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ジョンソン・エンド・ジョンソン社ドル建て債券(年利1.3-、2030年償還)の魅力とリスクを徹底解説

ジョンソン・エンド・ジョンソン社ドル建て債券(年利1.3%、2030年償還)の魅力とリスクを徹底解説

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公開:

2025.07.18

更新:

2025.07.18

外貨建て債券への関心が高まる中で、安定性と信用力の両立を重視する投資家に注目されているのが、ジョンソン・エンド・ジョンソン社のドル建て社債です。AAA格付けを有する優良企業の発行債という点で信頼性は極めて高い一方、為替変動やコール条項といった注意点もあります。本記事では、債券の基本条件からメリット・リスク、どのような投資家に適しているかまでを丁寧に整理し、初めての外貨債券選びに役立つ判断軸を提供します。

サクッとわかる!簡単要約

ジョンソン・エンド・ジョンソン社のドル建て債券(年利1.3%、2030年償還)は、AAA格付けの高い信用力と年2回の安定利払いが魅力の中期債です。満期までの残存期間は約5年で、インカム重視の中長期運用に適しています。発行体の信用力や通貨分散の観点では魅力的な一方、為替リスクやコール条項の存在には注意が必要です。記事では、債券の基本条件、信用評価、向き・不向きの投資家像まで網羅的に解説しています。

目次

ジョンソン・エンド・ジョンソン社ドル建て債券の基本スペック

債券の発行条件(年利・償還日・通貨など)

基本スペックまとめ

発行体の概要と信用力

この債券のメリット──利回り・信用力・換金性など

高格付けによる信用リスクの低減

中期のインカム運用に適した設計

市場での流動性と購入しやすさ

注意すべきリスクと制度上の留意点

コール条項による早期償還リスク

為替リスクと円換算収益の変動

税制・手数料・取引制度の留意点

どんな投資家に向いているか?──投資判断の視点

向いている投資家

向かない投資家

ジョンソン・エンド・ジョンソン社ドル建て債券の基本スペック

ジョンソン・エンド・ジョンソン社(Johnson&Johnson)が発行する本社債は、年利1.3%、2030年9月1日償還の米ドル建て債券です。通貨は米ドルで、利息は固定金利・年2回のペースで支払われる設計になっています。満期までの残存期間は約5年(2025年7月時点)で、中期債に分類されます。信用格付けはS&PでAAA、Moody’sでAaaと最上位に位置づけられており、信用リスクの低い安定的な運用先として注目されています。

債券の仕組みや運用の基本は、以下の記事でも詳しく解説しています。

債券の発行条件(年利・償還日・通貨など)

この債券は、2020年8月25日に発行されたシニア無担保社債で、額面金利は年1.3%(税引前)です。利払いは毎年3月1日と9月1日の年2回で、初回の利払い日は2021年3月1日でした。利息・償還金の支払いはすべて米ドル建てで行われます。

発行総額は17億5,000万米ドルと大規模で、額面単位は1,000米ドル。日本の個人投資家向けには最低2,000ドル(1,000ドル×2)から購入可能です。複数の国際証券取引所(ニューヨーク、フランクフルト、ミュンヘン、Gettex、TRADEGATEなど)に上場しており、流通市場での売買も可能です。

また、本債券には任意償還条項(コールオプション)が設定されています。発行体であるジョンソン・エンド・ジョンソン社は、2030年6月1日より前に本債券を償還する場合、「額面100%」または「米国債利回り+0.10%(10bp)」の現在価値のいずれか高い方の価格で繰上償還が可能です。これは「メイクホール(Make Whole)条項」に近い設計であり、投資家にとって一定の保護がなされていると言えます。2030年6月1日以降の償還価格は額面100%に固定されます。一部のみ償還が行われる場合には、DTC(Depository Trust Company)の規則に基づいて償還対象が決定されます。

基本スペックまとめ

  • 発行体(Issuer):Johnson&Johnson(ジョンソン・エンド・ジョンソン)
  • 通貨建て:米ドル建て
  • 額面金利(クーポン):年1.3%(利払い年2回)
  • 発行日:2020年8月25日
  • 償還期限:2030年9月1日
  • 発行総額:17億5,000万米ドル
  • 額面単位:1,000米ドル(日本では最低2,000米ドル)
  • 格付:S&P:AAA/Moody’s:Aaa(いずれも最上位格付)
  • 利払い:年2回(毎年3月1日・9月1日)
  • 償還条項:任意償還条項(2030年6月1日より前は米国債+0.10%か額面100%の高い方)
  • 上場市場:ニューヨーク、フランクフルト、ミュンヘン、TRADEGATEほか

このように、ジョンソン・エンド・ジョンソン社の債券は、高い信用力と安定した設計、そして比較的短い残存期間が特徴です。次章では、こうした特徴がどのようなメリットを投資家にもたらすのかを詳しく見ていきます。

債権のクーポンについては以下Q&Aもご参照ください。

発行体の概要と信用力

ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は1886年創業の世界最大級のヘルスケア企業です。医薬品から医療機器、日用消費財(スキンケア用品や鎮痛剤など)に至るまで幅広い事業をグローバルに展開し、各分野で安定した収益基盤を築いています。こうした盤石な事業背景から、J&Jの信用力は極めて高く評価されています。世界的な格付機関であるS&P(標準&プアーズ)からは最上位の「AAA」格付けを取得しており、2023年時点で米国企業では同社とマイクロソフト社の2社しか達成していない最高評価です。このようなAAA格付けが示す通り、J&Jの財務の健全性は際立っており、債務不履行(デフォルト)リスクは極めて低い水準にあります。事実上、国債に匹敵する信用度を誇る企業と言えるでしょう。

