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遺言信託の仕組みと費用相場を解説|遺言代用信託との違いも比較

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遺言信託の仕組みと費用相場を解説|遺言代用信託との違いも比較

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執筆者:

公開:

2024.11.25

更新:

2026.06.11

遺言相続基礎知識リスク管理

相続の準備は、まとまった資産を持つ人にとって避けて通れないテーマです。信託銀行などが提供する「遺言信託」は、遺言書の作成から執行までを任せられる便利なサービスとして利用が広がっています。

しかし、総費用は100万円を超えるケースが多く、引き受け範囲にも制約があります。名前のよく似た「遺言代用信託」と混同したまま契約すると、想定外のコストや制約に直面しかねません。

この記事では、遺言信託の仕組み・利用の流れ・費用相場から、遺言代用信託との違い、法務局の保管制度や生命保険といった代替手段との比較までを具体的に解説します。

サクッとわかる!簡単要約

この記事を読むと、遺言信託と遺言代用信託それぞれの仕組み・費用・対象財産の違いを体系的に理解できます。主要信託銀行の手数料体系や生命保険の非課税枠など、判断に必要な数値も具体的に把握できるでしょう。

そのうえで、ご自身の資産構成に合った承継手段を比較・選択できるようになります。金融機関の提案をそのまま受け入れるのではなく、費用対効果を見極めて契約の要否を判断できる状態を目指せます。

続けてガイドを読む関連する質問を探す

目次

遺言信託とは?信託銀行が遺言書の作成から執行までサポートするサービス

「遺言信託」が持つ2つの意味に注意

家族信託(民事信託)との違い

遺言信託の仕組みと利用の流れ

遺言信託の費用相場:トータルで100万円超になるケースが多い

信託銀行がグループ預かり資産を優遇する理由

遺言信託のメリット

1. 遺言執行を金融機関が代行し、相続人の負担を減らせる

2. 遺言書の保管を金融機関に任せられる

3. 生前の権利移転が不要で、いつでも内容を変更できる

4. 法人ゆえの永続性があり、執行者の死亡リスクがない

遺言信託のデメリット

1. トータルの手数料が高額になりやすい

2. 引き受け内容が一定の「型」に限られる

3. 相続税申告や不動産登記は別途専門家への依頼が必要

4. 相続人間で紛争が生じると執行者を辞任する可能性がある

遺言信託がよく使われるケース

遺言代用信託とは?生前に契約し、死亡時に指定した人へ財産を引き渡す信託

遺言代用信託の仕組み

遺言代用信託のメリット

1. 遺産の受取人を確実に指定できる

2. 遺産分割協議を待たずにお金を引き出せる

3. 子から孫への承継まで設計できる

4. 低コストで、年齢や健康状態の制限なく利用できる

遺言代用信託のデメリット・注意点

1. 信託できる財産が金銭などに限定される

2. 遺留分侵害額請求の対象になり得る

3. 相続税の課税対象になる

4. 手数料体系が金融機関ごとに異なる

遺言信託と遺言代用信託の違いを比較表で整理

【比較】遺言信託の代替手段:法務局保管制度・専門家・生命保険

遺言書の保管目的なら法務局の保管制度が圧倒的に低コスト

すぐ使えるお金を遺す目的なら生命保険との比較が必須

資産構成別:遺言信託と遺言代用信託の選び方

遺言信託に関するよくある質問

Q. 遺言信託の費用は誰が払うのですか?

Q. 遺言信託は途中で解約できますか?

Q. 遺言信託と遺言代用信託は併用できますか?

Q. 遺言代用信託で受け取ったお金に税金はかかりますか?

遺言信託とは?信託銀行が遺言書の作成から執行までサポートするサービス

遺言信託とは、信託銀行などが「遺言書の作成サポート」「遺言書の保管」「遺言の執行」を一貫して提供するサービスの商品名です。遺言の執行とは、亡くなった後に遺言書の内容どおりに財産の名義変更や分配を実現する手続きを指します。

