買収・MBOによる株価の影響は?
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2025/02/18 14:00
男性
40代
MBOや買収提案を受けている企業の株価は、提案を受けた後にどうなる可能性がありますか?短期的・長期的な見通しが知りたいです。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
MBOや第三者による買収提案が公表されると、市場株価はまず提示されたTOB(公開買付)価格へ急速に収れんし、一般に20〜40%程度のプレミアム分だけ跳ね上がるのが典型です。短期的な値動きは ①提示価格と市場期待のギャップ ②買付成立の確度(資金調達・規制当局承認・支配株主の賛同など) ③競合買付や条件変更の有無──に左右され、大きなボラティリティを伴います。
一方、成立しなかった場合はプレミアム分が剝落し、業績や市場環境に見合った水準まで急落しかねません。買付が成立して非上場化が完了すると、株主はTOBに応募して現金化するか、スクイーズアウト(株式等売渡請求)で強制的に処分されるため、従来のような株価上昇益を享受し続ける選択肢は消滅します。仮に経営陣が長期投資で企業価値を高めても、その利益は買収主体に帰属するからです。
したがって投資家は、(1) TOB価格と現在株価の乖離、(2) 成立確度を左右する鍵(資金・規制・ガバナンス)を冷静に検証し、(3) 不成立時に想定される元の株価水準や流動性の低下までを織り込んでリターン/リスクを定量評価する必要があります。応募期間は短いため、開示資料の更新や関係各所の動きを逐次フォローし、期日までに明確な方針を固めることが不可欠です。
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関連する専門用語
TOB(株式公開買付)
特定の企業の株式を、市場取引ではなく公開の場で株主から直接買い付ける方法です。買付期間や価格、予定株数などを事前に公表し、投資家は提示条件を踏まえて売却を検討します。 通常、市場価格より高めに買付価格が設定されることで既存株主に売却を促すインセンティブが働き、買収成立を目指すのが一般的です。 買収後の経営方針や企業価値向上策などを明確に示すことで、投資家や市場の理解を得やすくなります。ただし、敵対的TOBの場合は経営陣や他の大株主との対立に発展することもあります。
非上場化
証券取引所に上場している企業が、株式を買い戻すなどして流通株式数を減らし、市場での取引を停止した状態にすることです。MBOや買収によって少数株主を整理し、上場廃止となるケースが代表的です。 非上場化によって株主からの短期的な利益圧力を軽減し、長期的な事業再構築や経営戦略を柔軟に進めやすくなる利点があります。 一方、株主にとっては上場市場での売却機会を失うことになり、資金化が難しくなるリスクも伴います。そのため、非上場化を実施する際は買付価格や手続きの公正性が重要視されます。
MBO
Management Buyout(マネジメント・バイアウト)の略。経営陣が自ら会社の株式・事業などをその所有者から買収することを指す。一般的に経営陣は、手元資金の規模が限られていることから、事業の買収にあたっては借入金による調達が必要となるケースが多いため、MBOはLBOの 形態をとることが多い。また、借入金だけでは調達ができないような場合には、経営陣はエクイティを提供する共同スポンサーとしてバイアウト・ファンドとパートナーを組むケースも見られ、上場企業の株式非公開化やオーナー企業の事業承継などにも利用されている。MBOにより、現オーナーから株式を承継する経営陣は、株式の散逸を防ぐことで経営の安定化を図ることが可能となる。
買収提案
ある企業が他の企業を買収し、その経営権を獲得することを目的に、買収価格や条件、スケジュールなどを正式に提示する行為です。 対象企業の取締役会や株主に向けて、買収に伴うメリットやシナジー、将来の事業計画などを示し、買収成立への同意を求めるのが一般的なプロセスとなります。 上場企業の場合はTOB(株式公開買付)を通じて行われることが多く、提案内容が経営陣の意向と合致しない場合は敵対的買収へと発展する可能性もあります。企業価値評価やデューデリジェンスが重要な要素です。
買収プレミアム
企業を買収する際に、買収者が提示する株価が市場価格や公正価値を上回る部分を指します。買収の円滑化や経営権の獲得を確実にする目的で、既存株主に対する上乗せとして支払われるものです。 シナジー効果や経営改革による収益拡大を見込んでプレミアムを設定するケースが多いですが、過大なプレミアムは買収後の経営負担や投資回収リスクを高める要因にもなります。 買収者は適切なデューデリジェンスや企業価値分析を行い、将来見込まれる利益増とバランスを取りながらプレミアムの妥当性を検証することが重要です。