
ESG投資とは?ESG評価を利用する上での留意点を徹底解説
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執筆者:
公開:
2025.01.17
更新:
2025.01.17
目次
FTSE Russellとは?ロンドン証券取引所設立のインデックス提供会社
14のESGテーマを調査項目に細分化し、幅広い項目をチェック
みずほ銀行系調査機関のESGに関する国内外の研究をまとめたレポート
② 評価機関によってESG投資のパフォーマンス評価が分かれる
⑤ ESG評価の高い企業で組成したファンドにボラティリティの抑制効果
個人投資家がESG評価を利用しESG投資を検討する際の注意点・留意点
ESGは最近では毎日のように新聞に載るような、いわゆるバズワードになっており、機関投資家だけではなく企業の株式、あるいは社債投資を検討される個人投資家にとっても、無視できない評価要素になってきています。
ESGが意識されるようになった背景を簡単に振り返った上で、どんな投資手法なのか、投資尺度としてどこまで有用なのか、を考えたいと思います。そしてESG評価は誰がどのようにしているのか、についても解説した上で、個人投資家がそれらの評価を利用する上での留意点についても考えていきましょう。
ESGとCSR,SDGsの違い
ESGと同様に、CSRやSDGsというコンセプトもあり、それぞれの違いを正確に理解している人は多くないのではないでしょうか?ここではそれぞれのコンセプトについて詳しく説明します。
ESGとは?環境、社会、ガバナンスへの取り組み
ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、そしてGovernance(ガバナンス)の頭文字をとったもので、企業への投資を検討する際に、当該企業の環境面への配慮、社会問題への取り組み、そして企業経営のあり方もふまえて判断しましょう、と言うものです。
2006年に国連が提唱した、Principle for responsible Investment(PRI、責任投資原則)に示された投資規範です。
伝統的な資本主義の価値観では、企業は利益を上げて株主に貢献すれば社会的責任は果たしている、とされてきました。たとえばノーベル賞を受賞した経済学者のミルトン・フリードマンは、1970年に企業の究極的な責任は、株主を代表して利益を増やすこと、と述べています。
CSRとは?企業の社会的責任
こうした見解がある一方で、企業は社会的存在であり、社会に対して果たすべき役割を負っている、とする、CSR(Corporate Social respnsibility、企業の社会的責任)と呼ばれる考え方があります。たとえば70年代以降に深刻化した公害問題は、利益追求だけを是とする伝統的な資本主義では解決できず、企業が社会的責任を意識しない限り、解決がむずかしいのです。
SDGsとは?世界全体で取り組むべき目標
最近は、SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)といった言葉もよく耳にします。2015年に国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に基づくもので、2030年までに達成すべき17のゴールと169のターゲットからなります。
取り組み主体は企業に限らず、国や公共団体、個人も想定されていますが、貧困の撲滅や飢餓をゼロに、といったゴールは、そのすべてがESGの各要素に分類できます。
企業がCSR活動を行う際には、SDGsで掲げられた各ゴール、ターゲットを意識したものになりますし、その取り組み、成果は投資家などにESGに関する報告書(後述しますが、統合報告書などと言います)を通じて届けられます。また、専門のアナリストが分析したESG評価が投資の際の重要なツールとして用いられるようになっています。
ESG投資の代表的な投資手法
ESGでいくつか代表的な投資手法を紹介しましょう。
ネガティブスクリーニング:望ましくない銘柄の除外
まず、ネガティブスクリーニングと言われるものがあります。望ましくない銘柄を投資対象から排除すること、例えば、非人道的兵器の製造メーカーに投資しない、としたり宗教上の理由でアルコールなどの業種への投資を避けたりするものです。
ポジティブスクリーニング:望ましい企業の抽出
その逆にポジティブスクリーニングは、ESGの評価が高い企業へ投資しよう、というものです。もっともそのためには、どの企業が良い評価をされているかを知る必要があり、後述するESG評価機関のスコアのような判断基準が重要となってきます。