利用者はまず、金融機関と「どのような財産があるか」「誰にどれだけ相続させたいか」を相談しながら遺言の内容を固めます。内容が決まったら公証役場で公正証書遺言を作成し、遺言執行者として信託銀行などを指定します。

公正証書遺言とは、公証人が作成に関与する形式の遺言書で、形式不備で無効になるリスクがほとんどない点が特徴です。遺言者が亡くなると、あらかじめ指定した「死亡通知人」が金融機関へ連絡し、金融機関が遺言執行者として手続きを開始します。

遺言信託は、遺言者が信託銀行などと契約を結び、遺言書の保管と執行を依頼する仕組みです。公正証書遺言を作成し、死後は通知人を通じて執行されます。

出典:遺言信託 | 個人のための信託 | 信託商品/活用方法 | 信託協会 (shintaku-kyokai.or.jp)

「遺言信託」が持つ2つの意味に注意

「遺言信託」という言葉には、2つの異なる意味があります。1つは信託法上の「遺言による信託」で、遺言によって財産を信託するという法律行為そのものを指します。

もう1つが、本記事で解説する信託銀行などの「サービス商品としての遺言信託」です。一般的に「遺言信託」といえば後者を指すことが多いものの、法律上の遺言信託とは中身がまったく異なります。書籍やWebで調べる際は、どちらの意味で使われているかを確認しましょう。

家族信託(民事信託)との違い

遺言信託は、家族信託(民事信託)とも混同されやすい言葉です。家族信託とは、信頼できる家族に財産の管理・処分を任せる信託契約で、認知症対策など生前の財産管理を主な目的とします。

一方、サービス商品としての遺言信託は、法律上の「信託」ではありません。遺言書に関する一連の手続きをパッケージ化した事務サポートであり、生前の財産管理機能は持たない点が大きな違いです。生前の認知症対策まで含めて検討したい場合は、家族信託もあわせて比較するとよいでしょう。

家族信託について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

遺言信託の仕組みと利用の流れ

遺言信託は「契約前の準備」と「相続発生後の執行」の2つの段階に分かれます。一般社団法人信託協会の解説をもとに、契約から執行完了までの流れを6つのステップで整理しました。

ステップ内容
1. 事前相談財産の内容や承継方針を金融機関と相談し、遺言の内容を検討する
2. 公正証書遺言の作成公証役場で公正証書遺言を作成し、金融機関を遺言執行者に指定する
3. 遺言信託の申し込み遺言書正本・財産明細・戸籍謄本などを提出し、死亡通知人を指定する
4. 相続開始の連絡遺言者の死亡後、死亡通知人が金融機関へ連絡する
5. 遺言書の披露・執行開始金融機関が相続人へ遺言内容を開示し、遺言執行者に就任する
6. 財産目録の作成・執行遺産や債務を調査して財産目録を作成し、名義変更や分配を実行する

なお、信託銀行などの遺言信託では、原則として公正証書遺言のみが保管の対象です。自筆証書遺言は預かってもらえないケースがほとんどのため、契約には公正証書遺言の作成が前提となります。

遺言信託の費用相場:トータルで100万円超になるケースが多い

遺言信託の費用は「契約時手数料」「年間保管料」「遺言執行報酬」の3層構造になっており、トータルでは100万円を超えるケースが一般的です。執行報酬が相続財産額に料率を乗じて計算されるため、財産が多いほど費用も増える仕組みになっています。

以下の表は、遺言信託を行っている金融機関が用意しているサービスの一例です。

費用項目100万円型プラン30万円型プラン
契約時の取扱手数料110万円(税込)33万円(税込)
年間保管料毎年5,500円(税込)毎年5,500円(税込)
遺言書の変更手数料5万5,000円(税込)/回5万5,000円(税込)/回
遺言執行報酬(最低額)77万円(税込)165万円(税込)

