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ホールディングス(持株会社)とは?仕組み・メリットから株の評価方法までわかりやすく解説

ホールディングス(持株会社)とは?仕組み・メリットから株の評価方法までわかりやすく解説

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公開:

2025.06.27

更新:

2025.06.27

コーポレートガバナンス改革を追い風に、純粋持株会社(ホールディングス)へ移行する企業が急増し、資本市場ではグループ再編を軸にした成長戦略が熱視線を浴びています。しかし、管理コスト増や「持株会社ディスカウント」で保有資産の価値が正当に映らず、株価が伸び悩むリスクも見逃せません。本記事ではホールディングス化の狙いと落とし穴を整理し、NAV算出から資本配分の質まで株価を見極める実践的な判断軸を提示し、ソフトバンクG・ソニーG・パナソニックHDの最新戦略も紐解き、割安をチャンスに変えるヒントまで示します。

サクッとわかる!簡単要約

この記事を読むと、ホールディングスとは何かを理解した上で、迅速な意思決定・リスク分散・M&A柔軟化・税務最適化の利点と、管理コスト増・セクショナリズム・ガバナンス複雑化・株価ディスカウントの弱点を瞬時に整理できます。さらにNAV算出→ディスカウント率検証→株主還元策のカタリスト分析という評価プロセスと、ソフトバンクGなど三社の最新戦略に学ぶ実践知を吸収でき、割安発掘とリスク管理に直結する判断軸が得られます。読後にはディスカウント原因と解消策を説明でき、きっとポートフォリオ最適化の選択肢が広がります。

目次

1. ホールディングスとは?他社の株式を保有し支配する「持株会社」

「ホールディングス」と名の付く会社は「純粋持株会社」が多い

日本では1997年に解禁、多くの企業が移行

2. ホールディングス化のメリット――経営&税務で得られる4大効果

メリット① 経営判断の迅速化と事業ごとの最適化

メリット② 事業リスクの分散でグループ全体を守る

メリット③ M&Aや事業再編を柔軟に進められる

メリット④ 税務上有利な「グループ通算制度」などを活用できる

ホールディングス化によりグループ体制の最適化を図る

3. ホールディングスのデメリットと投資リスクとは?

デメリット① 管理部門の重複によるコスト増加

デメリット② 子会社間の連携不足(セクショナリズム)の発生

デメリット③ 組織構造の複雑化とガバナンスの問題

デメリット④ 株価が割安に放置されやすい「持株会社ディスカウント」

株価ドライバーを読み解く:ホールディングス銘柄の評価法

基本は「サム・オブ・ザ・パーツ」で企業価値を算出

ホールディングス株の株価を動かす4つのドライバー

資産価値に対して割安で、価値向上の施策が期待できるか

5. 実例研究:主要ホールディングス3社の戦略と株価

① ソフトバンクG:投資成果とNAVが直結する代表格

② ソニーグループ:多角化事業を両立させグローバル投資家から高評価

③ パナソニックHD:事業の「専鋭化」で改革を進める老舗

ホールディングス株を選ぶ際の5ステップ

ステップ1:グループの全体像と主力事業を把握する

ステップ2:連結財務諸表で収益力と健全性を確認する

ステップ3:NAV(純資産価値)を算出し、理論上の企業価値を測る

ステップ4:株価とNAVを比較し、割安度(ディスカウント率)を分析する

ステップ5:価値向上シナリオ(カタリスト)の有無を見極め、投資判断する

市場価値が実力より低く、今後価値が顕在化する銘柄を見極める

1. ホールディングスとは?他社の株式を保有し支配する「持株会社」

ホールディングスとは持株会社のことで、自らは事業を行わず他の会社を支配する目的でその会社の株式を保有している会社を指します。法律上は持株会社を親会社、その傘下にある会社を子会社と呼びます。例えばソフトバンクグループやソニーグループなど、社名に「ホールディングス(HD)」や「グループ」と付く会社はこの持株会社に該当します。

なお通常の事業会社が単に資産運用や取引関係強化のために他社株式を持つだけでは持株会社とはみなされず、子会社の経営支配を目的として株式を所有する場合のみ持株会社と呼ばれます。

「ホールディングス」と名の付く会社は「純粋持株会社」が多い

では「ホールディングス」と「持株会社」は何が違うのでしょうか?基本的な意味は同じですが、表現上のニュアンスがあります。一般に「持株会社」というと、自社でも事業を営む場合と営まない場合の両方を含む概念です。

それに対し社名に「○○ホールディングス」と称する会社は、自ら事業を行わず子会社の管理・配当受取りを目的とする純粋持株会社を指すことが多いのが特徴です。言い換えれば、「ホールディングス」と名の付く会社の多くは純粋持株会社であり、自社では製造や販売などの事業活動をせず子会社株式の保有とグループ経営管理に専念しています。

自社事業も持つ「事業持株会社」との違い

持株会社でも、自社に主要事業を残したまま周辺事業を子会社化しているケース(事業持株会社)もあります。例えば、あるメーカーが主力事業以外の部門を分社化して持株会社になった場合、その持株会社は自らも製造事業を営む「事業持株会社」です。一方、事業を完全に子会社に任せ本社はグループ統括だけを行うのが「純粋持株会社」で、一般にこちらをホールディングスと呼ぶ傾向があります。

