
育児休業給付金(育休手当)とは?もらえる条件・金額の計算方法・申請手続きまで徹底解説
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公開:
2025.10.30
更新:
2025.10.30
育休中の家計は、思っている以上に負担が大きいものです。収入が減る一方で、子どもの誕生に伴う支出は増えていきます。そうした中で頼りになるのが「育児休業給付金」です。2025年4月からは制度が大きく見直され、「出生後休業支援給付金」と「育児時短就業給付金」が新設されました。共働き世帯の手取りが増える一方で、延長や再取得の要件は厳しくなるため、正しい理解がより重要になっています。
サクッとわかる!簡単要約
本記事は育児休業給付金について、2025年改正を反映し、支給額の算定ロジック(非課税・社保免除含む手取り感)、上限・下限、延長要件の厳格化、出生後休業支援給付金(13%上乗せ)と育児時短就業給付金の位置づけ、就労時の13%/30%および月10日・80時間ルール、初回申請の期限までを体系化。代表ケースの金額例と注意点を示し、読者が自分の条件に当てはめて手続きを進められるよう実務目線で整理しています。
目次
育児休業給付金とは?「いくら・いつまで・どう申請」の概要を解説
金額:手取りはいくら?給付率67%でも「実質手取り8割~10割」になる理由
期間:いつまでもらえる?原則1歳まで、保育園に入れない場合は最長2歳まで延長OK
申請:どう手続きする?基本は会社経由でOK。申請から入金までの流れ
2025年4月改正で育児休業給付金の何が変わった?あなたへの影響を3つのポイントで解説
変更点1:出生後休業支援給付金で、最初の1ヶ月間は夫婦なら「手取り10割」
変更点2:延長手続きが厳格化!「保育園の申し込み忘れ」は延長不可に
変更点3:「育児時短就業給付金」新設で、復職後の時短勤務もサポート
育休でもらえるお金は3種類!「育児休業給付金」と新しい給付金の違い
条件1:雇用保険に加入していること(被保険者期間の確認方法)
条件3:育休中に働きすぎていないこと(月10日・80時間以内ならOK)
育児休業給付金は「いくらもらえる?」金額の計算方法とシミュレーション
給付率はいつ変わる?育休開始から半年間は67%、181日目以降は50%
なぜ「手取り8割〜10割」になるのか?社会保険料免除と非課税の仕組み
【2025年改正】延長申請の注意点:「不承諾通知書」の取得タイミングがカギに
申請はいつ・誰がやる?基本は「育休開始前」に「会社経由」で手続き
育児休業給付金とは?「いくら・いつまで・どう申請」の概要を解説
「育児休業給付金」とは、育児休業(育休)の取得中に給与が支払われない期間の生活を支えるため、雇用保険から支給される給付金です。いざ自分が対象になると「実際、手取りはいくら?」「いつまでもらえる?」「手続きは難しい?」といった疑問や不安が出てくるでしょう。
育休取得を検討する方が迷わないよう、まずは給付金の基本的な説明と3つのポイント(金額・期間・申請)を解説します。
育児休業給付金とは?「育休手当」との違いは?