執行報酬の料率は財産額1億円以下の部分で1.8%、1億円超3億円以下の部分で0.9%などと段階的に設定されています。

このほか、公正証書の作成費用や戸籍謄本の取り寄せ費用、不動産登記の登録免許税などが別途必要です。最新の手数料は各社の公式サイトで必ず確認してください。

信託銀行がグループ預かり資産を優遇する理由

執行報酬の料率体系を見ると、金融機関のビジネスモデルが透けて見えます。前述のとおり、グループ内に預けている資産には大幅な優遇料率が適用されるためです。

金融機関にとって遺言信託は、手数料収入そのものよりも、顧客の資産を長期にわたりグループ内に預けてもらう「入口」としての性格を持ちます。優遇を受けるために資産を集約するか、複数の金融機関に分散したまま割高な料率を受け入れるかは、運用方針も含めて検討すべきポイントです。

遺言信託のメリット

遺言信託の最大のメリットは、相続発生後の煩雑な手続きを金融機関に任せられる点です。このほかにも、遺言書の安全な保管や法人ならではの永続性など、複数の利点があります。ここでは4つのメリットを順に解説します。

1. 遺言執行を金融機関が代行し、相続人の負担を減らせる

遺言信託では、遺言者が亡くなった際に金融機関が遺言執行者となり、遺言の内容を実現します。預貯金口座の解約や有価証券の移管、不動産の名義変更といった手続きを金融機関が主導するため、相続人の事務負担を大幅に軽減できます。

相続人への遺言書の披露も金融機関が行うので、家族間で気まずい思いをせずに済む点も利点でしょう。

2. 遺言書の保管を金融機関に任せられる

遺言書には財産の詳細や個人情報が記載されており、紛失や改ざんのリスクに備える必要があります。金融機関に保管を任せれば、こうしたリスクを避けられます。

また、相続発生時には死亡通知人からの連絡で確実に遺言書が開示されるため、「遺言書が発見されないまま遺産分割が進む」という事態も防げます。

3. 生前の権利移転が不要で、いつでも内容を変更できる

遺言信託は遺言者が亡くなって初めて効力が発生する仕組みで、生前に財産の権利が移転することはありません。存命中は自分の意思で財産を自由に管理でき、遺言書の内容も変更手数料を払えば何度でも書き換えられます。

家族信託のように生前から財産管理権を移す方法と比べて、心理的なハードルが低い点は魅力です。

4. 法人ゆえの永続性があり、執行者の死亡リスクがない

遺言執行者を個人の専門家や親族に依頼した場合、その人が自分より先に亡くなったり、病気や廃業で執行できなくなったりするリスクがあります。一方、信託銀行などの法人であれば、組織として継続的に対応できるため、執行者の不在リスクはほぼありません。

遺言作成から執行まで10年、20年と期間が空くことも珍しくない以上、この永続性は法人に依頼する大きな価値といえます。

遺言信託のデメリット

遺言信託のデメリットは、費用の高さと引き受け範囲の制約に集約されます。契約後に「想定外だった」と後悔しないよう、4つの注意点を確認しておきましょう。

1. トータルの手数料が高額になりやすい

前述のとおり、遺言信託の費用は契約時手数料・保管料・執行報酬を合計すると、最低でも100万円を超えるケースが大半です。財産額によっては数百万円に達することもあります。

弁護士や司法書士に遺言書作成と遺言執行を依頼した場合と比べても、割高になる傾向があるため、複数の選択肢で見積もりを比較することをおすすめします。

2. 引き受け内容が一定の「型」に限られる

信託銀行などが引き受けられる遺言執行の範囲は、財産の処分・相続に関するものに限られます。背景には弁護士法72条の存在があり、弁護士以外の者が紛争性のある法律事務を扱うことは禁止されているためです。

具体的には、相続人の廃除(虐待などを理由に相続権を奪う手続き)や子の認知といった身分に関する事項は執行できません。相続人同士の争いが予見されるケースや、遺留分を侵害する内容の遺言も、引き受けを断られる場合があります。

遺留分とは、配偶者や子などの相続人に法律上保障された最低限の遺産の取り分のことです。

3. 相続税申告や不動産登記は別途専門家への依頼が必要

遺言信託を契約しても、相続に関するすべての手続きが完結するわけではありません。相続税の申告は税理士、不動産の相続登記は司法書士の独占業務であり、金融機関は直接行えないためです。