銀行などを傘下に置く「金融持株会社」

例えば、みずほフィナンシャルグループは銀行等を子会社にもつ金融持株会社で、自社では金融業務を直接営んでいません。さらに銀行持株会社のように、金融機関を子会社に収める金融持株会社も存在します。

日本では1997年に解禁、多くの企業が移行

日本では戦前に財閥による持株会社形態が存在しましたが、戦後「市場競争の阻害」を理由に持株会社の設立が禁止されていました。その後、1997年の独占禁止法改正で純粋持株会社が解禁され、国内でもホールディングス化が進展します。

1999年に大和証券グループ本社が国内初の純粋持株会社に移行して以降、現在では上場企業の600社以上が持株会社体制を採用しています。持株会社解禁以降、多くの企業が社名を「○○ホールディングス」と変更しグループ経営に乗り出しました。

2. ホールディングス化のメリット――経営&税務で得られる4大効果

企業がホールディングス化する背景には、経営面と税務面でのメリットが存在します。持株会社制へ移行することで得られる主な効果として、以下の4点が挙げられます。

メリット① 経営判断の迅速化と事業ごとの最適化

グループ全体の経営戦略立案や意思決定を持株会社に一元化できるため、判断の迅速化が期待できます。事業運営は各子会社に委ねることで、トップは戦略策定に専念し意思決定のスピードアップが図れます。また子会社ごとに最適な人事制度や給与体系を設定しやすくなり、各事業の特性に応じた柔軟な運営が可能になります。

メリット② 事業リスクの分散でグループ全体を守る

事業を分社化することで、各子会社が独立採算で責任を負う体制となりグループ全体のリスクヘッジになります。一つの事業が不振に陥っても、他の子会社に直接波及しにくいため、損失をグループ外に拡大せず最小限に抑えることができます。複数の異なる業種を傘下にもつ企業にとって、この経営リスク分散効果は大きなメリットといえるでしょう。

メリット③ M&Aや事業再編を柔軟に進められる

持株会社化によりグループ内外の再編がしやすくなります。例えば、新規に企業を買収してきても持株会社の子会社とするだけでグループ編入が可能となり、組織再編を迅速に進められます。親会社である持株会社が上位からコントロールすることで、異なる企業文化の衝突も抑えやすく、買収後の統合作業が円滑になります。このようにホールディングス体制は積極的なM&A戦略や将来的な事業承継にも柔軟に対応できる器と言えます。

MBOの仕組みについてはこちらのQ&Aもご参照ください。

メリット④ 税務上有利な「グループ通算制度」などを活用できる

ホールディングス化は税務面でも有利に働く場合があります。完全子会社化したグループでは、グループ通算制度(旧・連結納税制度)を利用して子会社間の損益通算が可能となり、赤字子会社の損失と他社の利益を相殺して法人税負担を軽減できます。

また持株会社を通じた株式移転や交換は組織再編税制により適格要件を満たせば税負担なく実施でき、グループ再編コストを抑えられます。さらに事業オーナーの視点では、持株会社を活用した相続税・贈与税対策も考えられます。例えば後継者が新設の持株会社を承継する形にすれば、傘下企業の利益は含み益として処理され直接株式を相続するより課税上有利になる場合があります。ただしこのスキームは税務当局の判断によるため注意が必要です。

ホールディングス化によりグループ体制の最適化を図る

以上のように、ホールディングス化には経営効率化・リスク分散・戦略柔軟性・税務面のメリットという大きな効果があります。実際、近年は迅速な意思決定やリスク管理を目的に持株会社制へ移行する企業が増加傾向にあります。こうしたメリットと自社の状況を照らし合わせ、グループ体制の最適化を図る動きが広がっているのです。

3. ホールディングスのデメリットと投資リスクとは?

もちろんホールディングス化にはデメリットも存在します。企業経営面での課題に加え、投資家の視点から注意すべきリスクも確認しておきましょう。

デメリット① 管理部門の重複によるコスト増加

グループ会社が増えるほど、経理・人事・総務など重複する部門が生じてコスト増加を招きます。持株会社新設時には登録免許税や公証費用に加え、年間数百万円〜数億円規模の法務・会計・税務コストが発生するケースもあります。

持株会社自体の維持にも法務・会計対応などのコストがかかり、全体として管理負担が重くなる点はデメリットです。ただし実務上はシェアードサービスの導入(間接部門の集約)などで重複コスト削減を図ることも可能です。

デメリット② 子会社間の連携不足(セクショナリズム)の発生

グループ内各社が独立性を持つ反面、子会社同士の連携不足が生じやすくなります。持株会社傘下で各社がそれぞれの経営方針を追求する結果、グループ全体のシナジーが発揮されず、場合によっては部署・会社間の対立や調整コスト増大を招くリスクがあります。

たとえば販売チャネルの食い合い、重複開発、情報共有の遅延による機会損失などが典型例です。このようなセクショナリズム(縦割り)による非効率は、持株体制の設計次第で軽減する必要があります。横串 KPI の設定、クロスファンクショナル会議の定例化、人事ローテーションによる“壁”の解消といった対策でセクショナリズムを緩和できます。

