
加給年金とは?もらえる条件と年金額・手続きを徹底解説
難易度:
執筆者:
公開:
2025.07.21
更新:
2025.07.21
厚生年金に20年以上加入している人が、一定の条件を満たす配偶者や子どもを扶養している場合に受け取れる「加給年金」は、老後の家計における貴重な上乗せ収入となります。2025年度の加給年金の基本額(配偶者・第1子・第2子)は年額239,300円です。支給には複数の要件があり、特に配偶者の年齢や収入、生計維持関係の有無といった条件を満たす必要があります。また、2022年の制度改正により「配偶者が年金の受給資格を得た時点で加給年金が停止される」という新ルールが導入されるなど、注意すべきポイントも少なくありません。
本記事では、制度を正確に理解するための実践的な知識を提供します。
サクッとわかる!簡単要約
この記事を読むと、厚生年金に20年以上加入した人が受け取れる「加給年金」について、支給条件・金額・手続きを正確に理解できます。具体的には、2025年度の基本額239,300円や特別加算額の算出方法、配偶者や子の加算要件を詳しく把握できます。また、2022年改正で厳格化された「配偶者が年金受給資格を得た場合の支給停止ルール」や、生計維持判定(配偶者年収850万円が基準)など、受給を逃さないための重要ポイントも明確になります。老後資金の見通しを立てるうえで欠かせない実用的な知識が得られます。
加給年金とは?まずは知っておきたい3つの基本
厚生年金に20年以上加入した人が、条件を満たす配偶者や子を扶養している場合に、本来の年金に上乗せされる「家族手当」のような制度です。ただし、配偶者が65歳になるまでなど期間限定の給付であり、共働き世帯の増加といった社会の変化を受け、近年は支給条件の厳格化や制度自体の廃止も議論されています。
1.老齢厚生年金に上乗せされる「家族手当」
加給年金とは、厚生年金に20年以上加入した方が老齢厚生年金を受け取る際、扶養している配偶者や子がいる場合に、年金額が上乗せされる制度です。
年金制度における「家族手当」とイメージすると分かりやすいでしょう。保険料を払った本人だけでなく、その家族の生活を支えるという目的のため、扶養家族の有無という条件で支給が決まります。
2.配偶者が65歳になるまでの「期間限定」の給付が原則
加給年金は、かつては生涯にわたって支給されていましたが、1985年(昭和60年)の大きな制度改正により、原則として「配偶者が65歳に達するまで」の期間限定の給付となりました。
これは、配偶者が65歳になると自身の老齢基礎年金を受け取り始めるためです。夫(妻)の加給年金が終了する代わりに、配偶者自身の年金に「振替加算」という形で一部が引き継がれる仕組みも、この時に作られました。
3.共働き世帯の増加で「廃止」も議論されている制度
制度が作られた当初は専業主婦世帯を支える意味合いが強かったものの、近年は共働き世帯が増加。こうした社会の変化に合わせて制度も見直されています。
直近では2022年(令和4年)に支給停止の条件が厳格化されました。さらに、現在は「配偶者のいる人だけが手当をもらえるのは不公平ではないか」といった観点から、制度の縮小や廃止も検討されています。
加給年金は誰がもらえる?4つの必須要件
加給年金は誰もがもらえる訳ではありません。本人の厚生年金加入期間が20年以上あることを大前提に、扶養する配偶者や子の年齢・収入、さらに配偶者自身の年金加入状況など、複数の必須要件をすべてクリアする必要があります。ご自身が対象になるか、ここでしっかり確認しましょう。
要件1:本人の厚生年金加入期間が「20年以上」ある
まず大前提として、ご自身の厚生年金への加入期間が原則として「20年以上」必要です。 複数の会社に勤務した場合や、公務員だった期間(共済年金)も通算できます。
※特例として、生年月日によっては40歳以降の加入期間が15年以上あれば認められるケースもあります。
要件2:生計を維持している「65歳未満の配偶者」がいる