金融機関からの紹介は受けられますが、税理士報酬や司法書士報酬は遺言執行報酬とは別に発生します。トータルコストを見積もる際は、これらの専門家費用も含めて考えましょう。

相談相手を見つける方法に関しては、こちらの記事でも解説しています。

4. 相続人間で紛争が生じると執行者を辞任する可能性がある

信託銀行などは紛争案件を扱えないため、相続発生後に相続人間で争いが起きると、遺言執行者を辞任するケースがあります。辞任に至った場合でも、それまでの手数料が全額返金されるとは限りません。

家族関係に懸念がある場合は、紛争対応まで一貫して依頼できる弁護士への依頼を検討した方が安全です。

遺言信託がよく使われるケース

遺言信託が向いているのは、財産の種類が多く相続手続きが煩雑になりそうな人や、確実な遺言執行を最優先したい人です。具体的には次のようなケースで活用されています。

  • 複数の銀行口座・不動産・有価証券があり、名義変更などの手続きが煩雑な場合
  • 自分1人では財産を整理しきれず、専門家のサポートを受けながら遺言を作成したい場合
  • 相続人がおらず、特定の団体や機関に財産を寄付したい場合
  • 取引先の金融機関と長期的な資産運用の相談もあわせて行いたい場合

相続税の申告期限は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内と定められています。期限内に遺産分割が終わらないと、配偶者の税額軽減などの特例適用に支障が出る可能性もあるため、手続きの迅速さに価値を感じる人には有力な選択肢です。

遺言代用信託とは?生前に契約し、死亡時に指定した人へ財産を引き渡す信託

遺言代用信託とは、生前に信託銀行などへ金銭などの財産を信託し、本人の死亡時にあらかじめ指定した受取人へ財産を引き渡す信託契約です。遺言書を作成しなくても、特定の財産について承継先を決められることから「遺言代用」と呼ばれています。

遺言信託が「遺言書に関する事務サービス」であるのに対し、遺言代用信託は「法律上の信託契約そのもの」です。名前は似ていますが、法的な性質はまったく異なります。

遺言代用信託の仕組み

遺言代用信託では、本人が委託者(財産を託す人)となり、信託銀行などの受託者(財産を管理する人)に金銭などを信託します。存命中は本人が受益者(利益を受け取る人)となり、信託財産は本人のために管理・運用されます。

本人が亡くなると、あらかじめ指定した家族などが第二受益者となり、一時金や年金形式で財産を受け取れる仕組みです。

遺言代用信託は、ご本人が生前に信託銀行などへ金銭を託し、死亡後は指定された家族(第二受益者)に金銭が支払われる信託契約です。遺言書がなくても財産承継が可能です。

出典:遺言代用信託 | 個人のための信託 | 信託商品/活用方法 | 信託協会 (shintaku-kyokai.or.jp)

遺言代用信託のメリット

遺言代用信託の強みは、口座凍結の影響を受けずに、必要なお金をすぐ家族へ渡せる点にあります。低コストで利用しやすい点も含め、4つのメリットを解説します。

1. 遺産の受取人を確実に指定できる

遺言代用信託では、信託契約によって財産の受取人をあらかじめ指定します。遺言書がなくても、信託した財産については契約どおりに承継されるため、「この預金は確実に配偶者へ」といったニーズに応えられます。

2. 遺産分割協議を待たずにお金を引き出せる

一般的に、銀行口座は名義人の死亡が確認されると凍結され、遺産分割協議が終わるまで自由に引き出せなくなります。一方、遺言代用信託で信託した財産は遺産分割協議の対象外となり、受取人は死亡後すみやかに受け取れます。

葬儀費用や当面の生活費など、相続直後に必要となる資金を確保する手段として有効です。

3. 子から孫への承継まで設計できる

遺言代用信託は、受益者を連続して指定する設計(受益者連続型信託)も可能です。「自分の死後は配偶者へ、配偶者の死後は子へ」といった世代をまたぐ承継の道筋を、生前に自分の意思で決められます。

