適格投資家のメリットとデメリットは?
適格投資家のメリットとデメリットは?
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2025/01/22 22:07
男性
30代
現在、エンジェル投資を検討しています。LP出資検討に当たり適格投資家になることを求められました。適格投資家になることで得られる利点と、特有のリスクやデメリットについて教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
適格投資家に認定されると、証券取引法上の広告規制や投資家保護規制が一部緩和され、一般投資家には開放されない私募ファンドや未公開株、プライベートエクイティといった高成長・高収益ポテンシャルの案件に優先的かつ大口で参加できます。非公開のピッチイベントや専門家ネットワークにもアクセスできるため、情報優位性と交渉力が高まり、手数料減免や優先配分などの優遇条件を得やすい点も魅力です。
ただし、保護規制の対象外となることで「自己責任」が大幅に増し、最低投資額が数百万円~数千万円、ロックアップ期間が5~10年と長期化しやすく資金拘束リスクが高まります。開示情報が限定的な未監査企業への投資も多く、デフォルト時には元本の大半を失う可能性があります。また「プロ投資家」という立場への過信から、案件の質を見極めずにハイリスク投資を積み上げる行動バイアスにも注意が必要です。
特権を生かしつつリスクを抑えるには、①私募投資の上限比率を総資産の○%とあらかじめ決める、②外部専門家と徹底したデューデリジェンスを行う、③業種・地域・ステージを分散させる、④定期的にバリュエーションを確認し出口戦略を設計する、といった基本原則を厳守することが欠かせません。これらを徹底することで、非公開案件ならではの高リターンの可能性を享受しつつ、流動性低下・情報非対称・集中投資という適格投資家固有のリスクをコントロールできます。
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適格投資家
適格投資家とは、高い財務能力や投資経験を有すると認定された個人または法人です。金融資産1億円以上や高額所得者などが対象となり、通常の投資家がアクセスできない未公開案件や特定の投資機会に参加できます。
エンジェル投資
エンジェル投資は、創業間もない企業(スタートアップ)に対し、個人が資金を提供してその成長を支援する投資手法です。資金提供だけでなく、投資家自身の事業経験やネットワークを提供する点が特徴です。事業成功時には株式の売却益を得られる一方、事業失敗で投資額を失う可能性もあるため、ハイリスク・ハイリターンの性質を持ちます。
私募ファンド(未公開ファンド)
私募ファンドとは、限られた少人数の投資家に対して資金を募る形で組成される投資ファンドのことです。一般には広く公募されず、主に機関投資家や富裕層、特定の企業などを対象としています。 このため、販売方法や運用内容に関する情報の公開義務が少なく、自由度の高い運用が可能です。一方で、流動性が低く途中解約が難しい場合が多いほか、リスクの高い商品が含まれることもあり、基本的には一定の知識や資産を持つ投資家向けとされています。私募ファンドは「未公開ファンド」とも呼ばれ、公募ファンドとは対照的な性質を持つ存在です。
非上場株式(未公開株式/非公開株式)
非上場株式(未公開株式/非公開株式)とは、証券取引所に上場していない企業の株式を指します。 上場株式とは異なり、公の市場で自由に売買できず、流動性が低いのが特徴です。特に買い手を見つけるのが難しく、売却までに時間を要することが多いです。主にベンチャー企業や中小企業が発行しており、取得方法としてはベンチャーキャピタル(VC)、エンジェル投資家、投資ファンド、従業員持株会などを通じた投資が一般的です。 また、売却や譲渡には会社の承認が必要な場合が多く、定款や契約によって譲渡制限が設けられていることもあります。そのため、希望するタイミングで売却できるとは限りません。 投資家にとっては、企業の成長による大きなリターンを期待できる一方で、換金の難しさや情報の透明性の低さといったリスクもあります。未公開企業は決算情報や事業計画の開示義務がない場合もあり、投資判断が難しくなる可能性があるため、十分な調査が必要です。 さらに、非上場株式は相続や贈与の際の評価が難しいという課題もあります。相続税や贈与税の計算では、国税庁の「財産評価基本通達」に基づき、類似業種比準方式や純資産価額方式などの方法で評価されます。しかし、これらの方式による評価額は事業の業績や市場環境によって変動しやすく、納税額が予想以上に高くなることがあります。 また、非上場株式は市場での換金が難しいため、相続税の納税資金を準備するのが困難な場合があります。このようなリスクを避けるために、事前に事業承継対策や株式の分散を検討することが重要です。
プライベート・エクイティ(PE)
プライベート・エクイティ(PE)とは、未上場企業や上場企業を対象に投資や企業買収を行う投資手法のことを指します。主にプライベート・エクイティ・ファンドが年金基金や機関投資家、富裕層などから資金を集め、企業の成長や経営改善を図り、一定期間後にM&A、株式売却、上場(IPO)を通じて利益を獲得します。高いリターンが期待される一方で、流動性リスクや経営への積極的な関与が求められます。PEには、既存企業の経営権を取得するバイアウトや、成長企業に資本を提供するグロースキャピタルなどが含まれ、企業価値の向上を目的とした長期的な資本戦略の一環として活用されます。
ロックアップ
ロックアップとは、IPO(新規株式公開)時に創業者やベンチャーキャピタルなどの大株主が保有株を一定期間売却できないよう制限する取り決めです。一般に90日や180日が多いものの、業績予想の不確実性や持株比率に応じて最長1年程度に設定されることもあります。目的は、上場直後の大量売却による需給バランスの崩れと株価急落を防ぎ、投資家が安心して参加できる環境を整えることにあります。 ロックアップ期間中でも、主幹事証券会社の許諾(ワードによっては「ロックアップ解除」や「早期解除」と表記)により一部売却が認められる例があり、上場後の株価が大幅に上昇した場合や追加資金調達が必要になった場合に適用されるケースが代表的です。投資家としては、有価証券報告書や目論見書に記載されている「対象株主」「期間」「解除条件」を確認し、ロックアップ満了日前後の売却圧力や出来高急増の可能性を織り込んでおくことが重要です。