デメリット③ 組織構造の複雑化とガバナンスの問題

持株会社体制では、連結決算やグループ全体の経営状況を把握するために高度な会計管理が求められます。親会社は単体では事業を営んでいないため、投資家にとっては“本業の稼ぐ力”が連結情報に埋もれやすく、セグメント情報や注記が不十分だと評価が難しくなります。

また親会社-子会社間や子会社同士の取引など、ガバナンス面・少数株主保護面で注意すべき点も増えます。これらは透明な情報開示と適切な内部統制によって乗り越える必要があります。特に IFRS 適用企業は “事業別情報” の開示拡充が求められる点に留意が必要です。

デメリット④ 株価が割安に放置されやすい「持株会社ディスカウント」

投資家にとって大きなリスクは、持株会社の株価が実際の資産価値より低く評価されやすいことです。一般に、多角化企業や投資持株会社は、その保有資産の実質価値(NAV)に対して市場価格がディスカウントされる傾向があります。

これはグループ資産の流動性や各事業の不透明さ、リスク要因を市場が織り込むためで、いわゆる「持株会社ディスカウント」として知られます。

例えばソフトバンクグループの株価は 2025年3月末時点で NAV の約0.42倍(株価7,479円/NAV17,892円)となるなど、依然 50〜60%程度のディスカウントで推移しています。

主因とされるのは①保有資産の流動性の低さ、②資本配分の不透明感、③情報開示の複雑さの3点です。

このように市場から割安に放置されるリスクがある一方、裏を返せば潜在的な割安銘柄として投資妙味が生まれるケースもあります。ただしディスカウント解消には時間がかかる可能性があり、株主還元策や事業価値向上の取組みがなされない限り株価が低迷し続けるリスクがあります。自社株買い、スピンオフや上場子会社の売却、NAV 開示の強化といった施策でディスカウント縮小に成功した事例もあります。

株価ドライバーを読み解く:ホールディングス銘柄の評価法

ホールディングス銘柄に投資する際は、通常の事業会社とは異なる評価アプローチが必要です。持株会社の価値は、基本的に傘下企業の価値の合計によって決まります。

MBO公表時の株価変動事例についてはこちらのQ&Aもご参照ください。

基本は「サム・オブ・ザ・パーツ」で企業価値を算出

ホールディングス銘柄は、「サム・オブ・ザ・パーツ」(部分の合計)とも呼ばれる手法で分析するのが有効です。

NAV(純資産価値)とは?その計算方法

まず重要なのがNAV(Net Asset Value:純資産価値)の把握です。NAVとは持株会社が保有する資産総額から負債を差し引いた正味の資産価値を指し、一種のグループの時価純資産といえます。算出方法はシンプルで、NAV = 持株会社の保有株式価値合計 - 正味負債(有利子負債-現預金等)で求められます。さらにNAVを発行済株式数で割ったものが1株当たりNAVです。例えばソフトバンクグループでは、自社IRページで四半期ごとの1株当たりNAVを公表し、経営陣も「NAVの持続的拡大こそが企業価値最大化につながる」との方針を掲げています。

NAVと株価を比較し「持株会社ディスカウント」を測る

投資家はまず、このNAVを算出することで理論上の企業価値を把握します。具体的には、傘下に上場子会社があれば各社の時価総額(持株比率分)を合計し、非上場子会社やその他資産は類似企業の指標や簿価・評価額で推定します。そして持株会社本体の負債を差し引きNAVを求めます。次に現在の株価水準とNAVを比較し、株価がNAVに対して割高か割安か(NAV倍率が1倍を上回るか下回るか)を確認します。前述のとおり、多くの場合株価はNAVを下回りディスカウントされています。その割引率(NAVディスカウント率)が大きすぎるかどうか、妥当な理由があるのかを検討することが評価のポイントです。

ホールディングス株の株価を動かす4つのドライバー

株価ドライバー(変動要因)として注目すべき点も、通常の事業会社とは少し異なります。主なポイントを挙げると:

ドライバー①:主要子会社の業績やIPO(新規上場)

傘下主要子会社の業績拡大や株式上場(IPO)は持株会社の資産価値を直接押し上げる要因です。たとえば子会社が好調であれば配当増や株価上昇を通じNAVが増加し、持株親会社の株価にもプラスに作用します。逆に主要子会社の業績不振や株価下落はNAV減少から親会社株の下落要因となります。

ドライバー②:事業ポートフォリオの再編(売却・買収)

持株会社がどのようにグループ資産を入れ替えるかも株価に影響します。不採算事業の売却や有望企業の買収はグループ価値向上につながり株価材料となります。また子会社のスピンオフ(分離上場)や統合の発表は市場に再評価のきっかけを与えます。近年では事業ポートフォリオを絞り込むことで株価評価が高まった例もあり(後述のセブン&アイなど)、再編の方向性は投資判断の重要ポイントです。

