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マイクロソフト社ドル建て債券(年利3.7%、2046年償還)の魅力とリスクを徹底解説

マイクロソフト社ドル建て債券(年利3.7%、2046年償還)の魅力とリスクを徹底解説

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執筆者:

公開:

2025.08.21

更新:

2025.08.21

外貨建てで安定的な利息収入を狙える選択肢として、年利3.7%、2046年償還のマイクロソフト社米ドル建て債券が注目されています。発行体は世界的IT大手マイクロソフト社で、S&PとMoody’sからAAA格付けを得る盤石な信用力を背景にしています。一方で、為替変動や金利動向、任意償還といった外貨債特有のリスクも見逃せません。本記事では、基本スペックや利回り水準、考慮すべきリスク、さらにどのような投資家に適しているかを整理し、長期の外貨運用を検討する際の判断材料を提供します。

サクッとわかる!簡単要約

この記事を読み終える頃には、マイクロソフト社が発行する年利3.7%、2046年償還の米ドル建て債券について、AAA格付けに裏付けられた信用力や利回りの魅力だけでなく、為替や金利の変動、任意償還リスクまで含めて、投資判断に必要な視点を体系的に理解できるようになります。さらに、自分の投資スタイルや資産運用目的と照らし合わせ、この債券が長期的な保有にふさわしいかを判断する視点も身につきます。外貨建て債券の評価軸を整理し、実践的な選択につながる知識を得られる記事です。

目次

マイクロソフト社ドル建て債券の基本スペック

債券の発行条件(年利・償還日・通貨など)

基本スペックまとめ

発行体の概要と信用力

マイクロソフト社ドル建て債券のメリット──利回り・信用力・換金性など

長期保有で実質5%超の投資利回りも視野に

最高格付けAAAによる信用リスクの極小化

大規模発行&複数市場上場による高い流動性

注意すべきリスクと制度上の留意点

為替リスク──円安・円高の影響に注意

任意償還(コール)リスク──予定より早く償還される可能性

税制・手数料・取引制度の留意点

どんな投資家に向いているか?──投資判断の視点

向いている投資家

向かない投資家

マイクロソフト社のその他の債券と財務の安全性

マイクロソフトの主な米ドル建て社債

債務の構成と財務の安定性

マイクロソフト社ドル建て債券の基本スペック

Microsoft Corporation(マイクロソフト社)が発行する本社債は、年利3.7%、2046年8月8日償還の米ドル建て社債です。通貨は米ドル建てで、利息は固定金利で年2回(毎年2月8日・8月8日)支払われる仕組みになっています。

満期までの残存期間は約21年(2025年8月時点)にも及ぶ超長期債であり、長期的に安定した利息収入を狙いたい投資家にとって魅力的な選択肢となり得ます。

発行体は世界的IT企業のマイクロソフトで、信用格付けはS&PでAAA、Moody’sでAaaと企業債としては最高位に位置付けられています。これは極めて健全な財務基盤を示すものです。

債券の仕組みや外貨建て債券投資の基礎知識については、以下の記事でも詳しく解説していますが、本記事ではマイクロソフト社債に即して具体的に説明を進めます。

債券の発行条件(年利・償還日・通貨など)

本債券は2016年8月8日に発行されたシニア無担保社債で、額面金利(クーポン)は年3.7%(税引前)です。利払いは毎年2月8日と8月8日の年2回で、初回の利払い日は2017年2月8日でした。利息および償還金の支払いはすべて米ドル建てで行われ、日本円への換算は受取時点の為替レートによって左右されます。

発行時の総額は45億米ドルと非常に大規模で、額面単位は1,000米ドルです。この債券はグローバルに発行されており、ドイツの全取引所やEuroTLX、Gettex、Quotrix、Tradegateなど複数の海外市場に上場しています。そのため流通市場での売買も可能で、必要に応じて途中換金しやすい設計です。

また、本債券には発行体の任意で満期前に繰上償還できる任意償還条項(コールオプション)が設定されています。

具体的には2046年2月8日より前に債券を償還する場合、「額面100%」または「償還時点の米国債利回り+0.25%」で計算される現在価値のいずれか高い方の価格で早期償還が可能です(いわゆるメイクホール条項に基づく繰上償還条件)。2046年2月8日以降(満期の半年前)に償還する場合の価格は額面100%に固定されます。

一部のみ繰上償還が行われる場合には、DTC(Depository Trust Company)の規則に基づいて償還対象となる債券が選定されます。

基本スペックまとめ

  • 発行体(Issuer):Microsoft Corporation(マイクロソフト社)
  • 通貨建て:米ドル建て
  • 額面金利(クーポン):年3.7%(利払い年2回)
  • 発行日:2016年8月8日
  • 償還期限:2046年8月8日
  • 発行総額:45億米ドル
  • 額面単位:1,000米ドル
  • 格付:S&P:AAA/Moody’s:Aaa(いずれも最上位格付)
  • 利払い:年2回(毎年2月8日・8月8日)
  • 償還条項:任意償還条項(メイクホール条項)あり
  • 上場市場:ドイツ国内全取引所、EuroTLX、Gettex、Quotrix、Tradegateなど

以上のように、マイクロソフト社債は最高格付けによる盤石な信用力、固定利率による安定収入設計、そして超長期の運用期間が特徴です。次章では、こうした特徴が具体的にどのようなメリットを投資家にもたらすのかを詳しく見ていきます。