格付けの確認方法については以下Q&Aで解説しています。

なお、S&P以外にもムーディーズやフィッチなど主要格付機関から軒並み最上級の評価を得ており、J&Jは“世界でも指折りの高信用度企業”として知られています。そのため、同社が発行する本債券も信用リスクが非常に小さい点が大きな特徴です。発行体の信頼性という観点で、個人投資家が安心して保有できる社債と言えるでしょう。

この債券のメリット──利回り・信用力・換金性など

ジョンソン・エンド・ジョンソン社ドル建て債券には、いくつか注目すべきメリットがあります。高格付けゆえの安全性、中期債ならではの利回り設計、市場での流動性と購入のしやすさ等、順に見ていきましょう。

高格付けによる信用リスクの低減

本債券最大のメリットは、何と言っても発行体の信用力が非常に高いことです。前述の通りJ&JはS&PからAAA(トリプルエー)格付けを付与されており、これは企業債としては最高ランクの信用度を意味します。格付けが示す通り、債券の元本や利息の支払いが滞る可能性はほとんどなく、安心して長期運用できる土台となります。信用リスク(発行体の財務破綻リスク)が極めて低い分、債券投資で最も重要な「元利金を確実に受け取れるか」という点で大きな安心感があります。

とりわけ、初めて外貨建て債券を購入する方にとって、発行体の信頼性は重要な判断材料でしょう。「海外企業の債券に投資して本当に大丈夫だろうか?」という不安も、AAA格付け企業であれば大きく和らぎます。実際、AAA格付けの社債がデフォルトに陥るケースは歴史的にも極めて稀です。ほぼ国債に匹敵する安全性を享受しながら、企業債ならではの利回りを獲得できる点は、本債券の大きな魅力と言えます。

中期のインカム運用に適した設計

本債券は2030年償還の中期債であり、運用期間が約7年程度と適度に長い点も特徴です。中期であることで、短期債より高い金利収入が得られる一方、超長期債のように将来の金利変動リスクが過度に大きくなることも避けられます。実際、発行時のクーポン1.3%は近年の市場環境では低めですが、足元の市場利回り(最終利回り)は4〜5%前後まで上昇しています(市場価格が額面を下回って推移しているため)。例えば2025年時点でJ&J社債の10年物利回りは約5.08%となっており、同時期の米国10年国債利回り(約4.54%)を上回る水準でした。このように中期の期間設定によって一定の利回り水準が確保されており、インカムゲイン(利息収入)を着実に得る運用に適した債券と言えます。

定期的な利払い(年2回)があるため、保有期間中は半年ごとに確実なドル建て利息を受け取れます。安定したインカム収入を積み上げられる点は、長期でじっくり資産形成をしたい投資家にとって大きなメリットでしょう。また満期まで保有すれば額面金額で償還されますので、途中で売却しない限り元本価格の変動を気にせず運用できるのも安心材料です。債券は基本的に発行時に定められた金額で償還される商品であり、満期まで持ち続ければ元本が全額戻ってきます。このため、市場金利の変動による評価損益は一時的なものに留まり、満期までホールドする前提であれば元本割れの心配は低いです。中期7年程度の運用期間は、例えば「5〜10年後に使う予定の資金を安全に運用しつつ増やしたい」といったニーズにもマッチすると言えるでしょう。将来の大きな支出予定(お子様の教育資金やセミリタイア資金など)がある方にとって、その間の資金運用手段として適した設計です。

市場での流動性と購入しやすさ

本債券は市場での流動性が高く、個人投資家にとって購入・売却のしやすい商品でもあります。発行額が約17.5億ドルに及ぶ大型債券であり、世界中の機関投資家・個人投資家に広く保有されているため、市場で盛んに売買されています。実際、ある海外プラットフォームによればJ&J社債の流動性スコアは5点満点中5と評価されており、非常に活発な取引が行われていることが示されています。流動性が高いということは、いざ現金化したい時に買い手を見つけやすいことを意味します。売却ニーズが生じた場合でも、市場価格でスムーズに処分できる可能性が高いのは投資家にとって安心材料です。

また、購入のしやすさという点でも優れています。最低購入単位は2,000ドル程度(日本円にして数十万円台)と比較的小口から投資できるため、超富裕層でなくとも手が届きます。実際、国内の主要証券会社でも既発外国債券として本債券が取り扱われているケースが多く、個人でも通常の証券口座から円貨で購入可能です。円貨で買付けを指示すれば、その時点の為替レートで自動的にドル転され債券が配分される仕組みで、煩雑な手続きは必要ありません。一般に外国債券の購入には株式取引のような明示的な売買手数料はかからず、提示された価格で買う形になります。そのため余計なコスト意識なく、提示価格(利回り)を見て納得すればすぐに発注できる手軽さがあります。

さらに、本債券の利払いや償還時の資金受取も自動で行われるため、管理が容易です。証券会社を通じて支払われる利息・償還金は、円貨で受け取るか外貨のまま受け取るかを選択できます。例えばドルのまま受け取って外貨預金や外貨MMFで運用を続けることも可能ですし、円貨で受け取って円預金に回すことも可能です。いずれにせよ、自分で海外送金等の手続きをする必要はなく、国内の証券会社経由で完結します。資金の出し入れや管理のしやすさという点でも、初めて外債を扱う方にとってハードルの低い商品と言えるでしょう。

注意すべきリスクと制度上の留意点

いくら信用力の高い債券とはいえ、投資である以上リスクや注意点も存在します。ジョンソン・エンド・ジョンソン社ドル建て債券に投資する前に、以下のようなポイントをしっかり理解しておきましょう。