ドライバー③:自社株買いや増配などの株主還元策

持株会社ディスカウント解消のカギとして株主還元やガバナンス改善が挙げられます。市場はグループ資産が有効活用されず塩漬けになることを嫌うため、自社株買いの実施や明確な配当方針は株価押上げ要因になります。実際、ソフトバンクグループは過去に大規模な自社株買いを行い市場評価を引き上げたことがあります。また社外取締役の増員や親子上場の解消などガバナンス面の改革も、機関投資家の評価を改善し株価にプラスです。

ドライバー④:金利動向などのマクロ環境と経営陣への信頼

持株会社の株価は、その保有資産の構成によって市場全体やセクター動向の影響を強く受けます。例えば金融株中心の持株会社であれば金利動向に敏感ですし、IT企業を多く抱えればハイテク株相場に連動しがちです。また親会社の信用力(レバレッジの程度)も重要で、負債過多な投資会社は金利上昇局面で株価が抑制される傾向があります。経営陣の資本配分能力や戦略に対する市場の信頼感もソフトバンクGの例のように株価倍率に影響します。

資産価値に対して割安で、価値向上の施策が期待できるか

ホールディングス銘柄を評価するには、グループ全体の資産価値(NAV)と市場価格のギャップを起点に、上記ドライバーがそのギャップを縮小・拡大させる要因となるかを分析します。

割安に放置されている場合でも、それを是正するような材料(資産売却、上場、還元策等)が見込まれるかを見極めることが重要です。一方、構造的にディスカウントが埋まりにくい要因(複雑すぎる事業構成や支配株主の方針など)がある場合は注意が必要でしょう。総合的に判断し、「資産価値に対して十分割安で、かつその価値を顕在化できる経営施策が期待できるか」がホールディングス株投資のポイントとなります。

5. 実例研究:主要ホールディングス3社の戦略と株価

日本を代表するホールディングス企業3社の戦略と株価動向を概観し、持株会社形態がどのように評価されているか実例を見てみましょう。

① ソフトバンクG:投資成果とNAVが直結する代表格

国内有数の投資持株会社です。元は通信事業者でしたが現在は孫正義氏率いる投資会社色が強く、ビジョンファンドを通じて新興企業に積極投資しています。保有資産価値に対し株価が大きく割安(NAV倍率0.42倍前後)な典型例として知られ、市場からは「持株会社ディスカウント」の代表格とみなされています。

これは保有資産の中身(未上場スタートアップの評価不透明さや多額の有利子負債)への警戒感が原因とされています。実際、WeWorkなど投資失敗による巨額損失の影響でNAVに対する株価の割引が広がった経緯があります。

もっとも、2023年に英国Arm社の上場成功や大型の自社株買い実施で市場の見方も変わりつつあります。2025年2月にOpenAIと共同で『SB OpenAI Japan』設立を発表するなど、新たな成長戦略が評価されつつあり、株価も安値圏から持ち直しました。今後、保有資産の売却益やIPOによるNAV増強、さらに継続的な株主還元策によってディスカウント縮小が進むかが注目されています。

② ソニーグループ:多角化事業を両立させグローバル投資家から高評価

エレクトロニクスからエンターテインメントまで多角化したソニーも2021年に社名を「ソニーグループ」に変更し持株会社体制となりました。ゲーム(PlayStation)や音楽・映画など複数の事業子会社を抱えていますが、企業価値は各セグメントの好調に支えられ近年株価は上場来高値圏を更新しました(2025年3月末に22.7兆円と上場来高値圏)。

ホールディングス化の狙いは事業ごとの機動力強化で、実際に利益成長の牽引役であるエンタメ分野への集中投資が奏功しています。直近では半導体子会社の上場検討報道(2025年4月30日)を受け株価が一時7%高となり、事業ポートフォリオ再評価が進んでいます。

戦略面では、2020年に金融子会社(ソニーフィナンシャルHD)を一度完全子会社化した後、2025年10月に史上初の“直接上場形”パーシャルスピンオフする計画を発表しました。金融子会社を分離しつつソニー本体は一部株式を持ち続ける形で、金融事業には独自戦略を追求させながらソニーブランドの恩恵も残す構造です。

このように事業ポートフォリオを積極的に再構築し、各事業の価値最大化を図る動きが市場に好感されています。また2025年5月に発行済みの1.66%・上限2,500億円の自社株買い枠を決議するなど株主還元にも意欲を見せており、安定高収益企業としてグローバル投資家から高い評価を受け続けています。

③ パナソニックHD:事業の「専鋭化」で改革を進める老舗

家電の老舗パナソニックも2022年に持株会社へ移行し、複数の事業会社に分割しました。従来の統合経営から事業ごとの「専鋭化」(専門特化と経営効率化)を目指す改革で、低収益体質からの脱却が狙いです。

2025年度中には中核事業会社である旧パナソニック株式会社をさらに細分化し、旧パナソニックを事業別カンパニーに再編する計画(社名変更含め検討中)を発表しています(いわゆる「パナソニック解散」報道)。

一見ネガティブにも見えるこの決断ですが、市場は「事業成長と効率向上を目的とした前向きな再編」と評価し、発表翌日(2025年2月4日)に終値ベース+ 15%と11年ぶりの上昇率を見せました。昨年来高値を更新し時価総額は4,000億円超上積みされるなど、株主は「ようやく改革が動き出した」と捉えたようです。