発行体の概要と信用力

マイクロソフト社は1975年創業の世界最大級のIT企業であり、WindowsやOffice製品、クラウドサービス(Azure)など多岐にわたる事業を展開しています。時価総額は世界トップクラスで、安定した収益基盤と巨額のキャッシュフローを有する点で知られています。

こうした盤石な事業・財務背景から、マイクロソフト社の信用力は極めて高く評価されています。実際、国際的な格付機関であるS&P(スタンダード&プアーズ)からは企業債として最高位の「AAA」格付けを取得しており、2023年時点で米国企業では同社とジョンソン・エンド・ジョンソン社の2社しか達成していない最高評価です。

なお、ジョンソン・エンド・ジョンソン社に関する社債については、こちらの記事で詳しく解説しています。

このAAA格付けが示す通り、マイクロソフト社の財務健全性は際立っており、債務不履行(デフォルト)リスクは事実上無視できるほど低い水準にあります。歴史的に見ても、AAA格付けの社債がデフォルトに陥るケースは極めて稀であり、ほぼ米国債に匹敵する信用度を誇る企業と言えるでしょう。発行体の信頼性という観点で、個人投資家が安心して長期保有できる社債と評価できます。

なお、ムーディーズやフィッチなど他の主要格付機関からも軒並み最上級の評価を得ており、マイクロソフト社は“世界でも指折りの高信用度企業”として広く認知されています。そのため、同社が発行する本債券も信用リスクが極めて小さい点が大きな特徴です。

元本や利息の支払い遅延が起こる可能性はほとんどなく、「債券投資で最も重要なポイントである、元利金を確実に受け取れるか」という安心感が突出しています。初めて海外企業の社債に投資する方にとっても、「発行体が本当に大丈夫だろうか?」という不安を大きく和らげてくれる信用力と言えるでしょう。

マイクロソフト社ドル建て債券のメリット──利回り・信用力・換金性など

マイクロソフト社ドル建て債券には、長期運用向けの商品としていくつか注目すべきメリットがあります。その高い信用力ゆえの安全性、超長期債ならではの利回り水準、そして市場での流動性と柔軟な運用など、順に見ていきましょう。

長期保有で実質5%超の投資利回りも視野に

本債券は額面に対して年3.7%の固定クーポン(金利)が支払われる超長期債です。満期は2046年8月8日と非常に長期ですが、発行体が健全であれば償還までの間、半年ごとに確実なドル建て利息収入が期待できます。

発行時点(2016年)では年3.7%という利率は同時期の30年米国債利回りと同程度で適切な水準でした。しかし2025年現在では米国の金利が大きく上昇しており、米20〜30年国債利回りはおよそ4.8〜4.9%前後まで達しています。

債券のクーポンの基本については以下Q&Aをご参照ください。

その影響で本債券の市場価格は額面を下回って推移しており、現在購入した場合の最終利回り(YTM)は約5.2%に達しています。これは同期間の米国債利回りを上回る水準であり、企業債ならではの上乗せ利回りを享受できる点が魅力です。

言い換えれば、現在の市場価格で本債券を取得し、満期まで保有すれば年約5%超(税引前)のドル建て投資利回りが見込めるということです。この水準は低金利の円建て資産では得られない収益機会であり、ドル建てで長期のインカムゲインを確保したい投資家にとって大きなメリットと言えます。

しかもクーポンが固定であるため、将来的な金利変動にかかわらず契約上決まった利息を受け取れる点も安心材料です。仮に市場金利の変動で債券価格が上下しても、満期まで持ち切れば額面金額(100%)で償還されるため、途中で売却しない限り元本割れの心配は低いでしょう。

このように「長期で持ち切る前提」であれば、市場変動による評価損益は一時的なものに留まり、着実に利息収入を積み上げられる点は魅力です。

一方で、長期保有によるメリットを享受するためには、余裕資金で運用することが重要です。債券は基本的に満期まで保有して元本返済を受け取ることで当初見込んだ利回りが実現します。途中で現金化(売却)する場合、その時の市場価格によっては損失が生じる可能性があるため、5年以内に使う予定の資金など短期資金には不向きです。

逆に言えば、長期間使う予定のない資金を安全に運用しつつ少しでも増やしたい、といったニーズにはマッチすると言えるでしょう。

最高格付けAAAによる信用リスクの極小化

本債券最大のメリットは、何と言っても発行体の信用力が極めて高いことです。前述の通りマイクロソフト社はS&PからAAA格付けを付与されており、これは企業債としては最高ランクの信用度を意味します。

格付けが示すように、債券の元本や利息の支払いが滞る可能性はほとんどなく、安心して長期運用できる土台となります。信用リスク(発行体の財務破綻リスク)が極めて低いため、債券投資で最も重要な「元利金を確実に受け取れるか」という点で圧倒的な安心感があります。

とりわけ、初めて外貨建て債券を購入する方にとって、発行体の信頼性は重要な判断材料でしょう。海外企業の社債に投資するとなると「本当に大丈夫だろうか?」という不安がつきものですが、AAA格付け企業の債券であればその懸念は大きく和らぎます。

実際、AAA格付けの社債がデフォルトに陥るケースは歴史的にも極めて稀です。ほぼ国債に匹敵する安全性を享受しながら、企業債ならではの利回りを獲得できる点は、本債券の大きな魅力と言えます。

もちろん高格付けゆえに利回り水準は控えめですが(※現在のYTM約5%は米国債+α程度)、その分「元本と利息の確実な受取り」という最重要ポイントが堅固に担保されています。ローリスク・ミドルリターン志向の長期運用には非常に適した商品性と言えるでしょう。

