SPCを活用する際のデメリットや注意点は?
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2025/07/15 08:39
男性
60代
SPCは資金調達やリスク管理に有効と聞きましたが、活用する際のデメリットも気になります。具体的にどのような注意点があるのでしょうか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
SPC活用における注意点は主に4つあります。
一つ目は「設立・運営コスト」です。SPCは専門性が高いため、弁護士・税理士・会計士・監査法人への報酬など多額の費用がかかります。特にTMKなど複雑なスキームの場合、年間数百万円〜1,000万円以上となることもあり、利益を圧迫する原因になります。
二つ目は「倒産リスク」です。SPCは特定プロジェクトの収益に依存するため、そのプロジェクトの収益が悪化すれば、SPC自体が倒産する可能性があります。LBO(借入れを利用した企業買収)のケースでは、買収先企業に借入金の返済義務が引き継がれるため、事業不振時にはグループ全体の財務状況を悪化させる恐れもあります。
三つ目は「コンプライアンスリスク」です。過去にはSPCが不良資産を隠す「飛ばし」などの不正会計に利用された事例があり、現在では透明な会計処理が求められます。監査が厳しくなっており、不透明な取引は企業ブランドにも大きなダメージを与えます。
四つ目は「税務リスク」です。税務メリットを追求しすぎると、税務当局から追徴課税や移転価格課税のリスクを指摘されることがあります。税務専門家と連携し、慎重なスキーム設計を行うことが重要です。
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SPC(特別目的会社)
SPC(特別目的会社)とは、ある特定の事業や取引だけを行うために設立される会社のことをいいます。主に資産の流動化や証券化など、金融取引を効率的かつリスクを限定して行う目的で使われます。たとえば、不動産やローンなどの資産を切り出して、SPCに移してから証券化することで、投資家がその資産に対して投資できるようにする仕組みが一般的です。SPCは、通常の事業会社とは異なり、活動内容が限定されており、倒産リスクを本体企業から切り離す役割も果たします。これにより、投資家や関係者がより安心して取引に参加できるようになります。資産運用や金融商品の構造を理解するうえで、非常に重要な概念です。
TMK(特定目的会社)
TMK(特定目的会社)とは、不動産や資産の証券化を目的として設立される、法律で定められた特別な形態の法人です。正式には「資産の流動化に関する法律」に基づいて設立され、主に不動産や債権といった特定の資産を取得し、それらから得られる収益をもとに証券を発行して投資家に提供します。 TMKは資産を「倒産隔離」する役割も持ち、親会社や関係企業が倒産しても影響を受けにくい構造となっています。不動産投資やファンド商品に関心のある投資家にとって、TMKは資産を効率的かつ安定的に運用する手段として知られています。
LBO(レバレッジド・バイアウト)
LBO(レバレッジド・バイアウト)は、借入金を活用して企業や事業を買収するM&A手法の一つです。買収資金は、自己資金と借入(LBOローン) の組み合わせで調達され、特に買収対象企業のキャッシュフローを担保として資金を借りることが特徴です。これにより、買い手(通常はプライベート・エクイティ(PE)ファンドや経営陣)は、比較的少ない自己資金で企業を取得できます。 一般的にLBOでは、多額の借入を行うため、対象企業には安定したキャッシュフローが求められます。特にバイアウト・ファンドは、投資リターンを最大化するためにLBOを活用し、経営改善や成長戦略を推進した後に企業を売却することで利益を狙います。また、LBOはMBO(現経営陣による買収)やMBI(外部経営者による買収)などの形態でも利用されます。 LBOは、企業価値向上の手段として有効ですが、過剰な借入(レバレッジリスク) による財務リスクにも注意が必要です。特に、買収後のキャッシュフローが計画通りに確保できない場合、債務返済が困難になり、最悪の場合は破綻するリスクもあります。そのため、LBOを実行する際には、適切な財務戦略とリスク管理が不可欠です。
倒産隔離
倒産隔離とは、ある企業や事業が倒産した場合でも、その影響が特定の資産や別の事業に及ばないようにする仕組みのことです。特に証券化取引や不動産ファンド、信託などの分野で用いられます。 たとえば、企業が資産を特別目的会社(SPC)に移して、その会社を通じて証券を発行する場合、元の企業が倒産してもその資産に影響が出ないようにするのが倒産隔離の目的です。これにより、投資家は元の企業の経営状態にかかわらず、資産から生まれる収益を安定的に受け取ることができるようになります。資産運用の分野では、リスクの切り分けと安定したリターンの確保に重要な役割を果たします。
飛ばし(不正会計)
飛ばしとは、本来その期に計上しなければならない損失や負債を、他の会社や将来の会計期間に一時的に移して隠す不正な会計手法のことです。企業が経営成績をよく見せかけるために行うもので、利益を実際よりも大きく見せたり、赤字を隠したりする目的で使われます。 たとえば、子会社や関係会社に損失を一時的に押し付けることで、本体の財務状況をよく見せるというやり方が典型です。飛ばしは投資家を欺く行為であり、発覚すれば株価の急落、企業への信頼失墜、経営陣の退任や刑事責任といった重大な影響をもたらします。日本では過去に大手企業で発覚した事例もあり、資産運用を行う際にも企業の財務の透明性を見極めることが重要だとされています。
移転価格課税
移転価格課税とは、同じ企業グループ内の複数の国にまたがる会社同士が商品やサービスの取引をする際に、その取引価格が不当に安かったり高かったりすると、税務当局が「本来あるべき価格」に修正して課税する制度のことです。 企業が税金の負担を減らすために、税率の低い国に利益を移すような価格設定を行うと、各国の税収が適正にならないおそれがあります。そのため、税務当局は独立企業同士であればどのような価格になるかを基準にして、適正な課税を行います。これは国際取引がある企業にとって非常に重要な税務のルールであり、適切に対応しないと追徴課税のリスクがあります。