コール条項による早期償還リスク

本債券には、発行体の判断で満期前に債券を償還できるコール条項(繰上げ償還条項)が設定されています。具体的には、2030年6月(満期の約3ヶ月前)に額面100%で債券を早期償還できる条件となっており、ジョンソン・エンド・ジョンソン社はその時点で投資家に元本を返済して債券を買い戻すことが可能です。

このような繰上げ償還が行使されるのは一般的に発行体に有利な状況です。例えば、市場金利が大きく低下した局面では、企業は高い利率の債券を早めに返済してより低利率で借り換える(再発行する)インセンティブがあります。そのため、投資家にとっては本来受け取れるはずだった将来の利息収入が途中で打ち切られてしまうリスクとなります。

繰上げ償還による再投資リスクにも注意が必要です。予定より早く元本が返ってきた場合、行き場を失った資金を改めて運用し直さねばなりません。その時の金利水準によっては、同程度の利回り商品が見つからず、結果的に運用効率が低下してしまう可能性があります。特にクーポン利率の高い債券では、繰上げ償還により投資家が享受できるはずだった有利な運用機会が失われる形になるため注意が必要です。

幸い本債券のコール条項は満期直前の一度きりであり、何年も早期終了してしまう懸念は小さいと言えます。それでも、投資前にこうした繰上げ償還の可能性は認識しておくべきでしょう。万一発行体がコールオプションを行使した場合、当初予定より数ヶ月早く償還金が手元に戻ります。その際は新たな投資先を検討する必要が生じます。繰上げ償還リスクは頻繁に起こるものではありませんが、「予定通り満期まで利息を受け取れない場合もあり得る」という点は頭に入れておきましょう。

為替リスクと円換算収益の変動

本債券は米ドル建てで発行されているため、日本の投資家が最終的に受け取る円換算の収益は為替相場の影響を大きく受けます。利息も償還金も米ドルで支払われるため、それを円に換算した受取額は支払い時点のドル円レート次第で増減します。

円安になれば円での受取額が増え、逆に円高になると受取額は減少する仕組みです。例えば、投資時に1ドル=100円だったものが償還時に円高方向に振れて1ドル=90円になっていた場合、ドル建てでは1万ドル(額面)の元本が戻ってきても、円換算では90万円となり当初の投資額100万円を下回ってしまいます。利息収入についても同様で、円高局面ではドルで受け取ったクーポンを円に換金すると金額がめべりします。逆に償還時に円安が進行していれば、円換算の受取額は増加し為替差益を得ることができます。つまり、この債券の円ベースの最終的な利回りは為替次第で大きく変動し、場合によっては元本割れとなるリスクもある点に注意が必要です。

為替リスクについては以下のQ&Aもご参照ください。

もっとも、利息収入分だけ余裕が生まれるため、一定水準までの円高であればトータルの円換算収益がマイナスにならずに済む可能性があります。ただし、本債券のクーポンは1.3%とそれほど高くないため、利息による円高耐性も限定的です。急激な円高が進めば、利息収入をもってしても円貨ベースで損失が出てしまう恐れがある点は認識しておきましょう。

為替リスクへの対応策としては、為替ヘッジや受取通貨の工夫が考えられます。為替ヘッジとは先物取引などであらかじめ円ドルレートを固定してしまう方法ですが、個人が債券利回り程度の規模でヘッジを行うとコストがメリットを上回りがちです。そこで、現実的には受け取った外貨をすぐ円転せずに運用を続けるという対処が有効です。為替リスクは外貨を円に転換する時に確定します。したがって、円高が進んで為替差損が出そうな局面では、利子や償還金を無理に円に換えず外貨のまま保有し、円安方向へ相場が戻るのを待つこともできます。実際、証券会社では利息・償還金の受取通貨を「外貨(ドル)のまま」に設定することが可能であり、受け取ったドル資金を自動で外貨建てMMFに再投資して運用しつつ待機させ、後で有利なタイミングで円転するといったこともできます。例えば「円相場が落ち着くまでドル資金を米ドルMMFで運用し、円安方向に戻ってから円転する」という具合に、為替変動のタイミングをある程度コントロールできるわけです。

もっとも、外貨のまま保有すれば為替変動リスク自体は残り続けますので、最終的にいつ円転するかの判断は避けられません。円高が長引くと見込む場合は早めに円に換えてリスク要因を断ち切る、といった決断も時には必要です。結局のところ、為替リスクと上手に付き合うには「急な円高でも慌てず、じっくり待てるか」というスタンスが求められます。この点、自分の資金性格(使う時期や目的)やリスク許容度を踏まえて、為替リスクを許容できる範囲かどうかを慎重に判断しましょう。

税制・手数料・取引制度の留意点

税制面

日本の個人投資家が本債券から得た利息や売買益には、国内の公社債等に関する税制ルールが適用されます。利息収入は「利子所得」として20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)の源泉徴収が行われ、原則として確定申告不要で課税関係が完結します。

また、本債券を途中売却して為替差益が出た場合や額面以上で償還された場合(割引債を額面償還した場合など)の利益は「譲渡所得」として20.315%の申告分離課税となります。2016年の税制改正以降、債券の譲渡損益は株式等との損益通算が可能になっており、例えば本債券の為替差損が出た場合に他の株式譲渡益と相殺するといった節税もできます。

確定申告を行えば損失の3年間繰越控除も可能です。なお、外国で源泉徴収される税金について補足すると、米国の民間企業債券の利子は外国人投資家には非課税(いわゆるポートフォリオ利子の免税措置)となっているため、基本的に米国側で税引きされることはありません。国内金融機関を通じて支払われる利息は上記の20.315%のみが課税され、証券会社が源泉徴収を行ってくれます。いずれにせよ、税制上は国内公社債とほぼ同様の扱いとなりますので、特段難しい手続きは発生しません。

