ワンルームマンション投資など、不動産投資は節税になると聞きました。注意点や落とし穴はありませんか?
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2024/10/03 18:36
男性
30代
現在、ワンルームマンション投資を検討しています。職業柄、節税対策で使えるものが多くないのですが、ワンルームマンションを複数持つ程度なら節税にもなり、何かあった時の保険としても使えるのでいいのではないかと考えています。将来、毎月8万円程度の不労所得が得られると思うと、先行投資として悪くないと考えています。<br>ただ、初期投資が大きいことと、話がうますぎる気もしているので若干の不安があります。なにか見過ごしている落とし穴はないでしょうか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
不動産投資による節税効果は、減価償却や損益通算によって税負担を先送りする「時期の調整」にすぎず、恒久的な非課税メリットではありません。したがって、投資判断は①長期で見た実質キャッシュフロー(税引後・ローン返済後)、②売却時の資産価値、の2軸で行うことが肝要です。ワンルームマンション一戸の場合、表面利回りから管理費・修繕積立金・固定資産税・火災保険・金利を差し引くとネット利回りは2〜3%下がるのが一般的で、空室1 か月でさらに約0.8%低下します。「月8万円の手取り」を目標にするなら、家賃水準・空室率・金利上昇幅・減価償却終了後の税負担を織り込んだ詳細なシミュレーションを自ら作成し、販社の試算と突き合わせてください。主なリスクと対策は次のとおりです。
- 立地・人口動態リスク:駅徒歩10分超や人口減少エリアでは賃料と売却価格が下落しやすいため、賃貸需要と再販事例を必ず確認。
- 金利変動リスク:変動金利ローンは1%上昇で月々返済が1〜2万円増えることも。固定・変動のミックスや繰上返済余力を用意。
- 修繕コストリスク:築15年を超えると給排水管・屋上防水など高額修繕が増加。修繕積立金の不足額を物件調査報告書でチェック。
- サブリース・家賃保証リスク:保証賃料は契約更新時に減額・打切りが可能。契約条項と原状回復費用負担を必ず精査。
- 税負担の後戻りリスク:減価償却終了後は節税効果が薄れ、売却時に繰延税が一括で顕在化する可能性。譲渡所得税・住民税・復興税を含めた出口税額を試算。
不動産は流動性が低く、急な資金需要時には想定以下の価格でしか売却できない場合があります。最悪シナリオでも家計が赤字化しないか、複数前提(高金利・長期空室・価格下落)のストレステストを行いましょう。そのうえで、内部収益率(IRR)が期待リターンを上回るか、ローン完済後も安定黒字が続くかを確認し、購入前に独立系の不動産鑑定士や税理士のセカンドオピニオンを得ることを強くおすすめします。
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総合課税
総合課税は、給与や年金、事業収入、不動産収入、利子、配当など、1年間に得たさまざまな所得を合算し、その合計額に累進税率を適用して所得税を計算する方式です。 所得が増えるほど税率が高くなるため、高所得者ほど税負担が大きくなる点が特徴です。一方、金融所得には総合課税以外の課税方法を選択できる場合があります。 たとえば、株式譲渡益や先物取引益などは「申告分離課税」を選ぶことで、ほかの所得と区分して一律20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)で申告できます。 また、預貯金利息や一部の公社債利子などは、支払元が税金を源泉徴収する「源泉分離課税」となり、原則として確定申告は不要です。配当や利子のように課税方式を選択できるケースでは、ご自身の所得水準や控除の有無、損益通算の可能性を踏まえ、総合課税・申告分離課税・源泉分離課税のどれを採用するかを検討することが、最終的な税負担を抑えるうえで重要になります。
譲渡益
譲渡益とは、株式や不動産などの資産を売却した際に得られる利益のことを指します。具体的には、売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いた金額が譲渡益となります。個人が株式を売却して利益を得た場合、通常は譲渡所得として申告分離課税(税率20.315%)の対象になります。不動産の場合、所有期間が5年以下の短期譲渡は税率39.63%、5年超の長期譲渡は20.315%の税率が適用されます。 また、投資信託の売却益も譲渡所得に分類されますが、分配金の一部は配当所得として課税される場合があります。税制上の優遇措置として、NISA(少額投資非課税制度)や居住用不動産の3000万円特別控除などがあり、適用条件を理解することが重要です。 資産運用においては、売却のタイミングや税制の影響を考慮し、適切な税対策を行うことが求められます。
法定耐用年数
法定耐用年数とは、税法上で資産の「使用可能な期間」として定められた年数のことです。これに基づいて、資産の購入費用を分割して経費として計上する「減価償却」を行います。たとえば、不動産や設備、車両などが対象となります。 資産ごとに耐用年数は異なり、建物なら数十年、機械や車両なら数年程度が一般的です。この法定耐用年数は税務上のルールであり、実際の使用期間や資産の寿命とは必ずしも一致しません。投資家として不動産や設備に投資する際、この耐用年数を理解しておくことで、減価償却を活用した節税や資産の収益性の計算に役立てることができます。
損益通算
投資で発生した利益と損失を相殺することで、課税対象となる利益を減らす仕組みのことです。たとえば、株式投資で50万円の利益が出た一方、別の取引で30万円の損失が発生した場合、損益通算を行うことで、課税対象となる利益は50万円から30万円を引いた20万円になります。この仕組みにより、納める税金を減らすことが可能です。 損益通算が適用されるのは、同じ「所得区分」の中でのみです。たとえば、株式や投資信託の譲渡損益や配当金などは「株式等の譲渡所得等」に分類され、この範囲内で損益通算が可能です。ただし、不動産所得や給与所得など、異なる所得区分間では基本的に通算できません。 さらに、株式投資の損失は、損益通算後も控除しきれない場合、翌年以降最長3年間繰り越して他の利益と相殺できます。これを「繰越控除」と呼び、投資初心者にとっても節税に役立つ重要なポイントです。