「育児休業給付金」と「育休手当」は、一般的には同じものを指します。正式名称は「育児休業給付金」で、雇用保険に加入している労働者が育児のために休業した際に、国(ハローワーク)から支給される給付金です。
一方で「育休手当」という言葉は、制度上の名称ではなく、ニュースや企業案内などで使われる通称・略称に過ぎません。
ただし、会社によっては雇用保険の給付とは別に、自社の福利厚生として「育休手当」や「出産・育児支援手当」を独自に支給している場合もあります。 そのため、「どちらの意味で使われているのか」を確認するには、就業規則や社内制度の記載をチェックするのが確実です。
金額:手取りはいくら?給付率67%でも「実質手取り8割~10割」になる理由
育児休業給付金は、育休開始から最初の6か月(180日間)は「休業開始前の賃金の67%」が支給されます。数字だけ見ると収入が大きく減るように感じるかもしれませんが、実際には手取りベースではほとんど変わらないケースが多いのが特徴です。
その理由は、この給付金が非課税であるうえに、育休期間中は社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)が免除されるためです。 つまり、給与から差し引かれていた税金や保険料がなくなる分、支給率が67%でも実際の手取りは勤務時の8〜10割程度に相当します。
期間:いつまでもらえる?原則1歳まで、保育園に入れない場合は最長2歳まで延長OK
育児休業給付金が支給される期間は、原則として「子どもが1歳になる誕生日の前日まで」です。ただし、保育園に申し込んだけれど入れなかった(待機児童になった)場合や、配偶者の死亡・病気などで養育が困難になった場合には、例外として「1歳6ヶ月まで」、さらに再延長して「最長2歳まで」給付期間を延ばすことができます。
申請:どう手続きする?基本は会社経由でOK。申請から入金までの流れ
育児休業給付金の申請手続きは、多くの場合、勤務先の会社(人事・総務担当者)が本人に代わってハローワークへ手続きしてくれます。そのため、ご自身が役所の窓口へ行く必要は基本的にありません。
ただし、申請には期限があり、初回はご自身で準備する書類もあります。
2025年4月改正で育児休業給付金の何が変わった?あなたへの影響を3つのポイントで解説
ここでは直近の制度改正にフォーカスし、「何がどう変わったのか」「誰に影響があるのか」を整理します。育児休業給付を取り巻く環境は近年大きく変化しており、特に2022年から2025年にかけて給付の新設・拡充や、手続きの厳格化が進められています。
変更点1:出生後休業支援給付金で、最初の1ヶ月間は夫婦なら「手取り10割」
これまでは、給付率が休業開始から半年間67%、それ以降は50%のみでした。
2025年4月1日施行の改正(雇用保険法等の一部改正)で、両親がそろって育休を取得した場合に13%を上乗せする「出生後休業支援給付金」が新設されました。これにより、子の出生直後の最大28日間は、給付率が合計80%に引き上げられます。
2025年4月以降に育休を取得する方で、夫婦共働きの場合は特に恩恵が大きいです。両親とも14日以上の育休を取得すれば、最初の約1か月間は収入がほぼ減らない(手取り額がほぼ変わらない)状態となり、家計への影響が軽減されます。収入減を懸念していた方(特に父親など)に対し、育休取得を後押しする効果が期待されています。
なお、共働きで夫婦の一方のみ育休を取得した場合は、原則として13%上乗せは受けられません。ただし、配偶者が専業主婦(夫)やフリーランスなどで雇用保険の対象でない場合は、本人のみの育休取得でも対象となる例外措置があります。
変更点2:延長手続きが厳格化!「保育園の申し込み忘れ」は延長不可に
従来は、保育所に入れない場合、自治体が発行する「保育所不承諾通知(保留通知書)」などを提出すれば延長が認められました。
今後はそれに加え、「いつ申し込んだか」「いつからの入所を希望したか」も確認されます。例えば「1歳の誕生日の翌日から預ける計画で、誕生日前にきちんと入園申込みをしていたか」を確認し、単に申し込みを忘れていた場合などは延長が認められなくなります。
変更点3:「育児時短就業給付金」新設で、復職後の時短勤務もサポート
これまでは、育休から復職後に時短勤務を選び、給与が下がっても、その分の補償はありませんでした。
今回の改正で、子が2歳になるまでの間に時短勤務を選択し、賃金が低下した方に対し、低下した賃金の約10%を給付する「育児時短就業給付金」が新設されました(支給には一定の条件があります)。これにより、早期復職と短時間勤務の選択がしやすくなります。
