定利率は年1.5%程度と、かなり低めに設定されています。これは、安全性を重視した固定利回りの設計だからです。 自分で投資をして積極的にお金を増やしたい人にとっては、物足りないと感じるかもしれません。
デメリット4. 早死にすると元本割れも:保証期間なしプランは掛け捨てに
国民年金基金は、長生きするほど得をする終身年金です。裏を返せば、早くに亡くなった場合は、支払った掛金の総額よりも受け取る年金額が少なくなる可能性があります。
特に注意したいのが、保証期間のない年金プラン(B型)です。
このプランの場合、年金受給開始前に亡くなると、遺族一時金1万円のみが非課税で支給され、年金受給開始後だと保障期間がないため遺族一時金はありません。掛金はほとんど戻って来ないと考えていいでしょう。
デメリットだけとも限らない。国民年金基金加入時の4つのメリット
国民年金基金には、デメリットを上回る可能性のある、見逃せないメリットもあります。一つずつ見ていきましょう。
メリット1. 節税効果:掛金が全額所得控除
支払う掛金は、その全額が社会保険料控除の対象です。 これにより、毎年の所得税や住民税の負担を軽くしながら、将来の年金を準備できます。 配偶者の掛金を支払った場合も合算して控除できるため、世帯での節税効果も期待できます。
メリット2. 終身年金: 一生涯もらえ、長生きするほどお得という安心感
国民年金基金の最大の魅力は、生涯にわたって受け取れる終身年金である点です。 厚生年金のない自営業者にとって、長生きが経済的なリスクになる不安を和らげる、心強い備えとなります。
メリット3. 遺族一時金(非課税):家族にお金を残せるため万が一の時も安心
保証期間が設定されているプランを選べば、年金を受け取る前や保証期間中に亡くなった場合に、家族へ遺族一時金が支払われます。 この一時金は非課税で受け取れるため、ご自身の老後だけでなく、家族のための保障も兼ねることができます。
メリット4. 自主運用不要:将来もらえる年金額が加入時に確定する
iDeCoのように自分で運用する必要はなく、加入時に将来受け取れる年金額が確定します。 市場の変動によって元本が減る心配がないため、安全・確実に老後資金を準備したい方に向いています。
あなたはどっち?国民年金基金が向いている人・向いていない人
これまでのメリット・デメリットを踏まえると、国民年金基金への加入が特に向いている人とあまり向かない人の像が見えてきます。
国民年金基金がおすすめな人の特徴
税金の優遇を受けつつ、将来の年金を安全・確実に確保したい人に向いています。特に、安定志向の方や、長生きによる資金不足に備えたい方には心強い制度です。
節税メリットを最大限に活かしたい高所得の人
毎年の掛金全額控除を活用して税負担を軽減しながら老後に備えたい人に基金は適しています。「税金を納めるくらいなら将来の自分の年金に回したい」と考える人にはぴったりです。
投資や運用のリスクを取りたくない安定志向の人
将来受け取る年金額が市場変動で減る心配をしたくない、元本保証で確定した額の年金を確保したいという人にも向いています。「老後資金は堅実に確保したい」という保守的な志向の方には安心感があるでしょう。
長生きリスクに備え、生涯続く収入源を確保したい人
「自分は家系的にも長寿の可能性が高い」という人は、終身年金である基金に加入する価値が高いです。平均寿命を超えて長生きすれば受取総額がどんどん増えていきます。
加入は慎重に検討すべき人
途中で解約できず、資金が長期間固定される点に注意が必要です。高い運用益を狙いたい方や、近い将来、会社員になる可能性がある方も、慎重な検討が求められます。
資金の自由度を重視する・手元に現金を残したい人
収入が不安定だったり、日々の生活費で精一杯だったりする場合、長期の掛金負担は大きなリスクです。基金は原則途中でやめられないため、余剰資金がほとんどない方には不向きです。
将来、会社員になる(第2号被保険者になる)可能性がある人
若いフリーランスなどで、「いずれ就職して第2号被保険者になるかもしれない」という人も注意が必要です。会社員になると基金の加入資格を喪失し、新たな掛金は払えなくなります。短期間の加入では年金額もごくわずかです。
高いリターンを狙って積極的に資産を増やしたい人
元本割れのリスクがあっても、株式投資などで積極的に資産を増やしたい人には基金は退屈かもしれません。基金の予定利率は1.5%程度と保守的であり、リターン重視派には物足りない制度と言えます。
国民年金基金・iDeCo・付加年金、あなたに合うのはどれ?3制度を徹底比較
国民年金基金以外にも、自営業者の老後を支える心強い制度があります。それぞれの特徴を比較し、あなたに最適な選択肢を見つけましょう。
比較項目 | 国民年金基金 | iDeCo | 付加年金 |
---|---|---|---|
掛金上限(月額) | 6万8,000円(iDeCoと合算) | 6万8,000円(基金と合算) | 400円(固定) |