信用格付けの基礎についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

大規模発行&複数市場上場による高い流動性

本債券は発行額が45億ドルと巨額であり、市場に流通する債券の量(残高)も多い点が特徴です。発行規模が大きい債券は投資家の保有も分散しやすく、売買ニーズも一定程度見込まれるため、一般に流動性(取引のしやすさ)が高まります。

また、マイクロソフト社債は複数の国際証券取引所に上場しており(ドイツ主要取引所やEuroTLX市場等)、店頭取引が中心の外債の中でも比較的透明性のある流通経路が確保されています。実務上も、日本の主要ネット証券を通じて購入・売却が可能であり、Apple社債などと同様、高信用格付け企業の上場債券は換金性の高い運用資産と位置付けられています。

こうした背景から、本債券は「長期で満期まで保有する」だけでなく「必要に応じて途中売却する」余地を残した運用ができ、長期インカム投資における柔軟性を高めてくれる商品と言えます。

実際、証券会社によっては本債券を含む外国債券をリアルタイム価格で提示しており、相応の出来高で取引されています。これにより、長期保有を前提としつつも、ライフイベントの変化等で現金化が必要になった場合にも対処しやすい点は投資家にとってメリットでしょう。

ただし、外債全般に言えることですが、売却時の価格は市場金利や相場環境に左右されます。店頭取引ではタイミングや相場によって希望する価格で取引が成立しないリスク(流動性リスク)もゼロではありません。特に相場が大きく荒れている局面ではスプレッド(売値と買値の差)が広がる可能性もあります。

しかしながら、本債券のように信用度が高く市場で認知された銘柄は、比較的安定した流動性が期待できるため、極端に売りたい時に売れないといった事態は起こりにくいでしょう。

一方で個別債券の信用リスクに左右されたくない場合は、債券型投資信託に投資するという選択肢もあります。そのメリットについては以下Q&Aでご確認ください。

注意すべきリスクと制度上の留意点

高い信用力と魅力的な利回り水準を備えたマイクロソフト社債ですが、投資にあたって注意すべきリスクや知っておきたい制度面のポイントもいくつかあります。為替変動による収益変動リスク、途中償還(コール)のリスク、そして税制や手数料など制度面での留意点について順に見ていきます。

為替リスク──円安・円高の影響に注意

本債券は米ドル建てで発行されているため、日本の投資家が最終的に受け取る円換算の収益は為替相場の影響を大きく受けます。利息も償還金もドルで支払われるため、それを円に換算した受取額は支払い時点のドル円レート次第で増減します。

たとえば、投資時に1ドル=110円だったものが償還時に1ドル=100円へ円高が進んでいた場合、10,000ドルの元本は100万円にしかならず、当初の投資額(110万円)を下回る結果になります。逆に、円安が進んで1ドル=120円になっていれば、同じ10,000ドルでも120万円の償還額となり、為替差益を得ることができます。このように、為替レートの変動によって円換算リターンが変動するリスクを為替リスクと呼びます。

為替リスクについては以下のQ&Aもご参照ください。

もっとも、債券には利息収入があるため、その分だけ円高への耐性(バッファ)が生まれます。利息収入分までの緩やかな円高であれば、トータルの円換算収益がマイナスにならずに済む可能性があります。

ただし、本債券のクーポンは年3.7%と一定の水準があるものの、極端な急激な円高が進めば利息収入をもってしても円貨ベースで損失が出てしまう恐れがある点は認識しておきましょう。特に短期的な円高ショックが生じると評価額が大きく目減りする場合もあります。

為替リスクへの対応策としては、為替ヘッジや受取通貨の工夫が考えられます。為替ヘッジとは先物取引などであらかじめ円ドルレートを固定してしまう方法ですが、個人が債券利回り程度の規模でヘッジを行うとコストがメリットを上回りがちです。

実際、2025年現在、米ドルの為替ヘッジコストは年率3〜4%程度に達しており、本債券のクーポン3.7%を大きく圧迫する水準です。そのため、現実的にはヘッジなし(オープン)で運用する、あるいは利息や償還金の受取通貨を工夫するという対処が有効です。

具体的には、受け取ったドルをすぐ円転せずに運用を続ける方法があります。為替リスクは外貨を円に転換する時に初めて確定します。したがって、円高が進んで為替差損が出そうな局面では、利子や償還金を無理に円に換えずドルのまま保有し、円安方向へ相場が戻るのを待つという選択肢もあります。

実際、多くの証券会社では利息・償還金の受取通貨を「外貨(ドル)のまま」に設定することが可能であり、受け取ったドル資金を自動で外貨建てMMFなどに再投資して運用を継続するサービスも提供されています。こうすることで、円転のタイミングを自分で見極める余地が生まれ、慌てず為替相場を待つことが可能です。

このように、「急な円高でも慌てず、じっくり待てるか」というスタンスが為替リスクと上手に付き合う鍵となります。ご自身の資金用途(使う時期や目的)やリスク許容度を踏まえて、為替リスクを許容できる範囲かどうか慎重に判断することが大切です。

まとめると、為替リスクはドル建て資産最大の特徴であり、円安方向に振れればメリットとなりますが、円高方向に振れると評価額が目減りする可能性があります。

本債券のように利回りの魅力や通貨分散効果が期待できる商品は、ポートフォリオの一部として検討する価値がありますが、円建て資産と異なり為替・金利・信用といった複数のリスクが重なる点を正しく理解した上で取り組む必要があります。