育休でもらえるお金は3種類!「育児休業給付金」と新しい給付金の違い
育休や産休に関する給付制度は名前が似ており、混同しやすい部分です。ここでは、雇用保険から支給される3つの育休関連給付金と、健康保険から支給される「出産手当金」との違いを整理します。
育児休業給付金(育休中にもらう基本の給付金)
育児休業中に給与が支払われない、または減額される場合に、雇用保険から支給される基本的な給付金です。男女ともに雇用保険の被保険者であれば受給可能です。
支給額は、育休開始から6か月(180日)までは休業前賃金の67%、7か月目以降は50%。 支給期間は原則として子が1歳になるまでですが、保育園に入れないなどの理由があれば最長2歳まで延長できます。
従来の育児休業制度は原則1回しか取得できず、長期休業を前提としていたため、出産直後に短期間だけ休みたい父親には使いにくい側面がありました。 この課題を補う形で誕生したのが、次に紹介する「産後パパ育休」です。
出生時育児休業給付金(産後パパ育休でもらえる給付金)
2022年の法改正で新設された「産後パパ育休(出生時育児休業)」期間中に支給される給付金です。 対象は主に父親(養子の場合は母親も可)で、子の出生後8週間以内に最大4週間まで取得可能。支給率は育児休業給付金と同じ67%で、雇用保険から支給されます。
この制度の目的は、出産直後のサポートをしやすくすること。 通常の育児休業が「長期の育児参加」を想定しているのに対し、産後パパ育休は「短期・分割取得(最大2回まで可)」を認めることで、仕事と家庭を両立しながら育児に関われるよう設計されています。
つまり、「産後パパ育休」は給付の仕組みこそ同じですが、男性が取りやすいよう特別ルールを設けた「もう一つの入り口」と考えるとわかりやすいでしょう。
実際には、出産直後に「産後パパ育休」を取り、その後に「通常の育児休業」を取得することで、出産直後と成長期の両方で育児に参加することが可能です。
出生後休業支援給付金(2025年新設・上乗せ給付)
2025年4月にスタートした新制度で、育児休業給付金に13%を上乗せして支給する仕組みです。 対象となるのは、子の出生から1年以内に、父母の双方がそれぞれ14日以上の育児休業を取得した場合です。 この条件を満たすと、父母それぞれ最大28日分の期間について、通常の支給率(67%)に13%が加わり、合計80%が支給されます。
この上乗せは、新たに別の給付金を申請するものではなく、既存の育児休業給付金に差額として追加支給される形で行われます。 つまり、最初から80%で支払われるのではなく、ハローワークが「父母ともに14日以上育休を取得した」と確認したあと、13%分が後から追給される仕組みです。 勤務先の証明手続きや申請時期によっては、振込が数か月後になることもあります。
なお、14日間の取得は連続でも分割でもOKで、土日祝日も育休日数に含まれます。 また、父母の取得時期は重なっている必要はなく、別々の時期に取っても対象となります。 たとえば、父親が出生直後に2週間、母親がその後に1年間育休を取るケースでも条件を満たします。
この制度は、夫婦がそれぞれ柔軟に育休を取りながら家事・育児を分担できるようにするもので、共働き世帯の「実質手取り100%」に近づける支援策として注目されています。
産休中にもらえる「出産手当金」とは何が違う?
出産手当金は育休給付金とは全く別で、産前産後休業(産前6週・産後8週)中にもらえる手当です。
支給元は雇用保険ではなく「健康保険」で、支給額は標準報酬日額の3分の2です。出産手当金(産休)の支給が終わった後、育児休業給付金(育休)の支給が始まる、という関係にあります。
出産手当金など、出産前後にもらえる手当や給付金とその手続きについては以下記事で詳しく解説しています。
あなたは対象?育児休業給付金をもらうための3つの条件
「自分は育児休業給付金をもらえるのか?」を判断するための受給要件を解説します。雇用保険からの給付であるため、一定の加入期間などの条件があり、これらを満たしているか最初に確認しましょう。
条件1:雇用保険に加入していること(被保険者期間の確認方法)
育休開始前の2年間に、雇用保険の被保険者期間(賃金支払基礎日数が11日以上の月)が通算12か月以上あることが必要です。簡単に言えば、直近2年で1年以上雇用保険の被保険者として保険料を払っている月があることが条件です。
転職直後や、第1子の育休・病気などで長期休業していた場合は、この「2年間」を「最長4年間」に延長して計算できる特例(2年ルール・4年特例)があります。