ご自身の年金受給が始まる時点で、生計を同一にする「65歳未満の配偶者」がいることが要件です。 内縁関係の配偶者も対象に含まれますが、配偶者が65歳になると加給年金は支給されなくなります。
生計を同一にしていると認められるには、配偶者の前年の収入が「年収850万円未満(所得なら655.5万円未満)」であることが一つの目安です。 また、同居しているか、別居でも仕送りなどで生活を支えている実態(生計維持関係)が必要です。
※受給開始後に配偶者の収入が大幅に増えた場合、支給が停止される可能性があるのでご注意ください。
要件3:18歳以下の子どもがいること(障害がある場合は20歳未満)
配偶者だけでなく、「18歳になった年度の3月31日までのお子さん」を扶養している場合も加給年金の対象となります。
子どもに障害(1・2級)がある場合は20歳未満まで対象
お子さんに一定の障害(障害等級1級・2級)がある場合は、対象年齢が「20歳未満」まで延長されます。 子の場合も、本人との生計維持関係が必要です。
要注意:配偶者が厚生年金(20年以上)を受けられる場合、加給年金は支給停止
最も見落としがちなのがこの条件です。たとえ他の要件をすべて満たしていても、配偶者自身が「加入期間20年以上の厚生年金(または退職共済年金)」や「障害年金」を受けられる権利を持っている場合、配偶者に対する加給年金は支給停止となります。
これは、配偶者自身に十分な年金保障があるため、上乗せ(加給)の必要がないと判断されるためです。
加給年金はいくらもらえる?2025年度の金額と特別加算
加給年金の支給額は、対象となる家族の構成や本人の生年月日に応じて異なります。たとえば配偶者が対象の場合、基本額に「特別加算」が加えられ、生年月日により合計金額が変わります。また、子どもが対象となる場合は、1人目と2人目までは同額、3人目以降は異なる金額が支給されます。
加給年金額は、日本年金機構が公表しており、最新の金額は日本年金機構の公式サイトで確認することが重要です。以下では2025年度の情報を解説します。
配偶者を対象とした加算額とその内訳
配偶者の加給年金額は、①基本額(全員共通)と②特別加算(本人の生年月日で変動)の合計で決まります。
1.全員共通の「基本額」
2025年度の基本額は、対象となる方全員一律で年額239,300円です。
2.本人の生年月日で変わる「特別加算」
基本額に上乗せされるのが特別加算です。これは、年金を受け取るご自身の生年月日に応じて加算額が変わり、若い世代ほど手厚くなるように設計されています。
ご自身の生年月日が下の表のどこに該当するかご確認ください。
本人(年金受給者)の生年月日 | 特別加算額 | ①+②の合計額(年額) |
---|---|---|
昭和9年4月2日~昭和15年4月1日 | 35,400円 | 274,700円 |
昭和15年4月2日~昭和16年4月1日 | 70,600円 | 309,900円 |
昭和16年4月2日~昭和17年4月1日 | 106,000円 | 345,300円 |
昭和17年4月2日~昭和18年4月1日 | 141,200円 | 380,500円 |
昭和18年4月2日以降 | 176,600円 | 415,900円 |
※現在、新たに年金を受給する方の多くは「昭和18年4月2日以降生まれ」に該当するため、最大の特別加算が適用され、合計額は年額415,900円となります。
子どもの人数によって変わる加算額
お子さんが対象の場合、加算額は人数によって異なります。
- 1人目・2人目のお子さん:それぞれ年額239,300円
- 3人目以降のお子さん:それぞれ年額79,800円
例えば、65歳時点で妻(65歳未満)と子2人(18歳以下)を扶養している場合、配偶者分(最大415,900円)に加え、子2人分の478,600円(239,300円×2)が上乗せされます。
加給年金の手続き完全ガイド:申請しないともらえないため要注意
加給年金は自動的に振り込まれるものではなく、本人の申請が必須です。手続きは老齢年金の請求と同時に行い、複数の証明書類が必要となります。申請を忘れると5年の時効で権利が消滅することも。ここでは、手続きの流れから必要書類、万が一の際の対処法までを解説します。