この背景には、同社の慢性的な低利益率に対する危機感と、部分ごとに独立させ責任を明確にすることで競争力を高める期待があります。実際、持株会社体制移行後は赤字事業の縮小や生成AI分野への新規投資など構造改革が進み、株価も上昇基調に転じました。今後は各分社の業績が株価を左右することになりますが、投資家からは大胆な資本政策で企業価値を底上げしている好例として注目されています。

加えて5月9日には1万人規模のリストラと1300億円の構造改革費用を発表し、ROE10%目標を掲げています。

セブン&アイHDのMBO動向については以下の記事で詳しく解説しています。

ホールディングス株を選ぶ際の5ステップ

最後に、実際にホールディングス株へ投資する際の分析・銘柄選択の手順を5つのステップに整理します。

ステップ1:グループの全体像と主力事業を把握する

まず対象となる持株会社の傘下企業一覧と事業ポートフォリオを確認します。どのような事業セグメント・子会社から成り立っているのか、主力収益源は何か、を押さえます。業績に占める割合が高い重要子会社や事業分野を特定し、その業界動向も把握しておきます。例えば金融持株会社であれば銀行・証券・保険の子会社がある、事業持株会社であれば親会社自身も○○事業を営みながら△△事業は子会社化している、などグループ全体像を俯瞰しましょう。

ステップ2:連結財務諸表で収益力と健全性を確認する

次に連結財務諸表やセグメント別業績を分析します。持株会社の場合、単体決算はあまり意味をなさないため連結ベースで見る必要があります。単体PLで配当受取・本社費用・金利負担を把握し、連結数字と突き合わせると資本配分の実態が読み取れます。

売上や営業利益の内訳が各子会社(セグメント)でどう分布しているか、また親会社(持株会社)の単体純利益の中で子会社配当金が占める割合なども注目ポイントです。傘下に上場子会社がある場合は各社の決算動向にも目を通します。加えて財務健全性も重要です。持株会社本体の有利子負債が過大でないか、自己資本比率は十分か、フリーキャッシュフローの状況などをチェックします。これはグループ全体の安定性のみならず、後述の株主還元余力にも関わるためです。

ステップ3:NAV(純資産価値)を算出し、理論上の企業価値を測る

財務データと市場価格を用いてNAVの概算を行います。手順としては、まず各子会社の株価に持株比率を乗じ、負債が株価にすでに織り込まれている点に留意しながら親会社の持分価値を合計します。次に、非上場子会社や不動産などその他資産の評価額を推定します。

非上場子会社については、類似上場企業の EV/EBITDA や PER といった株価倍率を適用するか、将来キャッシュフローを割り引く DCF 法を用います。不動産は帳簿価を起点とし、鑑定評価や REIT 利回りを参考に時価へ補正します。この時点で得られた資産総額からは、持株会社本体のネット有利子負債と、簿価評価を採用した非上場子会社のネット負債だけを控除します。上場子会社に関しては、株価が負債を反映しているため重ねて控除する必要はありません。

加えて、影響が大きい場合には資産売却時に発生し得る潜在法人税を差し引き、簿価資産と時価との差額による含み損益も調整します。こうして導いた純資産価値を発行済株式数で割れば 1 株当たり NAV が得られます。さらに、評価パラメータを変化させた楽観・ベース・悲観のシナリオを用意すれば、NAV がどの程度ブレ得るかというレンジまで把握でき、株価とのディスカウントをより立体的に判断できます。

DCF法で理論株価を計算する手順は以下の記事で詳しく解説しています。

株価の割高・割安を判断する基礎についてはこちらのQ&Aもご参照ください。

ステップ4:株価とNAVを比較し、割安度(ディスカウント率)を分析する

算出したNAVと現在の株価を比較し、どの程度の乖離があるか確認します。例えば株価がNAVの半分であれば約50%のディスカウント、株価がNAVと等しければディスカウントなし(NAV倍率1倍)と評価できます。このギャップが大きい場合、その理由を考察します。

市場が懸念する要因(例:主要事業の先行き不透明、グループ内取引の不透明性、過剰な債務など)があるのか、それとも単に市場に情報が行き渡っていないだけなのかを分析します。裏付けとして、類似する他の持株会社のNAV倍率と比較してみるのも有効です。例えば同業種の持株会社が概ねNAVの80%で評価されている中で対象企業が50%なら割安と判断できますし、逆に他社並みに割高なケースもあります。株価とNAVのギャップ分析により、その銘柄の割安・割高度合いを定量的に掴みましょう。

ステップ5:価値向上シナリオ(カタリスト)の有無を見極め、投資判断する

最後に、そのギャップが縮小し得るかどうかを見極めます。具体的には、持株会社経営陣の戦略や今後予想されるイベントが株価に与える影響を考えます。例えば「主要子会社の業績拡大や上場が見込める」「資産売却や事業再編でマーケットの注目を集めそうだ」「親会社が大規模な自社株買いや増配を表明しそうだ」といったポジティブなシナリオがあれば、現在大きなディスカウントがある銘柄は投資妙味(アップサイド)が高いと判断できます。