インパクト投資:ESGに貢献する企業に積極的に投資する
インパクト投資とは、環境などに貢献する技術などを持った企業に投資することで、目に見える形で良い影響を与えようとする手法です。
エンゲージメント:投資先企業に働きかける
ここまではどう言う企業に投資するか、否かと言う話ですが、さらに踏み込んで投資した企業に働きかけようとする手法があります。エンゲージメントと呼ばれます。
具体的には株主や投融資先の立場から企業と会話し、中長期的な視点で経営を改善するようにすることで、株主として議決権を行使することも含まれます。
ESGを評価する方法:財務指標と非財務指標に基づく企業分析
財務指標に基づく企業分析
企業分析にあたってこれまで重視されてきた、たとえば売上高とか利益水準、あるいは自己資本比率とかといったデータは財務指標と呼ばれます。かつては、企業の年次報告書は財務指標を中心に記載していました
非財務指標への注目が高まる
しかし、ESG投資への注目が高くなるにつれ、ESGに関連したデータ、これらは財務指標に対比して「非財務指標」と呼ばれますが、への開示ニーズも高まってきました。
最近は年次報告書には財務指標だけではなく、ESG関連の非財務指標もあわせて掲載されるようになってます。財務、非財務双方のデータが記載されている報告書を統合報告書、ともいいます。
非財務指標を分析する評価機関
ただ、報告書に記載されるようになったとはいえ、非財務のデータは財務データほどには定型化してなかったり、そもそも公表されてなかったりと分析するのは大変です。そこでこうしたデータを専門に分析するアナリストを擁した評価機関が存在します。
ESG評価機関とは
欧米系中心のESG評価機関
ESG投資はフランスやドイツなど西欧諸国でスタートし、投資手法としての認識が高まるにつれ、北米に広がりました。評価機関も同様に、欧州系企業が中心でアメリカ系企業が参入する流れでしたが、次第に資本力に勝るアメリカ企業が欧州の企業を買収、合併していくことになります。
筆者がこの分野について研究したのは10年ほど前ですが、その当時接触した会社はみな、買収等で名前自体は消滅しています。たとえばフランスとベルギーで事業を開始したVegeoは同業のEirisと合併した後、米国の大手格付け会社のMoody’sに2017年に買収されています。このような経緯から欧州系、米系の企業がESG評価機関の中心となっています。
ESG評価機関の分析の投資への活用
評価機関の分析結果は、初期段階では年金基金などが自社の株式ポートフォリオを組む際、あるいは投資信託を組成する運用会社がESGをテーマにした株式ファンドを組成する際に参照されました。
しかし後期では債券運用の分野でも利用が広がり、また企業の信用分析上もデータの有用性が認識され出したこともあって、色々なバックグラウンドを持つ企業が評価機関として活動するようになりました。
主なESG評価機関の紹介〜JPXのHPより
日本取引所グループ(JPX)は、HPでESG評価機関の紹介をしています。
詳細はリンク先をご覧いただきたいのですが、筆者の独断でその組織の生い立ちで大きく分類すると、以下の4グループになります。
① ESG関連の情報サービスとしてスタートした会社(CDPなど)、
② 金融関連のデータサービス会社がその領域をESGに広げたもの(Bloomberg、Refinitiveなど)
③ 合併等による①、②の複合系(FTSE、MSCIなど)
④ 格付け会社がESGを信用格付けの調査項目に加えると同時に、子会社で情報サービスを行っているもの(Moody's、S&Pなど)
生い立ちは異なるものの、こうした会社が文字通り全世界でしのぎを削っています。また、ここには名前が上がってませんが、Sustainalyticsなど有力な評価会社が他にも存在します。
日本の格付け会社もESG評価に参入
なお、このHPにESGファイナンスの評価機関として別枠で紹介されている会社があります。こちらにはR&IやJCRなど社債の格付けを主業務とする格付け会社(別記事で紹介しているので、詳細はそちらをご覧ください)が入ってきます。
彼らは企業調査の一環としてESG要因についても調べ、信用格付けにどういう影響を与えているか、評価しています。また企業が発行するグリーンボンド(GB)などに、発行企業の依頼に基づいてどの程度GBガイドラインに沿っているかを評価した格付けを提供することもしてます。
ESG評価機関の評価方法は?〜FTSEを例にして〜