申請は老齢年金請求と同時:必要書類と提出方法
加給年金の手続きは、原則として65歳で老齢厚生年金を請求する際に同時に行います。
年金請求書とあわせて「加給年金額加算開始事由該当届」を、お近くの年金事務所または街角の年金相談センターへ提出してください。この届出には、主に以下の書類の添付が必要です。
<必要書類>
- 戸籍謄本(または戸籍全部事項証明書):請求者と対象家族の続柄を確認
- 世帯全員の住民票:生計を同一にしているかを確認(続柄記載のもの)
- 配偶者・子の所得証明書(または非課税証明書):配偶者等の収入が基準内であることを確認
※マイナンバーカードがあれば、マイナポータル経由での電子申請も可能です。その場合、住民票や所得証明書の添付を省略できるメリットがあります。
受給開始後の届出も忘れずに行うことが重要
加給年金を受け始めた後も、家族の状況に変化があれば届出が必要です。
<届け出が必要な場合>
- 支給が止まるとき:「配偶者が65歳になった」「離婚した」「子が18歳になった」など、対象から外れた場合は『支給停止事由該当届』を提出します。
- 新たに追加されるとき:「年金受給後に再婚した」「子が生まれた」など、新たに対象となる家族ができた場合は『加算開始事由該当届』を提出すれば、その時点から加給年金が上乗せされます。
申請し忘れても5年以内なら遡って受給可能(時効に注意)
年金は、本人が請求しない限り支給されない「請求主義」が原則です。
もし加給年金の申請を忘れていても、5年以内であれば遡って一括で受け取ることが可能です。 ただし、5年を過ぎてしまうと時効となり、その分の権利は消滅してしまいます。「自分は対象外だろう」と思い込まず、少しでも可能性があるなら必ず年金事務所へ確認・相談しましょう。
加給年金がもらえなくなる(支給停止される)6つのケース
受給が始まっても、加給年金は一生涯続くわけではありません。配偶者の年齢到達など計画的に終了する場合のほか、夫婦の働き方や年金状況によって突然停止することも。ここでは、加給年金がもらえなくなる代表的なケースを解説します。ご自身の状況と照らし合わせて確認しましょう。
ケース1:配偶者が65歳になったとき
最も一般的な終了理由です。加給年金の対象である配偶者が65歳の誕生日を迎えると、その翌月分から支給が停止されます。
これは、配偶者自身がご自身の老齢基礎年金を受け取り始めるため、加給年金がその役目を終えるという制度上の仕組みです。
ケース2:配偶者が自身の年金を受けられるようになったとき
配偶者自身が、加入期間20年以上の厚生年金や障害年金を受けられる権利を持つ場合、加給年金は支給停止になります。
特に注意が必要なのは、2022年の改正以降、実際に年金を受け取っていなくても(在職中で給与が高いために年金が止まっていても)、受けられる「権利」があるだけで停止対象となった点です。
ケース3:配偶者との生計関係がなくなったとき(離婚・収入増など)
加給年金は「生計を維持している」ことが条件のため、その実態がなくなると支給は止まります。具体的には、以下のような場合です。
- 離婚した場合
- 配偶者の収入が増え、扶養されているとは言えなくなった場合(年収850万円以上が目安)
ケース4:子どもが対象年齢から外れたとき
対象となっていたお子さんが18歳になった年度の末日(3月31日)を過ぎた場合、そのお子さんに対する加給年金は終了します。
なお、お子さんに一定の障害がある場合は、対象年齢は20歳までとなります。
ケース5:本人の年金が在職により「全額」支給停止になったとき
65歳以降も働きながら年金を受け取る場合、給与と年金の合計額が月51万円を超えると、老齢厚生年金の一部が支給停止されます。
この調整の結果、ご自身の老齢厚生年金本体が「全額」支給停止となった場合、それに付随する加給年金も支給されなくなります。
ケース6:本人が死亡した、または他の年金を選択したとき
当然ながら、受給者本人が亡くなった場合は加給年金も終了します。