最低掛金 | 基金ごとに異なるが数千円程度から | 5,000円 | 400円 |
所得控除区分(拠出時) | 社会保険料控除 | 小規模企業共済等掛金控除 | 社会保険料控除 |
控除対象者 | 本人・配偶者分を合算可 | 本人のみ | 本人のみ |
受給時課税 | 公的年金等控除 | 公的年金等控除または退職所得・一時所得 | 公的年金等控除 |
運用方式 | 固定予定利率(1.5%程度) | 自己運用(元本確保〜高リスク商品) | 固定利率(国の運用) |
受給形態 | 終身(A型・B型など) | 有期年金または一時金 | 終身で上乗せ(200円×納付月数) |
途中引き出し可否 | 不可(払込停止可) | 60歳まで不可 | 不可 |
手数料・コスト | 口数に応じた管理費(基金ごと) | 加入時・運営管理機関・信託銀行手数料 | なし |
併用可否 | iDeCoと可、付加年金と不可 | 基金・付加年金と可 | iDeCoと可、基金と不可 |
国民年金基金とiDeCo選ぶならどっち?:安定の基金か、成長のiDeCoか
どちらも掛金が全額所得控除になる強力な制度ですが、性格は大きく異なります。
国民年金基金が向いている人:安定・確実な年金が欲しい
将来受け取る年金額が加入時に確定している安心感を求める方に向いています。運用は専門家におまかせで、市場の変動に一喜一憂したくない安定志向の方におすすめです。
iDeCoが向いている人:自分で運用して資産を増やしたい
自分で運用商品を選び、積極的にリターンを狙いたい方に向いています。元本割れのリスクはありますが、インフレに強い資産で運用し、将来の資産を大きく増やしたい方におすすめです。
「守りの基金」と「攻めのiDeCo」で併用する方法もあり
両制度は併用でき、掛金の合計は月額68,000円が上限です。
国民年金基金で安定した終身年金を確保しつつ、iDeCoで資産の成長を狙う、という「守りと攻め」を両立した資産形成が可能です。
国民年金基金と付加年金選ぶならどっち?:まとまった上乗せか、少額からコツコツか
この2つの制度は併用できず、どちらか一方を選ぶ必要があります。
国民年金基金が向いている人:しっかり掛けて、年金額を大きく増やしたい
月々まとまった掛金を拠出して、将来の年金額を大きく増やしたい方に向いています。
付加年金が向いている人:月400円で、確実・お得に始めたい
まずは少額から始めたい方におすすめです。月々400円というわずかな負担で、2年間受け取れば元が取れるほど効率よく年金を増やせます。
国民年金基金の始め方・やめ方:加入・変更・受給手続きの完全ガイド
実際に加入する手続きや、加入後の各種変更手続き、そして将来年金を受け取る際の手続きについて説明します。
加入手続きの4ステップ:申し込みから掛金引き落としまでの流れ
加入手続きは、以下の4つのステップで進みます。
- 資料請求
- 申込書類の提出
- 加入登録・確認
- 加入員証の受け取り
公式サイトや電話で資料を請求し、「加入申出書」を郵送またはWebで提出します。申し込みから手続き完了までは1〜2ヶ月ほどかかります。
収入が変化したら?掛金の増額・減額・一時停止の方法
加入後、収入の状況に合わせて月々の掛金額を見直すことができます。 掛金を増やしたい場合は「増口」、減らしたい場合は「減口」の手続きを行います。 どうしても支払いが困難になった場合は、掛金の支払いを最長2年間休止することも可能です。
65歳になったら:年金を受け取るための請求手続きと注意点
年金の受け取り開始年齢になると、基金から「年金請求書」が自動的に郵送されてきます。 この請求書に必要事項を記入して返送すれば、手続きは完了です。請求が受理されると、年金の支給が始まります。 年金は、原則として偶数月に2ヶ月分ずつまとめて振り込まれます。
この記事のまとめ
国民年金基金には節税効果と終身年金の安心感がありますが、「入ってはいけない」と指摘される背景には予定利率の固定(年1.5%)やインフレに弱いこと、途中解約不可といった制約があります。2025年度の掛金上限引き上げも踏まえ、資金余力や投資への考え方によってはiDeCoや付加年金など他制度との併用や比較検討が不可欠です。まずは自身のライフプランやリスク許容度を明確にし、不安が残る場合は専門家への相談を通じて具体的なアクションを決めると安心です。

MONO Investment
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
関連する専門用語
国民年金基金
国民年金基金とは、自営業者やフリーランスなどの国民年金第1号被保険者が、将来の年金額を上乗せするために任意で加入できる制度です。これは、国民年金(基礎年金)だけでは老後の生活費として不十分な場合に備えて、公的に用意された追加の年金制度です。加入者は自分の希望に合わせて受け取る年金の型や金額を選ぶことができ、掛金もそれに応じて決まります。終身で年金を受け取れる選択肢もあるため、長生きリスクへの備えとして有効です。また、支払った掛金は全額が所得控除の対象となるため、節税効果も得られます。資産運用の視点では、自分で備える年金制度の一つとして、iDeCoなどと並んで重要な選択肢となります。