通常の遺言では二次相続以降の承継先まで指定できないため、これは信託ならではの機能といえるでしょう。

4. 低コストで、年齢や健康状態の制限なく利用できる

多くの信託銀行などでは、遺言代用信託の管理手数料を無料にするなど、非常に低いコストで提供しています信託財産の運用益から費用をまかなう設計が多いためです。

また、生命保険と異なり健康状態の告知は不要で、申込年齢の上限も設けられていないのが一般的です。高齢や持病を理由に保険へ加入できない人でも利用できます。

出典:信託協会「遺言代用信託」

遺言代用信託のデメリット・注意点

遺言代用信託の主な弱点は、対象財産の制約と税務面の誤解されやすさです。契約前に押さえておきたい4つの注意点を解説します。

1. 信託できる財産が金銭などに限定される

遺言代用信託は、財産のすべてではなく特定の財産を信託するサービスです。多くの金融機関では取り扱いが金銭のみに限られており、不動産や有価証券は信託できません。

信託できる金額にも上限が設けられている場合が多く、遺言代用信託だけで相続対策のすべてをカバーすることは難しいでしょう。

2. 遺留分侵害額請求の対象になり得る

信託した財産は遺産分割協議の対象外ですが、遺留分の制約まで免れるわけではありません。遺言代用信託は委託者の死亡により受益者が利益を得る点で死因贈与と似ており、遺留分侵害額請求の対象になると考えられています。

そのため各信託銀行では、契約時に相続人の遺留分を考慮して信託金額を決定する運用が一般的です。特定の家族に偏った設計をする場合は、ほかの相続人の遺留分に注意しましょう。

遺留分の計算方法については、こちらの記事もあわせてご覧ください。

3. 相続税の課税対象になる

「遺産分割協議の対象外=相続税もかからない」と誤解されがちですが、これは誤りです。遺言代用信託で受取人が取得する財産は、税務上は相続などにより取得したものとみなされ、相続税の課税対象になります。

後述する生命保険の死亡保険金のような非課税枠もないため、節税効果を期待して契約する商品ではない点を理解しておきましょう。

4. 手数料体系が金融機関ごとに異なる

遺言代用信託の費用は一律ではなく、金融機関や商品によって異なります。管理手数料が無料でも、運用報酬が実質的なコストとして差し引かれている場合もあります。

予定配当率や中途解約の条件も商品ごとに違うため、複数の金融機関の商品を比較したうえで契約しましょう。

遺言信託と遺言代用信託の違いを比較表で整理

遺言信託と遺言代用信託は、法的な性質から費用、対象財産まで、あらゆる面で異なります。両者の違いを7つの観点で比較しました。

比較項目遺言信託遺言代用信託
法的性質遺言書に関する事務サービス法律上の信託契約
遺言書の作成必要(公正証書遺言)不要
効力の発生時期死亡後(遺言の効力発生時)契約時から(承継は死亡時)
対象財産遺言に記載した財産全般主に金銭のみ
遺産分割協議対象(遺言で分割方法を指定)対象外(すぐ受け取れる)
費用の目安総額100万円超になることが多い管理手数料無料の商品が多い
向いている人財産が多く手続きが煩雑な人当面資金を確実に遺したい人

ひと言でまとめると、遺言信託は「財産全体の承継手続きを丸ごと任せる高機能・高コストなサービス」、遺言代用信託は「特定のお金を素早く渡すための低コストな信託」です。両者は対立する選択肢ではなく、併用も可能です。

【比較】遺言信託の代替手段:法務局保管制度・専門家・生命保険

遺言信託を検討する際は、同じ目的を達成できる代替手段とのコスト比較が欠かせません。「遺言書の保管」と「すぐ使えるお金を遺す」という2つの目的別に、代替手段を整理します。

遺言書の保管目的なら法務局の保管制度が圧倒的に低コスト

遺言書の保管だけが目的であれば、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する方法があります。保管申請の手数料は遺言書1通につき3,900円のみで、年間の保管料はかかりません

相続発生後に相続人が取得する遺言書情報証明書の交付手数料も、1通1,400円です。遺言信託の保管料が毎年数千円かかることを考えると、保管コストの差は歴然としています。