また、ご自身が遺族年金など、老齢厚生年金以外の年金を優先して受け取ることを選択した場合、老齢厚生年金に付く加給年金も受け取れなくなります。
関連制度との関係:振替加算・特別支給で損しないための知識
加給年金は、他の年金制度と深く関わっています。夫の加給年金終了後に妻に支給される「振替加算」や、65歳前から年金がもらえる「特別支給」との関係は複雑です。ここでは、これらの関連制度について、損をしないために知っておくべきポイントを分かりやすく解説します。
加給年金終了後、妻の年金に「振替加算」が上乗せされることがある
夫(本人)に支給されていた配偶者加給年金は、妻が65歳になると終了します。その代わりに、一定の条件を満たす妻自身の老齢基礎年金に「振替加算」が上乗せされることがあります。
これは、年金制度が現在の形になる前に生まれた世代への経過措置です。主に、昭和41年4月1日以前に生まれた、年金加入期間が短い専業主婦だった方などが対象となります。
加算額は生年月日が古い方ほど高く、対象外の世代(昭和41年4月2日以降生まれ)に近づくほど少なくなります。
「特別支給の老齢厚生年金」の受給者は65歳前から加給年金をもらえる
年金の支給開始年齢が60歳から65歳へ引き上げられる過程で設けられた「特別支給の老齢厚生年金」を受けられる方は、65歳になる前から加給年金が支給される場合があります。
対象となるのは、男性は昭和36年4月1日以前、女性は昭和41年4月1日以前に生まれた方です。
この制度はまもなく対象者がいなくなり終了するため、今後、加給年金は原則として65歳から支給されるものになります。
元公務員の共済年金も、現在は厚生年金と同じルール
かつて公務員や私立学校教職員が加入していた共済年金は、2015年10月に厚生年金へ統合されました。
そのため、現在では元公務員の方も、加給年金の支給要件や金額、支給停止のルールはすべて会社員と同じです。
ご自身や配偶者が元公務員の場合でも、この記事で解説している厚生年金のルールがそのまま当てはまるとお考えください。
加給年金はいつ廃止される?今後の制度改正と見直しのポイント
専業主婦世帯が主流だった時代に作られた加給年金は、共働きが当たり前になった現代社会の実態と合わなくなってきています。そのため、支給条件の厳格化が進み、制度自体の廃止も議論の対象に。ここでは、加給年金を取り巻く制度改正の現状と、今後の見通しを解説します。
これまでの主な改正:支給条件は年々厳しく変化
加給年金は、時代の変化に合わせて大きな改正を重ねてきました。
特に重要なのが、1985年の改正で「配偶者が65歳になるまで」の期間限定の給付になったこと、そして2022年の改正で「配偶者が年金を受け取る権利を持つだけで支給停止」となり、条件がさらに厳格化されたことです。
また、年金の支給開始年齢が65歳に統一されていく流れの中で、加給年金の役割も少しずつ縮小しています。
なぜ廃止が議論されているのか?3つの論点
現在、国の審議会では加給年金の廃止を含めた見直しが議論されています。主な論点は以下の3つです。
- 共働き世帯の増加:専業主婦(主夫)のいる世帯を支えるという制度の必要性が低下している。
- 公平性の問題:家族の状況によって年金額に差がつくのは不公平だという意見がある。
- 財源の有効活用:限られた財源を、子育て支援など次世代のために使うべきだという考え方。
今後の見通し:2025年以降の改正で結論が出る可能性も
現時点で廃止は決定していませんが、「現受給者には配慮しつつ、将来的に段階的に縮小・廃止していく」という方向で議論が進んでいます。
次期年金制度改正(2025年以降の法改正)で、何らかの結論が示される可能性があります。 例えば「〇年以降に新たに加給年金は付けない」「子の加算のみ残す」といった案が考えられます。今後の国の発表に注意し、ご自身の老後計画にどう影響するかを確認することが大切です。
加給年金を考慮した老後資金シミュレーション