手数料・コスト面

本債券の取引に際しては、為替手数料(為替スプレッド)と債券スプレッドに留意が必要です。まず為替面では、円貨で外債を購入・売却する場合に適用される為替レートには、金融機関所定のスプレッド(売値と買値の差)が含まれています。

ドルを買う時と売る時でレートが異なり、その差額が実質的なコストとなります。たとえば米ドルの場合、一般的に基準レート(仲値)に対し±0.20〜0.50円程度のスプレッドが乗せられるのが普通です。仮に1ドル=150円のとき±0.25円のスプレッドであれば、投資家は1ドル=150.25円でドルを買い、売却時には149.75円でドルを売る計算となります。往復で0.5円(約0.33%)ほど為替変動がなくても損をする仕組みです。このように、為替相場がまったく動かなくても売買だけで一定のコストが発生する点は理解しておきましょう。

一方、債券そのものの売買手数料については、株式取引のような明示的な手数料は通常発生しません。その代わり、店頭取引で提示される債券の買値と売値には差(スプレッド)が設けられているのが一般的です。つまり、投資家が購入するときの価格は、同じ時点で売却するときの価格よりも高めに設定されます。

この購入価格と売却価格の開きが実質的に証券会社の取り分(手数料相当)となっており、投資家にとっては隠れたコストになります。したがって、頻繁に売買を繰り返すとその都度スプレッドコストが差し引かれる形となり、効率的ではありません。基本的には一度買ったら満期まで保有するくらいのスタンスで構える方が望ましいでしょう。

取引制度面

外国債券の取引を行うには、それに対応した証券口座が必要です。ただし多くの場合、通常の証券総合口座内で外貨建て債券の売買は完結します(ネット証券では初回取引前に外債取引の利用申請が必要なケースがあります)。利息・償還金の受取方法については前述のように円貨受取と外貨受取を選択可能で、初期設定は証券会社によって異なります。

例えば三菱UFJモルガン・スタンレー証券では特段の申し出がない限り円貨で受け取る設定ですが、SBI証券や楽天証券など多くのネット証券では外貨のまま受け取る設定も容易に行えます。ご自身の利用する金融機関のルールを確認し、希望に沿った受取方法に設定しておくと良いでしょう。

なお、本債券は「特定公社債」に分類されるため特定口座での管理も可能です。特定口座で保有すれば利息や売却益に対する税金計算・徴収は証券会社が代行してくれますので、確定申告の手間を省くことができます(損益通算や繰越控除をしない場合)。こうした制度面のメリットも活用しつつ、適切に管理・運用すると良いでしょう。

どんな投資家に向いているか?──投資判断の視点

ジョンソン・エンド・ジョンソン社のドル建て債券(年利1.3%、2030年償還)は、外貨建てで安定的な運用先を求める中長期志向の個人投資家にとって、堅実な選択肢のひとつです。とくに高い信用力を重視する投資家に適しており、ポートフォリオの守りの部分を担う資産として検討する価値があります。ただし、為替変動やコール条項による途中償還のリスクも存在するため、投資判断にあたっては自身の運用目的やリスク許容度との適合を見極めることが重要です。ここでは、本債券がどのようなタイプの投資家に向いているか、また不向きと考えられるケースについて整理して解説します。

向いている投資家

  • 安定した利息収入を重視する投資家:低リスクで定期的なインカムゲインを得たい方に向いています。AAA社債という信頼性のもと、半年ごとに確実な利息を受け取れるため、資産を守りながら増やしていきたい守り重視型の投資ニーズにマッチします。預金や日本国債では物足りないが、大きなリスクは取りたくないという方に適した選択肢です。
  • 長期分散投資を志向する投資家:5〜10年程度の中期〜長期で運用可能な資金をお持ちで、ポートフォリオの安定部分として外債を組み入れたい方に適しています。特に、円建て資産に偏っているポートフォリオに米ドル建ての安全資産を加えることで、通貨分散と利回り向上を図りたいケースに有効です。円安になれば為替差益も期待できるため、「円資産+外貨資産」のバランスをとりながら長期運用したい方に向いているでしょう。
  • 将来ドル需要のある富裕層:将来的に米ドルを使う予定がある方(例えば海外旅行やお子様の留学、海外移住など)にとって、本債券はドル資金を運用しながら備える手段となります。ドルで利息収入を得て、そのままドル資金を将来用途に充てることもできますし、円安時に円転して円資金を増やすこともできます。手元のドルを遊ばせず安全に運用しておきたい富裕層にも適した商品です。
  • 初めて外貨建て債券を検討する投資家:外債デビューとして相応しい商品でもあります。J&Jという世界的優良企業の社債であること、高い信用力が担保されていること、少額から買えることなど、初めての外債投資でも心理的ハードルが低い要素が揃っています。「外貨建ては少し不安だが挑戦してみたい」という方にとって、本債券は入り口として検討しやすいと言えるでしょう。