第1号被保険者
第1号被保険者とは、日本の公的年金制度において、20歳以上60歳未満の自営業者や農業従事者、フリーランス、無職の人などが該当する国民年金の加入者区分のひとつです。会社員や公務員などのように厚生年金に加入していない人が対象で、自分で国民年金保険料を納める義務があります。 保険料は定額で、収入にかかわらず同じ金額が設定されていますが、経済的に困難な場合には免除制度や納付猶予制度を利用できることがあります。将来の年金受給の基礎となる制度であり、自分でしっかりと手続きや納付を行う必要があります。公的年金制度の中でも、自主的な加入と負担が特徴の区分です。
老齢基礎年金
老齢基礎年金とは、日本の公的年金制度の一つで、老後の最低限の生活を支えることを目的とした年金です。一定の加入期間を満たした人が、原則として65歳から受給できます。 受給資格を得るためには、国民年金の保険料納付済期間、免除期間、合算対象期間(カラ期間)を合計して10年以上の加入期間が必要です。年金額は、20歳から60歳までの40年間(480月)にわたる国民年金の加入期間に応じて決まり、満額受給には480月分の保険料納付が必要です。納付期間が不足すると、その分減額されます。 また、年金額は毎年の物価や賃金水準に応じて見直しされます。繰上げ受給(60~64歳)を選択すると減額され、繰下げ受給(66~75歳)を選択すると増額される仕組みになっています。 老齢基礎年金は、自営業者、フリーランス、会社員、公務員を問わず、日本国内に住むすべての人が加入する仕組みとなっており、老後の基本的な生活を支える重要な制度の一つです。
iDeCo(イデコ/個人型確定拠出年金)
iDeCo(イデコ)とは、個人型確定拠出年金の愛称で、老後の資金を作るための私的年金制度です。20歳以上65歳未満の人が加入でき、掛け金は65歳まで拠出可能。60歳まで原則引き出せません。 加入者は毎月の掛け金を決めて積み立て、選んだ金融商品で長期運用し、60歳以降に年金または一時金として受け取ります。加入には金融機関選択、口座開設、申込書類提出などの手続きが必要です。 投資信託や定期預金、生命保険などの金融商品で運用し、税制優遇を受けられます。積立時は掛金が全額所得控除の対象となり、運用時は運用益が非課税、受取時も一定額が非課税になるなどのメリットがあります。 一方で、証券口座と異なり各種手数料がかかること、途中引き出しが原則できない、というデメリットもあります。
付加年金
付加年金とは、国民年金に加入している人が、定額の保険料(月額400円)を上乗せして納めることで、将来の年金額を増やせる制度です。自営業者やフリーランスなどの第1号被保険者が対象で、支払った付加保険料に応じて、老齢基礎年金に上乗せして受け取ることができます。 受け取り額は、付加保険料を納めた月数に200円をかけた金額が年金に加算される仕組みで、長生きするほどお得になるとされています。特に、iDeCoなどの他の自助努力型制度と併用することで、老後の年金対策に柔軟性を持たせることができます。資産運用の観点からは、少ない負担で将来の収入を増やす手段として、非常に効率的な選択肢の一つです。
終身年金
終身年金とは、一度受給が始まると、契約者が生きている限り年金が支給され続けるタイプの年金です。主に民間の年金保険や国民年金基金、企業年金などで採用される形式で、老後の長生きリスクに備えるための仕組みとして重視されています。たとえば、90歳まで生きた場合でも、支給は一生涯続くため、資金が尽きる心配が少なくなります。支給額は契約時に決められており、途中で変更されることは通常ありません。 資産運用の視点からは、定期的な安定収入を確保する手段として終身年金は非常に有効であり、特に退職後の生活費の柱として設計する際に重宝されます。ただし、早期に亡くなった場合は支払った保険料よりも受け取る年金総額が少なくなることもあるため、遺族保障とのバランスも検討が必要です。
予定利率
予定利率は、生命保険会社が保険契約者に対してあらかじめ約束する運用利回りのことです。これは保険会社が保険料を計算する際に用いる重要な指標の一つで、契約者から払い込まれた保険料を運用して得られると予想される運用利回りを表します。 予定利率は保険料の設定に大きな影響を与えます。予定利率が高い場合は保険料が安くなり、低い場合は高くなります。これは、高い予定利率では将来の運用によるリターンを多く見込めるため、保険料を低く抑えることができるからです。 予定利率の決定方法は、まず金融庁が国債の利回りなどを参考に「標準利率」を設定し、その後各保険会社が標準利率を基準に自社の状況を反映して決定します。 予定利率には特徴があり、契約時点の率が適用され、基本的には支払い終了時や更新時まで同率で変わりません。バブル経済期には高い予定利率の保険が多く販売され、これらは「お宝保険」と呼ばれています。近年は低金利環境により、予定利率は低下傾向にあります。 保険料の計算には予定利率以外にも、予定死亡率(性別、年齢別に想定される死亡率)や予定事業費率(保険会社の運営に必要な経費の割合)も影響します。これら3つの要因を合わせて「予定基礎率」と呼びます。