加給年金は、夫婦の年齢差や働き方で受給額が大きく変わります。そのため、いつ年金を受け取るか、配偶者がどう働くかといった戦略が、世帯の総収入を左右します。ここでは、モデル比較や活用ポイントを通じて、ご自身の老後資金計画に活かすためのヒントを解説します。
モデル比較:年の差夫婦と共働き夫婦の年金収入の違い
加給年金の有無は、老後の家計に大きな影響を与えます。
年の差のある専業主婦(主夫)世帯の場合
夫が65歳になってから妻が65歳になるまでの間、加給年金が「つなぎの収入」となり家計を支えます。総額では数百万円に及ぶこともあり、老後前半の生活にゆとりが生まれます。
共働きや同年齢の夫婦の場合
妻自身が厚生年金を受けられる場合、夫に加給年金は支給されません。その代わり、当初から夫婦2人分の年金で生活設計を立てることになります。収入の変動は少ないですが、加給年金という上乗せ収入はありません。
活用ポイント1:年金の「繰上げ・繰下げ」は慎重に判断する
老齢年金の受給開始時期をずらす際は、加給年金への影響を考慮する必要があります。
繰上げ受給(65歳より前にもらう)
年金本体が減額されるだけでなく、65歳になるまでの間、加給年金は一切支給されません。
繰下げ受給(66歳以降にもらう)
年金本体は増額されますが、繰下げ待機中(年金を受け取らない期間)は加給年金も支給されません。年の差が大きい夫婦の場合、受け取れるはずの加給年金を放棄することになり、かえって損をする可能性があります。
活用ポイント2:配偶者の「働き方」で受給額が変わる
配偶者が厚生年金に加入して働くかどうかは、世帯の年金額を左右する大きな選択です。
例えば、妻が厚生年金の加入期間20年を目指して働き続けると、将来自身の年金は増えますが、夫の加給年金は支給停止になります。
どちらが得かは一概には言えません。「期間限定の加給年金を優先するか」「将来の妻自身の年金を増やすことを優先するか」という視点で、夫婦のライフプランとして検討することが重要です。
活用ポイント3:税金・社会保険料への影響は限定的
加給年金は課税対象ですが、過度に心配する必要はありません。
年金収入には大きな控除(公的年金等控除)があるため、加給年金をもらったことで税金が急に高くなるケースは稀です。同様に、国民健康保険などの社会保険料への影響も、多くの場合、限定的です。
むしろ、期間限定の貴重な収入と捉え、老後計画にしっかり組み込むことをお勧めします。
年金にかかる税金について詳しくは以下の記事で解説しています
この記事のまとめ
加給年金は、扶養する配偶者や子がいる厚生年金加入者を対象にした年金の上乗せ制度で、2025年度の基本額は239,300円です。ただし、配偶者が自身の年金受給資格を得たり、年収が850万円を超えると支給が停止されるなど、注意すべき点も多くあります。また、届出漏れがあっても5年以内なら遡って請求が可能なため、受給資格がある場合は早めの対応が大切です。制度の詳細を把握し、自分が対象になるかどうかを確認するために、年金事務所への相談を検討しましょう。

MONO Investment
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
関連する専門用語
加給年金
加給年金とは、厚生年金に加入していた人が老齢厚生年金を受け取る際に、一定の条件を満たしていれば上乗せして支給される年金のことです。主に、年金を受け取る人に扶養している配偶者や子どもがいる場合に支給されます。この制度は、家族の生活を支えることを目的としており、会社員などが退職後に受け取る厚生年金にプラスされるかたちで支給されます。 ただし、配偶者や子どもが一定の年齢や収入要件を超えていると対象外になることがあります。つまり、定年後の生活を家族と一緒に支えていく仕組みの一つといえます。
老齢厚生年金
老齢厚生年金とは、会社員や公務員などが厚生年金保険に加入していた期間に応じて、原則65歳から受け取ることができる公的年金です。この年金は、基礎年金である「老齢基礎年金」に上乗せされる形で支給され、収入に比例して金額が決まる仕組みになっています。つまり、働いていたときの給与が高く、加入期間が長いほど受け取れる年金額も多くなります。また、一定の要件を満たせば、配偶者などに加算される「加給年金」も含まれることがあります。老後の生活をより安定させるための重要な柱となる年金です。