ただし、この制度は保管のみのサービスであり、遺言内容の相談や遺言執行は含まれません。執行まで任せたい場合は、弁護士や司法書士に遺言執行者への就任を依頼する方法があり、一般的に信託銀行より低コストで済む傾向があります。

出典:法務省「自筆証書遺言書保管制度の手数料一覧」

すぐ使えるお金を遺す目的なら生命保険との比較が必須

遺言代用信託の「死亡後すぐにお金を渡せる」という機能は、生命保険の死亡保険金でも実現できます。死亡保険金は受取人固有の財産として遺産分割協議の対象外となり、請求後すみやかに支払われるためです。

両者の決定的な違いは税制にあります。死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の相続税非課税枠が設けられています。

たとえば法定相続人が3人なら、1,500万円までの死亡保険金は相続税がかかりません。一方、遺言代用信託にはこうした非課税枠がなく、信託財産は全額が相続税の課税対象です。

比較項目遺言代用信託生命保険(死亡保険金)
相続税の非課税枠なし500万円×法定相続人の数
加入時の健康告知不要必要(商品により緩和あり)
申込年齢の上限原則なし商品ごとに上限あり
受取額信託した元本+運用益契約した保険金額

相続税の課税が見込まれる人は、まず生命保険の非課税枠を使い切り、保険に加入できない場合や非課税枠を超える資金の受け渡しに遺言代用信託を使う、という優先順位が合理的です。

生命保険を活用した相続対策については、こちらの記事もあわせてご覧ください。

資産構成別:遺言信託と遺言代用信託の選び方

どの手段を選ぶべきかは、保有資産の構成によって整理できます。

資産構成主な選択肢選ぶ理由・ポイント
不動産・有価証券が中心で総資産が大きい遺言信託名義変更など執行手続きが煩雑なため、執行報酬を払う価値が出やすい。紛争リスクがある場合は弁護士への依頼も比較する
現預金が中心生命保険+遺言代用信託まず非課税枠(500万円×法定相続人の数)のある生命保険を優先し、加入できない場合や枠を超える資金は遺言代用信託で補完する
不動産と現預金をバランスよく保有遺言書+遺言代用信託の併用財産全体の承継は遺言書(法務局保管や専門家サポートを活用)で定め、葬儀費用など当面資金は遺言代用信託や生命保険で準備する

不動産や有価証券が中心で総資産が大きい人は、遺言信託が候補になります。名義変更などの執行手続きが煩雑なため、執行報酬を払ってでも金融機関に任せる価値が出やすいからです。ただし、紛争リスクがある場合や費用を抑えたい場合は、弁護士・司法書士への依頼も比較しましょう。

現預金が中心の人は、生命保険の非課税枠を優先的に活用し、補完として遺言代用信託を検討する組み合わせが有力です。低コストで当面資金の受け渡しを設計できます。

両方をバランスよく保有する人は、併用が現実的です。たとえば、不動産を含む財産全体の承継は遺言書(法務局保管や専門家サポートを活用)で定め、葬儀費用などの当面資金は遺言代用信託や生命保険で準備する、という設計が考えられます。

いずれの場合も、相続税の試算とセットで検討することが重要です。承継の「手続き」だけでなく「税負担」まで含めて最適化するなら、中立的な専門家への相談をおすすめします。

遺言信託に関するよくある質問

遺言信託について、検索されることの多い質問とその答えをまとめました。

Q. 遺言信託の費用は誰が払うのですか?

契約時手数料と年間保管料は遺言者本人が生前に支払います。遺言執行報酬は相続発生後に相続財産の中から支払われるのが一般的で、実質的には相続人の負担となります。

Q. 遺言信託は途中で解約できますか?

解約は可能ですが、すでに支払った契約時手数料は原則返金されません。プランによっては中途解約時に別途手数料がかかる場合もあるため、契約前に解約条件を確認しておきましょう。

