国民健康保険と扶養はどっちが得ですか?
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2025/08/22 08:35
男性
50代
会社を退職したのですが、健康保険を「国民健康保険」に切り替えるか、それとも配偶者の「社会保険の扶養」に入るかで迷っています。どちらが保険料の負担や保障面で有利なのでしょうか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
会社を退職した後に健康保険をどうするかは、多くの方にとって大きな悩みどころです。一般的には、扶養に入れる条件を満たすなら「配偶者の社会保険の扶養」が最も有利といえます。扶養に入れば自分の保険料負担はゼロで、配偶者と同じ社会保険の保障(医療費3割負担や高額療養費制度など)を受けられます。さらに年金制度上も、第3号被保険者として扱われ、自分で保険料を支払わなくても国民年金の加入期間が確保されます。そのため、将来の老齢基礎年金は国保加入と同じく積み上がり、減ることはありません。短期的な負担の観点では、扶養に入れるならまず扶養を選ぶのが合理的です。
ただし、「扶養に入れる=常にベスト」とは限りません。国民健康保険を選んだ方が望ましいケースもあります。たとえば、近い将来に再就職や独立を予定している場合は、最初から国保に加入しておくと制度変更の手続きがスムーズです。また、国保は世帯単位で計算されるため、家族全体で加入した方がトータルの負担が軽くなるケースもあります。さらに自治体によっては、保険料の軽減や独自の医療助成制度が設けられており、それを利用できるなら国保の方が有利になることもあります。そして、収入が扶養条件(年収130万円未満など)をまたぐ可能性が高い場合には、扶養と国保を行き来する煩雑さを避けるため、最初から国保に加入しておいた方が安定するという考え方もあります。
まとめると、扶養に入れるなら短期的な経済合理性は圧倒的に扶養に軍配が上がります。ただし、再就職の見込み、世帯全体の保険料設計、自治体独自の制度、将来の収入増などを考慮すれば、あえて国保を選ぶ合理性も存在します。判断の軸は「直近の生活コストを抑えたいのか」「将来の働き方や世帯全体の設計を優先するのか」にあります。つまり、扶養が原則有利でありつつも、ライフプランや収入見通し次第で国保を選んだ方が安心につながる場合もある、というのが実務的な答えです。
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国民健康保険
国民健康保険とは、自営業者やフリーランス、退職して会社の健康保険を脱退した人、年金生活者などが加入する公的医療保険制度です。日本ではすべての国民が何らかの健康保険に加入する「国民皆保険制度」が採用されており、会社員や公務員が加入する「被用者保険」に対して、それ以外の人が加入するのがこの国民健康保険です。 市区町村が運営主体となっており、加入・脱退の手続きや保険料の納付、医療費の給付などは、住民票のある自治体で行います。保険料は前年の所得や世帯の構成に応じて決まり、原則として医療機関では医療費の3割を自己負担すれば診療を受けられます。病気やけが、出産などの際に医療費の支援を受けるための基本的な仕組みであり、フリーランスや非正規労働者にとっては重要な生活保障となる制度です。
社会保険
社会保険とは、国民の生活を支えるために設けられた公的な保険制度の総称で、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、介護保険などが含まれます。労働者や事業主が保険料を負担し、病気や高齢による収入減少、失業時の経済的支援を受けることができます。社会全体でリスクを分担し、生活の安定を図る仕組みです。 また、社会保険は万が一の備えとして機能し、資産運用においては「公的保障の不足分をどのように補うか」を考える前提となる存在です。
健康保険の扶養
健康保険の扶養とは、主に会社員などが加入している健康保険において、家族の中で収入が一定以下の人を被保険者(加入者)の保険に含めて保険料の負担なしで医療保障を受けられる仕組みのことです。 たとえば、配偶者や子ども、親などがその対象となり、本人が加入している健康保険の制度に基づいて「扶養家族」として認定されると、扶養されている人は自分で保険料を支払うことなく健康保険を利用できます。 資産運用においては、家族の収入や就業状況によって保険の取り扱いや税金の負担が変わるため、この「扶養」の基準を理解しておくことは大切です。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、1ヶ月間に医療機関で支払った自己負担額が一定の上限額を超えた場合、その超過分については後から払い戻しを受けられる公的な医療費助成制度です。日本の公的医療保険制度では、治療費の自己負担割合は原則3割(高齢者等は1〜2割)とされていますが、重い病気や手術、長期入院などで医療費がかさむと、家計への影響が大きくなります。高額療養費制度は、そうした経済的負担を軽減するために設けられており、「所得区分に応じた月ごとの上限額」を超える分について、申請によって払い戻しを受けることができます。 さらに、事前に健康保険の窓口で「限度額適用認定証」を取得して医療機関に提示すれば、病院の窓口で支払う額自体を、最初から自己負担限度額までに抑えることも可能です。これにより、退院後の申請を待たずに、現金の一時的な負担を大きく減らすことができます。 この制度の上限額は、70歳未満・70歳以上で異なり、さらに被保険者の所得区分(年収目安)に応じて細かく設定されています。例えば、年収約370万〜770万円程度の方(一般的な所得区分)であれば、1ヶ月あたりの自己負担限度額は「約8万円+(総医療費−26.7万円)×1%」となり、想定以上の医療費負担が発生しても、上限を超えた分は保険者から還付されます。 資産運用の観点では、この制度の存在によって、突発的な医療費リスクの一部を公的にカバーできるため、「民間医療保険や緊急時資金の準備」を過度に厚くする必要がない可能性があります。 つまり、医療費リスクへの備えを公的制度・民間保険・現金準備のバランスで考える際、この制度の適用範囲を正しく理解しておくことが、保険の選択や生活防衛資金の適切な設定に役立ちます。特に、高所得者層や自営業者は制度上の上限額が比較的高めに設定されている点や、支給までにタイムラグがあることも踏まえ、制度と現金の備えの両面から検討することが重要です。
第3号被保険者
第3号被保険者とは、日本の公的年金制度において、20歳以上60歳未満で会社員や公務員の配偶者(主に専業主婦・主夫など)として扶養されている人を指します。具体的には、第2号被保険者(厚生年金に加入している人)に扶養されている配偶者で、自分自身は収入が一定額以下で厚生年金などに加入していない人が対象です。 この制度の特徴は、自ら保険料を納めなくても、国民年金(基礎年金)の加入者として扱われ、将来的に年金を受け取る権利がある点です。制度的には、配偶者の厚生年金保険料に含まれる形で保険料が負担されている仕組みです。結婚や就労状況の変化によって資格を失うこともあるため、制度内容の正しい理解が重要です。年金やライフプランを考えるうえで、特に家庭内の役割分担や働き方に関連して注目される制度です。
老齢基礎年金
老齢基礎年金とは、日本の公的年金制度の一つで、老後の最低限の生活を支えることを目的とした年金です。一定の加入期間を満たした人が、原則として65歳から受給できます。 受給資格を得るためには、国民年金の保険料納付済期間、免除期間、合算対象期間(カラ期間)を合計して10年以上の加入期間が必要です。年金額は、20歳から60歳までの40年間(480月)にわたる国民年金の加入期間に応じて決まり、満額受給には480月分の保険料納付が必要です。納付期間が不足すると、その分減額されます。 また、年金額は毎年の物価や賃金水準に応じて見直しされます。繰上げ受給(60~64歳)を選択すると減額され、繰下げ受給(66~75歳)を選択すると増額される仕組みになっています。 老齢基礎年金は、自営業者、フリーランス、会社員、公務員を問わず、日本国内に住むすべての人が加入する仕組みとなっており、老後の基本的な生活を支える重要な制度の一つです。