転職を繰り返した方や勤務日数が少ない月があった方など、ご自身の加入期間が不明な場合は、会社の担当者やハローワークで確認しましょう。
条件2:育休中に会社から給与(手当)が支払われないこと
育児休業給付金は、休業により賃金が支払われないことが前提です。もし育休中に(働かずに)会社から給与や独自の手当が支払われる場合、その額が休業前賃金の80%以上になると、給付金は支給されません。
80%未満の場合でも、給付金と会社からの給与・手当の合計が、休業前賃金の80%を超える分は、給付金が減額されます。
条件3:育休中に働きすぎていないこと(月10日・80時間以内ならOK)
育休中に臨時で働く(就労する)場合は、時間と賃金に上限があります。
- 時間の上限:1か月に10日(または80時間)を超えて働くと、その月の給付金はゼロになります。
- 賃金の上限:働いて得た賃金が一定額(休業前賃金の13%、育休開始半年後は30%)を超えると、給付金は減額調整されます。
注意:支給対象外となる主なケース
以下のような場合は、上記条件のいずれかを満たせず、給付対象外となることがあります。
契約社員・派遣社員で契約満了となる場合
育児休業給付金は「職場復帰」が前提です。育休の途中で契約期間が満了し退職となる場合は、その時点で支給対象外となります。
試用期間中や入社直後の出産
前述した「被保険者期間が通算12か月以上」という条件を満たせず、受給資格が得られない場合があります。雇用保険に加入していない短時間勤務の方も対象外です。
育休開始前に退職を決めている場合
在職者向けの給付金であるため、「出産を機に退職予定」の場合は対象外です。この場合は、失業給付(失業手当)の受給を検討することになります。
失業手当を受給する際の扶養の考え方については以下Q&Aで説明しています。
育休取得後に短時間勤務へ切替予定の場合
育児休業給付金は、あくまで「休業」している期間の給付です。育休明けに時短勤務で「復職」する場合、その時点で「休業」ではなくなるため、育児休業給付金の支給は終了します。
なお、復職後の時短勤務で賃金が低下した場合は、新たに「育児時短就業給付金」の対象となる可能性があります。
不正受給に関する注意
実際に働いているにもかかわらず「休業」と申告したり、要件を満たさないのに虚偽申請を行うと不正受給になります。発覚した場合は返還や罰則の対象となるため、判断に迷うときは必ずハローワークへ相談しましょう。
育児休業給付金は「いくらもらえる?」金額の計算方法とシミュレーション
ここからは「育児休業給付金はいくらもらえるのか?」を詳しく見ていきます。ただ額面上のパーセンテージだけでなく、税金や社会保険料の免除を踏まえた実際の手取り感覚も解説します。また2025年時点の上乗せ給付も含め、支給額の算定ロジックを理解しましょう。
「休業開始時賃金日額」とは?計算のもとになる給与の決まり方
給付金の計算の基本となるのが「休業開始時賃金日額」です。これは原則として、育休開始前の直近6か月間に支払われた賃金総額(税引前・社会保険料控除前、賞与除く)を180で割ったものです。
例えば、6か月間の賃金総額が180万円なら日額は1万円となります。月額の給付金は、この日額に支給率を掛け、30日分(支給単位期間)として算出されます。
給付率はいつ変わる?育休開始から半年間は67%、181日目以降は50%
支給率は育休期間によって2段階に変わります。育休開始から180日間(約半年)は賃金日額の67%、181日目以降は50%です。
1年間育休を取得する場合、前半6か月は月給の約2/3、後半6か月は半分になるイメージです(月収30万円なら月々約20.1万円→約15万円)。
<支給率の変動例:育休前月収30万円の場合)>
| 育休期間 | 支給率 | 支給額の目安(月額) | 
|---|---|---|
| 開始~180日目(約6か月) | 67% | 約20.1万円 | 
| 181日目以降(7か月目~) | 50% | 約15.0万円 | 
なお、父母ともに育休を取得する場合、この「180日間は67%」のルールは各人に個別に適用されます。例えば、母親が1年間、父親が2か月間育休を取得した場合、父親の2か月間はすべて67%で計算されます。
なぜ「手取り8割〜10割」になるのか?社会保険料免除と非課税の仕組み
支給率(67%など)は、税引前の「額面賃金」に対する割合です。しかし、育休中は社会保険料が免除され、給付金自体も非課税です。そのため、実際の「手取り額」は見た目の支給率よりも多くなります。