Q. 遺言信託と遺言代用信託は併用できますか?

併用できます。財産全体の承継方針は遺言信託(または遺言書)で定め、葬儀費用など当面の資金は遺言代用信託で準備する、という組み合わせが代表例です。

Q. 遺言代用信託で受け取ったお金に税金はかかりますか?

かかります。受取人が取得した信託財産は相続税の課税対象です。生命保険の死亡保険金のような非課税枠はないため、注意してください。

この記事のまとめ

遺言信託は、遺言書の作成から執行までを金融機関に一括して任せられる、安心感の高いサービスです。一方で総費用は100万円を超えることが多く、紛争案件や身分に関する執行には対応できないという制約もあります。

遺言代用信託は、特定の金銭を低コストで確実に承継できる信託契約です。ただし対象は主に金銭に限られ、相続税の非課税枠もないため、生命保険との比較検討が欠かせません。

どちらのサービスも金融機関によって内容や手数料が異なります。法務局の保管制度や専門家への依頼といった代替手段も含めて比較し、ご自身の資産構成と目的に合った方法を選びましょう。

mitsuki-shibata
柴田充輝

金融系ライター

厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。

厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。

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遺言信託

遺言信託とは、被相続人(故人)が自分の財産を誰にどのように分配するかを定めた遺言書の作成や執行を、信託銀行などの専門機関に依頼するサービスのことです。遺言の作成支援から保管、そして死亡後の遺言執行までを一貫して対応するため、相続に関する手続きの煩雑さを軽減でき、専門的な判断が必要な場面でも安心して任せられます。 特に、複数の相続人がいたり、不動産や非上場株式など評価が難しい資産を含む場合には、第三者の介在によって円滑な資産分配が行える利点があります。遺言信託を活用することで、相続トラブルの予防や、被相続人の意思の尊重が実現しやすくなりますが、信託銀行等に支払う手数料が発生する点には注意が必要です。

信託

信託とは、お金や不動産などの財産を信頼できる相手(受託者)に託し、特定の目的に沿って管理・運用してもらう仕組みです。財産を託す人を「委託者」、管理する人を「受託者」、利益を受け取る人を「受益者」といいます。 たとえば、親が子どもの教育資金を信託したり、高齢の親の認知症対策として資産管理を家族に委ねたりするケースがあります。このような個人間で活用される信託は「家族信託」と呼ばれ、相続対策や資産承継の手段として近年注目されています。 一方、資産運用の世界では「商事信託」として、信託銀行や運用会社が多数の投資家から集めた資金をまとめて運用する「投資信託」が一般的です。さらに、海外では、受益者への分配内容を受託者が裁量で決められる「ディスクリショナリートラスト(裁量信託)」という形態もあります。 信託は目的や状況に応じて柔軟に設計できる制度であり、大切な資産を計画的に管理・承継するための有力な選択肢となります。

受益者(受取人)

資産運用における受益者(受取人)とは、保険、信託、年金、投資信託、相続などの金融資産から利益を受け取る権利を持つ人を指します。各金融商品や制度において、受益者の役割や権利は異なりますが、共通して資産の管理や運用を経て利益を受ける立場にあります。 生命保険では、契約者が指定した受取人が、被保険者の死亡時に保険金を受け取ります。受取人には第一受取人と第二受取人があり、状況に応じて保険金の支払いが行われます。年金においては、企業年金や個人年金の給付を受け取る人が該当し、遺族年金のように家族が受給者となるケースもあります。 信託では、委託者が資産を信託し、受託者が管理・運用した収益を受益者が受け取ります。信託の形態によって、個人向けや法人向けの受益者が存在し、特定の目的に応じた資産運用が可能となります。投資信託では、ファンドに出資した投資家が受益者となり、分配金や運用益を得ます。特にETFなどの上場投資信託では、受益者が市場で自由に取引できる点が特徴です。 相続においては、遺言や法定相続によって故人の資産を受け取る人が受益者とされます。特定の受益者を指定することで、資産の分配を意図的に調整することが可能になります。また、公共の福祉制度においても、社会保障や奨学金の支給対象者が受益者に該当します。 受益者の適切な指定は、資産の円滑な継承や税務対策において重要であり、状況の変化に応じた定期的な見直しが推奨されます。特に、家族構成の変化や法改正の影響を考慮し、適切な受益者設定を行うことが、資産運用を成功させる鍵となります。

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