為替リスクを全く許容できない方は無理に外貨建て債券を持つ必要はありませんし、その場合はヘッジ付き商品や円建て資産など代替手段を検討すると良いでしょう。

任意償還(コール)リスク──予定より早く償還される可能性

本債券には、発行体の判断で満期前に債券を繰上償還できるコール条項(任意償還条項)が設定されています。前述の通り、マイクロソフト社は2046年2月8日より前であれば所定の条件(額面100%または米国債+0.25%の高い方の価格)で本債券を早期償還する権利を持ち、2046年2月8日以降は額面100%で償還可能です。

このような仕組みは投資家に一定の補償(メイクホール)を与える設計にはなっていますが、発行体にとって有利な環境(市場金利が大きく低下した場合など)では早期償還されてしまい、投資家は予定していた利息収入が打ち切られるリスクを負うことになります。

幸い本債券の場合、コール条項による繰上償還が行われたとしても、額面あるいはそれ以上の価格で償還されるため元本割れになる可能性は低いです。また、2046年2月までの期間で発行体が任意償還を行うには相応の金利低下局面が必要であり、現状のように金利水準が高い間は繰上償還される可能性は小さいと言えます。

しかしそれでも、投資前にこうした繰上償還の可能性は認識しておくべきでしょう。万一発行体がコールオプションを行使した場合、当初予定よりかなり早く償還金が手元に戻る可能性があります。その際は新たな投資先を検討する必要(再投資リスク)が生じます。

特に高い利回りを期待して長期保有を前提に投資していた場合、計画が狂ってしまう恐れもあります。頻繁に起こる事象ではありませんが、「予定通り満期まで利息を受け取れない場合もあり得る」という点は頭に入れておきましょう。

一般論として、コール条項は発行者に有利なタイミングで行使されることが多く、投資家にとっては「上振れ(もっと長く高利息を受け取る)チャンスが削られ、下振れリスクだけ残る」という非対称な構造になりがちです。

債券投資を行う際は、このコール条項の有無・内容(コール可能な時期や条件など)を事前に確認し、利回りシミュレーションに織り込んでおくことが重要なポイントとなります。マイクロソフト社債の場合、メイクホール条項があるため投資家への配慮はされていますが、「超長期で高利回りを確保する」という目的で投資する際には、早期償還による再投資リスクにも目を向けておく必要があります。

税制・手数料・取引制度の留意点

外国債券に投資する際は、国内債券とは異なる税制上・制度上のポイントも確認しておきましょう。本債券について、日本の個人投資家が知っておくべき事項を整理します。

税制面では、日本の居住者個人投資家が本債券から得た利息や売買益には、国内の公社債等に関する税制ルールが適用されます。利息収入は「利子所得」として20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)の源泉徴収が行われ、原則として確定申告不要で課税関係が完結します。

また、本債券を途中売却して為替差益が出た場合や額面以上の価格で償還された場合(例えば割引債を額面償還したケース)の利益は「譲渡所得」として20.315%の申告分離課税となります。

2016年の税制改正以降、債券の譲渡損益は株式等との損益通算が可能となっており、本債券で生じた為替差損を他の株式譲渡益と相殺するといった節税もできるようになりました。確定申告を行えば損失の3年間繰越控除も可能です。

外国税額に関して補足すると、米国の民間企業債券の利子は外国人投資家には非課税(いわゆるポートフォリオ利子の免税措置)となっているため、基本的に米国側で源泉徴収される税金はありません。したがって、マイクロソフト社債の利息については日本国内の20.315%のみ課税され、二重課税は発生しません。

利息支払時には証券会社が自動的に源泉徴収を行い、日本の税制上は国内公社債とほぼ同様の扱いとなります。面倒な税務手続きは特段発生せず、特定口座で保有すれば税金計算・徴収も証券会社が代行してくれます(※損益通算や繰越控除をしない場合は確定申告不要)。そのため、税制面で過度に構える必要はないでしょう。

手数料・コスト面にも注意が必要です。マイクロソフト社債を含む外国債券は、その多くが店頭取引です。購入時や売却時には為替スプレッドや債券の売買スプレッドが実質的なコストとなります。

たとえば円貨で購入する場合、円をドルに交換する際に数銭〜数十銭程度の為替手数料がかかりますし、債券自体の価格にも販売会社のマージン(スプレッド)が含まれます。証券会社ごとに手数料体系は異なりますが、最近のネット証券では売買手数料を明示せずスプレッドのみで収益を取る形が一般的です。いずれにせよ、購入前に為替手数料や債券価格にどの程度コストが含まれているかを確認しておくことが重要です。

また、売却時にも同様のスプレッドコストが発生するため、短期で頻繁に売買を繰り返すとその都度コスト負担がかさみ効率的ではありません。本債券のような外貨建て債券は、基本的に「買って満期まで保有する」というスタンスで、途中売買は必要最低限に留める方が望ましい運用と言えます。

取引制度面に関して、本債券は「特定公社債」に分類されるため特定口座での管理も可能です。特定口座で保有すれば上述のように税金関連の処理を証券会社が代行してくれますので、確定申告の手間を省くことができます。

外国債券によっては米国で源泉課税(通常10%程度)が行われ、外国税額控除の手続きが必要になるケースもありますが、本債券についてはその心配がありません。安心して特定口座で受け入れ、運用を任せることができます。総じて、税制・制度面では国内債券に近い感覚で扱える商品と言えるでしょう。