振替加算
振替加算とは、国民年金の制度において、老齢厚生年金を受け取る配偶者に対して加算される年金の一部です。具体的には、配偶者が一定の要件を満たし、かつ自分自身の基礎年金を満額もらえない(たとえば国民年金の加入期間が短い)場合に、老齢厚生年金に上乗せして支給されるものです。この制度は、年金制度が整備される以前に結婚・子育てをしていた専業主婦(主夫)などが不利にならないように設けられました。受給の条件には、生年月日や配偶者との関係、国民年金の納付状況などが関係します。資産運用や老後の生活設計においては、年金収入の見込みを正しく把握するために、振替加算の有無は重要な確認ポイントの一つです。
特別加算
特別加算とは、老齢基礎年金や老齢厚生年金の受給者のうち、特定の要件を満たす人に対して支給される、定額の上乗せ支給分のことです。主に、長期間にわたって厚生年金に加入していた方や、昭和生まれの年金制度移行期に該当する方などが対象になります。この加算は年金の受給額を少しでも手厚くするために設けられており、通常の年金額に追加して支給されます。特別加算は、年金制度が整備される前から長く保険料を支払ってきた方々の貢献に報いる意味もあります。ただし、全員が対象となるわけではなく、生年月日や加入期間など、国が定めた条件に基づいて判断されます。
共済年金
共済年金とは、かつて公務員や私立学校の教職員などが加入していた公的年金制度の一つで、民間の会社員が加入する厚生年金に相当する制度です。これは、現役時代に支払った保険料に基づいて、老後に年金として受け取ることができる仕組みでした。 共済年金は、それぞれの職域(国家公務員、地方公務員、私学教職員など)ごとに独自の共済組合が運営していましたが、制度の一本化を目的として、2015年10月に厚生年金に統合されました。これにより、新たに公務員などとして働き始める人も、民間と同じ厚生年金制度に加入することになっています。なお、統合前に共済年金に加入していた期間については、年金の計算に引き続き反映されるため、過去の加入歴として記録され、給付に反映されます。
所得証明書
所得証明書とは、その年の所得金額や課税状況を証明する公的な書類です。市区町村の役所で発行され、正式には「課税証明書」と呼ばれることもあります。この書類には、前年の収入や所得の内訳、課税額、扶養人数などが記載されており、住宅ローンの審査や奨学金の申請、保育料の決定、公的支援の申請など、さまざまな場面で必要とされます。 特に資産運用に関連する場面では、投資口座の開設時や非課税制度(たとえばNISAやiDeCo)の利用に際して、所得要件を確認するために求められることがあります。会社員の場合は、勤務先が役所に報告した情報に基づいて作成されます。自営業者の場合は確定申告の内容が反映されます。
特別支給の老齢厚生年金
特別支給の老齢厚生年金とは、一定の年齢以上で厚生年金に長く加入していた人が、65歳になる前から受け取ることができる特別な年金制度です。現在の年金制度では、原則として老齢厚生年金の支給開始は65歳からとなっていますが、昭和36年4月1日以前に生まれた方については、60歳から65歳までの間に特別に年金を受け取れる仕組みが設けられています。 これは制度変更の経過措置として設けられたもので、年金制度が65歳支給開始に移行する過程で、不公平が生じないようにするための配慮です。受け取れる金額は、加入期間や報酬額などによって決まり、加給年金や特別加算がつく場合もあります。現在は新たにこの制度の対象になる人はいませんが、過去に対象となった方にとっては大切な収入源となっています。
繰上げ受給