評価機関の業務のイメージをもう少し具体的にするために、英国のFTSE Russellを例にとって、どんな調査、分析を行っているかを紹介しましょう。元ネタは先のJPXのHP(①)と、内閣府がまとめた報告書(②)です。こちらは2018年の取りまとめですので、数字等は若干古いですが業務内容は今でも大きくは変わってないものと思います。
FTSE Russellとは?ロンドン証券取引所設立のインデックス提供会社
FTSE Russellはロンドン証券取引所(LSE)が設立したインデックス提供会社です。FT100は、日本で言うと日経225のような、代表的な株式のベンチマークです。2001年から、ESGで評価の高い企業を中心に組成した新しいインデックスのFTSE4Goodの提供を始めます。そしてESGのデータ自体は2011年より外部に提供を開始しました。
FTSEが調査対象とする企業は8000社
調査対象は、②のレポート執筆時点の2015年では先進国市場で約二千社、その他を含め四千社、とありますが、①では昨年12月末時点で全世界八千社と倍増しています。
14のESGテーマを調査項目に細分化し、幅広い項目をチェック
14のESGのテーマを外部の専門家の意見も聞きながら設定し、それぞれに20~30の調査項目が設定され、全部で300以上ある、と記載されてます。たとえば環境(E)については、気候変動や生物多様性、と言ったテーマに関する調査項目がそれぞれに10から35あります。企業によって重点的に調べられる内容が異なりますが、平均して一社で125項目が調査項目となります。
相対評価によるESGスコア決定と企業へのフィードバック
アナリストが毎年、各企業のレポートをもとに各テーマのスコアを算出し、数段階を経て業種内での相対評価によるESGスコアを決定する、とあります。アンケートを企業に依頼する会社もありましたが、情報公開が進んだ近年は少数派のようです。
また方法論を公開した上で、分析の初期レポートを当該企業に送り、内容の確認を求めてフィードバックも受け付ける、としており一方的に評価を下して終わり、というものではありません。
こうして決定したESGスコアを元に、冒頭記載のFTSE4Goodなどへのインデックス採用企業が選定されます。
ESGの投資尺度としての有用性
ESGとパフォーマンス
ではこうしたESGスコアで高い評価を得ている企業と、そうではない企業への投 資でパフォーマンスに差がつくのでしょうか。コストをかけてESGスコアの良い 企業で構成したポートフォリオが、たとえばTOPIXなどのインデックスとパフォーマンスをくらべても見劣りする、というのであれば特に他人の資金を運用する年金基金や投信運用機関は投資できません。
みずほ銀行系調査機関のESGに関する国内外の研究をまとめたレポート
ESGに配慮して経営している企業の業績が向上し、ひいては株価向上につながる という関係は観測できるか、どうか。従来からこのテーマについては実証研究がなされてきました。
2023年3月、みずほ系の調査機関(みずほ第一フィナンシャルテクノロジー社)がGPIFの依頼に基づいてESGをテーマとした国内外の研究論文を分析した結果をレポートしています。興味深いので、ご紹介しましょう。
調査対象とした論文は、他の論文から引用された件数の多さなどいくつかの基準で抽出された300本で、過去30年以上にわたっています。このうち冒頭に掲げた、ESG投資が良好な投資パフォーマンスにつながるのか、どうか(超過リターンの存在)との疑問に関するものが全体の30%強を占めています。時系列でも増えている、とのことで関心の高いテーマであることが窺えますね。
以下では、字数の都合上超過リターンについての分析結果をご紹介するに留めますが、その他にも面白い論点が提示されているので、ご関心のある向きはリンク先をご覧ください。
参考:投資におけるESG及びSDGsの考慮に係る俯瞰研究に関する報告書
要点を簡単に書くと以下のようになります
① ESG投資は良好なパフォーマンスにつながる可能性
超過リターンの存在を肯定している、つまり、良いパフォーマンスを示す、とする論文が70%を占めており、かつ増加傾向にある。
② 評価機関によってESG投資のパフォーマンス評価が分かれる
ただ、どの評価機関のデータを用いて分析したかで差異が生じており、MSCIを用いた分析では8割が肯定的だが、Refinitiveなどでは5〜6割程度でそこまで有意な差がない、との指摘もあります。
こうした差異は、ESGを包括的、定量的に捉える定義がまだ存在しないことに起因する、と、レポートは指摘しています。現状は定性的なデータを各社がそれぞれの判断でスコア化している状況ですので、こうした指摘は頷けます。