最後に、外国債券全般の注意として、情報開示の言語があります。マイクロソフト社は世界的企業であり情報開示も豊富ですが、開示資料は基本的に英語です。米国SECへの提出書類(10-Kや債券の目論見書等)は英語となるため、自ら情報収集する際には英語読解が求められる場面もあるでしょう。

もっとも、近年はネット上で日本語情報(記事やQ&A)も増えており、また証券会社経由で基本情報は提供されます。本記事のように専門家が要点をまとめた解説を活用することで、情報ハードルはある程度下げられるはずです。

どんな投資家に向いているか?──投資判断の視点

ここまで見てきたように、マイクロソフト社ドル建て債券はローリスク・ミドルリターン型の安定運用商品です。したがって、高リスク高リターンを狙う資金や短期勝負の資金にはミスマッチですし、為替リスク許容度や運用期間に制約がある場合も適合しません。

一方で、安全性と収益のバランスを重視する長期運用資金には有力な選択肢となり得ます。ご自身の投資目的・方針と照らし合わせて、本債券への投資適否を判断すると良いでしょう。以下、本債券が向いている投資家像と向かない投資家像を整理します。

向いている投資家

  • 安定した利息収入を重視する投資家:低リスクで定期的なインカムゲインを得たい方に向いています。AAA社債という盤石な信頼性のもと、半年ごとに確実な利息を受け取れるため、資産を守りながら着実に増やしていきたい守り重視型のニーズにマッチします。銀行預金や日本国債の利回りでは物足りないが、大きなリスクは取りたくないという方に適した選択肢です。
  • 長期分散投資を志向する投資家:10年以上の長期で運用可能な余裕資金をお持ちで、ポートフォリオの安定部分として外貨建て債券を組み入れたい方に向いています。特に、円建て資産に偏りがちなポートフォリオに米ドル建ての安全資産を加えることで、通貨分散と利回り向上を図りたいケースに有効です。円安になれば為替差益も期待できるため、「円資産+外貨資産」のバランスを取りながら長期運用したい方に適しているでしょう。
  • 将来ドル需要のある富裕層:将来的に米ドルを使う予定がある方(例えば海外旅行やお子様の留学資金、海外移住の計画など)にとって、本債券はドル資金を運用しながら備える手段となります。ドルで利息収入を得て、そのままドル資金を将来の支出に充てることもできますし、タイミングを見て円安時に円転して円資金を増やすことも可能です。手元のドルを遊ばせず安全に運用しておきたい富裕層にも適した商品です。
  • 初めて外貨建て債券を検討する投資家:外債デビューとして相応しい商品でもあります。マイクロソフトという世界的優良企業の社債であること、信用力が極めて高いこと、少額(数千ドル)から買えることなど、初めての外債投資でも心理的ハードルが低い要素が揃っています。「外貨建ては少し不安だけれど挑戦してみたい」という方にとって、本債券は良い入り口となるでしょう。

向かない投資家

  • 高いリターンを求める投資家:本債券の利回り水準(クーポン3.7%、現在の最終利回り約5%前後)は、安全性の高さゆえに中程度です。資産を短期間で倍増させたい、株式並みのリターンが欲しい、といったハイリターン志向の投資家には物足りないでしょう。また長期債ゆえインフレ率によっては実質利回りが目減りする可能性もあります。したがって、攻めの資産運用を目指す資金よりは守りの資金向けの商品と言えます。
  • 為替リスクを許容できない投資家:外貨建てゆえの為替変動による元本評価額のブレを受け入れられない方には不向きです。円相場次第で評価額が日々変動するため、円貨で常に額面保証された商品(円建て債券や円預金など)とは異なります。特に「円高に振れると困る」「為替で元本割れしたくない」という場合、本債券への投資は慎重に検討すべきです。為替ヘッジを付ける手もありますが、前述の通りヘッジコストが利回りを相殺しかねません。為替リスクに対する許容度が低い方は、無理に外貨建て資産を持つ必要はないでしょう。
  • 近い将来に資金が必要となる可能性が高い投資家:本債券は満期まで超長期保有する前提でメリットが大きい商品です。途中で現金化(売却)する可能性が高い資金には向きません。債券価格は金利環境に応じて変動するため、購入後に市場金利がさらに上昇すれば債券価格は下落し、途中売却時に元本割れとなるリスクがあります。実際、債券投資の基本は満期まで持ち続けることであり、短期売買を繰り返すと為替や債券のスプレッドコストもかさんで効率的ではありません。本債券は満期までホールドできる余裕資金で運用するのが望ましいでしょう。
  • 今後の金利上昇を強く予想している投資家:「これから先、米金利はさらに上がりそうだ」という見通しを持っている場合、現時点で既発の低クーポン債に投資するメリットは相対的に薄くなります。金利上昇局面では既発債券の価格は下落し、より高利回りの新発債が登場する可能性があります。将来的にもっと有利な債券が買えると考えるなら、無理に今購入せず様子を見るのも一案でしょう。同様に、日本円金利の動向や為替動向によっては他の選択肢(例えば円建て債や為替ヘッジ付債券、あるいは外貨預金など)の方が適切な場合もあります。市場動向に対する自分の考えと照らし合わせ、本債券への投資タイミングが適切かどうかを判断すると良いでしょう。
  • 外貨資産の管理に慣れていない投資家:ドル建て資産の管理には為替の知識や外貨管理の手間が伴います。証券会社のツールで為替レートを確認し円転タイミングを考えたり、為替相場や金利動向を日々チェックしたりと、円建て資産にはないプロセスが発生します。こうした点に煩わしさを感じる方、あるいは仕組みが難しくて不安という方には、本債券は必ずしも向いていません。無理に外貨投資をする必要はありませんので、まずは円建ての安全資産や外貨建てでもヘッジ付きの商品など、よりシンプルでリスクの少ない選択肢から検討することをおすすめします。