繰上げ受給とは、公的年金を本来の支給開始年齢より早く受け取り始める制度で、日本では原則65歳からの老齢基礎年金や老齢厚生年金を60歳から前倒しで請求できます。早く受け取る代わりに、受給額は繰上げた月数に応じて永久的に減額される仕組みになっており、減額率は請求月ごとに定められています。長く受給するメリットと生涯受取額が減るデメリットを比較し、健康状態や生活資金の必要度、就労の予定などを踏まえて選択することが大切です。また、一度繰上げを行うと原則として取り消しや遅らせることはできないため、将来のライフプランを十分検討したうえで判断する必要があります。
繰下げ受給
繰下げ受給とは、本来65歳から支給される公的年金(老齢基礎年金や老齢厚生年金など)の受け取り開始を自分の希望で後ろ倒しにする制度です。66歳以降、最大75歳まで1か月単位で繰り下げることができ、遅らせた月数に応じて年金額が恒久的に増えます。 増額率は1か月当たり0.7%で、10年(120か月)繰り下げた場合にはおよそ84%の上乗せとなるため、長生きするほどトータルの受取額が増えやすい仕組みです。ただし、繰下げた期間中は年金を受け取れないため、その間の生活資金や健康状態、就労収入の見通しを踏まえて慎重に検討することが大切です。
年金事務所
年金事務所とは、日本の公的年金制度に関するさまざまな手続きや相談を受け付ける国の機関です。主に日本年金機構が運営しており、厚生年金や国民年金の加入、保険料の納付、受給に関する手続きや質問に対応しています。会社員や自営業の方、年金をこれから受け取る予定の方など、すべての人が自分の年金に関することを確認したり、相談したりする場所です。 たとえば、「年金をいつからもらえるのか」や「どれくらいの金額になるのか」などの情報を知りたいときには、この年金事務所を訪れることで、詳しい案内を受けることができます。
マイナポータル
マイナポータルとは、政府が運営するオンラインサービスで、マイナンバーカードを使って自分の行政手続きや個人情報を一元的に確認・管理できるシステムです。たとえば、どの役所がどのような情報を閲覧したかの履歴確認、子育てや年金、税金、医療などの手続き状況の確認・申請、さらには民間サービスとの連携(たとえば保険や金融)にも対応しています。 利用者は自宅のパソコンやスマートフォンからアクセスでき、行政手続きを簡略化したり、書類の提出を省略できたりするなどのメリットがあります。特に確定申告や公金受取口座の登録、給付金申請などに活用される機会が増えており、デジタル社会における個人と行政をつなぐ基盤的なサービスと位置づけられています。
公的年金等控除
公的年金等控除とは、年金を受け取っている人の所得税や住民税を計算する際に、年金収入から一定額を差し引ける控除制度です。これにより課税対象となる金額が減り、税負担を軽減できます。 対象となるのは、国民年金・厚生年金・共済年金などの「公的年金」に限られます。これらは所得税法上の「公的年金等」に分類され、控除の対象となります。 一方で、iDeCo(個人型確定拠出年金)や企業型DC、個人年金保険などは、たとえ年金形式で受け取ったとしても税法上は「公的年金等」に該当せず、公的年金等控除の対象外です。これらは「雑所得(その他)」として課税されます。 控除額は受給者の年齢と年金収入の額に応じて異なり、特に65歳以上の高齢者には手厚い控除が設けられています。 | 年齢 | 公的年金等の収入額 | 控除額 | | --- | --- | --- | | 65歳未満 | 130万円以下 | 60万円 | | | 130万円超〜410万円以下 | 収入額 × 25% + 37.5万円 | | | 410万円超〜770万円以下 | 収入額 × 15% + 78.5万円 | | | 770万円超 | 一律195.5万円 | | 65歳以上 | 330万円以下 | 110万円 | | | 330万円超〜410万円以下 | 収入額 × 25% + 27.5万円 | | | 410万円超〜770万円以下 | 収入額 × 15% + 68.5万円 | | | 770万円超 | 一律195.5万円 | たとえば、65歳以上で年金収入が250万円であれば、110万円の控除が適用され、課税対象となる所得は140万円に圧縮されます。