一方、「事業ポートフォリオが複雑すぎて当面解消策がない」「オーナー経営で少数株主軽視の傾向がある」「資本不足で増資リスクが高い」等のネガティブ要因が見える場合、いくら割安でも価値が開花しにくいかもしれません。加えてマクロ経済の動向や規制環境も踏まえ、複数の将来シナリオで株価がどうなり得るかをシミュレーションします。その上で、自身のリスク許容度に照らし投資判断(買いか見送りか)を下すと良いでしょう。

市場価値が実力より低く、今後価値が顕在化する銘柄を見極める

以上のステップで分析を行えば、ホールディングス株投資の判断材料がかなりクリアになるはずです。ポイントは、「現在の市場価格がグループの実力価値より十分低いか」、そして「その価値が顕在化する見通しがあるか」という2点です。持株会社は一見複雑ですが、本質的には保有資産の集合体です。丁寧に価値評価し、経営の方向性を読み解くことで、魅力的な投資対象を発掘できるでしょう。日本市場でも昨今、企業価値向上に向けた持株会社の動き(再編や還元強化など)が活発化しています。そうした変化を捉え、適切な分析に基づいて投資判断することで、ホールディングス株をポートフォリオに活かすことができるでしょう。

よくある質問(FAQ)

この記事のまとめ

ホールディングス株は保有資産価値と資本配分の質が真価を左右します。まず連結財務とNAVで実力を測り、同業比較でディスカウント率の妥当性を確認しましょう。次に子会社IPOや資産売却、自社株買いの実施余地、債務規模と資金コストを点検し、流動性と株主還元の見通しを評価します。さらにインデックスや個別事業会社とリスク・リターンを比較し、自身の投資目的と許容度に照らして長期保有か短期イベント狙いかを決める姿勢が重要です。金利環境や為替動向も反映したシナリオ分析で想定外リスクを絞り込むと納得度が高まります。必要に応じて専門家に相談するのも選択肢です。

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持株会社(ホールディングス)

持株会社(ホールディングス)とは、他の会社の株式を保有することによって、その会社を支配・管理することを目的とした会社のことをいいます。自らは製品やサービスを直接提供する事業を行わず、主に子会社の経営を監督・調整する役割を担います。たとえば、大企業が事業を分社化し、それぞれの事業を子会社として独立させ、その上に立ってグループ全体を統括する会社が持株会社です。この形態にすることで、グループ経営の効率化や迅速な意思決定が可能になり、事業リスクの分散や資本政策の自由度が高まるといったメリットがあります。投資家にとっては、ホールディングス体制の企業がどのような子会社を持ち、どのように経営しているかを理解することが、投資判断の材料となります。

純粋持株会社

純粋持株会社とは、自らは事業を行わず、もっぱら子会社の株式を保有して経営管理を行うことだけを目的とする持株会社のことをいいます。たとえば、製造や販売などの事業活動を直接手がけるのではなく、子会社にそれぞれの事業を任せ、自社はその指導や監督に専念するのが特徴です。純粋持株会社の利点としては、事業ごとに分けた経営管理がしやすくなり、全体の経営戦略を効率的に立てやすくなることがあります。また、資産運用や投資の視点からは、純粋持株会社の子会社の構成や業績が、その会社全体の価値を大きく左右するため、企業分析の際には特に注目されることが多いです。

純資産総額(Net Asset Value, NAV)

純資産総額とは、投資信託(ファンド)が保有しているすべての資産から、負債を差し引いた実質的な価値の合計を指します。これは、そのファンド全体の規模や健全性、人気度を測る指標としてよく使われます。一般的に、投資家がファンドに多くのお金を預ければ預けるほど、この純資産総額は大きくなります。また、運用成績が良くて利益が出ているファンドほど、純資産総額が増加する傾向にあります。資産運用の観点では、ファンド選びの際にこの数字を確認することで、流動性の高さや安定した運用体制があるかどうかの目安になります。ただし、金額が大きいからといって必ずしも運用成績が良いとは限らないため、他の指標と合わせて判断することが大切です。

持株会社ディスカウント

持株会社ディスカウントとは、持株会社の株価が、保有している子会社などの資産価値の合計よりも低く評価される現象を指します。たとえば、持株会社が複数の上場企業の株式を保有していて、それぞれの株価を合計すると本来の純資産価値が算出されますが、実際の株価はその合計よりも低くなることがあります。この差が「ディスカウント」と呼ばれ、投資家の間では持株会社の経営効率やガバナンス、資本の使い方に対する不安感などが要因として挙げられることが多いです。 この現象は資産運用や企業分析において重要な視点となり、割安株を探す投資戦略にも影響を与えることがあります。

アセットアロケーション(資産配分)

アセットアロケーション(Asset allocation)とは、資産配分という意味で、資金を複数のアセットクラス(資産グループ)に投資することで、投資リスクを分散しながらリターンを獲得するための資産運用方法。アセットアロケーションは戦略的アセットアロケーションと戦術的アセットアロケーションの2つを組み合わせることで行われ、前者は中長期的に投資目的・リスク許容度・投資機関に基づいて資産配分を決定し、後者は短期的に投資対象の資産特性に基づいて資産配分を決定する。