マイクロソフト社のその他の債券と財務の安全性

マイクロソフトの主な米ドル建て社債

マイクロソフトは近年、多額の米ドル建て社債を発行して資金調達を行ってきました。特に償還期限が2040年以降に設定された長期債について、発行年ごとの主な社債を比べると以下の通りです。

発行年 利率(クーポン)償還年     発行額/総額             
20095.20%2039約38億ドル
20104.50%2040約48億ドル
20115.30%2041約23億ドル
20123.50%2042約23億ドル
20134.88%2043約52億ドル
20154.75%2055約238億ドル
20163.70%/3.95%2046/2056発行額45億ドル(3.70% 2046年)、
総額約198億ドル
20174.50%2057約171億ドル
20202.68%2060約101億ドル
20213.04%2062約82億ドル

上記のように、長期債でも発行時期の金利環境によってクーポン水準に大きな差があります。たとえば、2011年発行の30年債(2041年償還)はクーポン年5%台でしたが、超低金利期の2020年発行40年債(2060年償還)は年2.68%と大幅に低くなっています。

一方、2021年発行の40年債(2062年償還)は年3%台に戻るなど、利率と満期のバランスは発行年ごとに異なります。

債務の構成と財務の安定性

2024年度末時点で、マイクロソフト社の有利子負債残高(社債等の額面ベース)は約512億ドルに上ります。この大部分は長期のシニア債券で占められており、短期の借入はごく一部です。

実際、直近の短期資金調達はコマーシャルペーパー(CP)約67億ドルのみで、これは1年未満のごく短期の運転資金に留まります。社債の満期構成を見ても、当面の返済期限は少なく、例えば2025年度に期限を迎える社債は約22.5億ドル程度に過ぎません。

一方で残りの約350億ドル超の社債は2030年以降に償還を迎える長期債であり、満期まで十分な猶予があります。このように短期債務が小さく長期債務が中心の構成は、同社の資金繰りに余裕を与えています。

さらに、マイクロソフトは潤沢な手元資金を保有しており、安全性を一段と高めています。2024年6月末時点の現金・現金同等物および短期投資の合計は約755億ドルにも達しており、これは有利子負債全体を上回る規模です。

豊富な手元資金に支えられてネットキャッシュ(実質無借金)の状態にあるため、利払いより受取利息の方が多い「純利息収入」の計上も可能となっています。

こうした財務の盤石さを背景に、主要格付機関からの評価も極めて高く、スタンダード&プアーズ(S&P)ではAAA、ムーディーズではAaaという最上位の信用格付が付与されています。

S&PのAAA格付けは現在米国企業ではマイクロソフトとジョンソン・エンド・ジョンソンの2社のみであり、その理由について市場関係者は「潤沢なネットキャッシュと安定した収益基盤により、債務不履行リスクが極めて低いこと」を指摘しています。

総じて、マイクロソフト社の債券は同社の巨額の手元資金と信用力によって非常に安全性が高いものとなっています。

この記事のまとめ

マイクロソフト社ドル建て債券は、最高格付けの信用力と長期固定利回りを兼ね備えた安定的な投資商品です。円安局面では為替差益も狙えますが、円高時の損失や繰上償還リスク、為替ヘッジコストなど注意すべき点もあります。したがって、資産の一部を安定的に運用しつつ通貨分散を図りたい投資家に適しています。長期の資産形成を目指す方は、自身のリスク許容度と資金計画を踏まえ、検討してみてはいかがでしょうか。

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投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。

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クーポン

クーポンとは、債券を保有している投資家が発行体(国や企業)から定期的に受け取る利息のことです。クーポンの金額は、債券発行時に設定された利率(クーポン利率)に基づき計算されます。通常、半年ごとまたは1年ごとに支払われることが多いです。クーポン収入は安定したキャッシュフローをもたらし、特に長期保有する債券投資家にとって重要な収益源となります。

償還期限

償還期限とは、債券などの金融商品において、発行体が投資家に元本を返済する日、つまり「お金を返すと約束した期日」のことを指します。債券を購入すると、通常は定期的に利息を受け取りながら、この償還期限が来るまで保有することになります。そして、償還期限になると、元本(投資した金額)が投資家に返されます。 償還期限が短いものはリスクが低くなりやすく、長いものは利回りが高くなる傾向がありますが、その分金利の変動などの影響を受けやすくなります。投資を行う際は、自分の資金の使い道や目的に合った償還期限を選ぶことが大切です。

超長期債

超長期債とは、償還期限が特に長い期間に設定されている債券のことを指します。一般的には、償還期間が20年以上のものが「超長期」と分類されます。たとえば、日本国債であれば20年債や30年債、40年債などが該当します。期間が長い分、将来の金利変動やインフレの影響を強く受ける可能性があるため、価格の変動リスクも大きくなります。 一方で、長期間にわたって安定した利子収入を得られる点や、年金基金や保険会社など長期投資を行う機関投資家にとっては魅力的な投資対象となります。個人投資家にとっても、長期的な資産形成の一環として選ばれることがありますが、金利動向に対する理解が必要です。

格付け(信用格付け)