例えば月収30万円(手取り約24万円)の方の場合、67%給付(約20.1万円)には税金・保険料がかかりません。その結果、手取り額の減少は4万円程度に収まります。さらに2025年4月からの新制度(出生後休業支援給付金)の対象となり給付率が80%になれば、その月は手取り額は通常時とほぼ変わらない「実質手取り10割」の状態になります。
| 項目 | 通常勤務時 | 育休中(給付率67%) | 育休中(給付率80%) | 
|---|---|---|---|
| 額面収入 | 30.0万円 | 20.1万円 (給付金) | 24.0万円 (給付金) | 
| 社会保険料 | 約4.5万円 | 0円 (免除) | 0円 (免除) | 
| 所得税・住民税 | 約1.5万円 | 0円 (非課税) | 0円 (非課税) | 
| 差引手取額 | 約24.0万円 | 約20.1万円 | 約24.0万円 | 
| (通常手取りとの比較) | (100%) | (約84%) | (約100%) | 
支給額には上限・下限がある(月収約47万円以上は注意)
ここで注意したいのが上限額・下限額です。毎年8月1日に見直されますが、2025年8月時点で賃金日額の上限は16,110円、下限は2,464円(支給率適用前の額)となっています。
<支給額の上限・下限(2025年8月時点)>
| 項目 | 賃金日額 | 賃金月額(目安) | 支給額(月額目安・67%) | 
|---|---|---|---|
| 上限 | 16,110円 | 約483,300円 | 約323,811円 | 
| 下限 | 3,014円 | 約90,420円 | 約60,581円 | 
育児休業給付金の計算に使われる「賃金月額」には上限(約48.3万円)があるため、月収がこれを超える方は注意が必要です。たとえば月収70万円の方でも、計算上は上限の48.3万円として扱われます。
そのため、支給率67%を適用しても支給額は約32.3万円にとどまり、実際の手取り(育休前の可処分所得)と比べると大幅に下がります。高収入層ほど、この「上限キャップ」による差が大きくなります。
給付金は「いつまでもらえる?」原則の期間と延長の条件
育児休業給付金の支給期間について、原則と延長の条件を解説します。特に1歳を超える延長は要件が厳しく、必要書類も決まっているため、注意点を詳しく説明します。
原則は「子どもが1歳になる誕生日の前日」まで
支給期間の原則は、育休開始日から子どもが1歳になる誕生日の前日までです。
ただし、保育園に入れないなどの理由で1歳までに復帰できない場合、要件を満たせば1歳6ヶ月まで、さらに2歳までと2段階で延長が可能です。
延長は自動ではなく、後述する特定の要件を満たした場合に限られます。希望すれば誰でも延長できるわけではないため注意しましょう。
最長2歳まで延長できる2つのケースとは?
延長が認められるのは、主に「保育所に入れない場合」「養育が困難になった場合」の2つのケースです。
ケース1:「保育所に入れない」場合(自治体の「不承諾通知書」が必要)
子が1歳(または1歳6か月)時点で保育園などに申込をしているものの、入所できない場合です。これは自治体が発行する「保育所入所不承諾通知書(保留通知書)」などで証明します。待機児童が多い都市部では最も多い延長理由です。
ケース2:配偶者の死亡・病気などで養育が困難になった場合
養育予定だった配偶者が、死亡、病気・けが、離婚・別居、または次の出産(産前産後休業)などの事情で、子の養育が困難になった場合です。この場合は、医師の診断書や母子健康手帳のコピーなどで証明します。
【2025年改正】延長申請の注意点:「不承諾通知書」の取得タイミングがカギに
2025年4月の改正により、育児休業給付金の延長要件(保育所に入れない場合)が厳格化されました。 これまでのように「入れなかった」という事実だけでは足りず、「職場復帰のために速やかに入園を申し込んだ」ことを証明する必要があります。
たとえば、子が10月29日生まれの場合、10月1日入所枠への申込みを行い、その結果が不承諾であることが条件となります。 申込みを忘れたり、「復帰をもう少し先にしたい」と希望時期を後ろ倒しにした場合は延長の対象外になるため注意が必要です。 延長を希望する方は、1歳の誕生日月の入園申込を必ず期限内に済ませておきましょう。
不承諾通知書の取り扱い
自治体が交付する「不承諾通知(保留通知)」は延長申請に必須です。 ただし、有効なのは1歳または1歳6か月の時点の通知書のみで、たとえば子が8か月のときにもらった通知書では無効となります。 改めて該当月時点の通知を取得し直す必要がある点に注意してください。
申込日・希望開始日の証明