今後どんなESG要因が有効なのか、を特定したり、定量化していくための研究が進められることで、ESG要因と超過リターンの関係がよりわかりやすくなることに期待しましょう。
③ 分析期間が長い論文ほど超過リターンに肯定的
超過リターンを肯定する論文は否定的な論文よりも分析期間が長い、と言う傾向がある、との指摘もあります。これはESG投資が長期の投資に向いている、とする見解に合致すると思います。
④ 日本におけるESG投資の研究は途上
ただし、米国内での研究が大半を占め、肯定的な論文の割合も米国がその他の地域を上回る、との指摘もあります。なお日本株をもととした研究については、言及した箇所を見出せませんでした。
⑤ ESG評価の高い企業で組成したファンドにボラティリティの抑制効果
なお、超過リターンとは別のテーマですが、ESG評価の高い企業群で組成したファンドのボラティリティが抑制される、との研究があります。株価が変動する要因は、個別企業に起因するものと産業全体に及ぶようなシステミックなリスクがありますが、双方について株価下落リスクが小さい、と言う傾向が研究者の間でのコンセンサスになっている、とのことです。ESGで先進的な企業は、株主などステークホルダーとも良好な関係を築いており、訴訟や風評で株価に悪影響が出るリスクを抑えているのでは、といった仮説が建てられています。
ESG評価の実例〜S&P Global〜
最初にお断りしなくてはならないのが、個人投資家の立場で閲覧できるESGスコアがあまりないことです。筆者が確認できたのは、S&PGlobal社が提供する英語版のみです。先に紹介したFTSE Russelも機関投資家向けのものしか確認できませんでした。
日本を代表する企業についてS&PGlobalのスコアを表にしてみました。総合評価とE,S,Gそれぞれの要素の評価、参考に信用格付けも付記しています。中央値/最高、とあるのは業種間でグローバル比較した際の中央値と最高値です。
社名 | 総合 | 環境 (E) | 社会 (S) | ガバナンス (G) | 参考 (S&P格付) |
---|---|---|---|---|---|
武田薬品 | 62 | 57 | 70 | 57 | BBB+ |
中央値/最高 | 33/86 | 37/90 | 40/80 | ||
ENEOS | 45 | 43 | 42 | 49 | |
中央値/最高 | 42/89 | 44/89 | 48/80 | ||
日本製鉄 | 40 | 46 | 42 | 31 | BBB+ |
中央値/最高 | 32/92 | 30/77 | 29/76 | ||
小松製作所 | 73 | 72 | 78 | 70 | A |
中央値/最高 | 32/78 | 35/85 | 35/81 | ||
パナソニックHD | 51 | 68 | 39 | 46 | A- |
中央値/最高 | 39/93 | 33/80 | 33/69 | ||
トヨタ自動車 | 48 | 60 | 54 | 33 | A+ |
中央値/最高 | 47/96 | 42/96 | 37/69 | ||
関西電力 | 56 | 55 | 60 | 52 | |
中央値/最高 | 44/96 | 39/96 | 45/86 | ||
JR東海 | 27 | 36 | 25 | 15 | A+ |
中央値/最高 | 38/89 | 35/89 | 39/78 | ||
三菱商事 | 44 | 45 | 51 | 35 | A |
中央値/最高 | 36/79 | 33/75 | 34/70 | ||
みずほFG | 66 | 62 | 68 | 65 | A- |
中央値/最高 | 31/89 | 38/97 | 44/92 | ||
野村HD | 66 | 69 | 66 | 65 | BBB+ |
中央値/最高 | 28/99 | 31/89 | 37/91 | ||
第一生命 | 73 | 70 | 74 | 73 | A+ |
中央値/最高 | 38/93 | 39/98 | 48/93 | ||
SBG | 75 | 78 | 75 | 74 | BB+ |
中央値/最高 | 43/99 | 42/99 | 48/92 |
いかがでしょう。武田薬品やコマツは他の機関でも高い評価を得ていることで有名ですが、その他の会社の中には意外に低いな、と思われるものもあるかもしれません。
ただそう言う会社も、それぞれの要素のスコアを業種の中央値と見比べていただくと、同じようなところにいるな、少なくとも同業での評価は見劣ってるわけではない、と判断いただけるかと思います。
今回はスペースの都合で紹介するに留めますが、機会があればどうしてこの評価になったか、も掘り下げてみたいと思っています。