向かない投資家

  • 高いリターンを求める投資家:本債券の利回り水準(クーポン1.3%、現在の最終利回り約4〜5%程度)は、安全性の高さゆえに控えめです。資産を短期間で倍増させたい、株式並みのリターンが欲しい、といったハイリターン志向の投資家には物足りないでしょう。インフレ率次第では実質利回りが目減りする可能性もあります。したがって、攻めの資産運用を目指す資金よりは守りの資金向けの商品と言えます。
  • 為替リスクを許容できない投資家:外貨建てゆえの為替変動による元本評価額のブレを受け入れられない方には不向きです。円相場次第で評価額が日々変動するため、円貨で常に額面が保証された商品(円建て債券や円預金など)と異なります。特に「円高に振れると困る」「為替で元本割れしたくない」という場合、本債券への投資は慎重に検討すべきです。為替ヘッジを付ける手もありますが、前述の通りコストが利回りを相殺しかねません。為替リスクに対する許容度が低い方は無理に外貨建て資産を持つ必要はないでしょう。
  • 近い将来に資金が必要となる可能性が高い投資家:本債券は満期まで数年保有する前提でメリットが大きい商品です。途中で現金化(売却)する可能性が高い資金には向きません。債券価格は金利環境に応じて変動するため、購入後に市場金利が上昇すれば債券価格は下落し、途中売却時に元本割れとなるリスクがあります。実際、債券は満期まで持つのが基本で、途中売却すると市場価格によっては損失が生じ得ます。短期売買を繰り返すと為替や債券のスプレッドコストもその都度発生するため効率的ではありません。本債券は満期までホールドできる余裕資金で運用するのが望ましいでしょう。
  • 今後の金利上昇を強く予想している投資家:もし「これから先、米金利はさらに上がりそうだ」という見通しを持っている場合、現時点で低クーポンの既発債に投資するメリットは相対的に薄くなります。金利上昇局面では本債券の価格は下落し、より高利回りの新発債券が登場する可能性があります。将来的にもっと有利な債券が買えると考えるなら、無理に今購入せず様子を見る判断も一案でしょう。同様に、日本円金利の動向や為替動向によっては他の選択肢(例えば円建て債やヘッジ付債券、あるいは外貨預金など)の方が適切な場合もあります。市場動向に対する自分の考えと照らし合わせ、本債券への投資タイミングが適切かどうかを検討すると良いでしょう。
  • 外貨資産の管理に慣れていない投資家:ドル建て資産の管理には為替の知識や外貨管理の手間が伴います。証券会社のツールで円転タイミングを判断したり、為替レートを日々チェックしたりと、円建て資産にはないプロセスが発生します。こうした点に煩わしさを感じる方、あるいは仕組みが難しくて不安という方には、本債券は必ずしも向いていません。無理に外貨投資をする必要はありませんので、まずは円建ての安全資産や外貨建てでもヘッジ付きの商品など、よりシンプルな選択肢から検討すると良いでしょう。

まとめると、ジョンソン・エンド・ジョンソン社ドル建て債券はローリスク・ローリターン型の安定運用商品です。ゆえに、高リスク高リターンを狙う資金や短期勝負の資金にはミスマッチであり、為替リスク許容度や運用期間に制約がある場合も適合しません。一方で、安全性と収益のバランスを重視する長期資金には有力な選択肢となり得ます。自分の投資目的・方針に照らし合わせて、適否を判断することが大切です。

この記事のまとめ

ジョンソン・エンド・ジョンソン社のドル建て社債は、安定性と通貨分散を重視する長期運用層にとって有力な選択肢です。AAA格付けの信頼性と中期の利払い設計により、資産の守りのパートとして活用しやすい一方で、為替変動や早期償還リスクといった注意点も理解しておく必要があります。外貨債券を初めて検討する方も、この記事を通じてリスクと魅力のバランスを整理し、自身に適した投資判断へとつなげてください。

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ドル建て債券

ドル建て債券とは、アメリカドルで発行され、利息(クーポン)や償還金もすべて米ドルで支払われる債券を指します。日本の投資家がこの債券を購入する場合、実質的に外貨であるドルに投資することになり、為替の影響を受ける金融商品となります。証券会社を通じて円で購入できることも多いですが、その際には円からドルへの為替交換が自動的に行われ、為替レートやスプレッド(手数料の一種)が適用されます。 ドル建て債券は、一般的に日本国内の円建て債券と比べて利回りが高くなる傾向があります。これは米国の金利水準が日本よりも高いことが背景にあり、米国債や投資適格のドル建て社債でその傾向がよく見られます。ただし、利回りが高いからといって常に有利な投資先とは限らず、発行体の信用力や残存期間、債券の種類(固定金利か変動金利か)によってもリスク・リターンの性質は大きく異なります。 ドル建て債券の最大の特徴は、為替リスクを伴う点です。利息も償還金もドルで支払われるため、最終的に円に換算して受け取る際の金額は、受取時点のドル円相場によって大きく変動します。たとえば、投資時に1ドル=100円だったものが、償還時に1ドル=90円へ円高が進んでいた場合、10,000ドルの元本は90万円にしかならず、当初の投資額100万円を下回る結果になります。逆に、円安が進んで1ドル=110円になっていれば、同じ10,000ドルでも110万円の償還額となり、為替差益を得ることができます。 こうした為替の影響を定量的に把握するために、「損益分岐点為替レート」という考え方があります。これは、累計のクーポン収入がどの程度の円高までなら元本割れを回避できるかを示す目安です。たとえば、年利1.5%の債券を5年間保有した場合、税後でおよそ5%程度の利息が得られるため、投資元本をカバーできる為替の上限は購入時レートの約5%円高側、つまり1ドル=100円で購入したなら、損益分岐点は約95円となります。ただし、市場金利の変動に伴う債券価格の変動、為替スプレッド、税金、外貨管理手数料などもこの分岐点に影響するため、あくまで概算の目安です。 ドル建て債券に投資する際は、為替リスクのほかにも金利リスクや信用リスク、流動性リスクといった点にも注意が必要です。米国の金利が上昇すれば既発債券の価格は下落しやすく、特に償還までの期間が長い債券ほど価格変動の影響を大きく受けます。発行体が企業である場合は、その財務状態が悪化することによって利息の支払いや元本の償還が滞るリスク(信用リスク)もあり得ます。また、ドル建て債券は多くが店頭取引であるため、売却時に希望する価格で取引が成立しない流動性リスクにも留意すべきです。 税制面でも日本の課税と米国の源泉税との関係を理解しておく必要があります。日本では利息や為替差益に対して20.315%の源泉分離課税が適用されますが、一部のドル建て債券では米国での源泉課税(通常10%)が先に行われることがあり、二重課税調整が必要になる場合もあります。また、購入時や償還時の為替スプレッドや証券会社ごとの手数料体系によっても実質利回りが変わるため、事前に確認しておくことが重要です。 為替リスクへの対策としては、為替ヘッジ付きの債券ファンドを利用する、利息や償還金をすぐに円に換えずにドル建てMMFなどで再運用しながら為替タイミングを見極める、あるいはポートフォリオ全体で複数通貨建てや円建て資産と分散するなどの方法があります。ただし、ヘッジコストが大きく利回りを押し下げることもあるため、資金用途や運用期間、為替に対する許容度などを総合的に考慮したうえで判断する必要があります。 ドル建て債券は、利回りの魅力に加えて通貨分散の効果もあり、ポートフォリオの一部として検討する価値のある投資対象です。ただし、円建て資産と異なり、為替・金利・信用・税制といった多層的なリスクを正しく理解した上で取り組むことが不可欠です。投資初心者にとっては、利回りの高さだけに注目するのではなく、資金の使用目的や投資期間、自身のリスク許容度を踏まえた慎重な判断が求められます。