不承諾通知書に申込日や希望開始月の記載がない場合、保育所利用申込書の写しを補助書類として求められることがあります。 申請時に慌てないよう、申込書の控えは必ずコピーを取って保管しておきましょう。
認可外保育の扱い
ベビーシッターや企業内保育などの認可外施設は、原則として延長理由となる「保育所等」には含まれません。 ただし、自治体によっては、申込書で「認可外も希望する」にチェックしていない場合、保育利用の意思が十分でない(入所努力が足りない)と判断され、延長が認められないことがあります。 そのため、認可外施設を実際に利用する予定がなくても、申込時点で「認可外も含む」欄にチェックを入れておくと安全です。
延長申請のタイミング
延長に必要な書類は、1歳の誕生日以降の最初の支給申請時に、通常の申請書とあわせて提出します。 提出しなければ自動的に延長されることはありません。 会社の人事担当者に早めに相談し、自治体への保育申込とハローワークへの申請を連携させましょう。
2025年改正では「いつ申し込んだか」が重視されるため、自治体の保育申込締切日は必ず確認しておくことが大切です
育児休業給付金の申請方法と入金までの流れ
ここでは育児休業給付金の申請手続きについて、誰が・いつ・何を提出するかを解説します。会社経由での申請が基本ですが、入金が遅れた場合の確認方法も説明します。
申請はいつ・誰がやる?基本は「育休開始前」に「会社経由」で手続き
育児休業給付金の手続きは大きく(1)受給資格確認、(2)初回支給申請、(3)継続支給申請の3段階があります。
1. 受給資格確認
育児休業開始時に「育児休業給付受給資格確認票」を提出し、ハローワークが雇用保険の加入期間など要件を確認します。通常これは初回の支給申請書と一体で、1回目の申請時に同時に行われます。会社が代行する場合、多くは産前休業に入る前に本人が記入し、出産後に会社が日付を追記して提出します。
2. 初回支給申請
育休開始から最初の2か月分をまとめて申請するのが一般的です。申請期限は「育休開始から4か月を経過する日の属する月の末日まで」(例:4月1日育休開始なら8月末が期限)です。会社経由なら育休開始前に書類一式を準備し、出産報告を受けて提出します。自分で申請する場合は、会社から賃金台帳などを入手し、居住地管轄のハローワークに提出します。
3. 継続支給申請
初回支給以降、育休が続く限り原則2か月ごとに申請を行います。各回とも申請期限は「その支給単位期間初日から4か月経過月の末日」です。「育児休業給付金支給申請書(継続)」に、前回の申請以降の就労状況などを記入します。途中で職場復帰した場合は、その復帰日を含む期間まで申請し、終了となります。
初回申請(資格確認含む)が最も重要です。申請が遅れると給付を受けられない恐れもあるため、産後は特に会社との連絡を密にし、申請漏れがないよう注意してください。
申請に必要な書類リスト(会社が用意するものがほとんど)
提出先は、あなたの居住地を管轄するハローワークです(通常は会社が代行)。主な必要書類は以下の通りです。
<育児休業給付金 申請書類一覧>
| 書類名 | 提出タイミング | 主な内容・補足 | 
|---|---|---|
| 育児休業給付受給資格確認票 | 初回のみ | 被保険者や事業主の基本情報、育休開始日、予定終了日などを記入します。(「支給申請書」と一体の場合が多いです) | 
| 育児休業給付金支給申請書 | 毎回(初回・継続) | 本人氏名・住所、育休期間、就労日数・時間、賃金の有無等を記入し、事業主(会社)が証明・押印します。 | 
| 賃金月額証明書 | 初回のみ | 会社が作成します。休業開始前6か月分の給与支払状況を証明する書類です。(本人申請の場合は会社から原本をもらいます) | 
| 本人・配偶者の育休取得証明 | 該当者のみ(上乗せ給付申請時) | 出生後休業支援給付金を申請する際に必要です。配偶者の被保険者番号や、育休承認通知の写しなどを添付します。 | 
| 延長関係書類 | 該当者のみ(延長申請時) | 保育所の不承諾通知書や、配偶者の事情(死亡・病気など)を証明する住民票や診断書などを添付します。 | 
| その他 | 該当者のみ(初回・本人申請時など) | 振込先口座確認書類(通帳やキャッシュカードのコピー)や、本人確認書類(運転免許証のコピーなど)が必要となる場合があります。 | 
初回は書類が多めですが、多くは会社が用意します。2回目以降は「支給申請書」が中心です。育休中に住所変更した場合は、速やかにハローワーク(会社経由)へ届け出てください。
初回の振込はいつ?育休開始から2~3ヶ月後が目安