格付け(信用格付け)とは、取引をする際に参考にされる基準の一つで、取引の相手側の信用度を確認するために支払い能力や財務状況、安全性などを総合的にランク付けしたものである。アルファベットや数字で表されるのが一般的である。 (例)格付投資情報センター(https://www.r-i.co.jp/index.html) による発行体格付の定義 AAA:信用力は最も高く、多くの優れた要素がある。 AA:信用力は極めて高く、優れた要素がある。 A:信用力は高く、部分的に優れた要素がある。 BBB:信用力は十分であるが、将来環境が大きく変化する場合、注意すべき要素がある。 BB:信用力は当面問題ないが、将来環境が変化する場合、十分注意すべき要素がある。 B:信用力に問題があり、絶えず注意すべき要素がある。 CCC:発行体の金融債務が不履行に陥る懸念が強い。 CC:発行体の金融債務が不履行に陥っているか、その懸念が極めて強い。 C:発行体のすべての金融債務が不履行に陥っているとR&Iが判断する格付。

最終利回り

最終利回りとは、債券を現在の市場価格で購入し、満期まで保有した場合に得られる年間平均の利回りを示す指標です。この利回りには、定期的に受け取る利息だけでなく、購入価格と満期時に返ってくる額面金額との差も含まれています。 たとえば、額面が10万円の債券を9万5千円で購入して満期に10万円が返ってくる場合、その差額も収益として利回り計算に組み込まれます。表面利率だけではわからない、実際の投資収益を正しく把握できるため、債券投資を検討する際の比較基準としてとても重要です。資産運用では、利回りをきちんと把握して投資対象の選定を行うことで、リスクとリターンのバランスを整えることができます。

為替リスク

為替リスクとは、異なる通貨間での為替レートの変動により、外貨建て資産の価値が変動し、損失が生じる可能性のあるリスクを指します。 たとえば、日本円で生活している投資家が米ドル建ての株式や債券に投資した場合、最終的なリターンは円とドルの為替レートに大きく左右されます。仮に投資先の価格が変わらなくても、円高が進むと、日本円に換算した際の資産価値が目減りしてしまうことがあります。反対に、円安が進めば、為替差益によって収益が増える場合もあります。 為替リスクは、外国株式、外貨建て債券、海外不動産、グローバルファンドなど、外貨に関わるすべての資産に存在する基本的なリスクです。 対策としては、為替ヘッジ付きの商品を選ぶ、複数の通貨や地域に分散して投資する、長期的な視点で資産を保有するなどの方法があります。海外資産に投資する際は、リターンだけでなく、為替リスクの存在も十分に理解しておくことが大切です。

為替ヘッジ

為替ヘッジとは、為替取引をする際に、将来交換する為替レートをあらかじめ予約しておくことによって、為替変動のリスクを抑える仕組み。海外の株や債券に投資する際は、その株や債券の価値が下がるリスクだけでなく、為替の変動により円に換算した時の価値が下がるリスクも負うことになるので、後者のリスクを抑えるために為替ヘッジが行われる。

コールオプション

コールオプションとは、「ある資産を、将来のあらかじめ決められた価格(行使価格)で購入することができる権利」のことを指します。これは金融派生商品(デリバティブ)の一種で、主に株式や指数などを対象に取引されます。 この権利は「オプション(選択権)」であり、権利を買った側(買い手)は、将来のある時点でその権利を行使するかどうかを自由に決めることができます。一方で、売り手は買い手が行使を望んだ場合、必ず応じなければなりません。なお、権利を買うためには「プレミアム」と呼ばれるオプション料を支払う必要があります。 たとえば、ある株式が現在100円で取引されているとします。このとき、1か月後にその株を100円で買えるコールオプションを10円のプレミアムで購入したとしましょう。1か月後、もしその株価が150円に上がっていれば、コールオプションを行使することで100円で買い、すぐに市場で150円で売ることで、差額の50円が利益となります。ここからプレミアムの10円を差し引けば、最終的な利益は40円となります。 一方で、もし1か月後に株価が90円に下がっていた場合、その株をわざわざ100円で買う意味はないため、コールオプションは行使されず、買い手は10円のプレミアムを失うだけで済みます。このように、コールオプションの最大損失はプレミアムに限定される一方で、株価が大きく上昇すれば利益は大きくなり得るため、リスク限定・リターン無限大の投資手法とされます。 資産運用の観点から見ると、コールオプションは次のような活用法があります。 まず、「値上がりが見込まれる銘柄に対し、小額で投資したい」場合に有効です。実際に株を購入せず、オプションの形でその値上がり分を狙うことができます。また、すでに株を保有している場合、その株に対してコールオプションを売ることで、追加の収益を得る「カバードコール戦略」などもあります。 ただし、オプションは満期(期限)がある商品であり、時間の経過とともに価値が減少する「タイムディケイ」という特性も持っています。また、価格は原資産の価格だけでなく、市場の変動性(ボラティリティ)、金利、残存期間など様々な要因によって決まるため、仕組みを理解せずに取引を行うと、思わぬ損失を被る可能性もあります。 したがって、コールオプションを活用する際は、まずはその基本的な仕組みやリスク特性をしっかりと理解したうえで、少額から始める、シミュレーションで練習するなど、段階的なアプローチが重要です。 コールオプションは、資産運用の幅を広げる有効な手段の一つです。株式や投資信託などの伝統的な商品に加え、このようなオプション取引を適切に活用することで、より柔軟で戦略的なポートフォリオ構築が可能になります。