個人投資家がESG評価を利用しESG投資を検討する際の注意点・留意点
この稿では、ESGとはどんな投資手法か、を簡単に紹介した上で、非財務情報と呼ばれるデータを誰がどのように分析しているか、などについて述べてきました。
最後に、個人投資家がESG評価を利用する上での留意点を考えてみましょう。
個人で利用できるESG評価スコアが少ないことに注意
前章で書いたように、個人で利用できるスコアがあまり存在しないことから、個別株投資の検討の際に参考にするのは難しいかもしれません。あるとすれば、ESGをテーマにした投信運用でしょうか。
ここでは触れませんでしたが、ESG自体まだ過渡期の段階で、表面だけ取り繕った「なんちゃって」ESG投信のようなものも見受けられる状態です。原子力発電のように、評価が分かれるテーマもあります。2025年に温暖化に懐疑的なスタンスのトランプ大統領が就任することで、特に米国ではESG投資に逆行的な動きが出てくることも懸念されます。
ESG投資は株価低下リスクへの耐久力あり長期投資に向いている可能性が示唆
それでもESG評価を気にすべきでしょうか。筆者の答えは「イエス」です。
投資を通じて社会に貢献すべきだ,と言う理念はおいておくとしても、「株式投資は美人投票」と言う言葉が示すように、ますます多くの機関投資家がESGを気にする以上,個人投資家も無視することができないからです。
特に短期売買中心の方であればともかく、長期投資の場合は先に紹介した論文の分析結果にも述べられていたような、株価下落リスクへの耐久力があるとの示唆は大きい、と思います。
個別株投資では難しい、と書きましたがご自身で投資されている企業が、ESGの各分野でどんな取り組みをしているか、各社の統合報告書やHPなどから調べることは可能です。できれば同業他社の取り組みと読み比べてみたりすると、より理解が深まるのではないでしょうか。
まとめ
本稿では、近年注目が高まっているESGについて、その歴史や投資手法について簡単にご紹介しました。ESGデータは非財務指標とも呼ばれますが、これらを専門的に分析する評価機関が欧米を中心に多く存在します。
JPXのHPなどを参照しながら各社の属性に簡単に触れた後、その中の一社であるFTRussell社を例にとってどのような評価を行っているかをご紹介しました。
続いて、みずほ系調査機関がESGに関する国内外の研究論文を分析した結果を要約しました。ESG投資が実際のパフォーマンス向上に結びつくのか、などといった点については、ポジティブな結論を報告している論文が多数をしめた、などの結論を紹介しました。
個人投資家がESGスコアなど評価機関の分析結果に触れるのはハードルが高く、個別株投資の参考にされるのは難しいとは思いますが、特に長期投資を中心に考えられている方は、投資先の企業がESGの分野でどのように取り組んでいるか、研究されるのもよいのではないでしょうか。

格付投資情報センター(R&I)の主任アナリストとして、主として国内外の金融機関や政府系機関など幅広い業種を担当。また調査部門も担当し、クライテリア(格付けの考え方)の整備にも尽力。
格付投資情報センター(R&I)の主任アナリストとして、主として国内外の金融機関や政府系機関など幅広い業種を担当。また調査部門も担当し、クライテリア(格付けの考え方)の整備にも尽力。
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統合報告書
企業が財務情報(利益、売上など)と非財務情報(環境への配慮、社会貢献、ガバナンスなど)を一体的にまとめた報告書です。これにより、企業がどのように社会や環境に貢献しながら成長を目指しているのかを理解しやすくなります。投資家や利害関係者が企業の現状や将来性を幅広く評価できるように、戦略やリスク管理、成果が具体的に記載されています。投資初心者でも、企業の活動や将来の可能性をイメージしやすくなり、自分に合った投資先を選ぶ際に役立つ情報を得られるのが特徴です。
グリーンボンド
グリーンボンドとは、環境保護や持続可能な社会を実現するためのプロジェクトに資金を提供する目的で発行される債券です。集められたお金は、再生可能エネルギーの開発、森林保護、エコ建築、水質改善など、環境問題の解決に役立つ活動に使われます。 環境への関心が高い投資家にとって、グリーンボンドは「資産運用をしながら地球環境に貢献できる」という魅力的な選択肢です。持続可能な未来を支援したい人におすすめです。
ESG評価機関
企業のESG取り組みを評価する専門機関です。投資家はこの評価を参考に投資判断を行います。
