相続財産の名義変更トラブルと除斥(じょせき)期間は?
回答受付中
0
2025/05/28 14:25
男性
50代
名義変更や遺産隠しが後から発覚した場合、どれだけ時間が経っても訴えられると思っていました。しかし除斥期間が絡むと取り戻せないことがあると知り不安です。遺産分割協議の取り消しや遺留分侵害額請求にはどんな期限があり、相続人は何を基準に行動を急ぐべきでしょうか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
相続財産の名義変更や遺産隠しが後日判明しても、権利行使には厳格な期限があります。まず遺留分侵害額請求権は民法1048条により「相続開始と侵害を知った時から1年」かつ「被相続人死亡から10年」で消滅します。次に遺産分割協議の錯誤・詐欺・脅迫による取消しは民法126条で「事実を知った時から5年、協議成立から20年」が除斥期間とされ、いずれも時効中断は認められません。このため、不動産が他の相続人名義になったまま10年を超えれば、名義回復も遺留分請求も不可能になるおそれがあります。
リスクを避けるには、相続開始後すぐに名寄帳・登記簿・預金履歴を取り寄せて財産目録を作成し全員で確認する、協議書は公正証書化して内容を客観化する、疑わしい移転を察知した時点で速やかに弁護士へ相談し仮処分や訴訟を検討する、といった時間管理を徹底することが重要です。「あとでまとめて確認」は致命的な遅延を招くため、初動の迅速さこそが相続人の権利を守る鍵となります。
関連質問
関連する専門用語
除斥期間
除斥期間とは、ある権利が成立してから一定の期間が過ぎると、たとえその権利を行使しようとしなくても自動的に消滅してしまう期間のことです。似たような概念に「時効」がありますが、除斥期間は時効のように「主張しないと消えない」のではなく、期間が過ぎれば当然に効力がなくなるという点で大きく異なります。たとえば、不法行為による損害賠償請求権は、発生から20年が経過すると除斥期間により行使できなくなります。この制度は、いつまでも不確定な権利関係が残ることを防ぎ、法律上の安定性や公平性を保つために設けられています。資産運用や相続の分野でも、請求権の有効性を確認するうえで知っておくべき重要な考え方です。
遺留分侵害額請求
遺留分侵害額請求とは、相続人の最低限の取り分である「遺留分(いりゅうぶん)」を侵害された場合に、その不足分に相当する金銭の支払いを求める手続きのことを指します。たとえば、遺言によって特定の相続人だけに多くの財産が渡され、他の相続人が本来もらえるはずの遺留分を受け取れなかったときに、侵害された相続人が他の相続人や受遺者に対してその差額を金銭で請求することができます。 この制度は、相続人間の不公平を防ぎ、一定の相続権を保護するために設けられています。2019年の民法改正により、かつては「遺留分減殺請求」として行われていたものが、現在は金銭による支払いを求める「遺留分侵害額請求」となりました。資産運用や相続の場面では、遺言によって財産の分け方を自由に決める一方で、遺留分という法律上の制約を理解し、トラブルを防ぐための知識として非常に重要です。
遺産分割協議
遺産分割協議とは、相続人が複数いる場合に、誰がどの財産をどのように受け取るかを話し合って決める手続きのことです。預貯金や不動産、有価証券などすべての遺産が対象になります。原則として相続人全員の合意が必要で、話し合いの結果を「遺産分割協議書」という文書にまとめて、全員が署名・押印します。遺言書がない場合や、遺言があっても一部の財産について分け方が指定されていないときに行われます。もし話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所での調停手続きに進むことになります。
名寄帳(なよせちょう)
名寄帳(なよせちょう)とは、市区町村の役所が管理している帳簿のひとつで、ある個人や法人がその自治体内で所有しているすべての不動産(土地・建物)を一覧で確認できる書類のことをいいます。 通常、不動産は「筆(ひつ)ごと」に登記されていますが、名寄帳では所有者ごとにまとめられているため、「自分(または相続人)がどの不動産を持っているか」を一目で把握することができます。 相続や不動産の売買、資産管理などの際に非常に役立つ資料であり、特に相続手続きでは、被相続人の不動産を漏れなく調べるために用いられます。 名寄帳は役所で申請すれば取得でき、登記簿とは異なり、課税の基礎となる情報(固定資産税)も含まれるのが特徴です。資産運用や相続対策を行ううえで、自分や家族の不動産の全体像を把握するための大切な書類です。
登記(登記手続き)
登記とは、会社の設立や変更、財産の所有権などの法的事項を公的な記録として登録する手続きのことを指します。会社の登記は法務局で行われ、商号、本店所在地、役員構成などが記録されます。これらの登記情報は誰でも確認でき、取引の透明性を確保するために重要な役割を果たします。 投資家にとっても、登記情報は企業の実在性や信用を確認するための客観的な根拠のひとつであり、投資判断の信頼性を高める助けになります。また、不動産投資においても、登記を通じて所有権や担保権の状態を確認できます。
公正証書
公正証書とは、公証人という法律の専門家が法律に基づいて作成する公式な文書のことをいいます。これは、契約内容や遺言などを法的に強い効力をもって証明するために用いられ、文書の信頼性を高める役割を果たします。たとえば、金銭の貸し借りに関する契約を公正証書にしておくと、返済が滞った場合に裁判を経ずに強制執行(差し押さえなど)を行うことができるようになります。 このように、公正証書には「証明力」と「執行力」があり、将来のトラブルを防ぐために非常に有効です。資産運用や相続、離婚時の財産分与、贈与契約など、法的な取り決めを明確にしておきたい場面で利用されます。初心者にとっても、「書面で約束を残す」ことの重要性を理解するうえで、知っておくと安心な制度です。