資産が2億円あれば、「FIRE(経済的自立・早期リタイア)」は可能でしょうか?
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2025/10/15 09:13
男性
30代
資産が2億円あればFIREを実現できる可能性は高いと聞きましたが、実際のところ生活水準や運用方法によっては不十分な場合もあると聞きます。FIREを目指す場合、2億円という資産規模でどの程度の生活が可能なのか、想定利回りや支出額の目安など、現実的なシミュレーションを踏まえて教えていただきたいです。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
資産2億円でのFIREは十分に可能です。ただし、年間支出を適切に抑え、取り崩し率をおおむね2.5〜3.3%に管理し、リスクに合った運用と税・社会保険の対策を行うことが前提となります。逆に、支出が多く取り崩し率が高い場合や、安全資産に偏り利回りが低い場合、また医療費などの想定外支出を考慮しない場合には、計画の持続が難しくなります。
取り崩しの目安として、2億円を基準にすると、年500万円(2.5%)、年600万円(3.0%)、年700万円(3.5%)が大まかな上限です。ここから、税金や国民健康保険料などを差し引いた手取りで生活できるかを確認します。退職後は公的年金が始まる65歳以降に取り崩し額を減らすことで、資産を長く維持できます。
支出水準別では、年400〜500万円なら余裕があり、年600万円程度なら相場の悪化時に一時的に支出を減らすルールを設ければ現実的です。年900万円を超えるような生活は取り崩し率が4.5%以上となり、長期リスクが高いため副収入や支出削減の工夫が必要です。
運用面では、生活費3〜5年分(1,500万〜3,000万円)を円の安全資産で確保し、中期資金を債券、長期資金を株式で運用する三層構造が理想です。円支出と外貨投資のミスマッチを防ぐため、為替ヘッジを部分的に活用します。リバランスは年1回を目安に行い、市場が下落したときは安全資産を取り崩すなど規律を守ることが重要です。
取り崩しは初期3%以内を原則とし、物価上昇に応じて増額しますが、市況悪化時は減額を柔軟に行うルールを持ちます。非課税制度(新NISAなど)を活用し、課税口座での税負担を抑える工夫も有効です。
生活費や税だけでなく、住居・医療・介護などの長期支出にも備える必要があります。持家の場合は修繕費、賃貸の場合は家賃上昇を見込み、医療費は公的補助を前提にしつつ現金を厚めに確保します。また、FIRE初年度は前年の所得で保険料が決まるため、課税所得を抑える工夫も有効です。
シミュレーション例として、株式60%・債券40%で運用し、名目利回り5%・1.5%、インフレ2%とすると、年600万円の取り崩し(3%)は現実的です。市場が大きく下落しても、一時的な支出調整と安全資産の活用で持続可能です。一方、年700万円(3.5%)ではリスクが増し、年金受給後の取り崩し圧縮が前提となります。
実行の流れとしては、まず税・保険料込みの年間支出を把握し、必要資産を支出の25〜35倍で確認します。その後、資産の配分と売却順序を決め、生活費数年分を現金で確保してから投資配分を整えます。毎年の見直しで支出・運用・税を最適化することが長期安定の鍵です。
つまり、2億円でのFIREを成功させるには、支出管理、3%以内の取り崩し、安全資産の確保、分散投資、税・保険料の最適化、そして柔軟な支出調整の6点を意識すれば、長期的に安定した生活が十分に実現できます。
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為替ヘッジとは、為替取引をする際に、将来交換する為替レートをあらかじめ予約しておくことによって、為替変動のリスクを抑える仕組み。海外の株や債券に投資する際は、その株や債券の価値が下がるリスクだけでなく、為替の変動により円に換算した時の価値が下がるリスクも負うことになるので、後者のリスクを抑えるために為替ヘッジが行われる。
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リバランスとは、ポートフォリオを構築した後、市場の変動によって変化した資産配分比率を当初設定した目標比率に戻す投資手法です。 具体的には、値上がりした資産や銘柄を売却し、値下がりした資産や銘柄を買い増すことで、ポートフォリオ全体の資産構成比率を維持します。これは過剰なリスクを回避し、ポートフォリオの安定性を保つためのリスク管理手法として、定期的に実施されます。 例えば、株式が上昇して目標比率を超えた場合、その一部を売却して債券や現金に再配分するといった調整を行います。なお、近年では自動リバランス機能を提供する投資サービスも登場しています。
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新NISAとは、2024年からスタートした日本の新しい少額投資非課税制度のことで、従来のNISA制度を見直して、より長期的で柔軟な資産形成を支援する目的で導入されました。この制度では、投資で得られた利益(配当や売却益)が一定の条件のもとで非課税になるため、税負担を気にせずに投資ができます。新NISAでは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つの枠が用意されており、年間の投資可能額や総額の上限も大幅に引き上げられました。 また、非課税期間が無期限となったことで、より長期的な運用が可能となっています。投資初心者にも利用しやすい仕組みとなっており、老後資金や将来の資産形成の手段として注目されています。