非財務指標
企業の環境・社会貢献やガバナンスなど、財務以外の要素を示します。ESG投資で重視される情報です。
財務指標
企業の収益性や成長性を示すデータで、売上や利益、株価収益率(PER)などが含まれます。投資の基本情報です。
インパクト投資
投資による財務的リターンだけでなく、社会や環境への良い影響(インパクト)を重視します。例として、再生可能エネルギーへの投資があります。
ポジティブスクリーニング
ESGに積極的に取り組む企業や業界を選んで投資する方法です。特に環境や社会貢献が評価される企業が対象になります。
ネガティブスクリーニング
環境や社会に悪影響を及ぼす可能性がある事業(例:タバコ、武器、化石燃料など)を投資対象から外す方法です。倫理的・社会的責任を重視した投資の一つの考え方です。
責任投資原則(PRI)
PRI(Principles for Responsible investment)は投資家がESG要素を考慮し、持続可能な経済成長に貢献するための指針です。国連が提唱し、署名機関はESGを投資プロセスに組み込みます。
SDGs(持続可能な開発目標)
SDGsは国連が設定した2030年までの持続可能な社会を目指す17の目標です。投資では、この目標に貢献する企業やプロジェクトが支持されています。 SDGs17の目標 1.貧困をなくそう 2.飢餓をゼロに 3.すべての人に健康と福祉を 4.質の高い教育をみんなに 5.ジェンダー平等を実現しよう 6.安全な水とトイレを世界中に 7.エネルギーをみんなに。そしてクリーンに 8.働きがいも経済成長も 9.産業と技術革新の基盤を作ろう 10.人や国の不平等をなくそう 11.住み続けられるまちづくりを 12.つくる責任、つかう責任 13.気候変動に具体的な対策を 14.海の豊かさを守ろう 15.陸の豊かさも守ろう 16.平和と公正をすべての人に 17.パートナーシップで目標を達成しよう
ESG
ESGは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の略で、企業がこれらの観点で持続可能性に配慮しているかを評価する基準です。投資判断に活用され、社会的課題への関心が高まる中、注目されています。
エンゲージメント
エンゲージメント(Engagement)は、投資家が投資先企業に対して企業価値を高めるために助言や提案を積極的に行う活動を指し、企業価値向上や持続可能な成長に向けた重要な手段とされています。この取り組みは、複数の重要な目的や意義を持っています。 まず、企業経営の多角的視点の促進が挙げられます。企業が自社の視点だけで経営を行うと、安全性を重視するあまり成長性が損なわれたり、株主利益が最大化されない可能性があります。エンゲージメントは、こうした課題を解消し、多角的な視点で経営を行うことを企業に求めます。 次に、ESG課題の改善があります。投資家が企業と対話することで、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)といったESG課題の改善を促します。また、エンゲージメントは株主として企業価値向上に責任を果たすための重要な取り組みでもあります。
ボラティリティ
ボラティリティは、投資商品の価格変動の幅を示す重要な指標であり、投資におけるリスクの大きさを測る目安として使われています。一般的に、値動きが大きい商品ほどそのリスクも高くなります。 具体的には、ボラティリティが大きい商品は価格変動が激しく、逆にボラティリティが小さい商品は価格変動が穏やかであることを示します。現代ポートフォリオ理論などでは、このボラティリティを標準偏差という統計的手法で数値化し、それを商品のリスク度合いとして評価するのが一般的です。このため、投資判断においては、ボラティリティの大きい商品は高リスク、小さい商品は低リスクと判断されます。
超過リターン(エクセスリターン)
超過リターン(エクセスリターン)は、投資の成果が基準となる指標(ベンチマーク)をどれだけ上回ったかを示すものです。 たとえば、株式市場全体の動きを表す指標である「日経平均株価」や「S&P500」が年間5%上昇したとします。このとき、あなたが投資している商品が7%のリターンを得た場合、その差の2%が超過リターンです。この指標は、投資の「成果が良かったかどうか」を客観的に判断する基準になります。特にアクティブ運用(市場平均を上回ることを目指す投資)の成果を評価する際に重要です。ただし、超過リターンを得るためにはリスクを取る必要がある場合が多いので、投資初心者は自分のリスク許容度をよく考えることが大切です。