子会社

子会社とは、ある会社(親会社)が株式の過半数を保有し、経営方針などを実質的に支配している会社のことをいいます。たとえば、親会社が子会社の株をたくさん持っていることで、子会社の役員を決めたり、重要な経営判断に関与したりできるようになります。 投資の観点では、親会社が子会社を持つことで事業の多角化やリスク分散が図れることがあり、親子関係の構造は企業分析や株式投資においても重要な情報のひとつになります。また、決算書などでも連結決算という形で親会社と子会社の業績をまとめて示すことがあるため、子会社の存在は資産運用を考える際にも理解しておくべきポイントです。

IPO(Initial Public Offering/新規公開株式)

IPO(Initial Public Offering/新規公開株式)とは、未上場企業が証券取引所に株式を上場し、一般の投資家に向けて売り出すことを指します。これにより、それまでオーナーやベンチャーキャピタル(VC)など限られた株主のみが保有していた株式が、市場を通じて誰でも売買できるようになります。 企業にとってIPOは、成長資金を調達するだけでなく、知名度や信用力を向上させる手段の一つです。また、創業者やVCが投資を回収(エグジット)する機会にもなり、優秀な人材を確保するためのストックオプション制度の活用が可能になるといったメリットもあります。一方で、上場後は業績や経営方針が市場の厳しい評価を受けるため、ガバナンスの強化や継続的な成長が求められます。 IPOのプロセスは、主幹事証券の選定、証券取引所の審査、目論見書の作成、投資家向けのロードショー、仮条件の設定、公募・売出価格の決定などを経て進められます。公募価格は需要と供給をもとに決定され、上場初日に初値が形成されます。 投資家にとってIPOは、成長企業への投資機会となる一方、初値が公募価格を大きく上回ることもあれば、期待ほど上昇しない場合もあるため、市場の動向をよく見極める必要があります。また、ロックアップ期間(上場後一定期間、大株主が株を売れない規制)が解除された後に売却が増えることで、株価が下落するリスクもあるため注意が必要です。

株主還元

株主還元とは、企業が利益を出した際に、その一部を株主に対して返すことを指します。具体的には、配当金の支払い、自己株式の取得(自社株買い)、株主優待などの形で行われます。 これらは、株を保有している人にとっての「見えるリターン」であり、企業がどれだけ株主を大切にしているかを示す指標にもなります。特に長期投資を考えるうえでは、企業の成長性だけでなく、株主還元の姿勢も大切な判断材料になります。安定的な配当を出している企業は、収益基盤がしっかりしていると考えられるため、投資先として安心感があります。

配当(配当金)

配当とは、会社が得た利益の一部を株主に分配するお金のことをいいます。企業は利益を出したあと、その一部を将来の投資に使い、残った分を株主に還元することがあります。このときに支払われるお金が配当金です。株を持っていると、持ち株数に応じて定期的に配当金を受け取ることができます。多くの場合、年に1回または2回支払われ、企業によって金額や支払い時期は異なります。配当は企業からの「お礼」のようなもので、株を長く持ち続ける理由の一つになることがあります。

自社株買い

自社株買いとは、企業が市場に出回っている自社の株式を自ら買い戻すことを指します。この行為は、企業が余剰資金を使って株主への利益還元を図る方法のひとつであり、株価の下支えや上昇を促す目的でも行われます。自社株を買い戻すことで市場に出回る株式の数が減少し、1株あたりの利益(EPS)が相対的に高まるため、投資家にとっては企業の価値向上のサインと受け取られることもあります。 また、買い戻した株式は「自己株式」として保有するか、将来的に消却(完全に廃止)されることが多く、それによって株式の希少性が高まるという効果もあります。自社株買いは、配当と並ぶ株主還元策として注目される一方で、その実施の背景やタイミングには注意が必要です。

M&A(Mergers and Acquisitions)

M&A(エムアンドエー)とは、「Mergers and Acquisitions」の略で、企業の合併(Mergers)や買収(Acquisitions)を指します。合併は2つ以上の企業が統合し1つの会社になることで、買収はある企業が別の企業の株式や資産を取得し、経営権を握ることを意味します。 M&Aは、企業が事業規模を拡大したり、新規市場に参入したりする手段として活用されます。特に成長戦略の一環として、新技術の獲得や競争力の向上を目的に行われることが多く、業界再編や経営効率の向上にも寄与します。また、M&Aは企業の合併・買収だけでなく、業務提携などの戦略的パートナーシップを含めて語られることもあります。 M&Aの手法には、友好的買収と敵対的買収があり、友好的買収では買収先企業の同意のもとで取引が進められますが、敵対的買収では買収先の同意なしに進められる場合があります。さらに、株式交換や事業譲渡、経営統合など、さまざまな形態が存在します。 特にグローバル企業や成長企業にとって、M&Aは競争力を強化する重要な経営戦略の一つです。しかし、企業文化の違いや統合後のシナジー効果の実現といった課題も伴うため、慎重な戦略策定と適切なデューデリジェンスが求められます。