初回給付の振込は、育休開始から概ね2〜3か月後になるケースが多いです。これは初回申請が育休開始から2か月分をまとめて行われるためです。
会社の事務処理速度によっても多少前後しますが、遅れても遡って支給されます。もし育休開始後3か月経っても初回給付の通知(支給決定通知書)が来ない場合は、一度会社の担当者に申請状況を確認してみましょう。
2回目以降の振込はいつ?原則2ヶ月に1回のペースで入金
継続給付は、基本的に2か月に1度のサイクルで振り込まれます。ハローワークから郵送される「支給決定通知書」で支給額と振込予定日を確認できます。
支給額が変動した場合、育休開始181日目以降(給付率50%)になったか、育休中に短時間就労した可能性があります。また、育休を分割取得したり途中で復職したりすると、その時点で給付は一旦停止・再計算されます。
振込が遅い・入金されない場合の確認先(まずは会社の担当者へ)
万一「給付金の振込が予定より遅れている」と感じたら、まずは次の順序で確認しましょう。
1. 会社の人事担当者に確認
まずは自社が申請を完了しているか確認します。継続申請は会社任せになりがちなため、申請漏れがないか「◯月分の申請は済んでいますか?」と問い合わせてみましょう。
2. ハローワークに問い合わせ
会社が「申請済み」と確認できたのに振込がない場合、ハローワーク(雇用保険課)に直接問い合わせます。氏名や被保険者番号を伝えれば、支給決定状況(振込予定日など)を教えてくれます。
3. 電子申請の場合の確認
会社が電子申請を利用している場合、e-Gov上で申請ステータス(処理中・支給決定済など)を確認できます。不備で差戻しになっていないか、担当者に確認してもらいましょう。
まずは冷静に状況確認をしましょう。要件を満たし適切に申請していれば、給付金は必ず支給されます。万一トラブルがあっても時効(2年)以内なら遡って受給可能です。
注意!給付金が減額・停止される3つの落とし穴
思わぬ理由で給付金が減額・停止されるケースを防ぐため、ありがちな3つの落とし穴を解説します。
落とし穴1:育休中に働きすぎた(副業・アルバイトも含む)
育休中の就労は厳しく制限されます。1か月に10日超または80時間超働くと、その月の給付金は支給されません。この日数や時間には、副業、フリーランス、在宅ワークもすべて合算されるため注意が必要です。
また、基準(10日/80時間)以内でも、得た賃金に応じて給付金が減額される場合があります。ただし、賃金額が休業前賃金の13%(育休開始半年後は30%)以下であれば減額されず、満額支給されます。ルールが複雑なため、少しでも働く予定がある場合は事前に会社に申告し、上限を必ず確認しましょう。
落とし穴2:会社から給与や独自の手当が支払われた
育休中に働かずに会社から給与や独自の手当が支払われた場合も注意が必要です。その金額が休業前賃金の80%以上になると、その月の給付金は支給されません。
80%未満の場合でも、給付金と手当の合計が休業前賃金の80%を超える分は、給付金が減額調整されます。会社独自の手当がある場合、その分だけ雇用保険からの給付金が減額される可能性があると覚えておきましょう。
落とし穴3:申請忘れ・書類不備(特に延長申請の漏れに注意)
申請漏れや書類不備は、支給遅延や不支給に直結します。給付金は申請しなければ支給されず(請求主義)、特に初回申請の期限(育休開始から4ヶ月)を過ぎると時効の恐れもあります。継続申請(2ヶ月ごと)の漏れも同様です。
また、賃金証明書の記載ミスや、延長申請の書類(不承諾通知など)の不足、新設給付金の記入漏れもよくあるミスです。
対策として、申請期限(4ヶ月ルール)を自分で管理し、提出書類のコピーを保管しましょう。会社任せにせず、申請内容を都度確認することが重要です。
この記事のまとめ
育児休業給付金は、育休中の収入減を補い、安心して子育てと仕事の両立を支える重要な制度です。育休を安心して過ごすためには、受給条件や手続き期限を早めに確認し、勤務先や自治体と情報を共有しておくことが何より大切です。 制度の理解を行動につなげることで、家計の不安を抑えながら、ライフプランに沿った復職準備を進められます。

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投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
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育児休業給付金