シニア無担保社債

シニア無担保社債とは、企業が資金調達のために発行する社債のうち、担保となる資産を差し入れない「無担保」の形態でありながら、万が一その企業が破綻した場合には優先的に弁済を受けられる「シニア(優先)」の位置づけを持つ債券です。 担保がないため投資家は物的保証を持ちませんが、同じ無担保でも後順位の劣後債より返済順位が高く、株式よりはるかに保全性が高い点が特徴です。発行体の信用力が金利水準を左右し、信用格付けが高い優良企業のシニア無担保社債であれば、比較的低い利回りでも安定した需要があります。一方、発行企業が財務悪化で返済不能に陥れば元本毀損のリスクがあるため、投資判断には財務諸表や格付けの確認が欠かせません。

コール条項(早期償還条項)

コール条項(早期償還条項)とは、債券などの発行者が、あらかじめ定められた条件のもとで満期を迎える前に債券を償還(返済)できる権利を持つ仕組みのことです。たとえば、金利が大きく低下した際に、企業が高いクーポン(金利)の支払い負担を減らす目的で、早期に債券を買い戻すケースがあります。 投資家の立場から見ると、コール条項が行使されることで予定よりも早く元本が戻ってきてしまい、当初想定していた利息収入が得られなくなる可能性があります。特に、高利回りを期待して長期保有を前提に投資した場合には、投資計画が狂ってしまうリスクもあります。 また、コールの行使は通常、発行者にとって有利なタイミングで行われるため、投資家にとっては「上振れのチャンスが削られ、下振れリスクは残る」非対称な構造になる点も注意が必要です。 債券やハイブリッド債に投資する際は、このコール条項の有無・内容(コール可能な時期や条件など)を事前に確認することが、リスク管理と利回り予測のうえで重要なポイントとなります。

メイクホール条項

メイクホール条項とは、債券の発行体が満期前に債券を繰上償還(予定より早く返済)する場合に、債券保有者が将来受け取るはずだった利息分を補償するための取り決めです。この条項があることで、発行体は金利が下がったときなどに債券を早期に返済できますが、保有者にとっては本来得られたはずの収益を失わないよう補填されるしくみになっています。補償金額の計算には、将来の利息を現在価値に割り引くなどの手法が使われます。資産運用の観点では、この条項があるかどうかで債券のリスクやリターンが大きく変わる可能性があるため、投資判断の際には重要なチェックポイントとなります。

残存期間

残存期間とは、債券や定期預金などの金融商品が満期を迎えるまでの残りの期間のことをいいます。たとえば、10年満期の債券を購入してから3年が経過していれば、残存期間は7年となります。この期間は、利回りの計算や価格変動リスクの判断にとって非常に重要な要素です。 一般的に、残存期間が長い債券ほど金利変動の影響を受けやすく、価格の変動も大きくなります。一方、残存期間が短い債券は金利の影響が少なく、価格が安定している傾向があります。投資家が債券を選ぶ際には、利回りの高さだけでなく、残存期間によるリスクや資金拘束の長さも考慮する必要があります。特に初心者にとっては、生活資金に余裕を持たせた上で、自分の投資期間に合った商品を選ぶことが大切です。

インカムゲイン(インカム)

インカムゲイン(インカム)とは、株式や債券、不動産などの資産を保有していることで定期的または継続的に得られる収益のことを指します。具体的には、株式の配当金、債券の利息、不動産の家賃収入などが代表的な例です。一方で、資産の売買差益から生まれるキャピタルゲインとは異なり、保有し続けることで一定のペースで収入を得る点が特徴です。 インカムゲインを重視する投資では、安定したキャッシュフローを得られることが大きな魅力となります。例えば、株式の配当金は企業の利益から支払われますが、企業の業績や配当方針に応じて増減があるため、定期的なチェックが必要です。債券の利息は発行体の信用力や金利情勢に大きく左右され、金利が上昇すると既存債券の価格が下落するリスクがあります。不動産投資では家賃収入がインカムゲインとなりますが、空室が続いたり修繕費がかさんだりするリスクがあるほか、売却時の価格も景気や立地に左右されるため、投資額の回収が遅れる可能性があります。 これらのリスクを考慮する一方で、インカムゲインには安定性というメリットがあります。資産を保有しているだけでも定期的に資金が手に入り、再投資や生活費に回すことで資産形成を円滑に進めやすい面があります。また、いざ急に資金が必要になった場合には、すぐに売却しなくても配当金や利息で一定の収入を得られる可能性があるため、心理的な安心感につながることもあります。 ただし、インカムゲインを得ようとするあまり、高配当や高利回りをうたう投資商品ばかりに偏ると、発行体の信用リスクや価格変動リスクが高まるケースも考えられます。特に、株式の配当は企業の業績が悪化すれば減配や無配となる恐れがあり、債券の場合でも発行体の破綻リスクや金利上昇リスクが存在します。不動産投資では物件管理の手間や費用が大きく、地方物件などでは買い手が少なく流動性リスクも高くなるため、分散投資の観点で他の資産とバランス良く組み合わせるのが望ましいでしょう。 総じて、インカムゲインは、投資から生まれる継続的な収益を得るための有力なアプローチです。特に、キャピタルゲインだけに頼らず、配当や利息、家賃収入などの定期的な収入源を得ることでリスクを分散しながら安定した資産運用を目指すことができます。ただし、投資対象の選定やリスク管理は欠かせないポイントであり、投資する資金やライフプラン、リスク許容度に応じて最適なバランスを見極める必要があります。