コーポレートガバナンス

コーポレートガバナンスとは、企業が経営を適切に行い、株主をはじめとする利害関係者(ステークホルダー)に対して責任ある経営を果たすための仕組みのことを指します。直訳すると「企業統治」で、企業の経営陣が独断的な行動を取らず、透明性のある判断を行うように監視・制御する体制全般を意味します。 たとえば、社外取締役の設置、内部統制の整備、情報開示の充実、株主の意見を反映させる仕組みなどがコーポレートガバナンスの具体的な取り組みにあたります。これにより、不正や粉飾決算の予防、長期的な企業価値の向上、投資家からの信頼獲得が期待されます。 資産運用の観点からは、コーポレートガバナンスがしっかりしている企業は、経営の安定性や成長性が高く、長期的に投資対象として魅力があると判断されやすいため、重要な評価項目の一つとなっています。特にESG投資や株主アクティビズムの広がりの中で、その重要性は年々高まっています。

セグメント情報

セグメント情報とは、企業が行っている事業をいくつかの分野に分けて、それぞれの収益や利益の状況などを開示する情報のことをいいます。たとえば、ある会社が家電事業と不動産事業を展開している場合、それぞれの売上や利益を分けて報告することで、どの事業がどれくらいの成果を上げているのかを把握できるようになります。 これは投資家にとって非常に重要で、企業の成長性やリスクをより正確に評価するための材料になります。また、特定のセグメントが業績の大部分を占めている場合には、その分野に対する外部環境の影響も考慮する必要が出てきます。したがって、セグメント情報は企業分析の基本的な視点として押さえておくべき内容です。

連結財務諸表

連結財務諸表とは、親会社とその子会社を一つの企業グループとみなして、グループ全体の経営状況をまとめて表す財務諸表のことをいいます。たとえば、親会社が複数の子会社を持っている場合、それぞれの売上や利益を単独ではなく、合算して一つの企業として扱う形になります。これにより、投資家や金融機関などの外部関係者は、グループ全体の経営実態をより正確に把握できるようになります。 連結財務諸表には、連結損益計算書や連結貸借対照表、連結キャッシュ・フロー計算書などが含まれます。単体の決算書では見えにくい、グループ全体の経営戦略や収益力、財務健全性を判断するうえで欠かせない情報源となります。

EBITDA

「Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization」(税引前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益)の略。国によって金利水準、税率、減価償却方法などが違うため、国際的企業の収益力は一概に比較することは出来ないが、EBITDAはその違いを最小限に抑えて利益の額を表すことを目的としているため、国際的な企業、あるいは設備投資が多く減価償却負担の高い企業などの収益力を比較・分析する際に用いられる。

PER(株価収益率)

PER(株価収益率)は、企業の株価がその企業の利益と比較して割安か割高かを判断するための指標です。計算方法は「株価 ÷ 1株当たり利益(EPS)」で求められ、数値が低いほど利益に対して株価が割安であることを示します。ただし、業界ごとの平均PERが異なるため、他の企業や市場全体と比較して判断することが重要です。PERが高い場合は将来の成長期待が大きいと解釈されることもありますが、過大評価されている可能性もあるため注意が必要です。

PBR(株価純資産倍率)

PBR(株価純資産倍率)とは、企業の株価が1株当たり純資産の何倍で取引されているかを示す指標です。計算式は「株価 ÷ 1株当たり純資産(BPS)」で求められます。PBRが1倍未満の場合、理論上は会社の解散価値よりも株価が低いとされ、割安と判断されることがあります。

カタリスト(株価変動要因)

カタリスト(株価変動要因)とは、株価に大きな影響を与える「きっかけ」となる具体的な出来事や発表のことを指します。たとえば、企業の好決算、新製品の発表、経営陣の交代、大型のM&A(企業の買収や合併)、政策変更などが該当します。 これらは投資家にとって重要な情報であり、企業の価値や将来性に対する見方を一変させる可能性があるため、市場では注目されやすいです。カタリストは必ずしもポジティブなものとは限らず、不祥事の発覚や業績の下方修正など、ネガティブな材料も含まれます。日々の価格変動の中で特に強い影響力を持つ要因として、カタリストは投資判断において非常に重要な概念となります。

流動性

流動性とは、資産を「現金に変えやすいかどうか」を表す指標です。流動性が高い資産は、短時間で簡単に売買でき、現金化しやすいという特徴があります。例えば、上場株式や国債は市場で取引量が多く、いつでも売買できるため、流動性が高い資産とされています。 一方、不動産や未上場株式のように、売買相手を見つけるのが難しかったり、取引に時間がかかったりする資産は、流動性が低いといえます。 投資をする際には、自分が必要なときに資金を取り出せるかを考えることが重要です。特に初心者は、流動性が高い資産を選ぶことで、急な資金需要にも対応しやすく、リスクを抑えることができます。

税務最適化

税務最適化とは、企業や個人が法律の範囲内で税金の負担を軽くし、財務的に有利な状態を目指すことをいいます。たとえば、節税効果のある投資を活用したり、利益の出方や経費の使い方を工夫したりすることで、納める税金の額を抑えることができます。 税務最適化は、違法な脱税とは異なり、税法を正しく理解し、それに従って効果的に資産を管理・運用する取り組みです。企業にとっては、経営資源を効率的に活用し、株主や投資家にとっての利益を最大化するための一環として重要視されます。投資家の立場からも、税務最適化に積極的な企業は利益を効率よく活用していると評価されることがあります。

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