信用取引はやめとけ、といわれる時の具体的な問題はなんですか?
回答受付中
0
2025/08/18 07:40
男性
30代
レバレッジを効かせた信用取引は危ないからやめとけと言われたのですが、実際には何が問題なのでしょうか?借金が残る可能性はありますか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
信用取引が「やめておけ」と言われる主な理由は、小さな判断ミスや想定外の値動きが短期間で致命傷になりやすい構造にあります。レバレッジをかけることで損失が自己資金以上に拡大し、わずかな株価下落でも追証(追加保証金の差し入れ)や強制決済が発生しやすくなります。特に寄り付きで大きく下がるギャップダウンや連続ストップ安では逃げ場がなく、最悪の場合は保証金を超える損失=借金が残ることもあります。
また、信用取引では金利や貸株料、逆日歩などのコストが日々発生します。横ばい相場や微増程度では、これらのコストが利益を食いつぶすため、長期保有ほど不利になります。制度信用には6か月の期日があるため、思惑通りにならなければ時間切れで損切りを迫られることもあります。途中で増し担保や規制強化が導入されると、想定外の資金繰り負担が発生します。
市場構造面でも、値幅制限や売買停止があるため、大きな悪材料が出た際には事実上の取引不能状態になり、維持率が急落します。流動性の低い銘柄では成行約定のスリッページが大きく、強制決済のダメージも拡大します。
空売りには特有のリスクもあります。株価が無限に上昇し得るため理論上の損失は無限大で、急騰時には踏み上げが発生しやすくなります。また、配当金相当額の支払いや逆日歩などの追加コストも発生し、需給次第では買い戻し自体ができないこともあります。
行動面でも、損切り回避やナンピンなど人間の心理的クセがレバレッジ下で増幅され、オーバートレードや資金管理の崩壊を招きやすくなります。常に相場を監視しなければならないため、精神的負担も大きく、冷静な判断が続きません。家計や長期運用資金に影響が及ぶ可能性も高く、特に相関性の高い銘柄を複数建てた場合は同時多発的に維持率が崩れやすくなります。
要するに、信用取引は「レバレッジ」「期限」「コスト」の三重のハードルがあり、想定外の出来事に極めて弱い仕組みです。使う場合はレバレッジを抑え、イベントまたぎを避け、厳格な損切りルールを機械的に実行するなど、徹底したリスク管理が不可欠です。
関連する専門用語
信用取引
信用取引とは、証券会社からお金や株式を借りて行う株の売買のことをいいます。通常の取引では、自分の持っているお金の範囲内でしか株を買えませんが、信用取引を使うと、証券会社に一定の担保(保証金)を差し入れることで、元手の数倍までの取引が可能になります。 これにより、うまくいけば短期間で大きな利益を得ることができますが、その反面、損失も同じように拡大する可能性があるため、リスクも高くなります。信用取引では、株を「買う」だけでなく、持っていない株を「売る(空売り)」こともできるため、相場が下がる局面でも利益を狙うことが可能です。初心者にとっては魅力的に映るかもしれませんが、資金管理や相場の見通しに自信がない段階では慎重に扱うべき上級者向けの取引手法です。
レバレッジ
レバレッジとは、借入金や証拠金取引など外部資金を活用して自己資本以上の投資規模を実現する手法です。利益の拡大が期待できる一方、市場の下落や金利の変動で損失が膨らみやすく、追加証拠金(追証)が必要になる場合やロスカットが発生するリスクも高まります。 また、借入金利や手数料などのコストが利益を圧迫する可能性があるため、ポジション管理やヘッジ手法を含めたリスク管理が不可欠です。レバレッジによる損益変動幅が大きくなることで精神的な負担も増えやすい点にも注意が必要です。最終的には、投資目的やリスク許容度を考慮し、適切なレバレッジ水準を設定することで、資産運用の効率を高めつつリスクを抑えることが重要となります。
マージンコール(追証/追加証拠金)
マージンコール(Margin Call) は、信用取引や CFD、FX のように証拠金でレバレッジをかける取引において、維持証拠金率(口座資産 ÷ 必要証拠金 × 100)が証券会社の基準を下回った際に送られる追加入金の要請です。日本では「追証(おいしょう)」「追加証拠金」とも呼ばれます。 たとえば借入金が 80 万円の状態で保有資産の評価額が 70 万円に下落すると維持率は 88 %となり、基準 100 %を割り込むためマージンコールが発生します。投資家はふつう 1〜3 営業日以内に不足額を入金するかポジションを減らして対応する必要があり、応じなければロスカット(強制決済)によって損失が確定します。 FX のように即時ロスカットが適用される商品もあり、詳細な条件は証券会社ごとに異なります。追証リスクを抑えるには、必要証拠金のおよそ 1.5~2 倍の余裕資金を常に預けておくことが基本です。あらかじめストップロスを設定して下落幅を限定し、相場急変時にアプリやメールのアラートで即座に状況を確認して対処すると、予期せぬマージンコールを大幅に減らせます。
ギャップダウン
ギャップダウンとは、株式やETFなどの金融商品の価格が、前日の終値よりも大きく低い水準で取引を開始することを指します。これは、取引時間外に発生した悪材料や市場全体の急変動、決算発表、経済指標の発表などが原因で起こることが多いです。 投資家心理としては、悪いニュースにより売り注文が増え、寄り付き価格が一気に下がる現象といえます。ギャップダウンは短期売買のチャンスになる場合もありますが、多くの場合は下落トレンドのシグナルと受け取られるため、安易な逆張りは注意が必要です。資産運用においては、ニュースやイベントの影響を価格に先取りして織り込む市場の特性を理解するうえで重要な概念です。
貸株
貸株とは、投資家が保有している株式を証券会社に貸し出すこと。証券会社は貸し出しされた株式をまた別の投資家に貸し出す。投資家は証券会社から貸株金利を受け取ることができる。投資家は貸株中でも株式を自由に売買でき、長期保有している株式を有効利用できるというメリットがあるが、株主優待の継続保有特典は得ることができなくなり、貸株金利と配当相当額は雑所得扱いで総合課税の対象であり、場合によっては税が増額されたり控除を受けられなくなるというデメリットがある。また、NISA口座で保有している株式は貸株にできない。
ストップ安
ストップ安とは、株式市場で一日に下がることのできる最大限の価格まで株価が下落し、それ以上は取引ができなくなる状態のことです。これは、株価の急激な下落による混乱を防ぐために、取引所があらかじめ決めている制度です。株価が大きく下がり続けると投資家の不安が広がり、市場がパニックに陥る可能性があります。そのような極端な変動を一時的に食い止めることで、冷静な判断ができるように時間を確保する役割を果たしています。ストップ安になると、その銘柄の売買は可能ですが、価格はそれ以上下がらず、買い注文が非常に少ない場合は売りたい人がいても売れないことがあります。特に企業の業績悪化や不祥事、経済の悪材料などが原因で発生することが多いです。