為替リスク

為替リスクとは、異なる通貨間での為替レートの変動により、外貨建て資産の価値が変動し、損失が生じる可能性のあるリスクを指します。 たとえば、日本円で生活している投資家が米ドル建ての株式や債券に投資した場合、最終的なリターンは円とドルの為替レートに大きく左右されます。仮に投資先の価格が変わらなくても、円高が進むと、日本円に換算した際の資産価値が目減りしてしまうことがあります。反対に、円安が進めば、為替差益によって収益が増える場合もあります。 為替リスクは、外国株式、外貨建て債券、海外不動産、グローバルファンドなど、外貨に関わるすべての資産に存在する基本的なリスクです。 対策としては、為替ヘッジ付きの商品を選ぶ、複数の通貨や地域に分散して投資する、長期的な視点で資産を保有するなどの方法があります。海外資産に投資する際は、リターンだけでなく、為替リスクの存在も十分に理解しておくことが大切です。

為替ヘッジ

為替ヘッジとは、為替取引をする際に、将来交換する為替レートをあらかじめ予約しておくことによって、為替変動のリスクを抑える仕組み。海外の株や債券に投資する際は、その株や債券の価値が下がるリスクだけでなく、為替の変動により円に換算した時の価値が下がるリスクも負うことになるので、後者のリスクを抑えるために為替ヘッジが行われる。

利子所得

利子所得とは、銀行預金や債券などから得られる利息収入を指す所得区分の一つです。たとえば、定期預金の利息、国債や社債の利払い、公社債投資信託の収益分配金などが該当します。 日本では、国内で得た利子所得には原則として20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の税金がかかり、金融機関があらかじめ差し引く「源泉分離課税」の方式が採られています。このため、通常は確定申告の必要がなく、利息は「手取り」で口座に入金されます。 一方、海外の銀行預金や外国債券の利息などは、国内で源泉徴収されない場合が多く、原則として「申告分離課税」により確定申告が必要となります。また、外国で課税された場合には、外国税額控除などを通じて二重課税の調整が可能です。 非課税制度としては、以下のような選択肢があります。 NISA(少額投資非課税制度):NISA口座内で保有する対象債券や債券ETF、公社債投資信託から得られる利子や分配金は非課税となります(ただし対象商品は限定されます)。 マル優(少額貯蓄非課税制度):障害者や高齢者等に限定されますが、預貯金の利子を元本350万円まで非課税にできる制度もあります。 なお、利子所得は元本の価格変動リスクが小さく、定期的なキャッシュフローを生む点で安定収入源となりますが、一方で損益通算や損失繰越ができない、インフレに弱いといったデメリットもあります。 利子所得はシンプルな金融収益でありながら、課税方式や制度の選択によって手取り額に大きな差が出る場合もあるため、正確な知識を持つことが資産運用において重要です。

損益通算

投資で発生した利益と損失を相殺することで、課税対象となる利益を減らす仕組みのことです。たとえば、株式投資で50万円の利益が出た一方、別の取引で30万円の損失が発生した場合、損益通算を行うことで、課税対象となる利益は50万円から30万円を引いた20万円になります。この仕組みにより、納める税金を減らすことが可能です。 損益通算が適用されるのは、同じ「所得区分」の中でのみです。たとえば、株式や投資信託の譲渡損益や配当金などは「株式等の譲渡所得等」に分類され、この範囲内で損益通算が可能です。ただし、不動産所得や給与所得など、異なる所得区分間では基本的に通算できません。 さらに、株式投資の損失は、損益通算後も控除しきれない場合、翌年以降最長3年間繰り越して他の利益と相殺できます。これを「繰越控除」と呼び、投資初心者にとっても節税に役立つ重要なポイントです。

繰越控除

繰越控除とは、特定の損失や控除額を翌年度以降に持ち越し、将来の所得から控除できる税制上の仕組みを指す。代表的なものとして、青色申告の純損失の繰越控除があり、一定期間内に発生した損失を翌年以降の利益から差し引くことができる。これにより、赤字企業でも将来の黒字化に伴い税負担を軽減できるメリットがある。ただし、適用には一定の要件があり、期限内に申告する必要がある。

為替スプレッド

為替スプレッドとは、外貨を売るときと買うときに適用される為替レートの差額のことをいいます。たとえば、ある通貨を買うときのレート(TTS)と売るときのレート(TTB)には差があり、この差がスプレッドです。銀行や証券会社などの金融機関は、このスプレッドの中に利益やコストを含めています。 投資家にとっては、スプレッドが広いほど取引コストが高くなるため、外貨預金や外国為替取引(FX)などを行う際には注意が必要です。特に頻繁に取引をする場合や、短期での為替差益を狙う取引では、このスプレッドが実質的な負担となることがあります。為替スプレッドは見えにくいコストのひとつですが、運用の成果に影響するため、取引前にレートの内訳を確認することが大切です。