メイクホール条項

メイクホール条項とは、債券の発行体が満期前に債券を繰上償還(予定より早く返済)する場合に、債券保有者が将来受け取るはずだった利息分を補償するための取り決めです。この条項があることで、発行体は金利が下がったときなどに債券を早期に返済できますが、保有者にとっては本来得られたはずの収益を失わないよう補填されるしくみになっています。補償金額の計算には、将来の利息を現在価値に割り引くなどの手法が使われます。資産運用の観点では、この条項があるかどうかで債券のリスクやリターンが大きく変わる可能性があるため、投資判断の際には重要なチェックポイントとなります。

再投資リスク

再投資リスクとは、債券や定期預金などの満期時に、元本や利息を再投資しようとした際に、当初よりも低い金利環境でしか運用できないリスクを指す。特に低金利時代には、満期を迎えた資産を同等の収益率で再投資することが難しくなり、将来の収益が減少する可能性がある。長期投資ではこのリスクを考慮し、分散投資や運用期間の調整が重要となる。

利子所得

利子所得とは、銀行預金や債券などから得られる利息収入を指す所得区分の一つです。たとえば、定期預金の利息、国債や社債の利払い、公社債投資信託の収益分配金などが該当します。 日本では、国内で得た利子所得には原則として20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の税金がかかり、金融機関があらかじめ差し引く「源泉分離課税」の方式が採られています。このため、通常は確定申告の必要がなく、利息は「手取り」で口座に入金されます。 一方、海外の銀行預金や外国債券の利息などは、国内で源泉徴収されない場合が多く、原則として「申告分離課税」により確定申告が必要となります。また、外国で課税された場合には、外国税額控除などを通じて二重課税の調整が可能です。 非課税制度としては、以下のような選択肢があります。 NISA(少額投資非課税制度):NISA口座内で保有する対象債券や債券ETF、公社債投資信託から得られる利子や分配金は非課税となります(ただし対象商品は限定されます)。 マル優(少額貯蓄非課税制度):障害者や高齢者等に限定されますが、預貯金の利子を元本350万円まで非課税にできる制度もあります。 なお、利子所得は元本の価格変動リスクが小さく、定期的なキャッシュフローを生む点で安定収入源となりますが、一方で損益通算や損失繰越ができない、インフレに弱いといったデメリットもあります。 利子所得はシンプルな金融収益でありながら、課税方式や制度の選択によって手取り額に大きな差が出る場合もあるため、正確な知識を持つことが資産運用において重要です。

キャピタルゲイン(売却益/譲渡所得)

キャピタルゲインとは、株式や不動産、投資信託などの資産を購入した価格よりも高く売却したことによって得られる利益のことです。一般的な経済用語としては「売却益」と呼ばれ、資産運用における収益のひとつとして広く使われています。日本の税法においては、このキャピタルゲインは「譲渡所得」として分類され、確定申告などで所得として扱われます。つまり、経済的な意味ではキャピタルゲインと譲渡所得は同様の概念を指しますが、前者が広義の利益、後者が課税対象としての所得という違いがあります。投資の成果を判断したり、税金を計算したりするうえで、両者の使われ方を正しく理解することが大切です。

特定口座

特定口座とは、投資家の税金計算を簡便にするための口座形式です。証券会社が運用益や損益を自動計算し、年間取引報告書を発行します。特定口座には「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の2種類があり、「源泉徴収あり」を選択すれば、税金が取引時点で自動的に納付されます。これにより、確定申告が不要になるため、多くの投資家に利用されています。ただし、損益通算や損失の繰越控除を行う場合は確定申告が必要です。

為替スプレッド

為替スプレッドとは、外貨を売るときと買うときに適用される為替レートの差額のことをいいます。たとえば、ある通貨を買うときのレート(TTS)と売るときのレート(TTB)には差があり、この差がスプレッドです。銀行や証券会社などの金融機関は、このスプレッドの中に利益やコストを含めています。 投資家にとっては、スプレッドが広いほど取引コストが高くなるため、外貨預金や外国為替取引(FX)などを行う際には注意が必要です。特に頻繁に取引をする場合や、短期での為替差益を狙う取引では、このスプレッドが実質的な負担となることがあります。為替スプレッドは見えにくいコストのひとつですが、運用の成果に影響するため、取引前にレートの内訳を確認することが大切です。

流動性

流動性とは、資産を「現金に変えやすいかどうか」を表す指標です。流動性が高い資産は、短時間で簡単に売買でき、現金化しやすいという特徴があります。例えば、上場株式や国債は市場で取引量が多く、いつでも売買できるため、流動性が高い資産とされています。 一方、不動産や未上場株式のように、売買相手を見つけるのが難しかったり、取引に時間がかかったりする資産は、流動性が低いといえます。 投資をする際には、自分が必要なときに資金を取り出せるかを考えることが重要です。特に初心者は、流動性が高い資産を選ぶことで、急な資金需要にも対応しやすく、リスクを抑えることができます。

ネットキャッシュ

ネットキャッシュとは、企業が保有する現金や預金、短期保有目的の有価証券の合計額から、有利子負債を差し引いた実質的な手元資金のことを指します。これは企業がどれだけ余裕資金を持っているかを示す指標であり、いわば企業の「金持ち」度合いを表します。ネットキャッシュの金額が多い企業ほど、借金に頼らずに事業を運営できるため、財務の安全性が高いと評価されます。資産運用の際には、特に不況時にも耐えられる企業かどうかを見極めるために、この指標が重視されます。

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