遺族一時金
遺族一時金とは、国民年金に加入していた人が亡くなったときに、その遺族に対して一度だけ支給される公的なお金のことです。これは、遺族基礎年金などの継続的な年金を受け取る条件に当てはまらない遺族に向けて、経済的な支援を行うための制度です。 主に、亡くなった方に生計を依存していた配偶者などが対象であり、保険料の納付期間や遺族の状況によって支給の可否が決まります。金額は一定ですが、あくまで一時的な支給であるため、長期的な生活保障ではありません。葬儀費用の補填や生活の立て直しに使われることが多く、公的保障の一部として知っておくべき重要な制度です。
社会保険料控除
社会保険料控除とは、健康保険、厚生年金、介護保険、雇用保険などの社会保険料を支払った場合に、その金額を所得から差し引くことができる所得控除の一種です。これは、納税者の生活を守る公的制度に協力しているという前提で、税負担を軽くするための仕組みです。 本人が支払った分だけでなく、配偶者や親族の保険料を本人が負担している場合にも控除の対象になります。会社員であれば給与から自動的に天引きされた社会保険料も対象となっており、年末調整や確定申告の際に自動的に反映されるケースが多いです。税額を計算する際の重要な調整要素となるため、税制の基本知識として知っておくと役立ちます。
小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済等掛金控除とは、自営業者やフリーランス、小規模な会社の経営者などが将来の退職金や事業資金の備えとして積み立てている共済制度や確定拠出年金(iDeCoなど)の掛金について、支払った金額をそのまま所得から差し引くことができる所得控除の一つです。 これにより、課税所得が減り、結果的に所得税・住民税の負担が軽減されます。対象となる制度には「小規模企業共済」「確定拠出年金(個人型)」「中小企業退職金共済制度」などが含まれます。特に自営業者にとっては、老後の備えと節税効果を同時に得られるメリットが大きく、資産形成の重要な手段とされています。控除を受けるには、掛金の支払証明書を用いて年末調整または確定申告で申請する必要があります。
元本割れ
元本割れとは、投資で使ったお金、つまり元本(がんぽん)よりも、最終的に戻ってきた金額が少なくなることをいいます。たとえば、100万円で投資信託を購入したのに、解約時に戻ってきたのが90万円だった場合、この差額10万円が損失であり、「元本割れした」という状態です。 特に、価格が変動する商品、たとえば株式や投資信託、債券などでは、将来の価格や分配金が保証されているわけではないため、元本割れのリスクがあります。「絶対に損をしたくない」と考える方にとっては、このリスクを正しく理解することがとても重要です。金融商品を選ぶときには、利回りだけでなく元本割れの可能性も十分に考慮しましょう。
インフレ(インフレーション)
インフレーションとは、物価全体が持続的に上昇し、その結果、通貨の購買力が低下する現象です。経済活動が活発になり、需要が供給を上回ると価格が上昇しやすくなります。また、生産に必要な原材料費や人件費の上昇が企業のコストに転嫁されることで、さらに物価が上昇することがあります。適度なインフレーションは経済成長の一側面とされる一方、過度な物価上昇は家計の負担を増大させ、経済全体の安定性を損なうリスクがあるため、中央銀行は金利操作などの金融政策を通じてインフレーションの抑制に努めています。
NISA
NISAとは、「少額投資非課税制度(Nippon Individual Saving Account)」の略称で、日本に住む個人が一定額までの投資について、配当金や売却益などにかかる税金が非課税になる制度です。通常、株式や投資信託などで得られる利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座を使えばその税金がかからず、効率的に資産形成を行うことができます。2024年からは新しいNISA制度が始まり、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つを併用できる仕組みとなり、非課税期間も無期限化されました。年間の投資枠や口座の開設先は決められており、原則として1人1口座しか持てません。NISAは投資初心者にも利用しやすい制度として広く普及しており、長期的な資産形成を支援する国の税制優遇措置のひとつです。