債券スプレッド

債券スプレッドとは、ある債券の利回りと、比較対象となる指標(一般には同一通貨・同一残存期間の国債やスワップ金利など)の利回りとの差のことを指します。これは、信用リスクや流動性リスク、発行体の財務状況、市場の需給、さらには税制上の違いなど、複数の要因を反映した「リスクプレミアム」として機能します。 たとえば、企業が発行する社債の利回りが国債より高いのは、国よりもデフォルトリスク(債務不履行リスク)が高いと市場が判断しているためであり、その差分が債券スプレッドです。投資家はこのスプレッドを「リスクに見合った上乗せ利回り」として捉え、その債券への投資妙味や相対的な割安度を判断します。 スプレッドの水準が高い場合、リスクが大きいと評価されていることを意味し、逆にスプレッドが小さいほど市場からの信用が厚いと見なされているといえます。ただし、同じ発行体でも劣後債やオプション付き債(例:繰上償還権付き)などは、通常の社債よりスプレッドが大きくなる傾向があります。 また、スプレッドは景気サイクルや金融政策、地政学リスクなどによって変動しやすく、特に景気悪化や金融不安の局面では、投資家がリスクを回避しようとするため急拡大する傾向があります。そのため、債券スプレッドは「市場の不安のバロメーター」とも呼ばれます。 通常、スプレッドはベーシスポイント(1bp = 0.01%)で表記され、たとえば「スプレッドが50bp拡大」とは、0.5%分リスクプレミアムが上乗せされたことを意味します。 投資判断においては、スプレッドの絶対水準だけでなく、スプレッドの変化(拡大・縮小)やスプレッド曲線(ターム構造)の傾きも重要な分析対象となります。CDSスプレッド(クレジット・デフォルト・スワップ)との比較や、過去平均との乖離分析なども行われます。

流動性

流動性とは、資産を「現金に変えやすいかどうか」を表す指標です。流動性が高い資産は、短時間で簡単に売買でき、現金化しやすいという特徴があります。例えば、上場株式や国債は市場で取引量が多く、いつでも売買できるため、流動性が高い資産とされています。 一方、不動産や未上場株式のように、売買相手を見つけるのが難しかったり、取引に時間がかかったりする資産は、流動性が低いといえます。 投資をする際には、自分が必要なときに資金を取り出せるかを考えることが重要です。特に初心者は、流動性が高い資産を選ぶことで、急な資金需要にも対応しやすく、リスクを抑えることができます。

特定公社債

特定公社債とは、国債や地方債、政府保証債、公募または上場された社債など、一定の条件を満たす債券を指します。2016年から導入された「上場株式等の課税制度」において、特定公社債は上場株式やETF、投資信託と同じ「上場株式等」の区分に含まれ、税制上の優遇が適用されるようになりました。これにより、利子や売却益に対しては申告分離課税(税率20.315%)が適用され、損益通算や3年間の繰越控除も可能となります。 特定公社債の最大の特徴は、株式や投資信託と同じ特定口座で一元管理できる点です。特定口座(源泉徴収あり)を選択すれば、税金の精算が自動で行われ、確定申告が不要となります。源泉徴収なしを選べば、他の上場株式等と通算して税額を最適化することも可能です。このような税制の整備により、初心者でも扱いやすく、安定した収益を狙える債券として注目されています。 一方で、これらに該当しない債券は「一般公社債」と呼ばれ、税制上の取り扱いが大きく異なります。一般公社債には、私募社債や非上場社債、一定の転換社債などが含まれます。利子については源泉分離課税のみが適用され、株式や投資信託との損益通算はできません。また、特定口座での管理が認められず、損益や取得価額、為替差損益を自己計算し、一般口座で確定申告する必要があります。 たとえば、特定公社債で発生した5万円の利益と、同年に発生したETFの4万円の損失を通算した場合、実質1万円分のみが課税対象となり、節税が可能になります。これに対し、一般公社債の利益とETFの損失は通算できず、5万円全額に対して課税されるため、税負担が大きくなります。 このように、特定公社債と一般公社債では、税制上の扱い、損益通算の可否、口座管理のしやすさにおいて明確な差があります。債券投資を行う際は、その債券が特定公社債に該当するかどうかを事前に確認し、税務上のメリットを活かせるように設計することが重要です。特に、株式や投資信託と組み合わせて運用する場合、特定公社債を選ぶことで損益の一元管理が可能となり、資産運用の効率が高まります。

特定口座

特定口座とは、投資家の税金計算を簡便にするための口座形式です。証券会社が運用益や損益を自動計算し、年間取引報告書を発行します。特定口座には「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の2種類があり、「源泉徴収あり」を選択すれば、税金が取引時点で自動的に納付されます。これにより、確定申告が不要になるため、多くの投資家に利用されています。ただし、損益通算や損失の繰越控除を行う場合は確定申告が必要です。

DTC(Depository Trust Company)

DTC(Depository Trust Company)とは、アメリカにおける証券の保管や決済を行う中央預託機関で、ニューヨークに拠点を置いています。株式や債券などの金融商品を電子的に管理し、売買された際の証券の受け渡しや資金のやり取りを正確かつ効率的に処理する役割を担っています。 DTCは、米国市場で取引される大半の証券が登録されている中心的な存在であり、ユーロ圏でのユーロクリアに相当するアメリカ版のインフラといえます。投資家が米国の株や外債に投資する際、その裏側ではDTCが証券の記録管理を行っており、安全でスムーズな取引を支えています。普段は目にする機会が少ない存在ですが、国際投資の基盤を支える非常に重要な機関です。

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