育児休業給付金とは、赤ちゃんが生まれたあとに育児のために仕事を休む人に対して、雇用保険から支給されるお金のことです。この制度は、子どもが1歳になるまで(一定条件を満たせば最長2歳まで)育児に専念できるよう、収入を一部補うことを目的としています。対象となるのは雇用保険に加入していて、一定期間働いていた労働者で、男女問わず利用できます。 支給額は、休業前の給与の67%(一定期間以降は50%)で、会社から給与が出ていないことが条件となります。出産手当金が終わったあとに引き続き申請されるケースが多く、家計を支える大切な制度の一つです。手続きは会社を通して行うのが一般的です。
出生後休業支援給付金
出生後休業支援給付金とは、主に父親が子どもが生まれた後に一定期間育児のために休業を取った場合、その期間の収入減少を補う目的で支給される給付金です。いわゆる「産後パパ育休」(出生時育児休業)と呼ばれる制度の利用を後押しするために設けられた新しい支援制度で、雇用保険に加入している労働者が対象です。 通常の育児休業給付金とは異なり、子どもの出生直後という限られたタイミングで取得した休業に対して支給され、柔軟な取得(分割や短期取得)ができるのが特徴です。支給額は休業前の賃金の一定割合で、育児と仕事の両立を促進し、特に男性の育児参加を進めるために制度化されました。申請は勤務先とハローワークを通じて行われ、手続きや取得時期をあらかじめ計画することが重要です。
雇用保険
雇用保険とは、労働者が失業した際に一定期間、給付金を受け取ることができる公的保険制度です。日本では、労働者と事業主がそれぞれ保険料を負担しており、失業給付だけでなく、教育訓練給付や育児休業給付なども提供されます。 この制度は、収入が途絶えた際の生活資金を一定期間補う役割を果たし、資産の取り崩しを抑えるという意味でも、資産運用と補完的な関係にあります。雇用の安定を図るとともに、労働市場のセーフティネットとして重要な位置を占めています。
育児時短就業給付金
育児時短就業給付金とは、育児のためにフルタイムではなく短時間で働くことを選んだ場合に、収入が減った分を補うために支給される給付金です。特に育児休業から復職する際、子どもが3歳未満であることなど一定の条件を満たした労働者が対象になります。 これは、子育てと仕事を両立しやすくするための支援制度の一つで、短時間勤務による収入減少を経済的にカバーする役割を持っています。ハローワークを通じて申請し、給付は雇用保険から行われます。支給額は、通常の賃金と比べてどれだけ収入が減ったかに応じて算出され、一定の割合で補填される仕組みです。時短勤務でも安心して働き続けられるようにするための制度として、育児期の働く親を支援しています。
出産手当金
出産手当金とは、働いている女性が出産のために仕事を休んだ期間中、給与の代わりとして健康保険から支給されるお金のことです。対象となるのは、会社などに勤めていて健康保険に加入している人で、産前42日(多胎妊娠の場合は98日)から産後56日までの間に仕事を休んだ日数分が支給されます。 支給額は日給のおおよそ3分の2程度で、休業中の収入減少を補う役割を持っています。なお、パートや契約社員でも条件を満たせば受け取ることができます。会社から給与が出ていないことが条件になるため、給与が支払われている場合には支給額が調整されることがあります。出産による経済的な不安を和らげるための重要な制度です。
健康保険
健康保険とは、病気やけが、出産などにかかった医療費の自己負担を軽減するための公的な保険制度です。日本では「国民皆保険制度」が採用されており、すべての人が何らかの健康保険に加入する仕組みになっています。 会社員や公務員などは、勤務先を通じて「被用者保険」に加入し、自営業者や無職の人は市区町村が運営する「国民健康保険」に加入します。保険料は収入などに応じて決まり、原則として医療費の自己負担は3割で済みます。また、扶養されている家族(被扶養者)も一定の条件を満たせば保険の対象となり、個別に保険料を支払わなくても医療サービスを受けられる仕組みになっています。健康保険は日常生活の安心を支える基本的な社会保障制度のひとつです。
休業開始時賃金日額
休業開始時賃金日額とは、労働者が病気やけがなどで働けなくなり休業する際に、その休業が始まる前の時点での1日あたりの平均的な賃金のことをいいます。これは雇用保険や労災保険などで支給される休業補償金や給付金の計算基準として使われます。具体的には、通常その人が直前の一定期間に受け取っていた給与の合計を、その期間の日数で割って算出されます。この金額が基準になることで、公平で現実的な補償が行われる仕組みになっています。



